急に遊戯王みたいなタイトルになっちゃった。 でも正直遊戯王のタイトルってどう付けたらいいか分からない。
公園でデュエルを続けている二人の兄弟、遊日と遊月。 二人は先ほどから勝敗よりもモンスターを召喚することを目的にデュエルを楽しんでいる。
「《ヂェミナイ・エルフ》を召喚! そして攻撃!」
「あ、《拷問車輪》発動な」
「拷問プレイはらめぇぇぇぇ!」
「あ、俺のスタンバイに500バーンだから俺の勝ちな」
「ぐぇへぇ!」
……と、このように好きなモンスターやカードがどのようにソリッドヴィジョンに映るかを楽しんでいる。 少々趣味が悪いが。
「いやぁ……まさか二人分の拷問車輪がでるとはな」
「あぁ、てっきり一つの車輪に二人が押し込まれるものだとばかり……」
「キマシ」
「キマシ」
ゲスい会話をしながら次に試したいカードを物色し始める。
ーーやれやれ、まさか日本の代表がこんな情けないデュエリストだとはな。
「ーー誰だ!」
二人の背後から現れたのは一人の男性。 その髪は金に染まっており、その顔つきは日本人とは思えないくらい整っている。 そしてその左腕には遊日達と同じデュエルディスク、そして頭にはスカウターを装着している。 一目で分かる、この男も大会に出場するデュエリストなのだと。
「これならこの僕、『ルカ・ブライトサイン』の圧勝かな」
「あ? 何言ってんだてめー」
突然現れた外国人が喧嘩を売ってきたのでそれに乗ろうとする遊日。 だが遊月は男性の名乗った名前に反応し、少し驚きながら質問をする。
「『ブライトサイン』だと? あのフランスだかイギリスだかで有名な貴族の『ブライトサイン』の人間?」
「ほう……そちらの彼は少しは良識があるようだ」
「……何だそりゃ?」
話が飲み込めない遊日に遊月が教える。
「確か元が騎士の家系で、今は貴族として世界で様々な地域で活躍している金持ちさ」
「へぇ〜……」(小並感)
「どうやらそちらの彼は少々頭が残念なようだ」
「んだとぉ?」
どうやらルカ・ブライトサインは貴族の人間のようだ、見た目からしてまだ未成年の印象を受ける。
「我々はデュエルディスクの解析のためにこれを手に入れた、すでに目的は果たし大会などどうでもよかったが……日本のデュエリストがこのような低俗なデュエルしかしないのであれば、ついでに大会も優勝するとしよう」
「あ゛あん!?」
それは明らかな挑発。 ルカは二人が真面目にデュエルしていたのを見ていないのからかもしれないが、それでも発言から感じられる自信。 低俗なデュエルをしていた二人とは違うモノを感じさせる。
「まぁ待て、確かにウチの弟は結局5回やって1回しか俺に勝てなかったクソザコナメクジだがな」
「テメェ!」
「だからってお前さんより弱い理由にはならんだろ?」
「……なに?」
ルカの挑発を受け流しつつ、新たな挑発を放つ遊月。 その挑発はルカと遊日に向けられたもの。 その目的は二人にデュエルさせるためである。
「……この僕を挑発しているのか? この僕がそこの低俗な男に負けると言うのか?」
「……やってみればわかるさ」
「いいだろう……貴方のその挑発に乗ってあげよう!」
「さ、デュエルしてくれるってよ」
「上等だコラ! あいつぶっ飛ばして、その後にお前じゃあ!」
二人はデュエルディスクとスカウターを起動させる。 周囲にソリッドヴィジョンシステムが展開され、またも公園がデュエルフィールドと化す。
「さぁ行くぞ低俗なデュエリスト!」
「俺の名前は新時 遊日だ!」
『デュエル!!』
ライフは4000、デフォルトの大会ルールで始まる。 先攻を取るのは遊日。
「俺の先攻! 俺は《
《L・HERO ビギナーズソーサレス》 ☆4 ATK/900
現れたのは新たな『L・HERO』。 見た目は魔法使いのようだが、発せられる雰囲気は熟練された魔法使いとは呼べない、見習いの女魔法使いのようだ。
