オリカだけでデュエルするとこうなる   作:ほったいもいづんな

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お、クソ設定が生まれたぞ。(熱い自虐)

今回は遊月のデュエルです。 何せ今作は遊日と遊月のダブル主人公だからね! バランスは取らないと。(割に合わない)


境界を歪める混沌VS恐怖を纏う猛犬

 新時家はマンションの9階に住んでいる。 そして隣の部屋に住んでいる「常衣(じょうえ)家」は昔からの付き合いがある。 そしてそれは今でも続いている。

 

「前夜祭?」

「あぁ、お前も来ないか? 『優美(ゆうみ)』」

「いいの!? ユー君!」

 

『常衣 優美』、年は遊日と同い年。 髪はショートの黒、頭にウサギの耳を想起させるリボン。 身長は小さめで遊日の胸元までしかない。 遊月のことは名前で呼ぶが、遊日のことは「ユー君」と呼ぶ。 デュエルは嗜む程度でそれほど詳しくはないアニメ勢である。

 

「あ、一応それらしい格好しとけよ? 別にドレス着てこいって訳じゃあないから」

「はーい!」

 

 優美の部屋で前夜祭についての説明をしている。 前夜祭が行われるのは三日後の金曜の夜。 そこで料理が振舞われたり主催者の挨拶があったり、エキシビションマッチが行われる。 そして肝心な大会本線の内容が明かされるのだ。 決して欠席はしてはならない。

 

「エキシビションマッチかぁ……ユー君がやるの?」

「いや、その場で発表するらしい。 俺になるかは分からねえな」

「そっかぁ……。 ね、最近のデュエルの調子はどうなの?」

「うーん……それがそんなによくもねぇんだ」

 

 思い起こされるこれまでのデュエル。 遊月には1度勝ってはいるが、その後は全て黒星。 ルカとのデュエルは勝利したが武光とのデュエルでは再び黒星。 その後に現れた女性にも黒星を付けられた。 これだけで黒星の方が多いのが明らかになる。

 

「そうなんだぁ……でも大丈夫! ユー君は強いから!」

「……そうだな、俺は強い!」

「デュエル『は』凄いんだから、もっと堂々とね?」

「……その『は』ってのは見逃さないぞ? この優美〜」

「きゃー! くすぐったい〜! もう、くすぐりは駄目ぇ〜!」

 

 今日の遊日は珍しくデュエルをすることなく、優美と楽しく過ごしていた。 ……くたばれリア充!!

 

 

 

 

 

 

 遊月は一人町を歩いていた。 現在時刻は夜8時、夕飯を外で済ませそろそろ帰路に着こうとしていた時だった。 大きい道から外れた路地裏に、デュエルディスクを持った小さな子どもがいるのが見えた。 あとついでにガラの悪そうな男が数名。 兄弟家族には見えないその見てくれは明らかに不良やチンピラのそれと同じ、なら子どもは明らかに絡まれているのだとすぐに気付く。

 

「だからさぁ〜そのデュエルディスクを俺たちに貸してくれって〜ちょっと、ちょ〜〜っと借りるだけだからさ! な!」

「…………やだ」

「いいじゃんよ〜だってそれは世界で超貴重なレアアイテムなんだぜ? な、いいだろ?」

 

 恐らく男達は子どもからデュエルディスクを奪うつもりなのだろう。 デュエルディスクは世界に判明しているだけで約50個しか存在が明らかになっていない。 当然『それなり』の所で取り引きに出せば確実に大金が積まれる。 単純な金稼ぎ、それがこの男達の目的だろう。

 

「はぁ……面倒だがしかたない」

 

 遊月は別に子どもが絡まれているのは気にしていない。 ただここでデュエルディスクが転売されて、その結果大会が中止になるのが嫌だからしかた無しに子どもを助けに行くのだ。 遊月はデュエルディスクを起動し、《混沌異次幻界(カオス・ネクロディメンジョン)ノガルド・ドラゴン》を召喚する。

 

「おいお前ら、そんなにデュエルがしたいのなら俺が相手をしてやる」

「はっ? 何言ってだおまーーヒィ!?」

「ばばば化け物!?」

 

 遊月が立っている位置はちょうど町の明かりがバックになっていて『ノガルド・ドラゴン』の不気味さを際立たせていた。 それを見た男達は一瞬で顔を青ざめ逃走していく。

 

「うぎゃぁぁ! ごめんなさ〜い!!」

「ひぃぃぃぃ!!」

「まったく……遊戯王舐めんな」

 

 遊月は男達が消えたのを確認するとデュエルディスクを止めて子どもに歩み寄る。 子どもはブカブカの大きなジャージを着ている。 長すぎる袖は子どもの手を隠し、デカすぎる丈は子どもの膝下まである。 髪は日本では珍しい紫とピンクのグラデーションが入った色。 神秘的なその髪色はまるでアニメか漫画のキャラのようだ。 髪は短めだが後ろに長い三つ編みが1本ある。

 

(……このガキ……確かリストに載ってた子どもデュエリストの一人だったか)

「…………」

「おい、ケガはないか?」

「…………」(頷き)

 

 子どもは言葉を発さずにただ頷くのみ。 何とも不思議な子どもだと思っていたら後ろから小さな拍手の音が遊月の耳に聞こえた。

 

「カッコよかった……ですよ?」

「……あ?」

 

 振り返るとそこにいたのは女性。 だが一目で分かる、日本人ではないことに。 美しいブランドヘアー、少し白い肌、顔の造形、それらは確実に目の前の女性が外国からやってきたのだと教えてくれている。 そして女性は季節外れのコートを着ている。

 

「ワタシも助けようとは……したんですけど……あなたが来たので任せちゃいました」

「……そうかい」

「あ、ワタシの名前は『メリア』、です。 ドイツからやってきました」

「そうかい……俺は遊月ってんだ。 このガキは知らん」

「…………」

 

