オリカだけでデュエルするとこうなる   作:ほったいもいづんな

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映画が放送されてから1ヶ月後の現実世界。 デュエルリンクス何てなかった! 代わりに発表されたのはデュエルディスクとソリッドビジョン。 そんな世界の兄弟の話です。

反響があれば続きます。


デュエルディスクが実際に出来るとこうなる。

 2016年、世界でもっとも売れているカードゲーム『遊戯王』はさらなる熱気に包まれていた。 特に話題に上がったのは原作漫画からのアフターストーリーとなる『劇場版』の上映であろう。 この映画で再び遊戯王の世界に戻った者、またはこの映画を期に遊戯王を始める者、再び全世界で遊戯王ブームが訪れた!

 

 そしてこれを期に遊戯王OCGを取り扱う会社、『コンマイ』が漫画やアニメに出てくるデュエルディスクとリアルソリッドビジョンの開発に取り掛かっていた。 映画の上映と同じ時期に発表されたそれは全世界中で大絶賛されるほどのクオリティ、まるでアニメさながらに動くモンスター達、実際に目の前で戦うその姿に全デュエリストの心が奪われた。

 

 そしてこのデュエルディスクとリアルソリッドビジョンのテスター達で行う世界大会が開かれることになる。 テスターになる条件はデュエリストであるかどうかのみ。 世界中の応募の中から選ばれたのは僅か五十人、そしてそのうちの二人は偶然にも兄弟であった……

 

 

 

 

 

 

「き、キター!! デュエルディスクキター!」

 

 はしゃいで驚く一人の青年。 兄弟の弟、「新時 遊日(あらじ ゆうひ)」。

 

「すげえなこれ、映画で海馬社長と遊戯がしてたのじゃん」

 

 冷静そうだが驚きを隠しきれない青年。 兄弟の兄、「新時 遊月(あらじ ゆうげつ)」。

 

「お、何か説明書が入ってるな」

「なになに……」

 

 二人揃って説明が記された小冊子を読む。 そこにはこう書いてあった。

 

『おめでとうございます! 貴方方は遊戯王OCG、リアルソリッドビジョンのテスターに受かりました! 次のページからの諸注意をよくお読みになって大会に備えてください』

 

 そこには祝いの言葉が書いてある。 そして次からのページ全て諸注意のようだ。

 

『このデュエルディスクには全世界中のカードデータが入っています。 デュエル開始時にあらかじめ入力して頂ければ実物のカードがなくともデュエルが可能です。 もちろん実物のカードを使用しても構いません』

 

 どうやらこのデュエルディスク、思いの外高性能のようだ。 ……もちろんそれだけではない。

 

『そしてこのデュエルディスク最大の目玉、『カードクリエイションシステム』の説明に移らせてもらいます』

 

 そう、このシステムこそがこのデュエルディスク最大の目玉の一つ。 名前の通り自分だけのカードデータを作り出すことが可能なのだ。

 

『必要なのはデュエリストの想像力のみ! 頭部に装着するスカウターが脳波を読み込み、そのイメージをデータに変換します。 もちろん効果などは調整されますが、自分だけの最強カードを作り上げることが可能なのです!』

 

 ここまで読むと、まんま映画でのデュエルディスクそのものである。 一体現代の科学はいつの間に進化したのだろうか? もはや『未知の科学力』である。

 

『なお、作ったカードを大会で使用する際にはあらかじめこちらにご連絡ください。 また故障や紛失などのお困りごともどうぞご遠慮なく』

 

 これで重要な注意書きは終わりである。 どうやら大会に関する連絡は追って行われるようだ。

 

「よっし! 遊月、さっそく公園いってデュエルしようぜ!」

「落ちつけ、まずはカードの創造から始めよう」

「お、そうだな」

 

 二人は自分だけの40枚のカードデータをデュエルディスクに落とし公園へと向かう。

 

 

 

 

 

 公園には遊具で遊ぶ子ども達がいる。 が、突如デュエルディスクを装着した男が二人も来たのだ、びっくりして凝視している。

 

「っしゃあ! 始めようぜ!」

「おう、サクッとぶっ倒してやるよ」

『デュエル!!』

 

