次元領域デュエルのルールは映画参照プラス少々のハウスルールを交えていますが、まぁ映画と同じノリで見てください。
大会が行われる前日、高級ホテルの中で前夜祭が行われている。 参加しているのはデュエルディスクを手に入れた50人のデュエリスト。 性別、年齢、国籍、それら全てを無視して平等に与えられたチャンスを見事手にした者たちの集い。 そしてデュエリスト達の親族や友人などもこの宴に参加していた。
「うわ〜! すっごい……!」
「はぇ〜……こんなにインターナショナルだと壮観だな」
「そら、日本の裏っ側のデュエリストだって来てんだ。 ちょっとしたオリンピック状態だぜ」
多種多様な人間が入り混じる会場内。 遊日、遊月、そして優美はその光景に目を奪われる。
「んで、まだ始まんないんだっけ?」
「確か参加者全員が着いたら始めるっつってたが……おっ?」
突然会場内の明かりが消える。 そしてスポットライトが一人の女性を照らす。
「全世界のデュエリストの皆様、ようこそいらっしゃいました。 私は今回のコンマイ主催の公式大会、『ワールド・デュエル・フューチャー・カップ』の実況・解説、そして司会進行を担当する『
女性の挨拶にほんの少しどよめく会場。 それもそのはず、彼女はデュエリストの間ではちょっとした有名人なのだ。
「『篠原 ひなこ』だと? 女性の芸能人で稀に見る遊戯王プレイヤーじゃねぇか!」
「私この人のブログ見てる!」
彼女はテレビ番組で紹介された時、遊戯王をやっていると紹介された。 それを見たデュエリスト達は「ニワカ乙」と口にしたが、彼女のデュエルは本物だった。 ガチガチのガチデッキをカメラの前で使いデュエリストであることをアピール、その姿は女性デュエリストを代表するものだった。
「さて、明日から行われる予選、そしてその二日後に行われる二日間の本線。 これらの内容はまだ秘密にさせてもらいます。 ですが今日は大会の前日という事で、デュエリストの皆様に、ささやかですがおもてなしをさせてもらいます!」
暗い会場に明かりが戻る。 そして大きな扉の向こうから大量の料理を運んでくる給仕達。
「まずは皆様にお腹を満たしてもらいたいと思います。 このホテルは三つ星を貰うくらい料理が美味しいので、どうぞ皆様お楽しみ下さい!」
そういってひなこの挨拶が終わる。
「予選と本線の詳しい内容はまだ判明しないのか……」
「そんなことはどうだっていい! 飯だー!」
「ご飯だー!」
「……おい」
デュエリスト達の晩餐会が始まる。
「うおおぉぉ!? エビ!? あれか、伊勢エビ!?」
「テンション高いなお前……」
「ん? お、武光じゃん」
遊日が遊馬の頭を模した見事なエビ料理を堪能していると武光が近づいてきた。
「いやぁホントここに日本人少ないな。 確か俺とお前とお兄さんだけだろ? ここが日本とは考えられねぇな」
「それでも国単位で一番参加してるのは日本なんだろ? そこそこ贔屓させてんだとは思うけど……あ、遊馬先生うめー!」
「その発言はやめとけ……」
「やれやれ……日本人同士で固まって作戦会議かい?」
『?』
突然二人に話しかける男。 二人が声の主を見るとそこにいたのは遊日とデュエルしたルカがいた。 ルカはタキシードで身を固めている。
「そんなことをしても無駄だ、優勝するのはイギリス代表のこのルカ・ブライトサインだ」
「お、ルカじゃん。 おひさ」
「すっげ……あのブライトサインか……」
「どうやらユウヒ、君の友人の方が教養がありそうだな?」
「え、何でこいつのこと知ってるの?」
「いやお前ニュースとか見ろよ……」
どうやら遊日は一般教養云々の前に世俗に疎いらしい。
「まぁどちらと当たろうと、僕の完璧になったデッキで叩き潰すことには変わらない」
「……そいつは楽しみだ」
「……随分と自信有り気だな」
牽制しあう三人、だがルカはすぐに二人から離れる。
「……僕と当たる前に敗北することは許さんぞ、ユウヒ」
そういってルカは新たな料理を取りに行く。 ルカが離れた後武光が遊日に質問をする。
「……あいつに勝ったことあるのか?」
「ん? まぁな。 でもあのデュエルは……お互い全力じゃなかったし……それに……」
「それに?」
「次は全力だ。 つまり次からが本当のデュエル、だから次勝った奴が勝者だ」
遊日は不敵に笑う。
「ま、俺は負けねぇけどな!」
「俺に負けた奴が何か言ってんなぁ〜?」
「うるへー!」
「む、このカニ美味いな」
「おいそこのオマエ!」
「……やはりカニは茹でるのが一番だった……?」
「無視すんな!」
遊星のような大きなカニを食べていた遊月の隣で小さな少女が遊月に話しかけていた。 だが我関せずといった様子で遊月はカニを貪る。 だが隣で喚き立てられるのが嫌になったのか、メンドくさそうに少女に反応する。
