遊日と遊月の元にコンマイからの手紙が届いた。 内容は大会の詳しい日程等の大会の詳細であった。 大会まであと2週間と判明し、同時に参加プレイヤーが全て確定したのだ。 それに伴いオープニングセレモニーやらの祭り事の知らせも届いた。
「前日際みたいなのがあるんだって」
「ふーん……家族や友達を連れてってもいいのか……」
参加者の名簿も付属していた。 そこには総勢50人のデュエリストのプロフィールが書いてある。 そこに目を通していると、遊日の目に一人のデュエリストの名前が目に入る。
「……『
「あれか、遊日の友達の彼か」
「へぇー! あいつもデュエルディスク手に入れたのかぁ」
今道 武光とは遊日の高校での友人。 デュエリストと知ったその時から二人は友達になった。 彼の使うデッキは悪魔族が多く、『暗黒界』や『魔轟神』等のデッキを愛用していた。
「どうだ、会ってデュエルしてくればいいんじゃあないか?」
「ああ! ちょっくら行ってくるわ!」
まだ午前、遊日はデュエルディスク一式を持ち家を飛び出す。
「オカンには晩飯までには帰るって言っておいてー!」
「へーへー」
武光がいるのは遊日が住む地域の隣町。 自転車をこぎ遊日は友の場所にむかう。
「オカーン! 遊日の奴遊びに行ったわ」
残された遊月は一人デッキの調整に入る。
「さて……このプロフィール……」
遊月は送られた名簿を確認している。 何故ならそこには既にデュエルディスクに登録したデッキの名前が書いてあるのだ。 もちろん全員という訳でもないが、ほとんどのデュエリストは登録済みだ。
「遊日のデッキとかは分かりやすい……つまりある程度の予想からメタが貼れるわけだ」
メタ、それはデュエルにおいてそのカテゴリーを潰すために存在するプレイング。 特殊召喚なら特殊召喚の、バーンならバーンの、対象のデッキのみを潰すことが出来るメタカードは現実の大会においても重要で、サイドだけでなくメインデッキにも投入されることが多い。 そしてたった一枚のメタカードでデュエルの勝敗が付くことも珍しくない。
「除外以外で発動するカードにするか」
だが遊月はメタ対策はしてもメタカードは作らない。 何故なら自分の『
「……にしてもこの名簿……本当に海外の人間が多いな」
世界各国から選ばれた、年齢や性別もバラバラのデュエリスト達。 そしてその中で一人、どこかで見たことがあるような女性を見つける。
「この女……どこかで……」
何かが遊月の頭に引っ掛かった。
「そうだ……オカルト系の2ちゃんで……」
その女性が何者であるか、遊月も遊日もまだ知らなかった。
「おいーす!」
遊日は武光の家に到着した。
「……はいはーい……ってよう遊日! お久!」
「ちすちす! お前、デュエルディスク手に入れたべ?」
「ってことはお前も……あの名簿は本当だったのか!」
あれよあれよの間にお互いの状況を把握する。 そして話は自然にデュエルする流れに……
「そうだ、確かここら辺のカードショップの店長がデュエルディスクのデモンストレーションをしてくれる人を募集してたぞ」
「お、ならそこでやるか」
武光の家から歩いて10分程度の地点にあるカードショップ。 そこに辿り着くまでの間二人はお互いのデュエルディスクの入手経緯を話す。
「え、何? お前あの抽選に当たったの!?」
「おうよ! これも日頃の行いってやつよ」
「マジかー」
「……じゃあお前はどうやって手に入れたのさ?」
「何だお前……知らないのか?」
武光は呆れた声で言う。 遊日は何のことだかさっぱりの様子。
「日本は抽選の他についこの間行われた『デュエルディスク杯』を優勝しても貰えるんだぞ?」
「あ、そうなの?」
どうやら抽選から漏れた人間はデュエルディスクを賭けて行われたデュエル大会に優勝すればデュエルディスクを手に入れられたようだ。 当然遊日達は抽選で貰えたのでその告知が来ていなかった。
「何デッキで優勝したんだ?」
「もちろん『DD』ぶっぱ」
「ヒュー!」
『DD』とは悪魔族を主体に融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムを行う超展開デッキ。 だがそれ故に所有者のデュエルタクティクスがかなり求められる。 因みに展開力の代わりに耐久度は低い。 返しのターンに1キルなど珍しくもない。
「んじゃデッキの創造はしてないのか?」