 二人の掛け声と共に周囲の空間はリアルソリッドビジョンの領域に変化する。 二人の持つデュエルディスクが辺りに影響を及ぼしているのだ。

 

「っと……あり?」

 

 疑問の声をあげたのは弟の遊日。 それはデュエルディスクとスカウターに表示されているライフに対するものだった。

 

『LP4000』

 

「ライフ……4000? もしかして今度の大会は4000でやるのか?」

 

 どうやら大会で行われるルールがデフォルトで設定されていたようだ。 今度の大会はアニメを強く意識してライフ4000で行われる。

 

「まぁいいじゃねぇか、ライフが4000だろうが8000だろうが俺が勝つ」

「んだとぉ? 上等だコラ、俺の先攻だ!」

「あ、……まぁいいけど」

 

 先攻をとったのは遊日。 もちろん先攻はドローできない、よって手札5枚スタート。

 

「よし、お前に俺のオリジナルを見せてやる!」

「おーおー見せてみろよ」

「おう、俺は《L・HERO(レジェンドヒーロー) ミニマムナイト》を召喚!」

 

 《L・HERO ミニマムナイト》 ☆4 ATK/500

 

 現れたのは小さな身なりの騎士、いや騎士の子どもと言った方が適切か。 サイズの合わない兜をかぶり、その小さな身体には大きい盾を背負っている。 そしてその騎士は武器と呼べるものを身につけていない。

 

「『HERO』だと? 新しいヒーローカードを作ったのか」

「そうさ! 戦いの中で進化し続ける、それが『L・HERO』だ!」

「ふぅん……だからってその攻撃力で伏せないのか?」

「『ミニマムナイト』は召喚に成功した時、守備表示に変更される」

 

 攻撃表示→守備表示 DEF/1800

 

 小さな騎士は背負っていた盾を両手に持ち構える。 そして盾から少し顔をだして相手である遊月を警戒する。

 

「そしてこのモンスターは自分フィールドに『L・HERO』が存在する時のみ、守備表示で特殊召喚できる!」

「なるほど、そういう手か」

 

 同じカテゴリが存在することで特殊召喚が出来るカードは今の遊戯王においてなんら珍しくはない。 今は名前を持つものが強い時代でもある。

 

「こい、《L・HERO チキンナイフ》!!」

 

 《L・HERO チキンナイフ》 ☆4 DEF/1200

 

 2体目の『L・HERO』は同じく騎士の格好をした子ども。 『ミニマムナイト』と違うところをあげるとするならば、その手に持つのは小振りのナイフ、そして『ミニマムナイト』と違ってオドオドして『ミニマムナイト』の後ろに隠れている。

 

「『チキンナイフ』を特殊召喚したターンはエクストラデッキからの特殊召喚が封じられる」

「……珍しいデメリットだな」

「あぁ、思ったよりテキストの調整がキツイ……」

 

 どうやら特殊召喚に対するデメリットが中々大きいようだ。 このデュエルディスクの調整システムはプレイヤーの行動を大きく制限することもあるようだ。

 

「俺はこれでターン終了だ」

 

 遊日:LP4000 手札3枚

 

「言っておくが、『ミニマムナイト』がいる限りお前は他のモンスターに攻撃できねぇ。 そして『ミニマムナイト』は一度の戦闘では破壊されない!」

 

 攻撃の制限、そして破壊耐性、どうやら初手にしては上々のようだ。 だが遊月はこの布陣を見て笑う。 大したことはない、と。

 

 Turn2 遊月:LP4000 手札5枚

 

「俺のターン、ドロー」

 

 始まる遊月のターン、遊月は遊日と違って静かに動く。

 

「俺は魔法カード《手札滅殺(てふだめっさつ)》を発動」

 

 発動された魔法カードは制限カードである手札抹殺に酷似したカード。

 

「このカードは発動したプレイヤーの手札を全てゲームから除外し、除外した枚数だけデッキからカードをドローする」

 

 効果も似ており、手札抹殺の除外版であった。 そしてここから推測できるのは……

 

「……『除外デッキ』か!」

「そうだ、俺が除外したのは5枚、よって5枚ドロー」

 

 除外によって効果が発揮されるのは遊戯王でも珍しい部類に入る。 そんな珍しいデッキを前に遊日はワクワクが止められなかった。

 

