その日の夜。
部屋の明かりを全て消し、気分を落ち着かせる。
パソコンを取り出し、ディスクを入れると一つの音声ファイルが入っていた。
恐る恐る再生ボタンを押す。
母「翔、久しぶり」
父「覚えているか?父さんだ」
母「まずはあなたに謝らなきゃいけないわね…ごめんなさい」
父「すまなかった…」
母「あの時のお母さんはどうかしてた。あなたに酷いことばかり言って、苦しめて、あげく軍学校に放り込んで捨ててしまった」
父「母さんだけが悪いんじゃない、父さんもだ。お前のことを最後までまもってやれなかった」
母「雪菜がそっちに行ったことは知っているわ」
父「身勝手かもしれないが…雪菜のことを頼む」
母「今もまた、雪菜かって思ってるでしょ?でも、今はあなたしか頼れないの…ごめんなさい。きっとあなたがこれを聞いている頃には私達はこの世界にいないかもしれない」
父「父さんが会社をクビになってしまってな…収入もないし、借金をしてたんだ…それも返せそうにない…雪菜には悪いが父さんたちが死ねばこの家も土地も全て使って返済する、お前には迷惑をかけないつもりだ…しかし雪菜やお前には生きてて欲しい」
母「雪菜から、時々手紙を貰っていたの…中尉で提督なんだってね…よくがんばったわね…収入もそれ相応に安定してると思うわ。それはあなたの努力の結果なの、だから最後のお願い、そのお金でどうか、雪菜を学校に通わせてあげて、母さんたちのお葬式もなにもいらないから…」
父「本来なら父さんの役目だが、お前しか頼めない。すまない。お前がいなくなってから雪菜も成長して、大きくなった。雪菜がふと言ったんだ、お兄ちゃんは?ってな」
母「あの子には悪い子だったって言ったけど、今なら分かる…あなたはあなたなりに、私たちに気を使ってくれた、優しい子、こんな酷いことをしたのに優しくしてくれる、本当に良い子…」
父「翔、産まれてきてくれてありがとう…!父さんや母さんが奪ってしまった分、幸せに生きてくれ…」
母「翔、お母さんも!大好きよ!あなたが産まれて来てくれた時、どれほどの幸せを感じたか!最後に、顔だけでも…見たかった…!でも、それは今更あなたには許してもらえないだろうし、できない…!ごめん…!ごめんね!」
父「じゃあな、翔!幸せにな、雪菜をたのむ!」
母「翔!さよなら…!」
プツンっ…
提督「…!」
手が震え、歯をギリギリと噛み締め、ひたすら自分を責めた。
いつまでも親を憎み、顔さえも見せなかった自分を。
自分のこと認め、信頼し、雪菜を任せるまでに、自分のことを信じてくれた両親のことをうたがった自分を…
ただ泣くしかなかった…
声をあげ、後悔の言葉を吐き散らし、悲しみを全てうなり声のように声をあげて泣き叫んだ…
その時ひらりと机の上から写真が落ちてきた、ケースに挟まっていたのだろう。
そこには
20xx年8月23日
我が子と
写真には
笑顔で小さい頃の提督を抱きしめ、笑顔でいる母と父が海を背景に写っていた。
提督の写真の真下には大好き!
と一言書かれてあった。