【凍結】 突然転生チート最強でnot人間   作:竜人機

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 もう少し商談シーンをどうにか出来なかったかと自己嫌悪中orz

2016.3/10
21話~31話まで一部手直しに付き、差し替えました。

2018.3/4
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。




21 「これが俺たちのホームか」

 

 

 

 

 

 

 ― side:フェフ ―

 

 

 俺たちはやっとアルブレスの「フストレー」に到着した。まあ、着いたのは夜で、運悪く検問待ちで門限に間に合わずに朝まで待たされて、アーズやタロウスのことで検問の際にまたひと悶着あったりしたが、幸い門番が俺たちの知り合いだったので、俺たちが保証することですぐに街中へ入れた。

 

 後はいつも通りにアーズたちは商人向けの宿を取り、俺たちは冒険者向け宿へ向かうはずだったんだが、ここでアーズが俺たちの拠点購入に興味があると言い、頼まれて冒険者ギルドで待ち合わせすることになった。

 

 

 

    突然の拾陸「マイホーム購入」

 

 

 冒険者ギルドでアーズたちと落ち合った後、俺たちは早速拠点になる物件を融通してくれる知人、ロドスの友人でスローン不動産に務めるウルススという人物の下へ向かう。

 

 スローン不動産はフストレーの中央広場から、南門へ伸びる大通りを中ほどまで進み、道具屋と料理店の間の道へ曲がった奥にある、一見すると貴族の別邸などと見間違えるほど立派な赤煉瓦に青色の屋根の建物だ。

 

「お久しぶりだやなウルスス。元気しとーとか」

 

「ああ、ロドスさも元気しとーで何よりだ」

 

 スローン不動産の門戸を潜り、ロドスの名前でウルススさんを呼んでもらうと、直ぐに身形の良い熊頭の獣人の男性がやって来た。彼がウルススさんだろうか?

 

 ちなみに大勢で押しかけるのもなんだろうということで、俺とロドス以外の皆には外で待ってもらっている。

 決してアーズの強面ぶりで悶着起きるのを避けたとかではない、と一応言っておく。

 

「紹介するべ、ウルスス。このヒトっとはフェフ。おらぁがはいっととクランのリーダーと。

 フェフ、彼はウルスス。おらぁと同郷の友人だ」

 

「おお、話は聞いとっとよ。ロドスさ世話になっとーとで」

 

「い、いえ、世話になってるのはむしろ俺の方で」

 

 少しどもりながらも、社交辞令ではなく本心から思っていることを口にする。

 実は慣れない場というか、貴族の邸みたいな不動産屋に入ったせいかちょっと緊張している。

 

「んで、ロドス。クランのリーダーさと連れ立って来とーとばゆーことは、商談か? 」

 

「んだ。いよいよおらぁたちも拠点(ホーム)を持とうゆーことばなっとーとよ。

 そっだならと、不動産に務めとーウルススに頼らせてもらおうとなったと」

 

「そうか、ではこちらへいらしてください」

 

 突然田舎訛りがウソのように消え、キリリッとした態度でウルススさんは俺たちを応接室へと案内しだした。どうやら仕事モードに入ったらしい。

 

 応接室に通され、勧められるまま高そうなソファーに座る。しばらく待たされた後、ウルススさんが資料だろうか? 紙の束を手に戻って来た。

 

「さて、拠点購入とのことですが、資金はどれ程の御用意がおありで? 」

 

「資金は20(リオム)あります。それでお願いできますか」

 

「20Lですか。そうなりますと、これらになりますね」

 

 そう言ってウルススさんは紙の束、資料から3枚の紙を抜き出し、テーブルに並べた。

 

 手に取って見せてもらうと、一枚目は邸宅で場所は街の西側、大通りなどから離れたところにあり、二枚目は元宿屋で場所は南門の大通り外れにあり、三枚目は元鍛冶屋で場所は街の東側で中央広場よりにあると書かれていた。

 

 一枚目の邸宅は中央広場にあるギルドから一番遠く、徒歩ではどこへ行くにも不便だそうだ。

 二枚目の元宿屋は大通り外れ、南門よりの奥まったところにあり、人目に付き辛いとか。

 三枚目の元鍛冶屋は三つの中で一番立地は良いが、大掛かりな改築が必須となっている。

 

 まず、元鍛冶屋は除外で良いだろう。ギルドのある中央広場に一番近いという立地は良いとしても、大掛かりな改築をしないと使えないのでは魅力半減だ。

 邸宅は改築なしで使えそうだが、ギルドから一番遠いからこれも除外。

 

 消去法で残る元宿屋に決定か。人目に付き辛いのはあまり俺たちには関係ないし、外れとは言え大通りに面しているから中央広場にあるギルドからもそう遠くはない。

 

「二枚目の宿屋で決まりかな」

 

「んだな、それが一番良いべ」

 

 ロドスと一緒に見比べて答えを出す。

 

「お決まりですか? 」

 

「ええ、これでお願いします」

 

「では、実際に物件を見に行ってみますか」

 

「はい。お願いしま、ってああそうだ」

 

「どうかしましたか? 」

 

「いえ、連れというか、クランの仲間と購入する物件を見てみたいっていう友人を外に待たせていて」

 

「この物件なら馬車での移動もいらないでしょうから、大人数でも大丈夫でしょう」 

 

 笑顔でそう言ってくれるウルススさん。

 