「さて、それじゃあ見せてやる!」

「来い!」

「俺は除外されている《異次幻界(ネクロディメンジョン) ムロウォ・ワーム 》を墓地に戻し、手札から《異次幻界 ムロウォ・ワーム》を特殊召喚!」

 

 《異次幻界 ムロウォ・ワーム》 ☆3 ATK/1600

 

 何もない空間から別の空間が開き、そこから細長い昆虫が出てくる。

 

「除外されているモンスターをコストに召喚するモンスター!?」

「そうだ、『異次幻界』モンスターのほとんどは除外されている『異次幻界』を墓地に戻す事で特殊召喚が可能になる。 通常召喚は行えないデメリットを持つ、言い換えれば除外されてなきゃ動けないってことだがな」

 

 除外されているカードを戻すカードで有名なのは《異次元からの埋葬》であろう。 制限カードにもなっているから一度は耳にしたことがあると思う。 コストになったカードを墓地に戻せることから制限になった、これだけで除外されているカードを戻す効果が強いことが分かる。

 

「そしてもちろん効果だってあるぞ? 『ムロウォ・ワーム』の効果発動! このカードが特殊召喚に成功した時、墓地の《異次幻界》モンスターを1体特殊召喚する! 来い、もう一体の『ムロウォ・ワーム』!」

 

 現れた2体目のモンスター、同じ名前……そして同じレベル。

 

「同じレベルのモンスターが2体……来るか!」

「俺はレベル3の『ムロウォ・ワーム』でオーバーレイ!」

 

 行われるのはもちろんエクシーズ召喚。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 属性の色を放つ光の玉になった二体のモンスターは空に現れた渦に入り、爆発して光を放つ。

 

「外なる世界より飛翔せよ!

 《 混沌異次幻界(カオス・ネクロディメンジョン) エルガー・イーグル》!!」

 

 《混沌異次幻界 エルガー・イーグル》 ★3 ATK/2300

 

 現れたのは鳥のモンスター。 普通の鳥とは違い、全身の骨が飛び抜けており羽を纏わず代わりに紫色のマダラ模様が全身を覆っている。 不気味なモンスターだ。

 

「げぇ……相変わらずゲテモノが好きだな……」

「お前に言われたくはない、この偏食家」

「違いますぅ! 俺はスッパイのが好きなだけですぅ!」

「どうでもいい。 『エルガー・イーグル』の効果を発動するぞ」

 

 効果発動の宣言、それだけで遊日は先ほどまでのフザケタ雰囲気とは打って変わる。 その表情からは勝負に対する真剣さが伺える。

 

「オーバーレイ・ユニットを一つ使い、このターン『異次幻界』モンスター1体は1度のバトルフェイズに2回モンスターに攻撃できる!」

「2回行動効果か!」

「もちろん対象は『エルガー・イーグル』だ」

 

 これで2回の攻撃が可能になる。 だが『ミニマムナイト』にしか攻撃出来ず、その『ミニマムナイト』は戦闘で一度破壊されない。 有効打とは言い難い、この時点では……

 

「バトルだ、行け! 『エルガー・イーグル』で『ミニマムナイト』を攻撃!」

「『ミニマムナイト』は戦闘で1度破壊されない!」

 

 1度目の攻撃で破壊されない、だがしかし。

 

「ドワァ!?」

 

 遊日:LP4000→3500

 

 突如遊日を襲う衝撃、そして聞こえるライフが変動する音。 表示されているライフが減っているのを確認した後、改めて遊月のモンスターを見て遊日は気付く。

 

「そうか……そいつ『貫通』モンスターか」

「そうだ。 『エルガー・イーグル』が存在する時、俺の『異次幻界』モンスターの全員が貫通効果を得る」

 

『貫通』、それは守備表示モンスターに攻撃する時に攻撃力が守備力を超えていれば、その数値分相手に戦闘ダメージを与える効果である。 分類は基本永続効果である。

 

「そして2回目の攻撃だ!」

「クソッ……!」

 

 遊日:LP3500→3000

 

 破壊されてしまった『ミニマムナイト』を『チキンナイフ』は怯え涙を流しながら見ていた。 どうやらソリッドビジョンの演出のようだ。

 