「……何だよガキ」
「ようやく反応したな、このデクノボーめ!」
「おめーが小せぇだけだろ」
「んだとゴラァッ!」
見知らぬ少女に因縁を付けられてウンザリしている遊月。 どうしたものかと思っていた所に一人の女性が近づいてくる。
「『ベルタ』、いけませんよ。 迷惑をかけてはーーオウ! ユウゲツ!」
「メリア? ってことはお前のツレかこのチビは」
「チビ言うな! まだ成長してないだけだ!」
少女をベルタと呼ぶのは数日前に遊月とデュエルしたメリアだった。 ベルタはメリアとは違い髪は赤みがかった黒、ツインテールで毛先がばらけていて少しボサボサに見える。 身長はとても低く、身長が180ある遊月の腹部よりも少し下に頭がある。
「お前だろ、メリアに勝ったのは!」
「……まぁ結果だけ見ればそうだな」
「許さん! ぶっ飛ばす!」
「あ?」
「いけませんよベルタ! コラ!」
メリアはベルタを持ち上げる。 持ち上げられたベルタは手足をジタバタさせてメリアに抗議する。
「だってこんな奴にメリアが負けたなんて信じられない! こんなノッポでヒョロそうな奴なんかに〜!」
「ベルタ、負けは負けです。 それに大会で負けた訳ではないので、気にする必要はない、ですよ?」
「そりゃそうだけど……メリアには負けて欲しくないの!」
「んー……困りました……ユウゲツ?」
「何だーーんぐっ!?」
遊月はベルタの口の中に無理やり取ってきたデザートのケーキを突っ込む。 先ほどまで騒がしかったベルタは次第に大人しくなり、だらしない顔でケーキを味わっていた。
「うみゃ〜……」
「ようやく黙ったかクソガキ」
「スミマセン、ユウゲツ」
「気にすんな、所でお前も食べるか?」
「ハイ!」
「ほれ」
「…………」
「……どした?」
「ワタシにはアーン、ないんですか?」
「いや今のはアーンではないだろう……」
未だ顔がとろけたベルタを持ち上げているメリアの両手は塞がっている。 確かにアーンしてあげるのがいいのだろうが……そもそもベルタを下ろしてやればいいという疑問はメリアには効かない。 遊月は嫌々ケーキをメリアに食べさせる。
「ん〜美味しい! デスね!」
「あ、お前何メリアにアーンしてんだよ!」
「したんじゃねぇよ、させられたんだよ」
「ってかそろそろ下ろしてよメリア、もう暴れないから」
「本当ですか? もし次暴れたら……『アレ』ですからネ♪」
「うっ!……も、もちろん……」
ベルタはようやく地に足をつける。 一体メリアの言うアレとは何なのだろうか? 興奮していた彼女が一瞬で大人しくなるのだから余程のことではない。
「……つーかお前らはどういう関係なんだ?」
よく二人を比べて見てもその見た目は全くと言っていいほど似ていない。 露出している箇所が少ないメリアに対し、ベルタは腕出し足出しへそ出しで肌が隠れている部分は少ない。 その背丈を比べても姉妹には見えない。 その答えを教えてくれるのはメリア。
「アー……ユウゲツに隠しても対して意味ありませんネ」
メリアは耳打ちするように遊月の耳元に顔を近づける。 ふわりとメリアの良い香りが遊月の鼻腔をくすぐる。
「ワタシの部下、です。 ワタシの『お仕事』の」
「……ほーん」
「もう分かってますよね、ワタシがドイツからやってきた軍の人間だと」
「まぁな……」
メリアとデュエルした後日、遊月はメリアの事を調べた。 結果メリアはドイツの軍に所属している人間だとすぐに判明した。 そして目的も何となく察した。
「……大方お前らもデュエルディスクとソリッドビジョンの技術の解明が目的だろ?」
「アラ、知ってました?」
「つーかほとんどの、海外からやって来たやつらはそれが目的だろ」
「何だ、焦らして教えようと思ってましたのに……」
そう言うと遊月からパッと離れる。 ちなみに離れるまでベルタの機嫌は悪かった。
「でもまだよく分かってないんです。 だからこうして大会まで律儀に参加しているんデス」
「……もういいだろメリア、行こ!」
「アラアラ、しょうがない、デスね。 それではユウゲツ、またね、デス」
メリアとベルタは遊月から離れる。 遊月はまたカニを貪り始める。
(……まだ解析が済んでないっつてたな。 いくらトンデモ技術とは言えまだ判明していないだと? それじゃあまるで『未知の技術』じゃあないか……)
大会が待ち遠しくなる一方で、このデュエルディスクとソリッドビジョンを完成させたコンマイの謎がますます深まっていった。
「ゆ、優美、お前が食ってるのってまさか生ハムメロン!?」
「そだよー」
「どこにあったんだ? 俺も買いてー!」
「あっちの方にあったけど……結構少なかったから急いだ方がいいよ」
「何!?」
遊日駆け足では生ハムメロンが置いてある場所にいく。 そこには奇跡的に残り1つになった生ハムメロンが鎮座していた。