「……やはり日本人は低俗。 女性型のモンスターを召喚……しかも攻撃力が低いのに伏せないとは」
「へ、こいつにだって必要とされる力ってモンがあんだよ」
「……ふん」
「俺は手札から魔法カード、《国境の共同戦線》を発動! 自分フィールドの『L・HERO』と同じレベルで異なる種族の『L・HERO』を手札から特殊召喚する!」
どうやらさらなるモンスターを呼ぶ魔法のようだ。 だがいかんせん燃費が悪い。 類似するカードなら《ゴブリンドバーグ》 や《ブリキンギョ》などのモンスターを使えば消費カードが減りアドバンテージが稼ぎやすい。 だが遊日のデッキは『L・HERO』だ、カテゴリーを統一するにはもちろん意味がある。
「新たなモンスターを呼ぶ気か」
「手札から《L・HERO ミニマムナイト》を守備表示で特殊召喚だ!」
《L・HERO ミニマムナイト》 ☆4 DEF/1800
この状況においてミニマムナイトは有効な手だ。 だがこの行動に遊月とルカは疑問を覚える。
(なぜその魔法カードで『ビギナーズソーサレス』を出さない?)
遊月は知っている、『ミニマムナイト』は召喚時に守備表示に変更できることを。 ならば『ミニマムナイト』を召喚してから魔法カードを発動する方が『ビギナーズソーサレス』を守備表示で特殊召喚できるのでそちらの方が有効なのは極めて明らか。 だから遊月はもう一つの可能性を考える。
「俺はカードを2枚セットしてターン終了だ」
遊日:LP4000 手札0枚
(あの魔法使い……)
遊月は『ビギナーズソーサレス』を見る。 遊日の使う『L・HERO』とは特定の行動で進化するカード。 『チキンナイフ』は自分以外のモンスターの戦闘破壊、『ミニマムナイト』は相手モンスターの攻撃に耐える、ならば今召喚された『ビギナーズソーサレス』は? 遊月は確信する。
(次の遊日のターンで間違いなくあいつは動く!)
それほどの確信を持ち、ルカのターンを観察し始める。
Turn2 ルカ:LP4000 手札5枚
「僕のターン、ドロー!」
いよいよ始まるルカのターン、果たしてどのようなカード群を使うのか?
「僕は《
《聖騎士団 クラッシュハンマー》 ☆5 ATK/2100
現れたのは白い防具を身につけた巨漢の男。 その手には鉄で作られたハンマーを携えている。 だが遊日はその見た目よりもルカの行動に驚く。
「上級モンスターを生け贄無しで召喚!? まさか妥協召喚か!?」
本来遊戯王ならばレベルが5、6のモンスターを通常召喚する場合、フィールドのモンスターを1体生け贄に捧げなければならない。 だが妥協召喚と呼ばれる召喚は、特定のモンスターが持つ生け贄軽減効果。 本来必要な生け贄をなくす代わりに、大抵のモンスターにはデメリットが付く。 だがルカの召喚した『クラッシュハンマー』は少々違うようだ。
「僕の『聖騎士団』は、墓地に『聖騎士団』以外のモンスターが存在しない時、生け贄無しで召喚できるのさ!」
「何!?」
「僕の墓地にはモンスターが存在しない、つまり『聖騎士団』以外のモンスターが存在しない状況だからリリース無しで召喚できたのさ」
「ほう……中々面白いカード達だ」
特定の条件下で生け贄無しで召喚できるのが『聖騎士団』の特徴の一つのようだ。 見たことのないカード達に遊日だけでなく遊月も胸を踊らせる。
「さらに永続魔法、《増援射撃》を発動」
永続魔法とは通常魔法や速攻魔法とは違い、基本フィールドに残り続ける魔法カード。 その効力はフィールドに存在する限り適応されるが、フィールドから離れればその効力は瞬時に消える。 天敵はサイクロン。
「さぁバトルだ!」
「おっと、先に言っておくがお前は『ミニマムナイト』以外には攻撃出来ないぜ!」