「……名前の通りチキンなんだな」

「まぁ、そういうモンスターだし」

「ふぅーん? ま、とりあえずメインフェイズ2だ」

 

 ソリッドビジョンの演出に関心しながら次のターンの準備を始める。

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

 遊月:LP4000 手札2枚 伏せ2枚

 

「っし、俺のターンだ」

 

 Turn2 遊日:LP3000 手札3枚

 

「ドロー!」

「……?」

 

 スタンバイフェイズに遊月は気付く。 『未だに』チキンナイフが涙を流している事に。 そしてその目は先ほどのターンとは打って変わって怯えきった目ではなく、覚悟を決めた目をしていた。

 

「……そのモンスター、何かあるな?」

「おうともさ! スタンバイフェイズに『チキンナイフ』の効果を発動!」

 

 効果の発動宣言をすると、『チキンナイフ』から白い光が溢れる。

 

「自分のモンスターが戦闘で破壊された次の自分のスタンバイフェイズ時、このモンスターをリリースし、デッキから新たな『L・HERO』を呼び出す!」

「デッキから……?」

「仲間の死を乗り越え、臆病な刃は勇気の剣へ進化する! 来い、《L・HERO ブレイブソード》!!」

 

 《L・HERO ブレイブソード》 ☆6 ATK/2500

 

 光の中から現れたのは白い鎧を身につけた剣士。 その頭に乗っている兜から察するに、成長した『チキンナイフ』と考えていいだろう。

 

「『ブレイブソード』のモンスター効果発動! このカードが『チキンナイフ』の効果で特殊召喚された場合、相手フィールドのカードを1枚破壊出来る!」

「何! 特定の条件で召喚された場合に発動する効果!?」

「お前を破壊だ、『エルガー・イーグル』!」

 

 白い剣から放たれる白銀の斬撃が『エルガー・イーグル』を切り裂く。 これで遊月のモンスターは居なくなった。

 

「だが伏せを破壊しなくていいのか?」

 

 遊月の言う通り、モンスターではなく未だに発動しないリバースカードを警戒すべきなのだが、これはライフ4000ルール。 早めに大ダメージを与えるのは悪い戦法ではないし、場合によるが最も有効な攻め方でもある。

 

「へ、ここまま殴れば2500入る! そしてさらにモンスターを増やせばこのターンで終らぁ!」

 

 遊日の言う通りである。 攻撃力1500以上のモンスターを出せば最悪このターンでデュエルが終了する。 思いの外スピードが命のようだ。

 

「俺は《L・HERO モンクソルジャー》を召喚!」

 

 《L・HERO モンクソルジャー》 ☆4 ATK/1700

 

 現れたのは僧兵。 手には何も持たず、両手で拳を作り構える。 またも現れた新しい『L・HERO』は攻撃力のあるモンスターであった。

 

「これで終わっちまうぞ?」

「ほぉーぅ? まさかお前にはこの2枚の伏せが道端に転がる石ころに見えるのか?」

「殴ったら分かるだろ、バトルだ!」

 

 お互い分かっている、この戦闘では終わらないと。

 

「行け、『ブレイブソード』!」

「おっとそうはさせねぇ、リバースカードオープン!」

 

 遊月に向かっていった『ブレイブソード』に立ちはだかるようにセットされていたカードが起き上がる。

 

「トラップカード、《異次幻界 コールサーバント》!」

「攻撃反応型!? ……いや、フリーチェーンか!」

「このカードの効果で除外されている『異次幻界』モンスターを1体特殊召喚する!」

「くっ……特殊召喚系か!」

 

 フリーチェーンの特殊召喚カード、それもコストを必要としないあたり、名前縛りが入っている影響だろう。 代表的な『D・D・R』でさえ手札を1枚消費する。

 

「こい、《異次幻界 エイブ・ビー》!」

 

 《異次幻界 エイブ・ビー》 ☆1 DEF/100

 

 除外ゾーンから呼び出されたのは紫色の蜂。 守備表示で現れた所をみるとあのトラップカードは表示形式を強要しないようだ。

 

「なら『エイブ・ビー』を攻撃だ!」

「問題なく破壊される……が、だ」

 