「っぶねぇ……ラス1だったか……」
安心して生ハムメロンに手を伸ばす。
「ヘゴ村さんの大好物、一度食ってみたかったんだよなぁ〜……」
「…………」
「…………」
もう一人いた。 遊日の隣には以前1ターンキルをかまして来たルーザ・ウィッチレイドがいた。 どうやら彼女も生ハムメロンを取りに来た様子。
「…………」
ジッと遊日を見つめるルーザ。 長い前髪の隙間から見える黄色の瞳が遊日を映し出す。 だがそんなことをされた所で生ハムメロンを譲る道理にはならない。
「いやこれは俺のだから」
「……どうして?」
「いやいや、俺の方が早かったし」
「……そんなこと……ない」
「でぇい、俺は普通が売りなのに好物が生ハムメロンって言う普通とは何か分からなくなるアイドルの影響で前からすっごい気になってるんだよ!」
「……そんなの……知らない……」
などと言い争っていると優美が遊日の元にやってくる。
「コラッ! ユー君、何してるの?」
「優美? いやこいつが……」
「人を指指さないの! 全く、どうせ最後の一つで揉めてたんでしょ」
「うっ!」
見事言い当てられて何も言えなくなる遊日を押しのけて生ハムメロンをルーザに渡す。
「はい、これはあなたのだよ」
「…………」
「あ、私は優美って言うんだ。 あなたは?」
「……ルーザ、ルーザ・ウィッチレイド……ありがとう……」
小さく優美に礼を言ってルーザは別の食べ物がある場所に移動する。 優美は自分の分を半分に分けて遊日に渡す。
「ほら、ユー君には私の半分あげるから」
「むぅ……」
「いらないの?」
「あ、いります。 ありがとうございます……」
ルーザの登場から様子がおかしい遊日。 優美は少し考えたあと閃いたことを言う。
「もしかして……前に負けたのってルーザなの?」
「……ぐぬぬ」
「あ、だから機嫌が悪かったんだね。 よしよし」
「違う……そうじゃなくてだな……」
「うんうん、お姉さんはちゃーんと分かってるよ〜」
「……いやお前俺と同い年だろ」
同い年の自分より背の低い相手に慰められるその光景は何とも奇妙なものだった。
そして1時間弱たった頃であろうか、先ほどと同じように会場の明かりが消えて、再びスポットライトに照らされた篠原 ひなこがマイクを持って立っていた。
「それでは、そろそろエキシビションマッチを始めたいと思います!」
会場の全注目がひなこにいく。 いよいよ誰かがデュエルをするのだ。 食事の手を止めて話に集中する。
「デュエルを行ってもらうデュエリストはこちらで決めさせてもらいました! まずはこのデュエリスト!」
暗い会場の中でひなこ以外に明かりに照らされるデュエリスト、それは……
「新時 遊月選手!」
「……俺?」
どうやら選ばれたのは遊月だった。 遊月の隣で遊日が羨ましそうにみている。
「うわっ、ズルくね? あともう一人は俺か?」
「どうだろうな……」
「遊月選手の相手は〜……このデュエリスト!」
「……!」
スポットライトが照らす人物を皆が注目する。 だがそのデュエリストを見た者のほとんどは驚きの表情で口を開けている。
「イオン・ビー選手です!」
「こ、子ども〜?」
「イオンだと……?」
「イオン選手はこの大会最年少です。 ん〜とってもキュートで可愛らしいですね! お二人は前に出てきてください」
驚きながらも言われた通りに前に出る遊月。 そして黙々と足を進めるイオン。 二人が前に出てきたところでひなこがさらなる説明をする。
「今回はエキシビション! ということでスペシャルなデュエルをしてもらいます!」
「スペシャル……?」
「そう、普通のデュエルとは異なる……『次元領域デュエル』で戦ってもらいます!」
『次元領域デュエル!?』
次元領域デュエルとは、映画で行われていた特別なルールで行うデュエル。 そのルールは特殊だったが映画を見たデュエリストは即座に理解し、そのデュエルを楽しんだ。
「詳しいルールを説明いたします。 まず一つ目、次元領域デュエルでは生け贄のコストを支払わなくて結構です!」
「でたな上級召喚し放題のルール……!」
「二つ目、フィールドに現れるモンスターのステータスはその時のプレイヤーの精神力で決定です!」
「デュエル中に気合いを入れるのは普通だな」
「三つ目、モンスター同士の戦闘ダメージは超過ダメージではなく、破壊されたモンスターの、その時の表示形式のステータス分が戦闘ダメージとなります!」
「仮に青眼を出したとしても、破壊されれば3000のダメージか……」
「そして次元領域デュエルでの特別ルール、表側守備表示での通常召喚を可能にし、ライフは8000で行います!」
「……確かに4000でデュエルを始めると下級が破壊されるだけで致命傷だからな……8000は妥当か」
「以上が今回のルールとなります!」