 遊月が自分の名を名乗るとメリアは子どもの方に歩み寄り腰を落として名前を聞く。

 

「ワタシは……メリア、です。 アー……あなたの名前を、教えてくれませんか?」

「…………」

 

 子どもはメリアの問いかけから5秒ほど間を空けて口を開く。

 

「…………『イオン』、『イオン・ビー』」

「イオン、ですね。 よろしく、です」

「…………」(頷き)

 

 子どもの名前はイオン。 イオンは自分の名を名乗った後はまた無口になる。 だがメリアは話し続ける。

 

「イオンもデュエルディスク……持っているんですね。 ワタシと……お揃い、デスね」

「お前も持っているのか」

「ハイ! ここに、隠してありますよ!」

 

 メリアはコートの内からデュエルディスクを取り出す。

 

「どうですカ? せっかくの……ゴエン? ですので……デュエル、しましよう!」

「…………デュエルか」

 

 遊月は考えている、この女性に手の内を明かすのは別にいいとして、隠れてこちらの動きを見てくる奴がいないとも限らない。 手の内を明かすことに若干の抵抗があった。 だが、逆に向かうの手の内を見ることが出来るのだからプラマイゼロ、むしろプラスの方が大きい可能性も大いにある。 思考の末、遊月は二つ返事で承諾する。

 

「やった……! なら向こうに大きな公園がありました。 そこでやりましょう!」

 

 そういうとメリアはイオンと手を繋ぎながら歩き出す。 イオンはされるがままに歩き始める。

 

「おいおい、そのガキも連れて行くのか?」

「ユウゲツ、ヒドイです。 こんな子どもを一人で放っておくなんて、オニです、アクマです」

「……まぁいいか」

「それでは行きましょう!」

「…………」

 

 確かに放置していれば同じような輩にまた絡まれるのは目に見えている。 ならせめて大きな場所に連れて行けばそういうのはなくなり、イオンも無事に帰れるだろうと思うことにした。

 

「ギャラリーが増えるのは……好きじゃないんだからなぁ……」

 

 そんな遊月の言葉はウキウキと歩いているメリアには届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、始めましょう!」

「あぁ」

「イオンー! 応援、お願いしますねー!」

「…………」

 

 公園の中で向き合う二人。 イオンは側にあるベンチにちょこんと座っている。 周りにはあまり人はいない。 綺麗な月が二人のみを照らしている。

 

『デュエル!!』

 

 始まったデュエル、ルールはライフ4000の大会ルール。 先攻をとったのは遊月。

 

「まずは魔法、《外界への通行税》を発動。 このカードの発動の為に手札を3枚まで除外する。 除外する枚数は3枚だ」

「オゥ……いきなり手札を除外……」

「除外した枚数によって効果が変わる。 3枚除外した場合はデッキからレベル7以上の『異次幻界』を手札に加える」

「除外した枚数で、加えるモンスターのレベルが違うのですか」

「その通りだ。 俺が加えるのはレベル8の《異次幻界 トサーブ・ビースト》」

 

『異次幻界』モンスターは全て通常召喚が行えず、召喚のためには除外されている『異次幻界』を墓地に送らなければならない。 一見アド損のように見えるカードは遊月のデッキにおいて非常に重要なカードなのだ。

 

「そして除外されている3体の『異次幻界』モンスターを墓地に送り、『トサーブ・ビースト』を特殊召喚!」

 

 《異次幻界 トサーブ・ビースト》 ☆8 ATK/2900

 

 現れた最上級の『異次幻界』は獣を模したモンスター。 だがやはり所々に奇妙な斑点が見られる不気味なデザインだ。

 

「除外した手札全部がモンスター……ンー?」

「説明してやろうか?」

「あ、分かりました。 そのモンスターは召喚のために除外されているモンスターをコストにするんですね。 だからアドバンテージを損、しているように見せかけて、実は得しているのですね?」

「……ご明察。 中々の観察力だ」

 

 一瞬で遊月のデッキを理解するメリア。 見かけによらず中々鋭い。 その洞察力に驚きながら遊月はデュエルを続ける。

 

「『トサーブ・ビースト』は相手のカード効果の対象にならない。 そして破壊された場合、墓地から自身を含む『異次幻界』を4枚除外することでデッキから合計レベルが8になるように『異次幻界』モンスターを手札に加える」

「オォ……対象にならず、破壊されたらサーチ……強力なモンスターですね」

「俺はこれでターン終了だ」

 

 遊月:LP4000 手札1枚

 

 遊月のフィールドにはレベル8のモンスターが1体、そして手札はたったの1枚。 『トサーブ・ビースト』は強力だが、そもそもカードを除外するギミックが無ければ意味がなかった。 そして除外したのも全てモンスター、とどのつまり遊月の手札は滅茶苦茶事故ってたのである!

 

「…………」

 

 一方イオンは静かにデュエルを見ていた。 行儀よく、二人のデュエルを観察している。

 

 TURN2 メリア:LP4000 手札5枚

 

「ワタシのターンです、ドロー!」

 

 ドローしたカードを確認しつつメリアは遊月のモンスターを見る。 そしてその見てくれに文句を言う。

 

「アー、ユウゲツのモンスターは……とても、コワいです。 いけません」

「……そうか?」

「イオンも、そう思いますよね?」

「…………」

「ほら! イオンもそう思ってます!」

「いやあいつ今何の反応もしなかったぞ?」

「だ・か・ら、もっと可愛いモンスターを呼びましょう!」

「あ、ダメだこいつ。 俺が苦手なタイプだ」

 

 どうやら彼女の性格は遊月には相性が悪いようだ。 話を聞かないというか、聞く耳を持たないというか。 とにかく遊月はそういう性格の人間が苦手だ。 だったら黙っているイオンの方が幾分かマシである。 そんな遊月の気持ちなぞメリアに伝わるはずもなく、彼女はカードを発動する。