『ブレイブソード』に真っ二つに切り裂かれた二つの胴体から『エイブ・ビー』がそれぞれ現れる。

 

「こ、これは分裂効果……!」

「そうだ、こいつは相手によって破壊された場合、デッキから同名のモンスターを2体まで呼び出せる」

 

 映画最新作で登場した『マシュマカロン』に似たモンスター。 ダメージを与えられず、モンスターも増えてしまった。 壁としてとても優秀なモンスターだ。

 

「くそ、『モンクソルジャー』で一体を攻撃してメインフェイズ2だ」

 

 戦闘を行っておきながらモンスターを残してしまった。 だがもし『ブレイブソード』の効果で対象にとったのが今のトラップカードだった場合、フリーチェーンで発動され破壊する意味がなくなる。 まだましな展開だと遊日は割り切ることにする。

 

「俺はカードを1枚伏せてターン終了だ」

 

 遊日:LP3000 手札2枚 伏せ1枚

 

「俺のターンだ」

 

 Turn4 遊月:LP4000 手札2枚 伏せ1枚

 

「ドロー! いい引きだ」

 

 ドローしたカードを確認してニヤリと笑う。 どうやら中々強力なカードが引けたようす。

 

「俺は魔法カード、《外界との交信準備》を発動! まず初めに墓地の『異次幻界』モンスターを1〜3枚除外する」

 

 除外するのはどうやら発動コストのようだ。 除外されたのは2体の『ムルウォ・ワーム』。

 

「そして除外した枚数に応じたレベルを持つ『異次幻界』モンスターを手札に加える」

「専用のサーチカードか!」

「除外した枚数は2枚。 よってレベル4〜6のモンスターをサーチ! 加えるのは《異次幻界 エソル・ローズ》、レベルは6だ」

 

 加えられたのは上級モンスター。 警戒すべきだと察する。

 

「『異次幻界』はレベルによって召喚に必要なコストが増える。 レベル5、6のモンスターの場合はコストが2枚だ!」

「さっき加えたモンスターのレベル6、しかもさっきの魔法カードのおかげでそのコストはすでにある!」

「除外されている2体の『ムルウォ・ワーム』を墓地に送り、《異次幻界 エソル・ローズ》を特殊召喚!」

 

 《異次幻界 エソル・ローズ》 ☆6 ATK/2100

 

 現れた上級モンスターは、薔薇を模した食人花。 凶悪な牙と腐臭漂う粘液を垂らしている。

 

「そして……『エイブ・ビー』はチューナーモンスターだ……!」

「……! しまっ……!」

 

 チューナーモンスターと非チューナー、そろったらもちろん……

 

「レベル6の『エソル・ローズ』にレベル1の『エイブ・ビー』をチューニング!」

 

 レベルを足して行われる『シンクロ召喚』だろう。

 

「交わるはずのない二つの異界、今一つとなりてこの世に混沌と崩壊をもたらせ! シンクロ召喚!

 来い、《混沌異次幻界 ナハトエイヴェル・リバイアサン》!」

 

 《混沌異次幻界 ナハトエイヴェル・リバイアサン》 ☆7 ATK/2700

 

 強烈は水飛沫と共に現れた巨大な海蛇。 頑強な鱗を纏うその巨躯を見るだけで戦意を失うかもしれない。 もっともこれは遊戯王、この程度では尻込みもしないのがデュエリストである。

 

「ここでシンクロ素材になった『エソル・ローズ』の効果だ」

「何……?」

「こいつがシンクロ・儀式の素材になった場合、墓地から『混沌異次幻界』モンスターを復活させることが出来る!」

「ま、まさか……!?」

 

 遊日の頭に嫌な予感が過る。 遊月の墓地には先ほどシンクロ素材になったモンスター、コストになったモンスター、そして……先ほど自らが破壊したエクシーズモンスター。

 

「蘇れ、《混沌異次幻界 エルガー・イーグル》!」

 

 《混沌異次幻界 エルガー・イーグル》 ★3 ATK/2300

 

「くそ、ここに来てシンクロとエクシーズが揃いやがった……」

「これで終わりじゃないぞ? トラップカードオープン!」

「ま、まだ何かあるのか?」

「トラップ、《異次幻界融合》を発動!」

「融合!?」

 