「いや、したよ? 当然じゃん」
「だよなー!」
武光と言う男、例に漏れずデュエル脳だった。
二人は件のカードショップに到着し、店長にデュエルを行う旨を伝える。 するとこの店長、とてつもなくテンションの高い御仁で……
『さぁー街行く人達! 今から我がカードショップにてデュエルディスクのデモンストレーションデュエルを行います!!』
「テンションたけーなおい」
「ここの店長、『5D's』のリーゼント司会者並みに荒ぶるからな」
マイクを片手に店の駐車場で客を集め始める。 どうやら外でド派手に行うようだ。
「まぁ……こっちはデュエルするだけだ!」
「そうだな!」
二人はデュエルディスクの展開する。 もう準備はバッチリのようだ。
『デュエル!!』
『さぁ今始まりました! 先攻を取るのはどちらだぁ!?』
「お先失礼!」
『先攻を取ったのは遊日選手だぁ!! 一体どのようなモンスターが現れるんだぁ!?』
「うわ、うるせーなこの人……」
先攻を取るのは遊日。 テンションの高い店長に少し引きながデュエルを始める。 もちろんライフは4000。
「俺は《
《L・HERO モンクソルジャー》 ☆4 ATK/1700
初手に呼ばれたのは遊月とのデュエルでも召喚されたモンスター
『おおっと!? 現れたのは新たなヒーロー、『L・HERO』だぁ!!』
「ヒーローか……」
「モンクソルジャーの効果を発動! このターンの攻撃権を放棄し、このカードの攻撃力を500ポイントアップさせる!」
《L・HERO モンクソルジャー》 ☆4 ATK/1700→2200
使われなかった効果はパンプアップ、攻撃が行えないが先攻では余り気にならないデメリット。
「カードを1枚伏せてターン終了だ」
遊日:LP4000 手札3枚 伏せ1枚
「なら俺のターン!」
武光:LP4000 手札5枚
「ドロー!」
ここで、少しずつギャラリーが増えていることに気付く二人。 少しざわざわしながら二人のデュエルを見ている。
『続いてい武光選手のターンだぁ! 相手のフィールドには攻撃力2200のモンスター! 一体どう対処するー!?』
「ここは耐えかな、モンスターをセット」
裏側守備表示で出されたモンスターは文字通り裏側のカードが出現する。 どのようなモンスターかは分からない。
「そして永続魔法、《魔界植物の苗床》を発動!」
発動された永続魔法から気色の悪い植物が植えられた植木鉢が出てくる。
「ソリッドビジョンだー!」
『おおっと武光選手、永続魔法を発動してきたー! 一体どんな効果を持っているのかぁ!?』
「こいつが効果を発動するのはまだ先。 これでターンを終える」
武光:LP4000 手札3枚
どうやらここは見、様子を伺うことにしたようだ。 だが遊日のデッキはターンが経過する事で強化されていくデッキ、ここでの見はやや悪手に見えるが……
「俺のターンだな!」
遊日:LP4000 手札3枚 伏せ1枚
「っと、相手スタンバイフェイズ開始時、《魔界植物の苗床》の効果が発動する!」
「スタンバイフェイズ開始時にぃ?」
「フィールドの全モンスターに『寄生カウンター』を1つ乗せる」
『ここで永続魔法によるカウンター乗せだぁ! もしや武光選手のデッキはカウンター系なのかぁ!?』
カウンターとはモンスターに乗せることが出来る特殊なもの。 カウンター自体には効果がなく、発動したカードの効果がそのままカウンターに乗る。 裏側のモンスターには乗らない。
「このカウンターが乗っかったモンスターは植物族としても扱う」
「……つまり今の『モンクソルジャー』は戦士族兼植物族ってわけか」
植物族としても扱うせいか、モンクソルジャーから植物の蔦のようなものが生えて伸びる。 だが遊日はそんなの関係ないと言う。
「スタンバイフェイズに『モンクソルジャー』の効果を発動!」
「何!?」
「スタンバイフェイズに自身の効果で攻撃力が上昇したこのモンスターをリリースする事でデッキから新たな『L・HERO』を呼び出す!」
『何と遊日選手! ここでモンスターをリリースしてデッキからモンスターを呼ぶつもりだぁ! これではカウンターを乗せた意味がなぁい!!』
武光の永続魔法は『スタンバイフェイズ開示時』に発動する効果。 スタンバイフェイズに入った瞬間に発動するため、スタンバイフェイズに何時でも発動可能な『L・HERO』達の効果とは相性が悪い。