 

「ワタシはマジックカード、《アームドロー》を発動です。 手札の装備魔法をコストにカードを2ドローです!」

「装備魔法? 『D(ディフォーマー)』や『ヴァイロン』のようなデッキなのか……?」

 

 装備魔法は本当に様々な効果を持ったカードが多い。 ステータスに干渉する効果、プレイヤーに干渉する効果、その多種多様な効果は今でも1キルなどで活用されることも珍しくはない。

 

「それでハ、ワタシの可愛いモンスター、《ドレッドファミリー・ブラックレンズドッグ》を召喚です!」

 

 《ドレッドファミリー・ブラックレンズドッグ》 ☆3 ATK/1400

 

 召喚されたモンスターは、一言で言えば犬である。 全身が黒い毛で覆われており、名前の通り黒縁の片眼鏡を右眼に付けている。 そして何故か銃のホルスターのような物が身体についていた。

 

「……犬?」

「はい、可愛いですよね! イオンもソウ、思いませんか?」

「…………」

「イオンは分かってマス! それでは召喚時に『ブラックレンズドッグ』の効果発動です。 手札・墓地から『獣火器(ワイルドトリガー)』を装備します」

「召喚時にモンスター効果で装備するだと!?」

「ワタシは先ほど墓地に送った《獣火器(ワイルドトリガー)・トゥガンズ》を装備します!」

 

 墓地から装備するのは2丁の拳銃。 『ブラックレンズドッグ』のガンホルスターにそれらが収まる。 銃を装備したからか黒犬は猟犬へと変わり、本物の狩猟者になる。

 

「『トゥガンズ』を装備したモンスターの攻撃力は500ポイントアップします。 そして、戦闘・効果破壊の身代わりになれます」

 

 《ドレッドファミリー・ブラックレンズドッグ》 ATK/1400→1900

 

 攻撃力上昇と破壊の身代わり効果。 だが遊月のモンスターには届かない。

 

「さぁ……ここからがワタシのデッキの……アー、本領……ハッキです!」

「何……?」

「『トゥガンズ』のさらなる効果! 装備されているこのカードを、レベル3のチューナーとして、装備モンスターとシンクロ召喚を行えます!」

「装備カードとシンクロ!?」

「…………!」

「レベル3の『ブラックレンズドッグ』にレベル3扱いの『トゥガンズ』をチューニング!」

 

 まさかの装備魔法とのシンクロ、これには無口のイオンもびっくりして口を開けている。

 

「硝煙香る戦場を駆け抜ける猛犬よ、縦横無尽に駆け巡り撃鉄を起こせ! シンクロ召喚!

 現れよ、《ドレッドファミリー・ブラックブレット》!」

 

 《ドレッドファミリー・ブラックブレット》 ☆6 ATK/2400

 

 シンクロによって呼び出されたモンスターは獣人。 全身スーツ、見える体毛は黒、そして黒縁の片眼鏡。 どうやら『ブラックレンズドッグ』が人の形になった姿のようだ。

 

「『ブラックブレット』の効果発動デス。 ワタシの墓地の『獣火器』を2枚まで装備出来ます。 ワタシは『トゥガンズ』を装備します」

 

 《ドレッドファミリー・ブラックブレット》 ATK/2400→2900

 

 黒の獣人が2丁の拳銃を構える。 これで攻撃力は『トサーブ・ビースト』と互角。 だがメリアは手を緩めない。

 

「まだデスよ。 ワタシはマジックカード、《招集の犬笛》を発動します。 ワタシのフィールドにレベル5以上の『ドレッドファミリー』が存在する時、手札の『ドレッドファミリー』を特殊召喚デス!」

「さらにモンスターを呼ぶというのか!」

「来てくだサイ! 《ドレッドファミリー・ホワイトレンズドッグ》!」

 

 《ドレッドファミリー・ホワイトレンズドッグ》 ☆2 ATK/600

 

 新たに召喚されたのは白い毛並みの犬。 そして今度は白縁の片眼鏡をかけている。 そして今度はホルスターではなく背中に何かを取り付けられるであろうベルトが。

 

「『ホワイトレンズドッグ』が特殊召喚に成功した時、手札・墓地の『銃火器』を装備しマス。 ワタシは手札から《獣火器・サイレントライフル》を装備デス!」

「また装備魔法を……」

「『サイレントライフル』を装備したモンスターはダイレクトアタックが可能になります。 そして同じ身代わり効果も」

 

 そしてこのカードも『獣火器』カード、当然『トゥガンズ』と同じ効果であり……

 

「そして、『サイレントライフル』もレベル3のチューナーとして、装備モンスターとシンクロ出来ますヨ!」

「くっ……!」

「レベル2の『ホワイトレンズドッグ』にレベル3扱いの『サイレントライフル』をチューニング!

 硝煙香る戦場を見下ろす猛犬よ、撃鉄を起こし沈黙を撃ち込め! シンクロ召喚! 現れよ、《ドレッドファミリー・ホワイトブレット》!!」

 

 《ドレッドファミリー・ホワイトブレット》 ☆5 ATK/2000

 

 新たな獣人は白。 そして『ブラックブレット』と同じスーツを着ている。 多分シンクロモンスターの『ドレッドファミリー』は皆スーツを着用しているのだろう。 まるでマフィアか何かだ。

 

「『ホワイトブレット』もシンクロ召喚に成功した場合、墓地の『獣火器』を1枚装備出来ます。 ワタシは『サイレントライフル』を装備デス」

「手札を4枚消費してフィールドにカードが4枚……」

 

 別段、今の遊戯王において手札が逆に増えたりカード1枚からフィールドが埋まるなんてのは珍しくはない。 だがメリアはそれらの強カードを使わず、装備魔法を使うことで展開した。 モンスターの消費もたったの2枚、恐るべきデッキである。