 ここに来てまだエクストラデッキからモンスターを呼ぼうと言うのだ、この男、恐ろしい。

 

「こいつは『異次幻界』専用の融合カード。 その効果で手札の2体の《異次幻界 トサーブ・ビースト》を除外して手札融合!」

「除外する融合!?」

「現れろ、異界に轟く号砲! 《混沌異次幻界 ノガルド・ドラゴン》!」

 

 《混沌異次幻界 ノガルド・ドラゴン》 ☆8 ATK/3000

 

 出てきた融合モンスターは攻撃力3000の大型モンスター。 紫色の皮膚に頭には2本の角、口から漏れるのは濃い紫の炎。 その圧力はドラゴンの名に恥じないであろう。

 

「『ノガルド・ドラゴン』はレベル7以上かつ同じレベルの『異次幻界』モンスターを2体必要とするモンスター。 少々面倒くさいモンスターだが、それに見合った能力もある」

「けっ、何が面倒くさいだ。 単純な話、同名の最上級を2体揃えりゃ良い話じゃねえか」

「そういうことだ。 バトル!」

 

 突入するバトルフェイズ。 遊日の残りライフは3000、全ての攻撃を受ければライフはなくなる。

 

「『ナハトエイヴェル・リバイアサン』で『ブレイブソード』を攻撃!」

「くっ、だが攻撃力の差はたったの200……大したダメージには……」

「それはどうかな? よく自分のモンスターのステータスを確認してみろよ」

「……?」

 

 言われてステータスを確認する。 すると遊日のフィールドに存在する2体のモンスターには明らかな異常が見られる。

 

「なっ!? ステータスが共に1000ポイントずつ下がっている!?」

「『ノガルド・ドラゴン』の永続効果だ!」

「また永続系の効果!?」

「『ノガルド・ドラゴン』が存在する限り相手のフィールドの全モンスターのステータスは1000ダウンする!」

「んな! それじゃあ『ブレイブソード』の攻撃力が1500に……………………ん?」

 

 言ってて疑問に思う。 単体で攻撃力4000まで渡り合えるのは十分脅威だと理解したが、ならばなぜ攻撃力の低い『モンクソルジャー』を攻撃しなかったのかが疑問になる。 問い詰めようとしてもすでに『ナハトエイヴェル・リバイアサン』の攻撃はすぐそこまで来ていた。

 

「『ブレイブソード』撃破!」

「うぐっ……!」

 

 遊日:LP3000→1800

 

 先ほどの貫通ダメージでの衝撃とは違い、モンスターが破壊された時の衝撃も相まって後ろに後ずさる。 だがまだ猛攻は続いている。

 

「この瞬間、『ナハトエイヴェル・リバイアサン』の効果発動!」

「くっ……今度は戦闘破壊成功がトリガーか……?」

「このモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時、そのモンスターの元々の攻撃力以下の相手モンスターを全て破壊する!」

「何!?」

 

 発生した渦潮が遊日のモンスターを飲み込んで消える。 攻撃力が下げての全体破壊、相性の良いコンボに思わず舌打ちをしてしまう遊日。

 

「ガラ空きだな……それともその伏せで防ぐのか? なんにせよ……攻めるだけだ!」

 

 遊日のフィールドに残されたのはセットされたカードが1枚のみ。 今ので発動しなかったのを良いことに遊月は迷わず攻撃する。

 

「行け、『ノガルド・ドラゴン』! ダイレクトアタックだ!」

「くそ、攻撃宣言時にトラップ発動!」

「ほう? だが『ノガルド・ドラゴン』は自身の効果で相手のカード効果の対象にはならないぞ?」

「トラップカード、『ディフェンシブ・ヒーロー・フォーメーション』。 このカードはダイレクトアタック宣言時に発動できるトラップ。 その効果でこの戦闘での俺へのダメージを0にする!」

「なるほどな、そいつは戦闘ダメージに対するカードか」

 

 トラップカードから発生したバリアがモンスターの攻撃を防ぐ。 そしてそのトラップの輝きはまだ収まらない。

 