「……攻撃誘導効果か……関係ない! 行け、『クラッシュハンマー』よ!」
強烈な一撃を小さな騎士が受け止める。
「『ミニマムナイト』は一度の戦闘では破壊されない!」
「だからどうした!」
「……な、何ぃ!?」
確かに『ミニマムナイト』は
「『クラッシュハンマー』は守備表示モンスターに攻撃した際、ダメージ計算後に破壊する!」
「効果破壊……!」
守備表示モンスターに対しとても強力な効果である。 たとえ『マシュマロン』でさえも破壊されてしまうことを考えれば、先手に呼び出すには打ってつけのモンスターだ。
「そしてバトルフェイズ終了時、《増援射撃》の効果が発動する」
「このタイミングで……?」
「『聖騎士団』が戦闘を行った回数だけ、相手のモンスターを破壊できる!」
「マジか!?」
「対象はもちろんその魔法使いだ!」
ソリッドヴィジョン上に映し出された『増援射撃』のカードから弓矢が放たれる。 目標はもちろん『ビギナーズソーサレス』。 だがその矢が届く前に、魔法陣の盾が『ビギナーズソーサレス』を守った。
「防がれた……?」
「っぶねぇ……『ビギナーズソーサレス』は俺が魔法を発動した場合、表側表示である時に一度だけあらゆる破壊から免れる効果がある」
「……なるほど、だからそのモンスターを先に召喚してから《国境の共同戦線》を発動したのか」
判明した『ビギナーズソーサレス』の効果で1ターン目の遊日の行動に合点がいく。 一見無防備な行動は全て『ビギナーズソーサレス』を守るための行動だったのだ。 破壊できなかった『ビギナーズソーサレス』を見てルカは少しは苛立つも、すぐに切り替える。
「僕はカードを1枚セットしターンエンド」
ルカ:LP4000 手札2枚 伏せ1枚
「うーん……本当なら『ミニマムナイト』を残したかったけど……しょうがねえ」
Turn3 遊日:LP4000 手札0枚 伏せ2枚
「俺のターン、ドロー!」
フィールドには攻撃力の低いモンスター、そして相手のフィールドには上級モンスター、だが突破する手はすでにフィールドにある。
「スタンバイフェイズ、『ビギナーズソーサレス』の効果発動!」
「スタンバイフェイズに発動だと?」
「俺が魔法カードを発動した場合、次のスタンバイフェイズにこのカードをリリースしてデッキから新たな『L・HERO』を呼び出す!」
どうやら魔法カードの発動が進化のトリガー、『ビギナーズソーサレス』は煙に包まれ姿が見えなくなる。
「現れよ、幻惑の魔法使い! 《L・HERO ミラージュソーサレス》!」
《L・HERO ミラージュソーサレス》 ☆6 ATK/2200
煙から現れたのは黒のローブに包まれた魔法使い。 『ビギナーズソーサレス』の時には感じなかった貫禄を感じさせる。 そして成長したからか胸が大きく主張されている。
「条件を満たすことで進化するカードか……」
「そうだ! そして『ミラージュソーサレス』の効果発動!」
『ミラージュソーサレス』の持つ杖から霧が発生する。 そしてそこに映る影のシルエットはカードの形をしている。
「このカードが『ビギナーズソーサレス』の効果で特殊召喚に成功した場合、デッキから好きな魔法カードを手札に加える!」
『ミラージュソーサレス』が霧を遊日に送る。 そして遊日は霧に右手突っ込みそこからカードを引く。
「俺が加えるのは《融合》!」
「ほう……制限のないサーチに融合を選択するのはプレイングミスじゃないか?」
ルカのセリフは最も。 そもそも現在の遊戯王では『融合』をサーチする手段なぞ腐るほどある。 もっともポピュラーなのは《融合賢者》だろうか。 発動するだけで《融合》を手札に加えられるノーコストカード。 それでなくとも代用カードは沢山ある。 なのにわざわざ『ミラージュソーサレス』の効果でサーチしたのはプレイングミスのように思える。
