勉強を教え始めて2時間弱
翔「偉いね、ちゃんとできてる」ナデナデ
奈々美「えへへ♪」
翔「どこかで…同じ様なことがあったような…」ボソッ
1人でポツリと呟く。
奈々美「お兄ちゃん?」
翔「あ、ごめんごめん。なんでもないよ」ニコッ
そんな何気ないひと時が過ぎようとした時。
悠美「おにいいぃちゃぁぁぁん!」ムギューッ
翔「っととと。どうしたの?」
悠美「見て見て!」
そう言うとさっと何かを見せてくる。
翔「珍しいね!オオクワガタだ!」
悠美「でしょ!さっきそこに止まってたの!」
不思議な感覚だった。
勉学、虫好き、全てが体に染み付いたものであり、自覚なくともそういった単純なことだけは本能として残っていた。
翔「ん?」
なにか腰あたりに違和感を感じ、ふと見下ろすと奈々美がしがみついていた。
奈々美「ううっ…!」
翔「もしかして…」
皐月「そう、奈々美は昔から虫が苦手なのよ」クスッ
悠美「あ、ママ!♪」ギューッ
簡単に整理できた。
悠美 甘えん坊、活発
奈々美 内気、おとなしい
翔「甘えん坊さんだね」
皐月「そうなのよ。この子親離れできるかしら」クスッ
翔「きっと大丈夫ですよ」ニコッ
奈々美「お兄ちゃんは…私のだもん!」
いっそう強く腰あたりに力を込められる。
悠美「むぅ!私の!」
腕をぐいぐいと引っ張られる。
翔「いや、とりあえず痛い」
が、2人の耳には届くはずもなく、仕方なく引っ張って悠美を右に、奈々美を左の膝に乗せた。
皐月「まあ!翔くん力もちね!」
無意識に力が入っていた。
数々の戦地を繰り抜けた彼の体はまだ健在だった。
翔「僕自身信じられない…」
奈々美「び、びっくりしたぁ…」
悠美「お兄ちゃんすごい!」
そんな2人の発言を無視し、海を眺める。
何故か海が懐かしい。
まるでなにか海にいて、呼ばれているように。
皐月「そういえばね、あなたが落ちていたところにこんなのがあったのよ」
そう言うと丁寧に風呂敷に包まれた長い物を持ってくる。
そっと前に置き、風呂敷をはだけると綺麗に研がれ、磨かれた日本刀が姿を見せた。
翔「これは…」
皐月「あなたが握っていたのよ。しかも血のような痕があって。でも錆びかけていたからあの人が研いでくれたのよ」
翔「少し、触ってみても?」
皐月「きをつけてね?」
そっと柄を持ち握り込み、刃を見つめる。
ギラリと光る刃。光に反射し、水色の鮮やかな色を放つ。
奈々美「綺麗…」
悠美「わぁぁ…」
膝にいる2人も刃に見入っている。
しかしあることに気づく。
翔「これは…」
皐月「どうしたの?」
翔「名前が彫られてる」
ギラリと光る刃の鍔の部分に「金山 翔」と彫られていた。
皐月「金山…翔。もしかして…これがあなたの?」
翔「もしかすると…そう、かも」
しかしさらなることに気がついた。
皐月「じゃあ、あなた…もしかして人を…」
翔「……殺した、ということなのか…?」