「デッキから来い! 《L・HERO スーパーモンク》!!」
《L・HERO スーパーモンク》 ☆6 ATK/2300
「……進化してデッキから出てくるなんてな」
『戦いの中で進化し続ける、これが『L・HERO』の特性かぁ!? 守りの態勢に入ったことが、逆に向こうの後押しをしてしまってたぞぉ!!』
新たな『L・HERO』は進化前と同じ僧兵に似た格好をしているが、身にまとうオーラの色が違う。 『モンクソルジャー』の時は穏やかな青色だったが、今度は目を伏せたくなるほどの黄色のオーラ。 ほとばしる気はまるで稲妻のようだ。
「『スーパーモンク』のモンスター効果! このカードが『モンクソルジャー』の効果で特殊召喚に成功した場合、このカードの攻撃力は500ポイントアップし、効果では破壊されなくなる!」
「うおっ! 打点28か!」
《L・HERO スーパーモンク》 ☆6 ATK/2300→2800
これで効果で破壊されない高打点モンスターの完成だ。 普通なら『ホープ』を出されるより面倒だが、武光は余裕を崩さない。
「なぁに伏せてんだろうなぁ……」
「殴ればいいだろ? ほらほら」
遊日は考える。 あの伏せはどのようなモンスターなのか。 普通に考えるなら戦闘破壊態勢かリバース効果持ちのモンスター。 あとは手札の中に何かあるのかもしれない。 確かに攻撃するほか確かめる術はない。 もちろんここであえて攻撃しないのもあるが……今は引く時ではないと遊日は考える。
(ここはモンスターを増やさずに攻撃だ!)
相手の伏せが判明しない今、モンスター全滅の可能性を考え手札を温存することに。
「バトル! 『スーパーモンク』でセットモンスターを攻撃!」
『スーパーモンク』の拳がセットモンスターに近づく、そして姿を現したモンスターは……
《
守備力は『スーパーモンク』の攻撃力の下、だが攻撃を受けたのにも関わらず破壊されない。
「残念だったなぁ、『ダイレンジ』は一度の戦闘では破壊されないのよ!」
「うげっ! そういう系か……じゃあメイン2だな……」
夕日は2枚のカードを手に取る。 そしてそれをデュエルディスクにセットする。
「モンスターとカードを1枚ずつセットしてターンエンドだ」
遊日:LP4000 手札2枚 伏せ2枚
『未だ3ターンしか経過していないが、どちらのライフも変動無し! だが武光選手のモンスターは『植魔』と呼ばれるモンスターのようだぁ! これは次の武光選手ターンでいよいよ動きがあるかぁ!?』
店長の実況により様々は見物人が増えてきた。 ……そしてその中に……
「……」
遊月が気にしていた女性のデュエリストもいた……
武光:LP4000 手札3枚
「ドロー!」
武光がドローする中、遊日は姿を現した『植魔』モンスターを観察していた。 ステータス、名前、見た目……そしてあるモンスター群に思い当たる。
「……それもしかして《暗黒界の番兵 レンジ》か?」
「お、流石は遊日! 気付いてくれると思ってたぜ! この『植魔』は『暗黒界』をベースにアレンジしたカード達だ」
「どーりで……全身が植物に支配されてるみてーなビジュアルしてんだな」
『植魔』の植は植物の植。 どうやら植物に支配された『暗黒界』が『植魔』のようだ。 全体的に色が緑がかり脳に当たる部分からは植物のツルやら葉やらが出ている。
「そして自分のスタンバイフェイズ、『ダイレンジ』の効果を発動!」
「今度は自分のスタンバイフェイズに効果だと?」
「このカードに『寄生カウンター』を1つ乗せる。 これで『ダイレンジ』の種族は元々の『悪魔族』兼『植物族』だ」
これでカウンターの乗ったモンスターがフィールドに、いよいよこのカウンターの秘密が露わになる。
「手札に存在する『植魔』モンスターは、『寄生カウンター』が乗っているモンスターをリリースすることで手札から特殊召喚出来る!」
「何っ!?」
「『ダイレンジ』をリリース、手札から《植魔鬼神 トウケルト》を特殊召喚!」
《植魔鬼神 トウケルト》 ☆6 ATK/2400
現れた新たな『植魔』。 その姿は《暗黒界の鬼神ケルト》に酷似している。 そしてこのモンスターも全身を植物に支配されている。
「『トウケルト』がこの効果で特殊召喚に成功した時、自身の攻撃力を500ポイントアップする!」
《植魔鬼神 トウケルト》 ☆6 ATK/2400→2900