 

「それではバトルフェイズに入ります。 『ホワイトブレット』は『サイレントライフル』の効果でダイレクトアタックが可能デスよ! 『ホワイトブレット』でダイレクトアタック!」

「くっ……グッ!?」

 

 遊月:LP4000→2000

 

 ライフル弾が遊月の左肩を撃ち抜く。 思わず手に持っていたカードを落としそうになるも何とか意識を強く保つ。

 

「……アハッ、ユウゲツは……ガンジョウ……ですね?」

「……おいおい、笑うなよ」

 

 痛みに耐える遊月を見てメリアは笑っている。 妖しく楽しく、口元に広げた手を持ってきて笑っている。

 

「まだ耐えられますか? ダメージを与えた『ホワイトブレット』の効果! ダメージを与えたターンのバトルフェイズの間1度だけ、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を半分に出来ます!」

「何だと!?」

「この効果が対象を取らないことくらい……分かりますよネ?」

「……クソッ!」

「『ブラックブレット』で『トサーブ・ビースト』を攻撃デス! そして『ホワイトブレット』の効果で『トサーブ・ビースト』の攻撃力は半分に!!」

 

 《異次幻界 トサーブ・ビースト》 ATK/2900→1450

 

『ホワイトブレット』が放つ凶弾が『トサーブ・ビースト』の肩に突き刺さる。 その一撃で撃ち抜かれた右肩は上がらなくなり、呆気なく『ブラックブレット』に撃ち殺される。

 

 遊月:LP2000→1550

 

「っ……だが破壊された『トサーブ・ビースト』の効果だ! 墓地の『異次幻界』を合計4体除外し、デッキから『エイブ・ビー』、『ムルウォ・ワーム』、『ヨルフレッツブ・バタフライ』を手札に加える」

 

 大きくライフは削られた、だがしっかりと手札を補充する。 デュエルにおいて重要なことの一つが、決して引かないこと。 例えビンチでも決して臆さないことが勝利の一歩となる。

 

「アハッ、まだまだ……イケますね?」

 

 メリアの笑顔はとても妖艶で、それでいて可憐な印象を受ける。 その笑みはまるで天使のようだ。 だが遊月にとってその笑みはまるで舌舐めずりをする死神か悪魔のように見える。

 

「ったく……こんな凶暴そうな女、リストあったっけな……」

 

 遊月はリストに載っていたデュエリストを思い出す。 そしてその中に見た目がメリアに酷似したデュエリストを思い出す。 国籍はドイツ、そして名は……

 

「……なぁメリア」

 

 遊月はここである事に気付く。

 

「お前のフルネーム、まだ聞いてなかったな」

 

 頭の中でもっとも最悪な予感が浮かび上がる。

 

「アァ、そう言えばまだキチンと名乗っていませんでしたネ。 ワタシの名前は『メリア・L(レッヒェルン)・トイフェル』です」

「ーー!!」

 

 ーーーーそれは昔2ちゃんで見た内容だ。 その掲示板は外国のニュースをよく取り扱う。 そんな中でドイツで起こった事件。 ドイツは難民を多く受け入れている。 その規模は100万にも及ぶ年もある。 だがドイツの難民が暮らしているとある村で何百人もの難民が『消える』事件が起きた。 それは一つの村だけでなくいくつかの場所で難民達が突然いなくなる事態に。 しかも消えたのは難民だけでなく元々その村に住んでいた住民までもが『消失』した。

 

 その事件は世界中で報道されたが、1ヶ月も経つと突然その報道がされなくなった。 そのせいで様々な憶測が飛び交い掲示板ではいくつかのスレッドすら立った。 そんなスレの中は様々な意見などで討論されていてが、スレは一つの仮定を立てて終わった。 その理由は事件が起こった時に運良く生き残ったドイツ人から直接聞いた話が投稿されたからだ。 そのドイツ人が言うには、「一人の女軍人が、人間が持てるであろう武器を可能な限り持ち、夜の間に村人を虐殺した」、そうだ。 そしてその情報が出るやいなや2ちゃん民はその情報にその女軍人を調べた。 そして出てきた名前を見て危険を感じたスレ主がすぐに終わらせたのだ。 その女軍人の名前は…………

 

 

「『メリア・L・トイフェル』…………!」

 

 目の前のメリアが名乗ったフルネームと同じなのだ。 その事実に気付いた瞬間、遊月を襲う圧倒的プレッシャー。 目の前で恍惚の笑顔を浮かべている女性は恐るべき経歴を持つ可能性が高い軍人。 遊月の身体は自然に震えていた。

 

「……アラ? どうしました?」

「…………」

「まるで……ネットで犯罪者と書かれていた人物でも見たミタイに……?」

「…………」

「アァ……もしかしてネットの書き込みトカを鵜呑みにしてしまいましたカ? あんなのジョークのカタマリですよ……?」

 

 メリアは理解している、遊月が自分の正体に気付いたことに。 だがメリアにとってそんなことは気にも留めない。 なぜなら大して意味がないからだ。 そもそもメリアが100人を超える難民を殺した証拠などないし、情報源も本当か定かではない。 無論それがネットなら尚更だ。 故に遊月が真実に辿り着いたかどうかは問題ではない。 それにーーいつでも『始末できる』とメリアは確信しているからだ。

 

「……」

「そんな、ワタシに怯えなくてもダイジョーブですよ?」

 

 遊月の身体は震えていた。

 

「……くくく、あはははは!」

「アー……もしかしておかしくなりました?」

「あはは……『()()()』ねぇ……面白れぇなぁ!」

「…………?」

 

 震えは震えでも歓喜の震え。 遊月は実に嬉しそうに笑う。

 

「……もしかして……変態さん……でしたか?」

「そうじゃないさ。 ただ、お前みたいなヤバい奴と限界デュエル出来るんだぜ? とんでもねぇほど……楽しくなってきたのさ!」

 