 その笑顔もアーズと対面するまでだったが………

 

 

 ウルススさんに案内されてきた物件、元宿屋は二階建てで一階は酒場になっていて、イスやテーブルが壁際に積まれていた。そして入り口正面から右手側の壁際に二階への階段があり、一階の奥には調理場や地下倉庫に住居スペースが。後、広い中庭があって井戸と馬屋もあった。

 二階にある客室は階段を上った正面に2人部屋が二つあり、そこから宿の入り口側へ廊下が伸びていて一人部屋が四つ並び、その行き止まりに、宿屋正面に4人部屋が一つ。

 客室にベッドなどはそのままあったが、生憎と枕やシーツなどは取り払われていた。まあ、なくても野宿と比べくもないだろうし、資金が貯まったら順次買い揃えていけば良い。

 

「なかなか良いじゃない」

 

「……ステキ、ですね」

 

「お、お~~♪ 」

 

 それぞれ思うように感想を口にするリザとマリー。リュコは駆け回るように各部屋を覗き回っては歓声を上げている。

 アーズとシャンフィは興味深げに見回しながら俺たちについて回っている。

 

「ホントに金貨20枚で買えるのか、何かあるンじャないか疑いたくなるナ」

 

「ハハハ、心配せんと何もありゃしないと。

 元々ここば老夫婦ばやっとっと宿で、歳で続けられんとーなったとから3年前に売りに出されたと。

 何か不具合があるだの、幽霊が出るだのと不良物件ではないべ。

 まあ、20Lで売るんはギリギリだべがな」

 

 あまりに良い物件からか、20Lで購入出来るのは何か理由があるのでは、と疑うブークの言にウルススさんは朗らかに笑い理由を述べる。

 ギリギリとのことだが、もしかしたら20L以上行く値段で、かなり融通してくれたのかもしれない。

 ロドスが友人とは言え、過分すぎな気がするが、それだけの物がロドスとウルススさんの間にあったのだろう。

 

「さて、気に入ってもらえたようで何よりだが、改築はどうするね?

 するならウチで業者を手配するが」

 

 と、仕事モードに戻って聞いてくるウルススさん。しかし残念ながら改築に手を出せる余裕は今の俺たちにはない。

 

「いや、さすがに改築までは……」

 

チョドドギギザソグバ(ちょっと良いだろうか)? 」

 

「えっと、ちょっと良いだろうかって」

 

 「手が出ませんよ」と続けようとした時、一歩ひいて俺たちについて回っていたアーズたちが声を掛けてきた。

 ウルススさんがその声にビクリとしたのはご愛嬌だろうか。

 

 アーズはそんなウルススさんを見てか、肩掛けのバックから藁紙の束を留め押さえた板と魔道具のペンを取り出し、筆談の準備を始めた。

 そしてなんだなんだと寄ってくる面々。

 

[かいちく の ひよう は おれに ださせて もらえないだろうか。

 かわりに いっかい を こうぼう として つかわせてく れないか]

 

「おいおい、幾ら一階を使わせてくれつッたてよお、そりャあ世話にナりすぎるッて」

 

 突然の申し出に驚いたのは俺だけではなかったようで、ブークが皆を代表するように声を上げた。

 ブークの言う通り、今まで牛車でこのフストレーまで送ってもらっただけでも充分すぎる恩だと言えるのに、その上に拠点の改築費用まで出すというのは。

 

[こんな なり の じぶん を おそれず に むきあって くれる ひと は きちょう だ。

 このまま やくそく を はたしたから さようなら と えにし が きれる のは おしい]

 

 「ありがたいがさすがにそれは」と断りの言葉を言おうとしたが、藁紙へ新に書き出された文字に俺は押し黙った。

 確かにアーズは行く先々で悶着を起こしていた。本人は至って紳士的に応対しているのに、その容貌から相手側が勝手に恐れを抱き、誤解して行き違う。

 そんな中で―― リュコがいたからこそなれた関係ではあるが ――恐れず誤解せずに接する俺たちはアーズにとって確かに得難い存在なんだろう。

 

「フィーと一緒」

 

 リュコがシャンフィにきゅむっと抱き、俺をじーと見つめて、「さよなら、メッ」とその目で訴えてくる。

 

「……あの、改築費用、出してもらうのじゃなくて、借りることにすれば………良いんじゃ、ないでしょうか」

 

 控えめ手をあげて尻すぼみに提案してくるマリー。彼女も言外に「お願いします」とその目で訴えてくる。

 どうしたものかとリザやロドスに目を向ければ、リザはアンタがリーダーでしょとため息を吐き、ロドスはこれもお導きだと祈りを捧げている。最後にブークを見やれば、お手上げのポーズをとられた。

 

「ハァ、わかった。アーズの申し出を受けるよ。

 ただし、改築費用はマリーの提案通りに借りるってことで」

 

[ありがとう]

 

「礼を言うのは俺たちの方なんだが」

 

 アーズが礼の言葉を文字にしてきたが、俺は苦笑を浮べて手を差し出した。

 

ガサダレデ(改めて)ボセバサジョソギブダボル(コレからよろしく頼む)

 

「改めてこれからよろしく頼む、だって」

 

「こちらこそよろしく頼むよ」

 

 この縁はそう簡単に切れないさ、というように固く握手を交わした。

 

 

 

 

 

         To Be Continued………

 


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