『おぉっと! ここで上級モンスターの攻撃力が遊日選手のモンスターの攻撃力を上回ったぁー!!』
「伏せカードが怖いが……ここはバトル! 『トウケルト』で『スーパーモンク』を攻撃!」
僅かに勝った攻撃力、鬼神の一撃が僧兵を吹き飛ばす。
遊日:LP4000→3900
「くっ!」
「これでバトルフェイズを終了ーー」
「バトルフェイズ終了時、トラップ発動!」
「このタイミングでか!?」
「トラップカード、《鎮魂の石碑》! このカードは自分の『L・HERO』が戦闘で破壊されたターンのバトルフェイズ終了時に、そのモンスターよりレベルが2つ下で同じ種族の『L・HERO』をデッキから特殊召喚する!」
破壊された『スーパーモンク』は戦士族、そしてレベルは6。 ここで呼べ出されるのはレベル4の戦士族だ。
「こい、《L・HERO ミニマムナイト》」
《L・HERO ミニマムナイト》 ☆4 DEF/1800
「また新しいモンスターが……まぁいい。 カードを1枚セットしてターン終了だ」
武光:LP4000 手札2枚 伏せ1枚
『いよいよ崩れ始めた均衡! ここからは殴り合いとなるのかぁ〜!?』
遊日:LP3900 手札2枚 伏せ1枚
「よぉし……ドロー!」
ドローしたカードを確認し、遊日は笑う。 その様子を見て武光は確信する、一気に仕掛けてくると。 そしてスタンバイフェイズに表側の『ミニマムナイト』に『寄生カウンター』が1つ乗る。
「そろそろてめぇにも、ギャラリーにも盛り上がってもらうぜ!」
「ふぅん、じゃあこいや!」
「まずは裏側のモンスターをリバース!」
《L・HERO ビギナーズソーサレス》 ☆4 ATK/900
ここで表側に変更するのは攻撃力の低い『ビギナーズソーサレス』、ここからエクシーズ召喚でも行うのか? 残念ながらそれはNO。 遊日のデッキにはエクシーズモンスターは存在しない。 ならば一体何を? 決まっている。
「そして魔法カード、《ネクストジェネレーション》を発動!」
それは遊日がドローしたカード。 このカードは『L・HERO』を回す上で非常に重要なカードだ。
「自分フィールドの『L・HERO』を1体デッキに戻し、そのモンスターよりもレベルが2つ上で同じ種族の『L・HERO』をデッキから特殊召喚する!」
「《レベルアップ!》のようなカードか!」
「そしてこの時、デッキに戻したモンスターによる特殊召喚として扱う!!」
「何だと!?」
即ち、『L・HERO』の進化をその場で行えるカード。 デッキに戻してしまうのもそうだが、デッキからでなければ特殊召喚は出来ない。 だが次のターンを待たずにその場で進化出来るのはとても重要なことだ。
「これで『ビギナーズソーサレス』をデッキに戻し、『ミラージュソーサレス』を特殊召喚!」
《L・HERO ミラージュソーサレス》 ☆6 ATK/2200
「発動したこのカードは墓地には行かずデッキに戻るが……『ビギナーズソーサレス』の効果での特殊召喚扱いの為……『ミラージュソーサレス』の効果が発動可能! デッキの魔法カードを手札に加える!」
「それちょっとズルくね!?」
「これで手札に加えるのは……『ネクストジェネレーション』だ」
『おぉっと! ここでもう一度発動し、再び上級モンスターを呼ぶつもりだぁ!!』
「もういっちょ《ネクストジェネレーション》を発動!」
店長の言う通り、遊日は戻したカードを再び発動させる。 今度の対象は『ミニマムナイト』だ。
「『ミニマムナイト』をデッキに戻し、デッキからこい!」
《L・HERO パラディンガード》 ☆6 ATK/2300
『ここに上級『L・HERO』が2体出たぁ!!』
「《ネクストジェネレーション》のデッキに戻る効果はデュエル中に1度しか適応できない。 よって墓地送りだ」
「2体の上級『L・HERO』か……だが攻撃は『トウケルト』よりも下だぜ?」
「へっへぇ〜ん! これならどうよ!」
遊日は残りの手札からカードを1枚手に取る。 上級モンスターが揃った今、発動されるのはもちろん……
「魔法カード、《ヒーロー・タッグアタック》を発動!」
……《融合》ではなかった。
「自分フィールドの2体の『L・HERO』を選択し、その内の1体の攻撃をこのターン封じ、そう1体のモンスターにその攻撃力を加える!」
「パンプアップか!」