 遊月はデュエルが好きである。 寝ても覚めても遊戯王ばかりしている。 故に、相手が誰であろうとそのデュエリストと限界までデュエルを楽しむ。 故に相手がどれほど危険な人物であろうと楽しくデュエルをする。 この男も例外なくデュエルバカである。

 

「ウフ……ウフフ……! ユウゲツは、ワタシとまだまだ踊ってくれますか……?」

「あぁ! 社交ダンスだろうがタンゴだろうがワルツだろうが、最後までやりきってやるよ!」

 

 TURN2 メリア:LP4000 手札2枚

 

 TURN3 遊月:LP1550 手札4枚

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 遊月は臆することなくカードをドローする。 その姿にメリアは再び恍惚の笑みを浮かべる。

 

「あぁ……ユウゲツ、貴方はまだ元気イッパイ……何ですね。 ……嬉しいデス……♪」

 

 息を少し荒げる。 そんな姿は遊月にとってはどうでもよく、遊月はただ盤面をひっくり返す準備をしていた。

 

「俺は除外されている『異次幻界』を1体墓地に送り手札から『ムルウォ・ワーム』を特殊召喚!」

 

 《異次幻界 ムルウォ・ワーム》 ☆3 ATK/1600

 

「『ムルウォ・ワーム』の効果発動! 墓地から『異次幻界』モンスターを呼び出す! こい、《異次幻界 ツナ・アント》!」

 

 《異次幻界 ツナ・アント》 ☆2 ATK/1000

 

『ムルウォ・ワーム』の効果で呼び出されたのは新たな『異次幻界』モンスター。 その見た目はアリ、それも最大クラスの大きさを誇るクロオオアリ。 その巨大な姿は思わず嫌悪感を感じてしまったも仕方ない。

 

「……どうして攻撃力が高い『トサーブ・ビースト』を呼ばなかったのデスか?」

「……『ムルウォ・ワーム』が蘇生したモンスターは攻撃が出来なくなるデメリット効果があるんだよ」

 

『ムルウォ・ワーム』の蘇生効果は強力だが、それにより攻撃が出来なくなる制約がある。 例え攻撃力が高くても攻撃が出来なければさっきのメリアのターンの二の舞、ならばレベルを調節して新たなモンスターをエクストラデッキから読んだ方がいい、遊月はそう思っていた。

 

「さらに除外されている『異次幻界』を1体墓地に送り、《異次幻界 エイブ・ビー》を特殊召喚!」

 

 《異次幻界 エイブ・ビー》 ☆1 ATK/100

 

『エイブ・ビー』はチューナーモンスター、よって遊月の狙いはシンクロ召喚。

 

「アー……ユウゲツのフィールドにはInsekt、昆虫でイッパイです。 キモチ……悪いデス」

「……人を狙撃して快感を得ているお前に気持ち悪いとは言われたくないぞ……」

 

『異次幻界』は複数の種族が混じっているカテゴリ、下級のモンスターの種族は全て『昆虫族』なのである。 メリアの言う通り気持ち悪い。

 

「……もう1体、除外されている『異次幻界』を墓地に送り《異次幻界 ヨルフレッツブ・バタフライ》を特殊召喚」

 

 《異次幻界 ヨルフレッツブ・バタフライ》 ☆4 ATK/1700

 

 先ほど手札に加えていたモンスターはレベル4。 蝶々の見た目だが、蛾のようなデザインをしているためトラウマがある人には注意が必要だろう。

 

「モンスターを一気に4体も……♪」

「そろそろ俺もやらせてもらうぜ、シンクロをな!」

「…………シンクロ」

 

 遊月の言葉にピクリと反応するイオン。 どうやらエクストラデッキからモンスターが出るときに何か反応を示すらしい。 だがそんなことは遊月にとっては関係のない話、モンスターをシンクロし始める。

 

「俺はレベル3の『ムルウォ・ワーム』とレベル2の『ツナ・アント』に、レベル1の『エイブ・ビー』をチューニング!」

「レベル6!?」

「交わることのない3つの異界、今一つとなりてこの世に混沌と恐怖をもたらせ! シンクロ召喚!

 こい、《混沌異次幻界 クラース・シャーク》!」

 

 《混沌異次幻界 クラース・シャーク》 ☆6 ATK/2100

 

 現れたシンクロモンスターはサメ。 その見た目はサメ映画で有名な「ジョーズ」に似ている。 だが所々に紫模様の斑点、剥き出しになっている骨格などを見ているとまるで量産されたクソ映画のサメみたいだぁ……

 

「『混沌異次幻界』モンスターが特殊召喚されたことで『ヨルフレッツブ・バタフライ』の効果が発動する! 墓地のレベル4以下の『異次幻界』モンスターを特殊召喚する」

「……またモンスター特殊召喚効果?」

「墓地から『ムルウォ・ワーム』を特殊召喚! そして『ヨルフレッツブ・バタフライ』と同じレベルになる!」

 

 《異次幻界 ムルウォ・ワーム》 ☆3→4

 

『ヨルフレッツブ・バタフライ』の出す鱗粉に引き寄せられるように墓地から『ムルウォ・ワーム』が這い上がってくる。 これでレベルが同じになる、つまりはエクシーズ。

 

「レベルが4になった『ムルウォ・ワーム』と『ヨルフレッツブ・バタフライ』でオーバーレイ!」

「ここでエクシーズ……!」

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!