「ふむ……」
だが遊月はそうは考えなかった。 手札はこれで2枚、そしてフィールドにはレベル6の『L・HERO』がいる。 ならばさらなる強力なモンスターを呼び出す準備をするのは悪手とはいえない。 恐らくはこのターンでないにしろ次のターンには融合モンスターを呼び出す算段があるということだ。
「さらに魔法カード、《羨望の眼差し》を発動! 自分フィールドに存在するレベル6以上の『L・HERO』を1体対象にし、そのモンスターよりレベルが2つ下で同じ種族の『L・HERO』を手札に加える」
「特定条件で行うサーチか」
「俺はレベル4の魔法使い族、《L・HERO ピュアヒーラー》を加える」
先ほどの遊月とのデュエルとは打って変わって魔法使い族の『L・HERO』を中心にデッキを回している。 どうやらいくつかの種族が複合されているようだ。
「そして《L・HERO ピュアヒーラー》を召喚!」
《L・HERO ピュアヒーラー》 ☆4 ATK/300
新たな魔法使いHEROは白いローブを身につけ、フードを深く被った少女。 両手に持つ杖は文字どおり杖扱いになっている。
「またしても攻撃力が低いモンスターを……」
「よし、これで条件は揃った! 永続トラップカードオープン!」
「この状況が条件を満たしているだと?」
「《精霊との盟約》! このカードはフィールドに魔法使い族の『L・HERO』が2体以上存在する時に発動できる」
伏せられていたカードが1枚オープンする。 そしてそのカードから白い光の球体が現れる。
「このカードが存在する限り俺の『L・HERO』は効果では破壊されない!」
「なっ!? これでは《増援射撃》を発動しても破壊できない!」
「そしてバトルだ! 行け、『ミラージュソーサレス』! 『クラッシュハンマー』を攻撃だ!」
攻撃力は僅かに『ミラージュソーサレス』の方が上。 『ミラージュソーサレス』の放つ霧の魔法弾が『クラッシュハンマー』に当たり爆発する。
ルカ:LP4000→3900
「くっ! 僅か100負けているとは……」
「そんで『ピュアヒーラー』でダイレクトアタック!」
ルカ:LP3900→3600
これでもう攻撃するモンスターはいない、よってバトルフェイズは終了し、ルカの永続魔法の効果が発動するも遊日の永続罠の効果で意味をなさない。
「この程度……っ!」
「俺はこれでターン終了だ」
遊日:LP4000 手札1枚 伏せ1枚
「……確かに《増援射撃》を封じつつ『クラッシュハンマー』を破壊したのは見事だが、そのモンスターを攻撃表示のままなのはいただけないな!」
Turn4 ルカ:LP3600 手札2枚 伏せ1枚
「僕のターン、ドロー!」
ルカの言う通り、いくらモンスターを破壊するためとはいえ攻撃力の低いモンスターを立てておくのは危険である。 ましてはルカのデッキは上級モンスターをいきなり呼び出せるため大ダメージは免れない。
「僕は手札から《聖騎士団 アクロバットナイフ》を召喚!」
《聖騎士団 アクロバットナイフ》 ☆5 ATK/1900
召喚したのは全身に小型のナイフを仕込み、体制を低くして手に持つナイフを構える騎士。 今にも曲芸を始めそうなくらい身軽そうな騎士だ。
「そして僕が『聖騎士団』を召喚したことでトラップカード、《
「召喚反応型!?」
「僕が『聖騎士団』を召喚した時、手札か墓地の『聖騎士団』モンスターを守備表示で特殊召喚する! 蘇れ、『クラッシュハンマー』よ!」
《聖騎士団 クラッシュハンマー》 ☆5 DEF/2000
復活したモンスターは守備表示で特殊召喚された。 どうやら守備表示でしか特殊召喚出来ないようだ。 だがそんなことは重要ではない。
「まじいなぁ……これで同じレベルのモンスターが2体……」
