1話~10話まで一部手直しに付き、差し替えました。
2018.2/25
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。
MMORPG『
略して「MOL」、または「
キャッチコピーは「君の紡ぐ冒険と魔法が今、伝説になる」
ファンタジー定番の中世ヨーロッパ風の世界観で、祝福された大地グラングローア大陸を舞台に未知の冒険と栄光を求めてプレイヤー達は数々のクエストをこなして魔法を始めとした様々なスキルを取得し、キャラを成長させて時に所属の違いから戦い合い、時に共に手を取り合い世界を冒険していく。
しかしその冒険も進むにつれ魔族が姿を見せ始める。魔王復活を目論む魔族たちと戦い、それを阻止するために伝説の魔法、あるいは究極の魔法剣『ウルティマ』を求めて、というのが大まかな「MoLO」のストーリーだ。
自由度が高く、「
豊富な魔法スキルを始めとした1000を超える様々な取得スキルとステータス配分によって各職種のタイプへキャラを自分好みに育てていくシステムとなっていて、プレイヤーの選べる種族は人間・エルフ・ダークエルフ・ドワーフ・ワーウルフ・ワーキャット・ドラゴニアンの六種族。さらに同じ種族でも性別によって若干ステータスが変化する。
そして「MoLO」はそのタイトルやキャッチコピーから分かる通り「魔法」に力を入れていて、魔法はルーン文字をモチーフとした創作文字である「魔法文字」によって構成されており、スキル『魔法構築』によって取得している魔法スキルの「呪文」を基に一文字ずつの「魔法文字」に分解し、それらを4文字から15文字まで組み合わせて独自の魔法を作ることができる。
またスキル『魔闘技研鑽』は『魔法構築』で分解した「魔法文字」4文字から6文字と取得している戦闘用のスキルを組み合わせ、いわゆる魔法剣などを作ることもできた。
プレイヤーはLv15以上になると黄、赤、青、白、黒の5つの国の中からいずれか一つ所属を選べる(条件を満たせば所属変更可能)。
所属する国は以下の5つ。
黄(中央):フリアヒュルム皇国。
200年前に現れた魔王を討ち倒した勇者が興した国。すべてのプレイヤーたちのスタート地点。
赤(南):ルベール王国。
温暖な海に面した国。航海技術に優れ、大陸最大と言われる武力を持った騎士団を有する。
青(東):カルレウス共和国。
民主的な商業国家。バザーや大オークションが有名で大陸中の物品が集まる。
白(西):アルブレス聖霊国。
あふれる緑と水の自然豊かな国。王都は芸術の都と呼ばれ、エルフや獣人の国がある。
黒(北):ウィーリディス帝国。
学術都市のある技術国。ドワーフやドラゴニアンの国があり、多くの鉱山を有し、製鉄技術に秀でている。
所属した国による国家間の戦争(PvP)イベントは勿論、所属する国が違う者同士がPTを組まないと受けられないクエストやPTメンバーの所属する国の組み合わせでストーリーやクリア報酬が変化するクエストなどもある。
あとはプレイヤー同士が集まり立ち上げるクランもあるが、MMOではド鉄板のシステムなので特に説明は要らないだろう。
ちなみにオレが入っていたクランの名は「聖なる泉の戦士たち」だった。
突然の弐 『姫騎士』
「『憂いなく備えよ、さすれば万事こともなし』とは良く言ったものよな」
鎧と言ってもサークレットにペンダント、胸当てと篭手と脚甲だけの軽装だ。それでもドレスと合せて高度な魔術をふんだんに使って作られ、近衛師団の
まさに作らせた父上とフォルト兄上の親バカと兄バカのなせる技であろう。そのようなこのとに民の血税を使うなと言いたいとろではあったのだが、何処から聞きつけたのか民達が妾へ贈る鎧の噂を妾より先に聞きつけ、老若男女大人も子供も素人玄人問わずそのデザイン画を門番の騎士などを通して送ってきて、挙句に城下中の腕自慢の鍛冶師や服飾士が如何か作らせてほしいと名乗り上げてくる始末。
一種の祭りとなってしまってはもはや要りませぬなどと断ることさえもままならず、出来上がった物を身に纏い城下町を馬に乗ってパレードすることになったのは今では良い思い出、であったと信じたい。
妾の名はウィータ、ウィータ・レヴェラ・フリキュア、歳は数えて14になるグラングローア大陸中央に位置するフリアヒュルム皇国の第3皇女だ。
此度は多忙となった国皇である父上と皇太子であるフォルト兄上たちに代わり、妾が領地への視察に向かうこととなった。物々しい護衛の騎士たちに護られていなけらば馬車に揺られながらの小さな旅といえるほど長閑な時を過ごしていた。
そのような旅の道中に何故いきなり戦支度なぞしているのかと言えば、原因は馬車の外にある。
ゴ ア ア ァ ァ ァ ァ ア ア ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ッ ! !