 外なら世界より飛来せよ、《混沌異次幻界 ロドノク・コンドル》!!」

 

 《混沌異次幻界 ロドノク・コンドル》 ★4 ATK/2500

 

 召喚されたのはコンドルの姿をしたモンスター。 やはり例に漏れず所々骨が露出し、紫の斑点が身体中に見える。 そして赤黒く光る眼は獲物を見つめている。

 

「エクシーズ…………」

「複数の召喚を操るデッキ……何ですカ……?」

「『ロドノク・コンドル』のモンスター効果を発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、自分フィールドの『異次幻界』モンスター1体を選択する。 俺が選択するのは『クラース・シャーク』!」

 

 コンドルがオーバーレイ・ユニットを食らうと全身が紫の光に包まれる。 そしてその光を『クラース・シャーク』に移す。

 

「この効果の対象になったモンスターはこのターン相手モンスター全てに攻撃が可能になる。 だがこのターン俺はダイレクトアタックを行えない」

 

 全体攻撃付与、有名なのはアニメでも活躍した《拡散する波動》だろうか。 モンスター1体で相手モンスターを全滅させられるのは確かに強力、だが肝心の攻撃力が足りない上に『ドレッドファミリー』は装備カードである『獣火器』によって1度破壊されない。 例え全体攻撃が可能になったとしても、1体に1度しか攻撃宣言が出来ない。 この状況で遊月がとる行動は……

 

「……攻撃力が低い方を選択?」

「バトルだ! 『クラース・シャーク』でお前のモンスター2体に攻撃!」

「!?」

 

 当然攻めのみ。空を泳ぐように『クラース・シャーク』が『ホワイトブレット』に接近し噛み付く。 当然攻撃力は優っているが『ホワイトブレット』は自らの武器を手放し破壊を免れる。

 

 メリア:LP4000→3900

 

「『ホワイトブレット』の破壊は『獣火器』が代わりになりマス!」

「だがこの瞬間、『クラース・シャーク』の効果が発動する!」

「戦闘を行う事で発動する効果……!」

「『クラース・シャーク』が噛み付かれたモンスターには歯が突き刺さったまま残る。 お前のモンスターの攻撃力は2000ポイントダウンする!」

「パワーダウン!?」

 

 《ドレッドファミリー・ホワイトブレット》 ATK/2000→0

 

 サメの歯は決して噛み付いた相手を生かしておかない。 確実に仕留めるために牙を残す。 だから戦闘で破壊されなくとも相手の牙をへし折ることが出来るのだ。

 

「さぁ次の獲物は『ブラックブレット』だ!」

「デスが攻撃力はこちらが上。どうしようと? 」

「お生憎様だが、『クラース・シャーク』は1度の戦闘では破壊されない!」

「!!」

 

『ブラックブレット』の右肩に『クラース・シャーク』の歯が食い込む、だが『ブラックブレット』すぐさま引き金を引いてサメを撃ち抜く。 だがサメは死ぬことはなく遊月のフィールドにそそくさと戻ってくる。 その牙を残しながら。

 

 遊月:LP1550→750

 

 《ドレッドファミリー・ブラックブレット》 ATK/2900→900

 

 深々と刺さったサメの歯は確実に相手を追い詰める。 これでもうメリアのフィールドにいるのは攻撃力の低いモンスターのみ。

 

「そして『ロドノク・コンドル』で『ブラックブレット』を攻撃!」

 

 弱った所にコンドルの強襲。 『ブラックブレット』は銃を囮に何とか生き延びる。 が、そのダメージは実際大きい。

 

 メリア:LP3900→2300

 

「っ! 『獣火器』を代わりに破壊しマス!」

「ならこれでさらに攻撃力ダウン!」

 

 《ドレッドファミリー・ブラックブレット》 ATK/900→400

 

「俺はカードを1枚伏せてターン終了だ」

 

 遊月:LP750 手札1枚 伏せ1枚

 

 お互いのフィールドのモンスターの数は同じ、だが攻撃力を下げられた事でメリアは圧倒的不利な状況。 だがメリアは楽しそうに笑う。

 

「イイ……非常にイイですユウゲツ!! 非常に昂ぶってきまシタ……♪」

「……随分とまぁ……狂った笑顔をして……」

「…………」

 

 TURN4 メリア:LP2300 手札2枚

 

「ワタシのターン、ドロー!」

 

 メリアはドローしたカードを見てその口角をさらに上げる。

 

「さぁ……イキナリ激しくしますよ!」

「……何が来る……」

「ワタシはフィールドの『ドレッドファミリー』2体をリリース!」

「ッ!?」

「ワタシの家族、《ドレッドファミリー・ミーナ》!!」

 

 《ドレッドファミリー・ミーナ》 ☆8 ATK/?

 

 レベル8の『ドレッドファミリー』も当然犬。 だがその毛並みは街中にあるペットショップにいる普通の犬と何ら変わりがない。 ドイツ原産のジャーマン・シェパードのように見える。

 

「……これは……いやそれよりも、攻撃力が決まってない……?」

「『ミーナ』はとても賢いデス。 墓地にある『獣火器』を好きなだけ装備できマス!」

「また装備か!」

「墓地の『トゥハンズ』と『サイレントライフル』を装備! さらに手札から装備魔法《獣火器・ビックマグナム》を『ミーナ』に装備しマス!」

 

 これで装備されているカードは3枚。 だが『ミーナ』は銃を装備するのではなく、浮遊霊のように銃火器を周囲に浮かばせているだけだ。 どうやら『ミーナ』が銃を撃つわけではないようだ。

 

「『ミーナ』は装備しているカード1枚につき攻撃力を1000ポイントアップさせマス。 さらに『トゥハンズ』の効果で500ポイントアップ!」

 

 《ドレッドファミリー・ミーナ》 ATK/?→3500

 

「攻撃力……3500!!」

「『サイレントライフル』の効果でダイレクトアタックが可能、そして『ビックマグナム』を装備しているモンスターは戦闘ダメージを倍にします!」

「このままダイレクトを食らえばダメージ7000!?」

「さぁ……生き残れますか……?」

 

 7500のダメージなど受け切れるわけがない。 例え通常のルールでも大ダメージである。

 

「バトル! お願いします、『ミーナ』!!」

「くっ……ーーーーッ」

 