「これで『ミラージュソーサレス』の攻撃力を『パラディンガード』に加える!」
《L・HERO パラディンガード》 ATK/2300→4500
『ここで一気にパワーアップ! 攻撃は神をも超えたぁー!!』
「バトル! パワーアップした『パラディンガード』で『トウケルト』を攻撃!」
『ミラージュソーサレス』の詠唱により『パラディンガード』の持つ盾に霧が纏われる。 そしてその霧が盾に強化を施し、霧が消えた時には紫の光が盾を包んでいる。 そしてその盾を前に構え『トウケルト』に向かって突進をかます。 当然『トウケルト』は破壊され、超過ダメージが武光を襲う。
「ぐぉっ!!」
武光:LP4000→2400
『ここで1600のダメージ! これは少々貰いすぎたかぁー!?』
だが武光は抜け目がない。 しっかりとフィールドに伏せられていたカードを発動していた。
「トラップカード、《飛沫寄生》を発動させてもらった!」
カードの発動はしっかりと宣言しましょう。
「自分フィールドの『植魔』が破壊された時、相手フィールドの全モンスターに『寄生カウンター』を1つ乗せる」
「むっ……」
これで遊日のモンスターが再び寄生され植物としても扱うことに。 これでは《フレグランスストーム》のようなカードに利用されてしまうことはすぐに理解した。
「……ターンエンドだ」
遊日:LP3900 手札1枚 伏せ1枚
ここで融合を行っていればカウンターも無くすことが出来たのだが、生憎ながら遊日の手札には《融合》はない。 このままターンを渡してしまう。
武光:LP2400 手札3枚
「やってくれたなぁ……ドロー!」
武光もまたドローしたカード確認し笑う。 どうやらこのターンは激しい動きがありそうだ。
『遊日選手のフィールドには上級モンスターが2体! 対して武光選手のフィールドは永続魔法のみ! 手札4枚からどのような逆転をするのかぁ!?』
「さて……そろそろ『植魔』の真骨頂を見せるとするか!」
「真骨頂……?」
武光は手札から2枚のカードを手に取る。 それはどちらもモンスターカード。
「さっき言ったよな、『植魔』は『寄生カウンター』が乗っているモンスターをリリースして特殊召喚出来るって」
「あぁ、だがお前のフィールドには……ーーはっ!!」
そう、武光は言った。「フィールドの『寄生カウンター』が乗っているモンスター」と。 それ即ち
「気付いたところでもう遅い! お前のモンスター2体リリースし、手札の『植魔』を2体特殊召喚する! 現れよ、2体の『植魔』よ!」
《植魔武神 オウゴルド》 ☆5 ATK/2300
《植魔軍神 ギンシルバ》 ☆5 ATK/2300
『ここここ今度は武光選手が上級モンスターを展開したぁー!! しかも遊日選手のモンスターを使っての特殊召喚! 今度は反対に遊日選手のフィールドががら空きだぁ!!』
『オオオオオオォォォォォォォ!!』
繰り広げられる召喚の応酬に周りのギャラリーは大盛り上がりだ。 だが反対に遊日は危機感からか恐ろしいほど静か。
「さぁて、このままバトルフェイズに入れば俺の勝ちなんだが?」
「……く、くそ……」
そしてバトルフェイズに入ろうとした瞬間、遊日がリバースカードを発動させる。
「……なぁんちゃって! こいつは想定内よ!」
「うげっ! この真ゲスゥ!」
「おかげで伏せが腐らずに済んだぜ! リバースカード、《
それは最初のターンから伏せられていたカード。 だがその名に融合を冠している、この状況で融合を行おうというのか?
「オイオイおいおい! 『融合』だと? フィールドにも手札にもモンスターが2体存在しないのに融合召喚しよってのかぁ?」
「へ、こいつは融合召喚を行っていないターンに自分フィールドのモンスターが2体以上墓地に送られた時、そのモンスター達をフィールドに特殊召喚して融合を行う!」
「何!? フィールドにモンスターを戻して融合だと!?」
墓地に送られたのは戦士族の『パラディンガード』と魔法使い族の『ミラージュソーサレス』。 この2体で呼び出される融合モンスターとは……
「お前がリリースした2体の『L・HERO』をフィールドに戻し、融合! 現れよ、《L・HERO ミラクルソード》!」
《L・HERO ミラクルソード》 ☆6 ATK/2400
『ミラクルソード』は融合素材に戦士族と魔法使い族を要求するモンスター、この組み合わせでも召喚可能!