次元領域デュエルは単純にモンスターをリリースなしで召喚できるものと考えてはいけない。 あえて攻撃力を0にしてダメージをなくしたり、ステータス変動を上手くコントロールすれば有利に運ぶことも可能である。 次元領域デュエル、それは遊戯王にあらたな可能性をもたらす新たなデュエルである。
「それではお二人共、準備は大丈夫でしょうか?」
「俺は問題ない」
「…………」(頷き)
「それでは始めましょう!」
『デュエル!!』
デュエル開始と共に映画と同じように周囲が次元領域に包まれる演出が入る。 天井に吊るされてあるミラーボールがそれらの演出を行なっているのだろう。 会場は薄いオレンジ色で照らされる。
「先攻はもらう」
先攻を取ったのは遊月。 遊月が先攻を取ったのはイオンのデッキがとのような物なのかが分からないからである。 何が出来て何がメタれるのか、それが判明しない今だからこそある程度動くのだ。
「俺のデッキは次元領域デュエルに向いていないが……何とかなるだろう。 魔法カード《ウロボロス・ドロー》を発動。 手札を1枚除外してカードを1枚ドローする」
「遊月選手、いきなり手札を除外してドローしました! やはり初手は手札を回すのがセオリーだと言えるでしょう」
遊月が除外したのは当然モンスター。 これでようやくモンスターを呼び出せるのだ。
「俺は除外されている『
《異次幻界 エイブ・ビー》 ☆1 DEF/100→0
呼び出したのはリクルート効果のある『エイブ・ビー』、これなら気合いを込めなくてもよい。 むしろ状況によっては自爆特攻すら有効な手になる。
「遊月選手、通常召喚を行わずに特殊召喚を行いました! もしかして通常召喚不可のモンスターなのでしょうか?」
意外と着眼点が悪くないひなこ。 伊達にゴリゴリの『テラナイト』を使ってはいない。
「カードを1枚セットしてターンエンドだ」
遊月:LP8000 手札2枚 伏せ1枚
「…………イオンのターン」
TURN2 イオン:LP8000 手札5枚
「…………ドロー」
イオンは静かにターンを始めた。 遊月も静かな方だがイオンは無音に近い。 果たしてどんなカードを使うのだろうか?
「…………イオンは《
《異界隷属イフリート・エルダー》 ☆4 ATK/1600
召喚されたのは全身を鎖で縛られ、青い炎を纏っている獣。 イフリートと言えばファンタジー作品において炎に関連する存在として引っ張りだこであるが、イオンの召喚した『イフリート・エルダー』はそれらのイメージと反対の冷たい獣のように見える。
「……MAXステータスだと?」
「おぉっと!? イオン選手、何となんの気合いも無しに能力値を最大まで引き出している!! 見た目によらずとんでもない子どもです!」
いきなり行われた次元領域デュエルで、大勢の人間の前で緊張せずにデュエルするというのは中々難しい。 そしてそれらの精神面での影響をもろに受ける次元召喚。 だがイオンはいとも容易く能力値を最大まで引き出した、まるで『訓練』でもしてきたかのように。
「…………さらにマジック、《
「装備魔法?」
「…………装備したモンスターは炎属性としても扱う」
体に燃える謎の刻印が刻まれた『エイブ・ビー』は熱く燃え始める。
「炎属性が存在する時…………《イフリート・エルダー》の効果は発動出来る…………!」
「特定の属性が存在する時に発動出来る効果!?」
「相手フィールドの炎属性モンスターを…………奪う!」
「何っ!?」
『イフリート・エルダー』に巻き付いていた鎖が炎に包まれた『エイブ・ビー』を向かっていく。 巻き付き、そしてイオンのフィールドまで引きずる。
「ここでコントロールを奪いました! ここからどうするイオン選手! ピンチをどう抜ける遊月選手!」
遊月のフィールドには伏せが1枚のみ。 いくらライフが8000あるとは言え無駄なダメージは御免被りたい。
「イオンのフィールドに炎属性モンスターが2体…………炎属性モンスターをリリースすることでこのモンスターは特殊召喚出来る…………!」
「何ッ!? モンスターを奪ったのは特殊召喚のコストにするため!?」
「現れよ…………冷たき炎で数理先まで凍りつかせろ…………! 《異界隷属フェニックス・エルダー》…………!!」
《異界隷属フェニックス・エルダー》 ☆8 ATK/100
現れたのは全身が水色のような冷たい色の不死鳥。 漂うのは熱気ではなく冷気、その寒さに思わず身体が震える。 そして全身が鎖に縛られていた。
「レベル8の最上級! 2ターン目からイオン飛ばしてます!」
「……素のステータスが100だと?」
ひなこの言う通り、いきなり最上級を呼ぶのは飛ばしているように見える。 だが手札を2枚消費して出てきたのは攻撃力たったの100。 一体どのような効果を持っているのだろうか……?