革鎧と青銅製の武器で武装したゴブリンとオークの群れと共に現れた一匹の地炎竜、ヒートドラゴン。
人並みの武装を揃えて徒党を組んだゴブリンやオークは厄介だが、―― 群れの後方にゴブリンメイジやオークメイジもいるらしいが、それでも ――護衛に付いてくれている精鋭たる騎士たちの敵ではない。
問題は共に現れたヒートドラゴンだ。
間断なく攻めてくるオークとゴブリンを蹴散らしたくともヒートドラゴンの一挙手一投足がそれを阻む。既に護衛に付いて来てくれた騎士たちの半数が、尻尾による痛恨の一撃や吐かれた炎のブレスで命を落としている。
それでも今の今まで馬車までヒートドラゴンの攻撃を届かせなかったのは彼らの献身のなした奇跡と言えるであろう。
ヒートドラゴン。
グラングローア大陸は火山帯に生息し、成竜となれば溶岩を湯船のように寝床とし、吐く息は炎となり、皮膚は常に燃えるように熱く、灼熱の気を纏うその身はただそこに在るだけで周りに燃える物あらば容赦なく全てを焼き尽くす。
戦うこととなっても近づくことさえままならぬがゆえにグラングローア大陸でもっとも恐れられる竜種三指の一つに数えられている。
現れたヒートドラゴンはまだまだ年若いゆえ、体躯は小さく灼熱の気を纏うておらぬのがせめてもの救いか。
「姫さま」
フィリアが鎧を着付け、動きを確かめ終えた妾へ絶妙のタイミングで我が愛剣を恭しく捧げ持ち、差し出してくる。
妾より一つ年が上のフィリアの母は妾の乳母だった。よって妾とフィリアは乳姉妹として幼き頃より共に在ったゆえか、気心知れた気の置けない友人か姉妹のような関係で、フィリアは妾の考えや息を読むのに長けている。それを心地よく思う。反面、隠し事が出来ぬのが少々難点とも言えたが。
「フィリア? 」
愛剣を受け取ろうとするもフィリアは手を離さず受け取ることが出来なかった。
よくよくその
どのような状況、どのような相手であれ、動揺や心意を覚らせぬように、何より主たる妾を不安にさせぬよう、安らげるように常に柔らかな微笑を絶やさぬフィリアが、このような表情を見せるのは今では身内でも滅多にないことだ。
「………フィリア、そのような顔をするでない。そなたらしくないぞ」
理由は分かるゆえに溜め息をひとつ。
公務で王都から離れたところへの襲撃。しかもオークやゴブリンだけならば偶然で流せられるが、悪名高きヒートドラゴンも共にとなれば偶然であるはずがない。
そも、妾たちの今いる地域には小さな火山一つないのだ。フリアヒュルム皇国でヒートドラゴンが住処にしそうな火山と言えば国の南、王都から馬車でひと月ほどの道のりを要するルベール王国との国境近くに在るジャールキー火山のみだ。
年若いといえどヒートドラゴンだ。住処の火山から出たとなれば、しかも移動にひと月以上も掛かるような場所に現れていながら今の今まで人の目に付かなかったなどありえぬ。ヒートドラゴンの噂となれば必ず王都まで届き、父上の耳に入っていなければおかしい。
しかし、現にそのような噂ひとつ立っておらず、妾たちの前にヒートドラゴンがいる。
考えられることなど余程の阿呆でない限りは察しが着く。魔法によって召喚、使役されて妾たちを襲ったのだと。
宮廷魔導師クラスの腕がある魔導師が三人ほど集まり、儀式魔法の手間をかければ年若いドラゴン一匹、召喚使役くらいできよう。付け加えればあと一人二人腕の立つ魔導師が居ればオークとゴブリンの群れを操り、拙い連携も取らせられよう。