 銃弾が遊月の額目掛けて発射される。 遊月は何かカードを発動ようとしているが、その前にその弾丸が遊月の顔にヒットする。 遊月はその衝撃で後ろに倒れる。

 

「ハァァァ……♪」

「…………」

 

 メリアは身体をよじらせて喜びを表現する。 それを見ているのはイオンのみ。 メリアは顔を紅潮させて歓喜の言葉を出す。

 

「スゴイ……スゴイデスよユウゲツ……♪」

 

 両手で顔を抑えて身悶える。

 

「……まだまだ()()()()()()のですね!!」

「……けっ」

 

 遊月は立ち上がる。 銃弾を歯で止めながら。

 

「ぺっ、ソリッドビジョンって味はないんだな」

「ウフフフフフ……♪ そのリバースカードのお陰デスね?」

 

 メリアは遊月が伏せていたカードを指差す。 遊月のフィールドにはそのカードだけが存在していた。 いつの間にかモンスター達は消えている。

 

「トラップカード、《紫界二重結界(しかいにじゅうけっかい)》を発動させてもらった。 このカードは自分フィールドの『異次幻界』モンスターを2体リリースし、その攻撃力の合計値以下の攻撃力を持つモンスターの戦闘ダメージを0にする」

「な、る、ほど。 2体のモンスターの攻撃力の合計は4600。 いくら攻撃力を上げてもそこまではいかなかったですカラネ」

 

 しかし代わりに遊月のフィールドはガラ空き、手札は1枚のみ。 しかもリリースしたので除外されているカードは少ないまま。 以前ピンチのままだ。

 

「ワタシはカードを1枚セットしてターンエンドです」

 

 メリア:LP2300 手札0枚 伏せ1枚

 

 TURN5 遊月:LP750 手札1枚

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 遊月の手札はこれで2枚、だがドローしたのは魔法カード。 これではヤられてしまう、そう思い墓地にあるカードの効果を発動させる。

 

「墓地にある《紫界二重結界》は墓地の『異次幻界』モンスターを2体除外することで手札に加えることが出来る」

「回収効果、ですネ」

「除外するのは『ロドノク・コンドル』と『クラース・シャーク』だ」

 

 手札に加えたのはいいが、どのみちそれは状況を解決するには至らない。 遊戯王において勝つために必要なのはやはりというか、常にドローなのである。

 

「ここで魔法カード、《手札滅殺》を発動! 俺の手札のみを全て除外し、その枚数だけカードをドローする!」

「手札交換……だから回収したんデスね」

「除外されるのは2枚、よって新たに2枚ドロー!!」

 

 除外されたのはさっき回収された《紫界二重結界》、そしてまだ見たことのない『異次幻界』モンスターだ。

 

「…………」

「いいカードは、引けましたカ?」

「……あぁ、お前を倒せるカードがな!!」

「それは……無理デスね……『ミーナ』は誰にも倒せません」

「それがな、出来てしまうんだよ!」

 

 遊月はドローしたカードの内の1枚をデュエルディスクに差し込む。

 

「魔法カード、《色の境界の崩壊(カオス・ボーダー・フュージョン)》を発動!」

 

 発動されたのは『融合』の名を持たないフュージョンカード。 それだけで異質なカードであることが分かる。

 

「エクストラデッキに存在する融合モンスターを1体選択する。 俺が選択するのは《混沌異次幻界 ノガルド・ドラゴン》だ」

「エクストラデッキのカードを選択……?」

「選択した融合モンスターに必要な融合素材の数だけ除外されている自分・相手の『混沌異次幻界』モンスターを含む融合・シンクロ・エクシーズモンスターをエクストラデッキに戻す事で『融合条件』を無視して融合召喚を行う!」

「…………!」

「し、『召喚条件』ではなく『融合条件』を無視!?」

 

 それは普通ではありえないテキスト。 通常ならば召喚の条件を無視すればいいところを、わざわざ融合する素材の条件を無視するテキスト。 これは遊月の常識を逸脱したデッキの証とも言えよう。

 

「必要な素材は2体、よって除外されている2体の『混沌異次幻界』をデッキに戻す。 そして来い、白と黒の境界を喰らい顕現せよ! 《混沌異次幻界 ノガルド・ドラゴン》!!」

 

 《混沌異次幻界ノガルド・ドラゴン》 ☆8 ATK/3000

 

 混じり合う白と黒の渦の中から現れる紫のドラゴン。 遊日にとってのエースが『ブレイブソード』なら遊月のエースは『ノガルド・ドラゴン』と言えるだろう。

 

「『ノガルド・ドラゴン』が存在する限り、相手の全モンスターの攻撃力は1000ポイントダウンする」

「ナッ……!?」

 

 《ドレッドファミリー・ミーナ》 ATK/3500→2500

 

 これで攻撃力は上回った。 だが3枚もある『獣火器』のせいで3回まで破壊に耐えられ、しかも『サイレントライフル』の効果で次のターンのダイレクトまで確定している。 肝心のメリアのライフは2300もある、ここからの遊月の一手とは……

 

「さぁてさてさて、お前に特別に見せてやる。 俺の『儀式』を!」

「Ritual!? 儀式ですか!?」

「儀式……!」

「儀式魔法、《生と死の境界の崩壊(カオス・ボーダー・リチュアル)》を発動!」

「手札も無しに発動!?」

 

 儀式魔法とは儀式モンスターの降臨に必要なカード。 だが必要なカードはこれだけでなく生け贄が必要だ。 そのモンスターのレベルに応じた生け贄が必要であるためコストが高い。 また儀式モンスターはメインのデッキに入れてないといけない、つまり儀式魔法と儀式モンスターを同時に所持している時のみ儀式魔法を発動出来るのだ。 だが遊月の手札はもう0、一体どこからモンスターを呼ぼうというのか?