そう、エクシーズ召喚の準備が出来たのだ。
「僕はレベル5の『アクロバットナイフ』と『クラッシュハンマー』でオーバーレイ!」
「やっぱり!」
「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」
球体となった2体のモンスターは光の渦に吸い込まれるように消えていき、爆発を起こす。
「聖騎士団の切り込み隊長にして1000人切りの武人! 《
《聖騎士団長 バスタードソード》 ★5 ATK/3000
エクシーズ召喚されたのは筋骨隆々で全身に傷を負った獣のような騎士。 その手には背丈ほどの長剣を持ち、しかも片手で構えている。 団長と言う名を冠する通り、並々ならぬ気配が漂う。
「そしてこの瞬間、素材となった『アクロバットナイフ』の効果が発動する!」
「何!? エクシーズ素材になることで発動する効果!?」
「相手モンスター1体の攻撃力を0にする! 対象は『ミラージュソーサレス』だ!」
エクシーズ素材になることで効果が発動する特殊な効果。 オーバーレイ・ユニットとなった『アクロバットナイフ』がナイフを投擲し、それが『ミラージュソーサレス』に深々と突き刺さる。
「《ガガガガール》と同じような効果か……!」
「これで3000のダメージは確定、だがさらにここで『バスタードソード』の効果を発動!」
「くそっ! 本体はどんな効果だってんだよ!」
「エクシーズ素材を1つ取り除く。 そして手札の『聖騎士団』モンスターを任意の枚数相手に見せる、僕が見せるのは『ローバーアロー』と『ブラックジャックスミス』の2枚」
残りの手札2枚を公開するルカ。 これで手札は公開情報のようなものだが、それだけのリスクを犯すメリットがあるのだろう。
「見せた枚数だけ相手フィールドのカードを破壊する!」
「なっ!? 見せるだけで破壊だと!?」
「君のマジック・トラップゾーンのカードを全て破壊する!」
「くっ!!」
破壊されたのは表側になっていた《精霊との盟約》と最初から伏せられていたカードである《ディフェンシブ・ヒーロー・フォーメーション》だ。 仮にモンスターを全滅させられても何とかなると思っていたが、甘かったようだ。
にしても強力な効果である。 ランク5で複数の破壊が可能、しかも効果解決時に選択するので対象を取らない効果でもある。 手札を公開してしまうのは辛いが、見合った条件もしくはそれ以上にメリットのあることもあるだろう。
「これで終わらせる! バトルだ!」
「終わらせるだとぉ? 俺のライフは4000のまま、そっちの攻撃は3000だぜぇ?」
「問題ない! 『バスタードソード』で攻撃が0になった『ミラージュソーサレス』を攻撃!」
「くっ…… ーーーーッ!!」
ルカが攻撃宣言をした瞬間、どこからか飛んできた矢が遊日の肩に突き刺さる。
遊日:LP4000→3000
ダメージを受けていた、それも1000ポイントもの。 苦悶の表情でルカを睨むと、ルカの手札が1枚減っていることに気付く。
「……モンスター効果か! それも手札からの!」
「その通りだ。 先ほど見せた《聖騎士団 ローバーアロー》は『聖騎士団長』モンスターが攻撃宣言した時に手札から墓地に捨てて発動する効果がある」
「攻撃宣言時に手札誘発だと……?」
「相手プレイヤーに1000ポイントのダメージを与えるのさ!」
単純にして有効的、ライフが4000から始まるこのデュエルにおいて1000ポイントのダメージは比較的バカにならない。 このまま攻撃が通ればライフは0。 一種の1ターンキルのようなものだ。 もっとも、この程度で遊日は終わらない。
「だったらダメージを受けた時、俺も『ピュアヒーラー』の効果を発動させてもらう!」
「何? ダメージをトリガーにするだと?」