『融合モンスター! 融合モンスター! 『HERO』と言えば融合召喚! ついにエクストラデッキからモンスターが現れたぁ!!!』
「『ミラクルソード』は俺の墓地の魔法カードの数だけその攻撃力を200ポイントアップさせる」
遊日の墓地には《ネクストジェネレーション》、《ヒーロー・タッグアタック》、そして速攻魔法である《再誕融合》の3枚。 よってその攻撃力は600ポイントアップする。
《L・HERO ミラクルソード》 ATK/2400→3000
これでその攻撃力は3000、ここからこのモンスターを倒すには新たなモンスターを呼ぶか魔法を発動せざるをえない。 だのに武光は驚くほど冷静で、寧ろ現れた融合モンスターに喜んでいる。
「……くっくっくっ、流石だぜ! お前ならきっとそうしてくれるって信じてたぜ!」
「はっ、俺は常に常識を置き去りにしてんだよ! お前も常識を置いて来い!」
「あぁ! 見せてやるよ、お前に俺のフェイバリットを!!」
武光は手札のモンスター1枚を手に取る。 恐らくそのモンスターこそがフェイバリットなのだろう。
「このモンスターはフィールドの攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースすることで特殊召喚出来る!」
「なっ! ……この召喚方法はッ!!」
もちろんこのターン通常召喚は行ってないが、ここは浪漫を大事にしているのだろう。
「闇に彷徨う銀河よ、今2つの光に導かれ新たな僕となれ! 《
《銀河眼の連星竜》 ☆8 ATK/3000
現れたのはギャラクシーアイズモンスター。 黄道の光を放ち、球体状の光の球が両手の手のひらに収まるように浮いている。 そしてその見た目は《
『ななな何と! 『ギャラクシーアイズ』が現れたぁ!!?』
「……ギャラクシーアイズ……だと!?」
「ふへへ、折角のクリエイトシステム、こういう風にも使わないとな!」
「なる……だから『ギャラクシーアイズ』なのか」
遊日は知っている、この武光と言うデュエリストは『暗黒界』や『DD』と言った悪魔族を好むが、何故かフェイバリットモンスターは決まって『ギャラクシーアイズ』なのだ。 とくに『フォトン・ドラゴン』が一番お気に入りであることも遊日は知っている。 だからこの場において納得出来たのは遊日だけなのだ。
「さぁ〜て、見せてやるよ『バイナリースター』の力を! 『バイナリースター』は1ターンに1度、メインフェイズ1に相手モンスター1体と共にフィールドから除外する!」
「何!? 除外効果をメインフェイズに!?」
『バイナリースター』の右手の球体が『バイナリースター』を、左手の球体が遊日の『ミラクルソード』を光で包む。 すると2体のモンスターは粒子となってフィールドから消える。
「この効果を発動した次のターンからバトルフェイズを行った時、バトルフェイズ開始時に効果を発動しフィールドに戻る」
「……バトルフェイズ開始時に?」
「俺はカードを1枚セットしてターン終了だ」
武光:LP2400 手札0枚 伏せ1枚
『このターンまさかの『リメイクカード』を出した武光選手! だが呼び出された『ギャラクシーアイズ』は遊日選手のモンスターと共に遥か彼方の時空へ消えてしまった! ここからどうするぅ!?』
遊日:LP3900 手札1枚
「ドロー! よく分かんねえがバトルフェイズに入ればいいんだろ?」
遊日は今ドローしたカードを確認する。 ドローしたのは速攻魔法カード《孤軍奮闘の逸話》。 このカードは自分フィールドに『L・HERO』融合モンスターが1体のみ存在する時、そのモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる効果を持つ。 しかもこの時相手モンスターを破壊すれば追加で攻撃が可能になる。 このままバトルフェイズに入れば勝利は確定だと確信した。 だがその確信はコトデュエルにおいては不十分である。
「バトルフェイズに入るぜ!」
「ならバトルフェイズに入った瞬間、『バイナリースター』の効果が発動! 自身の効果で除外したモンスターをその時の持ち主のフィールドに戻す!」
フィールドに戻す効果は特殊召喚扱いとはならない。 よって融合召喚以外で特殊召喚されない『L・HERO』融合モンスターは無事フィールドに戻ってくる。 だがそれだけでは効果は終わらない。
「そしてこの効果で除外していたモンスターの攻撃力は元々の攻撃力の倍の数値となり、このまま2体のモンスターで戦闘を行いダメージ計算を行う!!」
「何ぃ〜!?