つまるところ、これは妾を狙った「暗殺」ということだ。
皇族とはいえ小娘一人の暗殺にヒートドラゴンを引っ張り出してくるのはやりすぎだと思うが、それだけことを企てた「輩」にとって妾は目の上のコブであったのであろう。
第2側妃である母上が平民の出ゆえに妾の振る舞いが下賎だとか―― まぁ、習い事や公務の合間に度々息抜きと称してフィリアと共に城を抜け出してはお忍びで城下町を遊び回っているのは事実ではあるが、卑しい真似などしたことはない ――、しかし末娘と言うこともあって父上始め兄上姉上たちに可愛がられ、剣に魔法に非凡な才があると言われ、母上のことなどもあって民達に慕われている。
それらを合せ皇位継承権は低いが父上とフォルト兄上に対して小さくない発言力を持っているというのが、殺したいほど気に喰わないのであろうよ、「アレ」は。
この暗殺が他国の差し金という線もあるが可能性は低い。今のところ他国との外交関係は良好、妾が知る限りでは戦争を起こそうなどという不穏な動きもないし、妾を亡き者にしようと思うほど他国にとって妾は重要視されていない。精々民に人気の御転婆姫といったところだ。
魔族という可能性もなくはないが、この暗殺は十中八九「アレ」の差し金であろう。
「この襲撃が「暗殺」である以上、妾たちだけで逃げたところで護衛を失った孤立無援、再び襲撃されて終わりなのはそなたも予測できていよう」
それは今も妾を護るために戦ってくれている騎士たちの忠義を、我が身を賭した彼らの献身を無為にしてしまう。
さりとてこのまま引き篭もっていても同じこと、なれば妾は打って出る。騎士たちを戦友にドラゴンと切り結んで見せようぞ。
「………姫さまのことですから、死に花咲かせようなどというお考えは塵のひとつもないことはわかっております。ですから打って出られることはお止めいたしません」
溜め息と共に暗い気を吐き出したのか、フィリアはいつも通りの微笑を―― どこか呆れまじりではあったが ――その顔ばせに浮かべた。
「ただ、騎士たちの先頭に立って突撃するような真似はなさいませんように」
「むぅ」
「むぅ、ではありません。
大方「竜殺し、なんと甘美な響か」、などとも考えていらっしゃるのでしょう」
「しかしだな、剣を振るう者であれば誰しも一度は夢描く浪漫なのだぞ」
「なにが「剣を振るう者であれば誰しも一度は夢描く浪漫なのだぞ」、ですか。そんなことを真顔で言うからアルやジョンたちに「ヒメちゃんマジチユニィビオー、ハハハワロスワロスw」、なんてわけのわからないことを言われるのですよ」
声色だけでなく身振り手振りの仕草まで特徴を捉えた物真似を披露しながら諌言するフィリア。どうやら本調子に戻ったようだ。
しかも調子が戻ると早々に「死ぬならば死に様は己で決める」と内心で死を覚悟していたらしからぬ妾に、いつもの妾であればこうであろうと諌めてくれている。
自然と笑みが浮かぶ。
絶対に大丈夫だ。ドラゴンに勝てずとも必ず生きて母上たちの下に帰れるのだと、そう強く思えた。
余談だがアルとジョンとは道具屋と鍛冶屋の息子で、お忍びで知り合った
二人とも頭は良いのだが、偶にわけのわからない言動をするのが玉に瑕ではある。
To Be Continued………