「俺が戦闘または効果でダメージを受けた時、その数値の半分、ライフを回復する!」
「ちっ……回復能力か……」
遊日:LP3000→3500
ヒーラーの名に相応しい効果。 受けた1000のダメージの半分、500ポイントライフを回復する。 これでこの攻撃でなやられない。
「だが攻撃は止まらない! 『バスタードソード』よ、蹴散らせ!」
「うっく……!」
遊日:LP3500→500
破壊される『ミラージュソーサレス』。 だが『ミラージュソーサレス』がフィールドを去っても、彼女が従えていた霧は消えない。 それどころかその霧がルカのフィールドの永続魔法に纏わりつく。
「何だこの霧は?」
「破壊された『ミラージュソーサレス』の効果さ……いっちち……」
衝撃で後方に吹き飛ばされた遊日は、打ちつけた頭を押さえながら効果を解説していく。
「『ミラージュソーサレス』は破壊された時、フィールドに霧を残す。 その霧に包まれた魔法・罠カードは効果が無効になる!」
「またしても《増援射撃》が……」
「これなら残された『ピュアヒーラー』は破壊されない!」
「ちっ……これではまた進化される可能性が……」
まだ諦めていない遊日の様子を見てルカは確信する。 『ピュアヒーラー』は恐らく進化の条件を満たした、だからあんなにも余裕があるのだと。 ここは守りも固めたい所だが、生憎手札は公開したモンスターだけ。 このままターンを終えるしかなくなった。
「僕はターンエンドだ。 さぁ、貴様のターンだ!」
ルカ:LP3600 手札1枚
次は遊日のターン。 ここまで傍観に徹していた遊月だったが、観戦をやめどこかに歩き出す。
「おい遊月、どこ行くんだよ」
「便所」
「お前なぁ……」
素っ気なく答え、トイレに向かう遊月にルカが言う。
「いいのですか? そこの低俗な男が負ける姿を見なくて?」
「……」
余裕の態度のルカ。 その言葉に怒りを表す遊日。 だが遊月はその足を止めることなく、背を向けたままルカにこう言う。
「勝利を確信した時、そいつはいつも笑っている」
「……?」
「そういうこった」
何のことだか分からないルカ。 だが遊月はそれ以上は何も言わず去る。 残されたルカはまるで意味が分からない様子だが、ターンはすでに遊日のもの。
「俺のターン!」
遊日:LP500 手札1枚
「ドロー!!」
ルカはふと何気なく遊日の顔を見る。 遊日の顔は……
「よっしゃー!」
『笑っている』。 勝利を確信したかのように。 ここでルカは理解する、遊月の言葉を。 遊日は勝利を確信すると笑うことに。
「何かキーカードを引いたみたいだが、攻撃力3000の『バスタードソード』をどうする!」
「気合い!」
「なっ……気合い……?」
「俺はスタンバイフェイズに『ピュアヒーラー』の効果を発動!」
遊日の宣言と共に両手を合わせて祈り始める『ピュアヒーラー』。 足元から花びらが現れ、『ピュアヒーラー』を包み込む。 その姿はまるで開花前のつぼみのようだ。
「自身の効果でライフを回復した次のスタンバイフェイズ、このカードをリリースしてデッキから《L・HERO リリィマハリシ》を特殊召喚する!」
「やはり来るか!」
「こい! 《L・HERO リリィマハリシ》!」
《L・HERO リリィマハリシ》 ☆6 ATK/2200
つぼみが花開き、中にいた小さな女の子は立派な導師へと成長していた。 深く被っていたフードは脱ぎ、百合の花のように真っ白な髪が風になびく。 そしてその胸は大きかった。
「『リリィマハリシ』の効果発動! このカードが『ピュアヒーラー』の効果で特殊召喚に成功した時、ライフを2000ポイント回復する!」
遊日:LP500→2500