カード効果でダメージ計算を行うカードの例として《イクイップ・シュート》がある。 このカードは装備カードを相手に装備させることで強制的に戦闘を行わせる。 これらの利点としてはまず『
《銀河眼の連星竜》 ☆8 ATK/3000→6000
《L・HERO ミラクルソード》 ☆6 ATK/2400→4800
「撃ち砕け、『バイナリースター』!」
「うおぉぉぉ!!」
遊日:LP3900→2700
『ギャラクシーアイズ』から放たれる光の咆哮が『ミラクルソード』をかき消す。 いくら攻撃力が倍になろうと、元々の攻撃力が下回ってるのであれば意味はない。 それどころか本来受けるはずのダメージよりも多く受けてしまった。
『これでは攻撃力3000未満のモンスターは全て『バイナリースター・ドラゴン』の餌食だぁ!! 果たして遊日選手に打つ手はあるのかぁー!?』
「くそっ……ったれめ……」
遊日のデッキは基本的にステータス自体は低いモンスターばかりだ。 効果による強化によって強力なモンスターを撃破してきたが、今回ばかりは相性が悪い。 そして次の攻撃でライフが0になるため焦らずにはいられない。
「モンスターをセットしてターン終了だ……」
遊日:LP2700 手札1枚
遊日のフィールドに伏せられたモンスター、だがそれは強大な『バイナリースター』の前には小さなアリも同然。 苦し紛れの一手でしかない。
武光:LP2400 手札0枚 伏せ1枚
「一気に行くぜ、ドロー!」
武光はドローしたカードを確認すると即座にメインフェイズに入り発動する。
「魔法カード、《無意味の証明》を発動! このターン自分のレベル7以上のモンスターが守備モンスターを攻撃する時、超過ダメージを与える!」
「貫通付与か!」
「そしてこの効果でダメージを与えた場合、次のターン相手は召喚、特殊召喚を行えない」
「《クリムゾン・ブレーダー》のような効果だと!? インチキ効果も大概にしろ!」
確かに強力な効果だが、説明していないデメリットもある。 それは次のターン終了時までの自身の召喚行為を封じる効果だ。 おかげで遊日は『バイナリースター』の攻撃だけで済む。
「バトルフェイズ! 『バイナリースター』でセットモンスターを攻撃だ!」
「……っ!」
《L・HERO チキンナイフ》 DEF/1200
伏せられていたのは『チキンナイフ』。 だが『ミニマムナイト』と違って破壊耐性などないこのモンスターは呆気なく破壊されてしまう。
遊日:LP2700→900
「うおおおぉぉ!!」
「この瞬間《無意味の証明》の効果適応! 次のターンの召喚、特殊召喚を封じる!」
『あぁーっと! 無残にも破壊されてしまう遊日選手のモンスター! これで次のターンモンスターをセットするしかなくなったー!! 絶対絶命!!』
召喚と特殊召喚が封じられると言ってもモンスターのセット行為は行える。 決してまだ勝機がなくなった訳ではない。 だが誰がどう見ても遊日の圧倒的劣勢、周りの観客達も勝負の行方が分かってしまいテンションが下がる。 もちろん遊月が気にかけていた女性も……
この女性はこの晴天の中黒いフードを深く被り、その黒い長髪の隙間からデュエルを見ていた。 背丈は低くまだ成人しきっていない印象を受ける。 そしてその腕には隠すようにデュエルディスクが装着されている。
女性は勝敗を既に見極め、そのまま立ち去ろうとしていた。 だが……
「これでターンは終わりだ。 次のターン何しようが無駄だぜ」
「無駄……? 無意味……? 舐めんじゃあねぇ!」
まだ諦めていない遊日の気迫に思わず目を開く。 そして立ち去ろうとしていた足は止まった。
「次のターンにだとぉ? 悠長なこと言ってくれるじゃあねえか! だったらよぉ……『今』呼べばいいんだろ!!」
「何!?」
『!?』
『ななな何っー!?』
誰もが驚くその中、遊日は逆転の一手を『
「墓地の《再誕融合》の効果!」
「俺のターン終了時にだと!?」
「相手ターンに自分のモンスターが破壊された場合のターン終了時、このカードを墓地から除外する! そして墓地の融合モンスターを召喚制限を無視して特殊召喚する!!」
「しまっ……!?」
《L・HERO ミラクルソード》 ☆6 ATK/2400→2800