 

「このカードは除外されている儀式モンスターを呼び出す事が出来る。 その際の生け贄は墓地の『異次幻界』モンスターを除外することで代用できる!」

「除外されている儀式モンスター!? そんなのーー」

 

 メリアは記憶を呼び覚ます。 どのタイミングで儀式モンスターを除外したのだろうか? いや、そもそもほとんどもモンスターは召喚の際のコストとして墓地に送られる。 ならば残された選択肢は? 決まっている。

 

「ーーッ! さっきの手札交換カードの時に除外したんですね!」

「その通りだ。 除外されている儀式モンスターのレベルは10! 墓地に存在するレベル8の『トサーブ・ビースト』とレベル2の『ツナ・アント』を除外する!」

「レベル10!?」

「降臨せよ、この世の何にも当てはまらない現象! 《混沌異次幻界 ヌウォンクヌ・アンノウン》!!」

 

 《混沌異次幻界 ヌウォンクヌ・アンノウン》 ☆10 ATK/0

 

 それは液体の塊。 墨のように真っ黒な液体が地面の底から湧き上がってくる。 形を持たないそれはどのように表現しようとも出来ない、歪にして完全なる黒。

 

「ソレは……モンスター……デスか?」

「《ヌウォンクヌ・アンノウン》の効果を発動、相手の表側表示で存在するカードの効果を全て無効にする!」

「無効効果!?」

「そして無効になった枚数×300ポイント、攻撃力をアップさせる!」

 

 《混沌異次幻界 ヌウォンクヌ・アンノウン》 ATK/0→1200

 

 無効になったカードの枚数は4枚、攻撃力はたったの1200だが『ミーナ』の攻撃力は0となり『獣火器』は身代わり効果を発動出来ない。

 

「コレは……!」

「その伏せが何かは知らないが、無いならこれで終わりだ! バトル!」

 

 突入するバトルフェイズ。 唯一残されたメリアの伏せが異様な気配を発しているが、遊月は臆せずに突き進む。

 

「『ノガルド・ドラゴン』で『ミーナ』に攻撃!」

 

『ノガルド・ドラゴン』の口から紫の炎が吐かれる。 それは無防備になった『ミーナ』に向かっていく。 だがその軌道は変わる。

 

「リバースカードオープン!」

「何!? 『ノガルド・ドラゴン』の対象耐性をすり抜けるトラップ!?」

「トラップカード、《愛の代償》!!」

 

 トラップカードの発動によって切り替わった炎の行方は、メリアに目掛けて一直線に向かっていく。

 

「!?」

「ワタシのモンスターが攻撃対象になった時、その攻撃をワタシへの攻撃にし、受けるダメージを倍にしマス!」

「は、はぁっ!?」

 

『ミーナ』の攻撃力はゼロ、つまり『ノガルド・ドラゴン』だろうが『ヌウォンクヌ・アンノウン』だろうがミーナのライフは……

 

 ミーナ:LP2300→0

 

 尽きてしまう。 つまりは遊月の勝ちだ。

 

「……何ィ?」

 

 納得のいかないデュエル結果。 もちろんあの時のメリアに手札はなかった。 だからこそ不可解。 浮かび上がる疑問はいくつかあるが、一番気になるのはあのトラップカードだ。 手札にあるのならば何故伏せなかったのか? 何故『ミーナ』を召喚してから伏せたのか? 尽きない疑問を本人にぶつけようとしたが、とうのメリアはイオンの元に。

 

「イオンー! 負けてしまいました、慰めてくださいー!」

「…………」(嫌そうな顔)

「……なんじゃそりゃ」

 

 メリアに呆れた視線を送る二人。 ここで遊月はあることに気付く。

 

(……今は流暢に日本語を話すんだな)

 

 デュエルの終盤、メリアの日本語はやや崩れていた。 恐らくは興奮のし過ぎでそうなったのだろう。 デュエルが終わって熱が引いたのか、今はキチンとした日本語を話している。

 

「ふぅー……ユウゲツ!」

「あ?」

「次は負けまセンよ! 次こそは、貴方に風穴、ちゃんと開けますね♪」

「……怖えこと言うなよ。 まぁ次も俺が勝つがな」

「それではさよならデス。 イオン、また会いましょう!」

「…………」(手フリフリ)

 

 メリアは元気よく帰っていった。 ……果たしてアレが本当に軍人なのかが怪しくなってきた遊月だった。

 

「おい、イオン」

「…………?」(首傾げ)

「一人で帰れるか?」

「…………」(縦振り)

「そうか、なら気ぃつけろよ」

 

 遊月もまた帰路に着く。 少し離れた所でさりげなく振り向くと、イオンは真っ直ぐどこかに歩いて行った。 それを確認して遊月は足を速くした。

 

「メリアか……本当にヤベェ奴かどうかは置いておいて、装備カードとシンクロか……こいつは遊日への土産話にでもしてやろう」

 

 きっと驚く、そう思うと遊月は自然と笑みを浮かべて月夜の中歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い場所。

 

「…………」

 

 イオンはそこにいる。 辺りは機械に塗れていてまともに人がいる空間だとは思えない。 イオンは一人、そこにいる誰かに話しかけていた。

 

「…………いた」

 

 イオンがそういうと、目の前にある液体が入っている器が泡立つ。

 

『出来したぞ……『ビー』よ。お前はそういう面でも『エー』より優秀だな』

「…………」

『して、その者の名は!』

 

 問われ、イオンはまた5秒後に答える。

 

「『()() ()()()』」

 

 今、歯車は加わり、動き出す。

 




お、黒幕っぽいのが出ましたね。(他人事)

今回の『ドレッドファミリー』は装備カードとシンクロをして場を固めるデッキです。 『獣火器』はシンクロ素材になれる効果と身代わり効果が必ずあります。 メリアのデッキは「遊戯王R」を参考にしました。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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