–––––––––––聖杯戦争開始まで、後1日。
残る陣営はセイバーのみである。
聖杯戦争開始まで、残るは一時間。
アーチャー陣営は、学校にいた。
どうやら、ランサーのサーヴァントと出くわしたようだ。
青のタイツに包まれたランサーは、アーチャーを見るなり呟いた。
「…ガキじゃねえか。」
アーチャーのサーヴァントを、そこらの少年や青年だと思ったらしい。
「私をガキと言うその不動心、尊敬に値する。だが、相手が悪かったな。」
アーチャーは不完全な投影で、彼が愛用している双剣、「干将・莫耶」を投影した。
投影持続時間は約2分。
持続時間の上昇には成功しているが、構造は把握しきれておらず、かなりのリスクを持つ。
「…二刀使いか。」
その姿を見たランサーは、疾風の如く走り出し、片方の剣を突いた。
彼の槍は、朱槍。それも、中々有名な朱槍だ。
「…その敏捷性、君の真名は判りやすい。槍を使う神速の英霊か。それも、半端なものではない。」
恐らくランサーの中でも優秀な部類だろう、とアーチャーが呟いた。
「そういうテメェはなにモンだ?双剣を使う弓兵なんざ聞いたことはない。」
ランサーは槍を構えながらアーチャーに対して言い放った。
アーチャーは一言で返した。
「–––––––私はただの雇われ英霊だ。弓兵だからと言って剣を使わない訳じゃない。」
ああ、そうかよ。
と、ランサーが発した途端、彼の槍は多量の魔力を得た。
––––彼は宝具を使う。
それを見るだけで察した。
「アーチャー、貴方は宝具を受け切れる?」
「私なら大丈b」
「貴方じゃ無理よ。」
凛からは即答されてしまった。
「受け切れるか…我が渾身の一撃!」
「逃げるわよ、アーチャー!」
それと同時に、遠くから青年の声が聞こえた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
学校内に入って行く彼の声を、アーチャーは聞いた事がある。
それは、彼にとって、最も重要な人物。
「…『エミヤシロウ』か。」
凛は、その名を聞いた瞬間に走り出した。
やはりか…世話がかかるな。と、アーチャーが呟いた。
–––––結果は呆気無かった。
彼ら、アーチャー陣営が向かうと、其処には一人しか居なかった。
衛宮士郎は、心臓を貫かれ、倒れていた。
凛は、何やら宝石を取り出し、処置をしていた。
アーチャーは、とりあえず走るの疲れたと言わんばかりに階段に座っていた。
「衛宮君は…どうしよう…?」
いつもの凛らしくないおどおどとした態度だったので、アーチャーは衛宮士郎を庇うかのように発言した。
「放っておけ、それよりランサーを仕留めたほうが良いのではないか?」
アーチャーは、衛宮士郎を戦線離脱させるために言い放った。
「そう…よね。行くわよアーチャー、ランサーを仕留めに!」
それでこそ凛だ、と聞こえるように呟いた。
結局、ランサーには逃げ切られてしまった。
彼の足は鍛えてあるがため、神速と言っても過言でないほどのスピードで走ることが出来る。
しかし、衛宮士郎の場所は分かるまい、と2人は安心していた。
彼らは一足先に遠坂邸に到着して、これからの聖杯戦争、セイバー陣営の英霊・マスターの予測と、アーチャーの力の無さについて、作戦を練っていた。
「アーチャー、貴方の存在が知りたいの。」
「今更か?」
さっきまで隣に居たぞ?と、返すアーチャー。
そういうと、凛は少し悩む素振りを見せ、発言した。
「ううん、それは分かってる。貴方は『衛宮士郎』よね。そうじゃないのよ。」
「ん?と、すると…よく分からないな。どういう事だ?」
凛は、一息置いてから、はっきりと答えた。
「貴方は、この世界の者…いえ、英霊とか、そういうのじゃなくて…『同一線上に存在する他の世界の衛宮士郎ではないか?』ってこと。」
いつもの彼女とは違う、少し重苦しい空気を漂わせた。
「だとしたら問いたいの。貴方は『英雄 エミヤ』かしら?それとも…」
一息。
「『英雄 衛宮士郎』かしら?」
アーチャーは、少し悩みつつも答えた。
「私にも分からない。それに、私が『英雄 衛宮士郎』だとしたら、私は私の力が気に入らない。」
なぜなら…と一息置くアーチャー。
しかし、その時。
遠坂邸が揺れ動いた。
「––––––––やはりか、此処は誰一人と知らない場のようだな。」
アーチャーは、まるでこの惨状が「前とは」違っていたかのように言い放った。
凛はその言葉を理解しておらず、困惑していた。
「どういう意味よ。」
「言葉通りの意味だが?」
アーチャーは、そう答えた。
凛が先に向かった後、彼は呟いた。彼が「自分はイレギュラーである」ということを理解しているかのような一言を。
それは
––––––––––私は他の線上の衛宮士郎だ、イレギュラーの私がいることで、世界は変わる。
という、一言だった–––––––––––
––––––