「…………『フェニックス・エルダー』の効果。 フィールドの全モンスターは炎属性としても扱う…………」
「また属性を……」
「そして炎属性モンスターは全て攻撃力が0になる…………」
「攻撃力が0になる!? ……いやだがそのモンスターには攻撃力が……?」
属性を与えておいて『フェニックス・エルダー』自身はまるで変化がない。 まるで自分には何もないかのように。
「『フェニックス・エルダー』は…………属性を持たない」
「なっ!?」
「なんとぉ!? 『炎・水・地・風・光・闇属性として扱わない』効果のようです! しかも効果を受けても属性無しとして扱うようです!」
属性を持たない、と言うことは遊戯王においてまずあり得ない。 アニメの遊戯王GXにおいて『クリアー』という似たカテゴリがある。 『クリアー』は闇属性として扱わない効果だった。 つまり無属性と言えるだろう。 だがそれはあくまで闇属性としてた、属性変換カードによって属性を与えることが出来た。 だが『フェニックス・エルダー』はどうだろうか? どのような属性を与えても『無』になってしまう。 与えられるのは『神』のみ、まるで『元々神だった』かのようだ。
「…………そしてマジックカード、《好奇心に殺される猫》を発動。 相手の手札を確認し、その中から最もレベルの高いモンスターを、召喚条件を無視して相手フィールドに特殊召喚する」
「俺の手札からモンスターを!?」
「さぁ…………見せて…………」
遊月の手札は2枚、そしてどちらもモンスターカード。 片方はレベル6の《異次幻界 エソル・ローズ》、そしてもう片方はレベル7の《異次幻界 ヨシエイダ・デイジー》。 呼び出されるのは当然レベルが高い方だ。
「そのモンスターを特殊召喚…………」
「くっ……『フェニックス・エルダー』のせいで呼び出しても……!」
《異次幻界 ヨシエイダ・デイジー》 ☆7 ATK/2400→0
せめてもの抵抗として気合いを入れてステータスMAXにするも、攻撃力は『フェニックス・エルダー』によって0になってしまう。
「バトル…………『フェニックス・エルダー』で『ヨシエイダ・デイジー』を攻撃!」
「攻撃力を0にしてからの攻撃! これは戦闘破壊を免れません!」
戦闘破壊耐性など当然持ってなく、呆気なく破壊されてしまう。 だが攻撃力が0のおかげでダメージは発生しない……はずだった。
「『フェニックス・エルダー』のモンスター効果…………発動」
「くっ!」
「戦闘破壊したモンスターのレベルの数だけ…………300ポイントのダメージを与える…………!」
「バーン効果!?」
戦闘破壊がトリガーのバーン、攻撃力を0にする効果はこれがあるからなのだろうか。
「遊月選手のモンスターのレベルは7! つまり2100のダメージです! これは痛い!」
「うっぐぅぅ……!」
遊月:LP8000→5900
『フェニックス・エルダー』の甲高い鳴き声が衝撃となって遊月を襲う。 いきなり4分の1のライフを削られ、先制攻撃はイオンが制した。
「イオンはこれでターンエンド…………」
イオン:LP8000 手札2枚
「やってくれるじゃねぇか……クソガキ……!」
遊月は表情を変えないイオンを見ながら悪態を吐く。 何を出しても炎属性に変えられ、なおかつ攻撃力は0になる始末。 しかもこれは次元領域デュエル、特殊召喚しか使わない遊月にとって不利な条件。 だがこの不利でさえも遊月は自分のデュエルを貫く。
TURN3 遊月:LP5900 手札1枚 伏せ1枚
「俺のターン、ドロー!」
勢いよくカードを引く。 この時遊月はイオンのデッキの弱点をある程度は予想していた。
「俺は何もせずにターンを終える」
「…………?」
「何首傾げたんだよ。 お前のターンだ」
遊月:LP5900 手札2枚 伏せ1枚
何もしないでターンを終える遊月の姿にイオンは思わず首を傾げる。 そんな要領を得ないイオンに遊月は自らの行動について説明する。
「お前のそのモンスターの弱点をいくつか見つけ出してな、その中から無難なのを選んだだけだよ」
『フェニックス・エルダー』の弱点とは? 1つはその低い攻撃力にある。 いくら0に出来るとはいえそれは攻撃力のみ。 守備表示で出したモンスターには意味がない。 どうようの理由で戦闘破壊耐性持ちにも弱い。 そして2つ目はその低い攻撃力だから、モンスターを無理に召喚する必要がない。 下手に破壊されてダメージを受けるくらいなら、100のダメージくらい甘んじてくらったほうがいい。
「せっかくライフが8000から始まったんだ、のんびりいこうや」
「遊月選手、余裕の表情! まだ慌てるような時間ではないようです!」
「嘘つけ、絶対手札事故ってるだけだゾ」
TURN4 イオン:LP8000 手札2枚
「…………イオンのターン、ドロー…………」
余裕の表情の遊月に何を感じているのか? 未だ表情が揺らぐことの無いイオンは淡々とデュエルを続ける。
「イオンはこのモンスターを次元召喚……」
「む……」
「地獄の炎封じ込めし氷結晶…………今弾け飛べ…………! 《異界隷属 セルシウス・エルダー》!!」
《異界隷属 セルシウス・エルダー》 ☆8 ATK/100
今度はレベル8のモンスターを次元召喚。 全身を鎖に縛られている青髪の少女、透き通るような肌だが腹部は赤々と燃えるように光を放っている。
「今度は直接召喚してきやがったか……」