進化したことで一気にライフを半分回復する。 固定値による回復なので状況に左右されないことが強みではあるが、受けたダメージの半分回復する『ピュアヒーラー』の方が回復できる場面もある。 だが『ピュアヒーラー』は一度ダメージを受けないといけないのでライフが0になる危険もある。 やはり遊戯王、それぞれに異なる強みがある。
「ライフを回復して何になる!」
「見てろって! マジックカード、《サウザンド・グリード》を発動!」
「グリード? 『強欲』だと?」
「ライフを1000ポイント、または2000ポイント支払う。 俺はライフ2000支払う」
遊日:LP2500→500
せっかく回復したのに、それを丸ごと支払う。 だが遊戯王はライフが1でも残ればデュエルは続行できる。 ライフなどただのコストにしかならない。
「払ったライフが1000なら1枚、2000なら2枚、カードをドローする!」
「手札増強カード!?」
「カード2枚ドローだぁ!!」
ライフを払うだけで2枚ドロー、現実なら禁止待ったなしである。
「き、貴様は最初のドローで逆転の手が来たのではなかったのか!?」
「? 何言ってんだ?」
遊月の言葉とは全く違う状況に思わず声を荒げるルカ。 そんなルカに遊日はさも当然のようにこう言う。
「この2枚のドローで逆転出来るカードが来るって思っただけだぞ?」
「なっ!? じゃあ貴様はあのギリギリの状況でのドローを楽しんでいただけなのか!?」
「あったぼうよぉ!! それに……ちゃぁんと逆転の手は来たぜ!」
「ッ!?」
今ドローしたカードを見て遊日は笑う。 そう、
「俺は魔法カード、《融合》を発動!」
「《融合》!?」
「フィールドの『リリィマハリシ』と手札の『ブレイブソード』で融合!」
素材になるのはフィールドの『リリィマハリシ』と今ドローした遊日のエース、『ブレイブソード』だ。 これによりレベル6の戦士族と魔法使い族の『L・HERO』融合が行われる。
「来い! 秘術宿りし魔剣! 《L・HERO ミラクルソード》!!」
《L・HERO ミラクルソード》 ☆6 ATK/2400
新たなる融合体はルーン文字が刻まれた鎧を身につけ、その手に持つ剣には球体状の水晶が埋め込まれている。
「融合モンスター……ッ!!」
「『ミラクルソード』は自身の効果で、俺の墓地の魔法カードの数だけ攻撃力を200ポイントアップさせる」
墓地には《国境の共同戦線》、《羨望の眼差し》、《サウザンド・グリード》、そして《融合》の4枚。 よって攻撃力が800ポイントアップする。
《L・HERO ミラクルソード》 ☆6 ATK/2400→3200
「くっ! 攻撃力が『バスタードソード』を超えたか!」
「さらに墓地の《精霊との盟約》の効果発動!」
「墓地からトラップだと!?」
今の世の中、墓地からトラップなど珍しくもないが、それでも突然来られると誰だって驚くだろう。
「このカードを墓地から除外し、フィールドの『L・HERO』と名のつく融合モンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップする!」
「何!? さらに攻撃力が上昇するだと!?」
《L・HERO ミラクルソード》 ☆6 ATK/3200→4200
さらに攻撃力を上昇させる。 もはや神すらも倒せる攻撃力に。
「バトルだ! 行け、『ミラクルソード』!」
「くそっ!!」
『ミラクルソード』の持つ剣から青い光が斬撃のように放たれ、『バスタードソード』を切り裂く。
ルカ:LP3600→2400
「ぐぅぅ! だが手札の《聖騎士団 ブラックジャックスミス》の効果を発動!」
「また手札からモンスター効果!?」
「『聖騎士団長』の戦闘破壊を無効にし、守備表示に変更する。 この時守備力は800ポイントダウンする!」
《聖騎士団長 バスタードソード》 ★5 DEF/2300→1500