墓地の魔法カードは2枚、よってパワーアップは僅か400。 だが再誕した『ミラクルソード』に全員目を奪われる。 あの圧倒的劣勢の状況で、まさか融合モンスターが復活するなど誰も予想していなかった。 そして誰もが思う、まだ勝負は分からないと。
武光:LP2400 手札0枚 伏せ1枚
遊日:LP900 手札1枚
「俺のターン、《再誕融合》のデメリット効果でこのターンドローを行えない!」
「スタンバイフェイズに『ミラクルソード』に『寄生カウンター』が一つ乗る……だが……その手札は……」
「そうだ! 融合モンスターサポートだ! 魔法カード、《孤軍奮闘の逸話》を発動! 『ミラクルソード』の攻撃力を1000ポイントアップさせ、さらにこのターンモンスターを戦闘で破壊したら追加の攻撃権を得る!」
《L・HERO ミラクルソード》 ATK/2800→3800→4000
これで墓地の魔法カードが増えたことで攻撃力は4000。 『バイナリースター』を超えた。
『うおおおお! ここで攻撃力が超えたー!! これがヒーロー! 何度だって逆境から立ち上がるその姿は何時だって我々の心を奪った! そして今このデュエルの勝利すらも奪うのかぁー!?』
周りの観客達も歓声を上げ、このデュエルを楽しんでいる。 今この瞬間だけ、ここは小さな頂上決戦の場と化す。
「行け! 『ミラクルソード』で『バイナリースター』を攻撃!」
「……流石だ遊日、流石は俺が認める『デュエルジャンキー』……」
武光は遊日に賛辞を送る。 そしてフィールドに伏せられていたのカードを発動させる。
「だが勝つのは俺だ! リバースカードオープン!」
「なっ!?」
「トラップカード、《パラサイトパワーショック》を発動! 相手モンスターが自分モンスターに攻撃宣言を行った時、攻撃してきたモンスターに乗っている『寄生カウンター』を全て取り除き、攻撃力を1000ポイントダウンさせる!」
「パワーダウン!?」
《L・HERO ミラクルソード》 ATK/4000→3000
「そして攻撃を受けた自分のモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!」
《銀河眼の連星竜》 ATK/3000→4000
『ここでまさかの攻撃力が変動!! 入れ替わるように攻撃力の形勢が逆転したぁー!!!』
「やろ……くそ……」
「『バイナリースター』の反撃! これで終わりだ!」
遊日:LP900→0
『バイナリースター』の咆哮が『ミラクルソード』を再び消し去る。 遊日は悔しそうに眼を閉じ、そのダメージを静かにくらった。 少しの静寂ののち、店長が最後の実況をする。
『決着っー! 最後の最後まで結果が見えなかったこのデュエル、勝ったのは武光選手だー!』
『ワアアアアア!!』
悔しそうにしている遊日と満足そうに笑っている武光に、観客達は二人に感謝を言い始める。
『ありがとう! すげえデュエルだったぜ!』
『『ギャラクシーアイズ』の兄ちゃん凄かったぜ!』
『ヒーローのお兄さんも最後までよくやった!』
そんな歓声を受けたら、いつまでもうだうだしていられなくなる。 遊日は笑ってそれに答えた。 そして近づいてきた武光に言う。
「次は俺が勝つからな」
再戦、そして勝利の宣言。 それを武光は笑いながら返す。
「いやいや、次も俺が勝つ」
どちらもこのデュエルを楽しんだ。 だからこそ次のデュエル、必ず勝つからなという決心する。
「…………」
そんな二人に、遊日に近づくは黒フードの女性。 その黄色の目で遊日を見る。 そしてフードの下に隠していたデュエルディスクを取り出し、遊日に静かな声で言う。
「……私とデュエルして」
この女性が何故遊日にデュエルを挑むのか? それはまだ分からない……
突然現れた女性は一体誰なんでしょうね? フード被ってるとか暑そう……
まぁでもヒロインの予定なんでね、可愛い女の子だと思って下さい。
あ、主人公の黒星は普通に起こることなので予め御了承下さい。
今回の『植魔』は『暗黒界』をリメイクしてゲテモノにしたカテゴリーです。 ……アニメの『TG』が二つの種族持ちなんだからコンマイもこういうカード出してくれよなぁ……
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。