「またまた上級モンスター! ですがこのモンスターも先ほどと同じように攻撃力が100ポイントしかありません! 効果も同じなのでしょうか!?」
「《セルシウス・エルダー》はフィールドに存在する全モンスターに水属性としても扱うようにする効果がある…………そして水属性モンスターの攻撃力を0に、そしてこのモンスターも属性を持たない…………!」
ほとんど同じ効果、違う点は与える属性くらいだろうか? どうやら上級の『異界隷属』モンスターは同じような効果を持っているのだろう。
「さらに手札から永続魔法…………《古き神の手招き》を発動…………!」
「これは……?」
発動された永続魔法から人の魂のようなものが二つ、遊月のフィールドを彷徨う。
「このカードは相手フィールドにモンスターが存在しない時、イオンのメインフェイズ1に発動できる…………。 私のレベル8以上の『異界隷属』モンスターの数だけ《エルダー・トークン》を1体、相手のフィールドに特殊召喚する…………」
「俺のフィールドに特殊召喚だと!?」
《エルダー・トークン》 ☆3 ATK/1000→0
それは相手がモンスターを呼び出さないことを見越したカード。 呼び出されたモンスターの攻撃力はイオンの『異界隷属』の効果で0になり、破壊されればそのレベルの数だけ300ポイントのダメージを与える。
「これでイオン選手、毎ターン1800のダメージを与えられます! 何といやらしいコンボでしょうか!」
観客達は心の内で、『いやガチテラナイトを回すお前が言うなよ』と思ったのは内緒の話。
「バトル…………二体のモンスターで《エルダー・トークン》を攻撃…………!」
「ッ!!」
遊月:LP5900→4100
毎ターン1800のダメージと聞けば大したことはなさそうに聞こえるが、これは次元領域デュエル。 レベル8のモンスターを生け贄なしで召喚出来るのでダメージはどんどん加速する。
「イオンはカードをセット…………終わり」
イオン:LP8000 手札0枚 伏せ1枚
おおよそ4ターンの攻防だが、ここまでのデュエル展開で二人のデッキの動きは大体出場者に知れ渡った。 その中で予めデッキを知っているメリアの隣でベルタは遊月が劣勢だからかなのか、怒りを表していた。
「何やってんだあのノッポ! やられっぱなしじゃん!」
「……ん? ベルタはユウゲツのこと、好きじゃあないんですよね?」
「当たり前じゃん! 誰があんな奴……!」
「ならどうして怒っているのですか?」
ベルタが遊月のことをよく思っていないのは先ほどのやり取りですでに判明した。 のにも関わらずベルタは遊月の劣勢に対して怒る。
「メリアに勝ったんだ! 無様なデュエルはアタシが許さない!」
「…………」
メリアに勝ったのは事実、ならばその事実に恥じないデュエルをして欲しい。 ベルタはメリアの事を大切に思っているからこそ、遊月には無様に負けて欲しくなかった。 だってそれはメリアまで弱いことになってしまうから。
「大丈夫ですよベルタ」
そんなベルタを見てメリアは彼女の頭に手を置く。
「ユウゲツは…………まだまだ楽しんでマス……♪」
メリアは知っている、遊月というデュエリストはピンチであればあるほど、その逆境を楽しむ男だと。
TURN5 遊月:LP4100 手札2枚 伏せ1枚
「俺のターン、ドロー!」
遊月はイオンを真っ直ぐに捉えながらカードを引く。
「来たきた、俺は魔法カード《外界との精神交換》を発動。 手札の『異次幻界』モンスター、『ツナ・アント』と『エソル・ローズ』を除外する」
発動のコストとして除外されたのは先ほど手札公開の時に見せた『エソル・ローズ』と先ほど引いたであろう『ツナ・アント』。 一体何をしようというのか?
「除外したモンスターのレベルの合計の数値で同名の『異次幻界』モンスターをデッキから二体手札に加える」
「おぉ! ここで逆転のサーチかぁ!?」
「俺が加えるのは合計レベル8のモンスター、《異次幻界 エイリッペル・レプティリア》」
これで手札にモンスターが二体。 そう、同じレベルでなおかつレベル7以上のモンスターが二体。
「トラップカード、《
「遊月選手、ここで伏せていたトラップカードを発動したぁ!!」
「手札の『異次幻界』モンスター二体を除外して融合を行う!」
ここで呼び出すのは当然遊月のエースモンスター。
「現れよ、異界に轟く号砲! 《
《混沌異次幻界 ノガルド・ドラゴン》 ☆8 ATK/3000→0
会場でその翼を広げる巨大な竜。 だがすぐさま攻撃力が0に下がってしまう……だがその巨躯から発せられる咆哮はイオンのモンスターを怯ませる。
《異界隷属 フェニックス・エルダー》 ATK/100→0
《異界隷属 セルシウス・エルダー》 ATK/100→0
「今度はイオン選手のモンスターの攻撃力が0に!? これは一体……」
「『ノガルド・ドラゴン』が存在する限り、相手の全モンスターの攻撃力は1000ダウンする。 こいつもお前の弱点になっちまったな」
これでお互い攻撃力が0。 これでは戦闘破壊が行えなくなってしまう、だが遊月の手は出し尽くしていない。
「さらに除外された事で二体の『エイリッペル・レプティリア』の効果が発動する!」
「さらにここで除外をトリガーに効果を発動してきたぁぁ!!」