戦闘破壊を『バスタードソード』の鎧が代わりに身代わりになるように破壊される。 そのせいで守備力がダウンしたのだろう。
(これで次のターンに『聖騎士団』モンスターを引けば『バスタードソード』の効果で……)
「ーー何とかなるとか思ってねぇだろうなぁ!!」
「何……ーーーーッ!?」
ルカは目を見開く。 信じられないと言った表情で見る遊日のフィールドには……
《L・HERO ブレイブソード》 ☆6 ATK/2500
《L・HERO リリィマハリシ》 ☆6 ATK/2200
2体の『L・HERO』が並んでいた。 そしてフィールドから姿を消した『ミラクルソード』。
「なっ!? 何故モンスターがーーーーッ!!」
ルカは遊日が1枚のカードを発動していた事に気付く。 そのカードとは……
《融合解除》
「そ、そのカードは……!!」
「《融合解除》、発動させてもらったぜ」
融合解除とは、フィールドの融合モンスターをエクストラデッキに戻し、その素材となったモンスターを持ち主のフィールドに特殊召喚させることが出来る速攻魔法。 この効果で攻撃を終えた『ミラクルソード』を戻し、素材となった『ブレイブソード』と『ミラージュソーサレス』をフィールドに呼んだのだ。
「分かってんだろ? バトルフェイズ中に召喚されたモンスターは、攻撃権を持つってのによぉ!!」
遊戯王GXに登場するエアーマン似の男がこのような事を言った。『バトル中の融合解除は融合デッキ最強攻撃パターン』と。 融合デッキにおいてこれほど簡単にモンスターを呼べる手段は早々ない。 単純にして最も有効的な攻撃手段である。
「こ、こんな事が……」
「よっしゃー! 行け、『ミラージュソーサレス』! 守備表示の『バスタードソード』を攻撃!」
当然破壊されるルカのモンスター。 ルカはこの布陣を信じられないと言った様子でただ眺めているだけだ。
「そして『ブレイブソード』でダイレクトアタックだ!」
「この僕が……ッ……!!」
ルカ:LP2400→0
軍配が上がったのは1手先を行っていた遊日。 ルカのプレイングも悪くはなかったが、あと一歩足りなかった。
「へへっ! 俺の勝ちだな!」
「くっ……!」
悔しそうに拳を握るルカ。 それとは正反対に喜ぶ遊日。
「……貴様の名前は何といった?」
「忘れてんじゃねぇよ!? ……遊日だ、新時 遊日」
「……ユウヒ! 忘れないぞその名前!」
ルカは遊日を指差しながら一人喋り出す。
「今はまだ余興の範囲内、本番の大会ではこうは行かない! まだまだ僕の『聖騎士団』の本領は見せていない! 次勝つのは僕だ! ルカ・ブライトサインだ!」
それは宣言に近い。 そしてそれは遊日を認めたと同義、遊日もその言葉を受け答える。
「おう、俺だってまだまだ全力じゃあねぇ。 本番の大会、全力でやりあおうぜ!」
「では精々腕を磨け! 僕はそれを超えてみせる!」
言いたい事が言い終わったのかルカは立ち去る。 そして代わりに遊月が戻ってくる。
「お、デュエル終わったか」
「あぁ」
遊月はその手に二つ、缶コーヒーを持っている。 そのうちの一つを遊日に投げ渡す。
「どうだった?」
遊日は飛んできたコーヒーを受け取り、プルタブを開けて飲み始める。 その際、カシュッ、と音を立てる。
「強かったよ。 あれでまだ全力じゃないってのは……恐ろしいぜ」
「……そりゃ楽しみだ」
遊日はコーヒーを一気に飲み干し、離れたところにあるゴミ箱に空の空き缶を投げる。
「……俺もだ!」
空き缶は綺麗にゴミ箱に入った。
はぇ〜すっごい少年漫画っぽい。
今回登場した『聖騎士団』は効果こそは中々のものですが、『聖騎士団』以外のモンスターを入れられないというデメリットがあるデッキです。 ……コンマイもこういうカード出してくれないかなぁ。
今回も誤字脱字等がありましたら、コメントにてお教えください。