「そして追加効果! ダメージステップ終了時に墓地のレベル4以下の『L・HERO』を特殊召喚する、俺は『ミニマムナイト』を復活させる!」

 

 《L・HERO ミニマムナイト》 ☆4 DEF/1800→800

 

 再び現れた小さな騎士。 だが『ノガルド・ドラゴン』の発する威圧感がミニマムナイトのステータスを1000ポイント下げてしまう。

 

「なるほど、これじゃあ『エルガー・イーグル』で貫通ダメージを与えても発生するダメージは1500。 ライフを削るのには300足りないな」

「へ、んなこと言ったって攻撃するんだろ?」

「ああ、『エルガー・イーグル』で『ミニマムナイト』を攻撃!」

 

 遊日:LP1800→300

 

 だがモンスターは自身の効果で残る。 それでも削ったダメージは深刻だ。

 

「さて、俺はこれでターンエンドだ」

 

 Turn5 遊日:LP300 手札2枚

 

「俺のターン、ドローッ!!」

 

 気合いを込めてカードをドローする。 そしてドローしたカードを確認し……

 

「ーー来た! お前の事が大好きだったんだよ!!」

 

 突然大胆な告白をかます。 余程欲しいカードがドロー出来たのだろう。

 

「随分良いカードが引けたな?」

「ああ! だが先ずはスタンバイフェイズに『ミニマムナイト』の効果だ!」

 

『ミニマムナイト』も『チキンナイフ』と同様に効果発動の条件を満たしたようだ。

 

「攻撃された次のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードをリリースして、デッキから《L・HERO パラディンガード》を特殊召喚する!」

「ほう?」

「成長した小さなの盾は仲間を守る正義の盾になる! こい、《L・HERO パラディンガード》!!」

 

 《L・HERO パラディンガード》 ☆6 ATK/2300→1300

 

 デッキから現れたのは成長した盾の騎士。 変わらず盾のみを構えているが、その身体は確かな成長を感じさせる。

 

「だが『ノガルド・ドラゴン』がいる限りステータスはダウンするぞ?」

「へ、成長したナイトを舐めんな! メインフェイズに入って『パラディンガード』の効果を発動!」

 

 盾を地面に突き刺す。 すると盾は白い光を帯び始める。

 

「このカードが『リトルナイト』の効果で特殊召喚した場合、1ターンに1度だけ発動出来る!」

「発動……?」

「相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする!」

「だが『ノガルド・ドラゴン』は対象にはーーーーはっ!」

 

 ここで気づく。 『パラディンガード』は発動してから対象を選んでいる。 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 発動そのものを無効にしない限りこの場では効果を受けてしまう。

 

「もちろんそのやっかいなドラゴンを無効だ!」

「くそっ……『トリシューラ』と同じタイプは卑怯だろ……!」

 

『氷結界の龍 トリシューラ』とは制限のシンクロモンスター。 その効果は凶悪で対象を取らないでフィールド・手札・墓地のカードを除外してしまう。 その余りの能力にデュエリストの間では『クソトリシュ』のあだ名がついたとかつかなかったとか。

 

「これで行ける!」

 

 遊日の手札は3枚、ここから逆転していく。

 

「俺は魔法カード、《発掘された伝承》を発動! 墓地の『L・HERO』を一体手札に戻す。 対象は『ブレイブソード』だ」

 

 コストを必要としない『死者転生』だろうか。 だが戻したのはレベル6の上級モンスター、ここからどうするのだろうか?

 

「さぁて、先を越されちまったが……行くか! 魔法カード、《融合》を発動!」

「融合……やはりな」

「ヒーローと言えば融合! こいつは外せない王道だぜ!」

 

 E・HEROしかり、D・HEROしかり、HEROの切り札はいつだって融合モンスターなのだ。 ……余談だがここに来てようやく既存のカードの登場である。

 

「手札の『ブレイブソード』とフィールドの『パラディンガード』を融合!」

「こい、融合したHEROよ!」

「現れろ、戦場を駆け巡る戦いのエキスパートよ! 《L・HERO バトルマスター》!」

 

 《L・HERO バトルマスター》 ☆6 ATK/2500

 

 二人の騎士が融合した姿は二人の装備が合体したような鎧を身に付け、その手に持つのは『ブレイブソード』が持っていた剣、そしてその背にはもう一振り背負っている。

 