「このカードが除外された時、俺の手札が0の時のみ発動出来る。 除外されているこのカードと『異次幻界』モンスターをデッキに戻す事で、新たにカードを2枚ドローする!」
「手札の補充まで! 先ほどまでとは打って変わってデッキを回しております!」
遊月はドローしたカードを確認する。 そしてすぐさまデュエルディスクに差し込む。
「カードを2枚セットしてターン終了だ」
「ドローした2枚ともセット! ここに来てバックを温めてきました!」
遊月:LP4100 手札0枚 伏せ2枚
未だイオンにはダメージはない。 だがフィールドを見てみれば遊月が盛り返してきている。 攻撃力が1000ポイントダウンしてしまうこの状況下でイオンのターンが来る。
TURN6 イオンLP:8000 手札0枚 伏せ1枚
「イオンのターン…………ドロー…………」
イオンは未だ表情変えず、ドローしたカードを確認して発動する。
「魔法カード…………《エレメント・メイレイ》を発動。 ……自分フィールドにレベル8で属性が異なる『エルダー』モンスターが2体存在する時…………デッキから属性が異なるレベル8の新たな『エルダー』モンスターを呼び出す…………」
「なっ……ここに来てさらにモンスターを増やすだと!?」
「デッキから風属性と地属性の『エルダー』を特殊召喚する…………!」
ほぼノーコストに近いカード。 2枚ちょうど出なければ発動はできないがそれでもデッキから呼び出せるのは破格の効果。
「止まれ、大気の鼓動……停滞せよ妖の邪気……! 《異界隷属 プレイグ・エルダー》…………!!」
《異界隷属 プレイグ・エルダー》 ☆8 ATK/100→0
風を起こすことなく出現する風属性のモンスター。 暗い緑色の瘴気を纏う目に大きな隈がある少女、周りの空気は凪のように停滞しており病んだ笑みで遊月を見ている。
「大地を抉りその身に纏え、真空の巨人……! 《異界隷属 タイタン・エルダー》…………!!」
《異界隷属 タイタン・エルダー》 ☆8 ATK/100→0
現れる地属性のモンスター、土の巨人のように見えるがその実態は土を纏っている風。 風が巨人を象っているのだ。
「ここで四属性のモンスターが揃いました〜! 一体何が狙いなのでしょうか!?」
この二体のモンスターもまた、それぞれ風、地の属性を全モンスターに与え自分は属性を持たない能力をもっている。 だがそれでも場には攻撃力0のモンスターのみ。 ここからどうするのか?
「……リバースカード、永続トラップ……《エレメント・ヌルフィー》を発動…………!」
「ここで永続トラップ……?」
「このカードは……イオンのフィールドに4体の『エルダー』モンスターが存在する時発動できる…………。 フィールドの……炎・水・風・地の四属性として扱うモンスターのレベルの合計×500のダメージを相手に与える……!!」
「何っ!?」
フィールドには属性を持たないイオンのモンスター、そして炎・水・風・地の属性を付与された遊月のモンスター。 『ノガルド・ドラゴン』のレベルは8、よって4000のダメージが遊月を襲う。
「ぐおっ!?」
遊月:LP4100→100
「このトラップは毎ターン発動できる代わりに……存在し続けるだけでバトルフェイズが行えなくなる…………ターンエンド……」
イオン:LP8000 手札0枚 伏せ0枚
「あ、圧倒的ぃ〜! イオン選手による毎ターンバーンをしていく戦法はまさかこれほどまでとは! 未だ無傷のライフに遊月選手はどうする〜!」
「……エンドフェイズ……と言ったな……」
「…………?」
「じゃあリバースカードオープン! 《
このタイミングで発動させたトラップカード、一体何がトリガーで発動したのだろうか? 特殊召喚? カードの発動? いやいや……ダメージだ。
「俺がこのターン受けたダメージ1000ポイントにつき一枚、デッキから『異次幻界』モンスターを除外する!」
「こ、このターン遊月選手が受けたダメージは4000……つまり四枚の除外!?」
「俺はデッキから『ムルウォ・ワーム』2体と『エイブ・ビー』、そして『エソル・ローズ』を除外する!」
これで次のターン『異次幻界』モンスターが召喚可能に。 それでもライフは100、このギリギリの状況を打開できるのか?
「……遊月の奴……」
遠くから見ている遊日、そして一度デュエルしたメリアは見た。 遊月の顔を、楽しそうに笑顔を浮かべている遊月を。
「とても……楽しそう……デス♪」
TURN7 遊月:LP100 手札0枚 伏せ1枚
「俺のターン……ドロー!!」
カードを引く遊月の姿は、まだ勝負を諦めてはいなかった。
「マジックカード、《
「お互いのモンスターの攻撃力は0! 条件は満たしております!」
「除外されている『異次幻界』モンスターを全て特殊召喚する!」
「ペンデュラムのように4体同時召喚!?」
《異次幻界 ムルウォ・ワーム》☆3 ATK/1600→0 ×2
《異次幻界 エイブ・ビー》 ☆1 ATK/100→0
《異次幻界 エソル・ローズ》 ☆6 ATK/2100→0
同時に4体のモンスターの召喚、それはペンデュラム召喚を思い出させられるほど圧巻だった。 しかもこの布陣は……
「来るぞ……連続召喚が!」
以前遊日のデュエルで見た連続特殊召喚だ。
「レベル3の『ムルウォ・ワーム』2体でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!
外なら世界より飛翔せよ、《混沌異次幻界 エルガー・イーグル》!」
《混沌異次幻界 エルガー・イーグル》 ★3 ATK/2300→0
まずは紫色のマダラ模様を持った猛禽類。
「来た…………エクシーズ…………」
「続いてレベル6の『エソル・ローズ』にレベル1の『エイブ・ビー』をチューニング!」
「し、シンクロまで!?」
「交わるはずのない二つの異界、今一つとなりてこの世に混沌と崩壊をもたらせ! シンクロ召喚!
来い、《混沌異次幻界 ナハトエイヴェル・リバイアサン》!」
《混沌異次幻界 ナハトエイヴェル・リバイアサン》 ☆7 ATK/2700
次いで現れる巨大な海蛇、水飛沫を上げてフィールドに浮上する。
「ゆ……遊月選手……この土壇場で融合、シンクロ、エクシーズのモンスターを揃えたぁ!! し、しかし! まだ攻撃力は以前0! ここからどうする〜〜!?」
イオンは静かに呼び出されたモンスター達を見ていた。 だがその表情は微かにだが……揺れていた。 それに気づかない遊月は逆転のリバースを発動していた。
「リバースカードオープン! 《
「ここで永続トラップを発動したぁ〜!?」
「このカードは自分フィールドに『混沌異次幻界』モンスターが3体存在する場合に発動できる。 その効果は相手フィールドの表側で存在する全てのカードの効果を無効化だ!」
「こ、ここで無効化カード!! これで遊月選手のモンスターは属性の呪縛から解放されました!!」
《混沌異次幻界 エルガー・イーグル》 ATK/0→2300
《混沌異次幻界 ナハトエイヴェル・リバイアサン》 ATK/0→2700
《混沌異次幻界 ノガルド・ドラゴン》 ATK/0→3000
旧神達の呪縛から解放されたモンスター達はそれぞれ咆哮を上げる。 切り裂くような声、腹にまで響く号砲、身がすくむような怒号。 もうフィールドは遊月が制したと言っても過言ではない。
「さらに《紫界須臾結界》は、相手のカードが破壊された時、1体につき1つ、このカードに『フェムトカウンター』を1つ乗せる。 そのカウンター1つにつき『混沌異次幻界』の攻撃力は1000ポイントアップする!」「……いやらしいぃ〜コンボだなおい!」
遊日一人だけがこのカードと『ナハトエイヴェル・リバイアサン』のコンボに気付いた。 『ナハトエイヴェル・リバイアサン』は戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの元々の攻撃力以下の攻撃力を持つ相手モンスターを全て破壊する。 そしてイオンの『エルダー』モンスター達の元々の攻撃力は100、現在は0。つまり……
「バトルだ! 『ナハトエイヴェル・リバイアサン』で『フェニックス・エルダー』を攻撃!」
「現在の『フェニックス・エルダー』の攻撃力は0、よってダメージは発生しません!」
「だが『ナハトエイヴェル・リバイアサン』の効果は発動する! 破壊した『フェニックス・エルダー』の元々の攻撃力以下のお前のモンスターを全て破壊する!」
「ぜ、全体破壊効果!?」
「そして《紫界須臾結界》の効果、破壊されたのは4体、これで4つのカウンターが乗り攻撃力を4000ポイントアップさせる!」
《混沌異次幻界 エルガー・イーグル》 ATK/2300→6300
《混沌異次幻界 ナハトエイヴェル・リバイアサン》 ATK/2700→6700
《混沌異次幻界 ノガルド・ドラゴン》 ATK/3000→7000
崩壊するイオンの布陣、そしてそれに比例するかのように強化されていく遊月のフィールド。 そして確定されたであろう遊月の勝利に、会場にいる全てのデュエリストは思った。 『この男は強い』、と。
「トドメだ! 『エルガー・イーグル』と『ノガルド・ドラゴン』でダイレクトアタック!」
「……………………ッ!」
イオン:LP8000→0
「き、決まったー! 二転三転のデュエルを制したのは新時 遊月!!」
「ふぅ……疲れた」
「…………」
「あ、おいガキ……」
一息つく遊月、だがイオンはそそくさと会場の隅の方に移動してしまう。 その後ろ姿を訝しげに見ていた遊月だったが、遊月もすぐに遊日の元に戻った。
その後、翌日の予選の時間やら色々な話を聞き、前夜祭は幕を閉じた。 この夜、誰もが遊月を大会で用心すべき相手だと認識したが、誰一人としてあることに気付かなかった。
それは……
「…………ニマッ」
会場の隅に移動している時のイオンの笑みだ。
『異界隷属』のモチーフはゲームなどで姿を定められてしまった精霊や幻獣です。 下級はコントロール奪取、上級は攻撃力0化です。 使いづらそう。(小並感)
次回の投稿は未定です。 3ヶ月空く可能性があるので記憶から消しといてください。
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。