「それが融合体か……だがそれだけじゃあ足りないぞ?」

「分かってるさ、英雄にはそいつに相応しい逸話ってのがあるんだよ。 魔法カード、《剛力無双の逸話》を発動! 自分フィールドの『L・HERO』と名のつく融合モンスターはこのターン、相手モンスターに一度ずつ攻撃できる!」

「『拡散する波動』のようなカードか」

「ただし、このターン相手プレイヤーに直接攻撃を行えない」

 

 全体攻撃権を得たが、それでも攻撃が足りなければ全く意味のない行動である。 だが遊日はこのターンで勝つつもりなのだ。 ならば融合によって現れたモンスターがこの状況を打破する力を持っているに違いない。

 

「バトルだ! 先ずは『エルガー・イーグル』に攻撃!」

「くっ……」

 

 遊月:LP4000→3800

 

 問題なくやられるモンスター、だが遊日のモンスターは未だ剣を構えている。

 

「この瞬間、『バトルマスター』の効果が発動する!」

「やはり何らかの効果が……!」

「戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの元々の攻撃力の半分の数値を相手に与える!」

 

『エルガー・イーグル』の攻撃力は2300、つまり1150のダメージが遊月に入る。

 

 遊月:LP3000→1850

 

「だが……ここからどうする?」

「まだ効果は終了しちゃいねぇ! ダメージ与えた後、『バトルマスター』の攻撃力は500ポイントアップする!」

「バーンプラスパンプアップだと!?」

 

 《L・HERO バトルマスター》 ATK/2500→3000

 

 これで『ノガルド・ドラゴン』と攻撃が並ぶ、だがまだ遊月のフィールドにはモンスターがいる。 そして今の『バトルマスター』は全体攻撃が可能……つまり。

 

「続けて『ナハトエイヴェル・リバイアサン』に攻撃!」

 

 遊月:LP1850→1550

 

「そして効果発動!」

 

 遊月:LP1550→200

 《L・HERO バトルマスター》 ATK/3000→3500

 

 このターンで決着が着くということである。

 

「そしてトドメだ! 攻撃力が3500になった『バトルマスター』で『ノガルド・ドラゴン』を攻撃!」

「ちっ……負けたよ」

 

『バトルマスター』は背に背負った2本目の剣を取り出し、ドラゴンを切り裂く。 ドラゴンは断末魔のような叫び声を上げ、爆発する。

 

 遊月:LP200→−300

 

 ライフが尽きる、即ちデュエルの終結である。 勝者は遊日。

 

「よっしゃあ! 俺の勝ち!」

「ま、今回はテストプレイみたいなもんだから」

「お? 言い訳かぁ?」

「ふん、次勝てば問題ないだろ」

 

 煽っているが、遊日自身遊月が全力を出していたとは思っていない。 まだまだ『異次幻界』には未知のモンスターがいる、つまりまだ実力を温存しているということ。 この勝利はあまり喜ばないと思っていた。 でも煽る、勝ちは勝ちだから。

 

「あ、次は実物のカード使おうぜ」

「いいな、『ライダー』とか『ユベル』見たいし」

 

 遊月も全力ではなかったが、それでもあの布陣を突破されたことを悔しんでいる。 次はもっと詰めなければ……今回の敗北を糧にするつもりだ。

 

 だがどちらもそれを口にしない。 何故ならデュエリストにとっては当たり前のことだから。 お互い切磋琢磨しあう、これこそがデュエリストの素晴らしいところ。

 

 だから皆もルールとマナーを守って楽しくデュエルしよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ヴェーラー』とかの性別が怪しいやつ召喚して下半身確かめたい」

「全裸系のモンスターがどうなっているかが気になる」

 

 ……

 

 ルールとマナーとモラルを守って楽しくデュエル!(半ギレ)

 




今回のオリカの設定的には、『L・HERO』はターンが進むことで進化していくデッキ。 『異次幻界』は『異次幻界』以外の効果では特殊召喚できないカード。 それぞれ癖が強いのがコンセプトです。 別に詳しく考えていないので、要望があれば詳しく出します。 あと続きを書きます。

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