【凍結】 突然転生チート最強でnot人間   作:竜人機

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2016.3/10
21話~31話まで一部手直しに付き、差し替えました。

2018.3/5
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。




24 「オレはいらない子なのだろうか……」

 

 

 

 

 カサ ガサ カサ カサ カサ ッ

 

 

 暗い暗い森の中。

 

 闇夜を走る一つの影。

 

 ソレは逃げていた。

 

 ただ必死に。

 

 巣に蔓延った恐ろしいモノたちから。

 

「……………」

 

 しかし、不意に腹がく~く~と飢えを訴え、ソレは歩みを止めた。

 

 

 そして獲物を求めて森を彷徨い出した。

 

 

 

    突然の拾玖「行商、そして? 」

 

 

 フストレーの街を立って五日目の夕暮れ時。遠くに大きな山を見据える「サンザ」の村にオレたちは到着した。

 

「う、ウチの村でぎょ、行商をしたい? 」

 

ガガ(ああ)ガグギヂビヂザベゼロギギバサ(明日一日だけでも良いから)ガビバギゾガゲデブセバギザソグバ(商いをさせてくれないだろうか)

 

「えっと、明日一日だけでも良いから、商いをさせてくれないだろうか、って言ってます」

 

 そして毎度怖がられながら、行商の許可を得るため白髪のご老人、村長と交渉中である。

 ちなみにタロウスについては村について早々に説得済みで、村に逗留できるようはなっていた。

 

「あの、売る物は主にお鍋に包丁にハサミに針の金物の雑貨類と細工物(アクセサリ)、布に糸や紐、塩と砂糖なんかを扱っていて。あ、後、薬草も扱ってます。お声を掛けてくれればアーズさんが調合するそうです」

 

 シャンフィが通訳で頑張ってくれているのに対し、レイルも何かしなければと思ったのだろう。援護するように売り物について説明をしてくれた。

 説明してくれた他に子供向けにぬいぐるみと木剣の玩具や、砂糖を控えて2cm角にすることで原価を抑えた小さいクッキーやビスケットのお菓子がある。

 

「あんたは、その、薬師、なのかい? 」

 

「いえ、薬師というよりはお医者さんです。アーズは医術に精通していて、魔法も色々使えるんですよ」

 

 調合と聞いて村長は薬師に思い至ったのだろう。恐々ながらオレをまじまじと見つめ問うてきた。

 オレが頷いて答える前にシャンフィが答えて訂正する。まあ、確かに薬師より医者の方が需要はあるから、セールスポイントは高いか。

 

「……わかった、村の広場を使ってくれて構わない。

 ただ、問題だけは起こさんでくれ」

 

ガシガドグゴザギラグ(ありがとうございます)

 

「ありがとうございます」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 許可をくれた村長へ三人でお礼を述べ頭を下げた。

 

 

 

「針5本と白い糸ですね、455(カヒイ)になります」

 

「塩は20ラグムで1,500Kになりますね。はい、ありがとうございます」

 

 翌日。村人の仕事が一段落つく昼に店を開く。と言っても藁編みの敷物を広げて商品を並べるだけだが。

 

 相変わらずオレは怖がられているが、シャンフィとレイルの頑張りでかなり売れている。

 この調子で他の村でも行商が出来て物が売れれば赤字にならずに済みそうだ。

 

 で、オレは何をやっているかといえば、はやてを肩に乗せてシャンフィとレイルから離れて商いを見守っていた。

 

 うん、薬師とか医者としてスタンバってても、お客さんたちを怖がらせるだけだろうからってことで、万が一フトドキ者が出ても大丈夫なように、一歩引いてそれとなく目を光らせることにした。まあ、リザとマリーがいてくれるのでそれも必要ないような気もするが。

 

「焼き鍋(フライパン)、5,400Kです。ありがとうございました♪ 」

 

「その万能包丁は1C2,500Kになります」

 

 頑張るふたりに見てるだけのオレ。

 

 もしかしてオレ、いらない子………

 

 気付きたくなかった事実にヘコみながらも商いは順調に進み、後は翌日村を発つだけだった。事件の噂を耳にするまでは。

 

 

 それはサンザ村の一軒宿一階にある酒場で夕食を取っていた時だった。

 他のお客さんを怖がらせないよう隅の席で固パンに野菜スープの食事を取っていると、不意にカウンター席で話している村人の言った言葉を耳が拾った。

 

「……がアラクネを森で見たら………」

 

 ≪アラクネ≫

 ファンタジーモノに出てくる蜘蛛のモンスターで、上半身が女性で下半身が蜘蛛の魔物だ。

 ギリシア神話「変身物語」に出てくるアラクネーという優れた織り手の女性の話が大本のモデルとなっている。

 

 「MoLO」にも当然登場し、上級中級者向けの大型モンスターとして知られていて、倒すと得られる素材アイテム、「アラクネの糸」などは服飾系の上級中級装備の製作では欠かせないアイテムだった。

 

「アラクネ、()

 

『アーズ? 』

 

 もしアラクネの糸が取れるなら、何か良い装備を作れないだろうか? 

 一匹から得られる量は限りがあるだろうから、売り物と言うよりはシャンフィとレイルの装備用に欲しい。

 

[あらくね が もりに でたらしい。

 かうんたー のほうで、そんな はなしを している]

 

「アラクネが?

 確かにこの辺りに生息地があるって聞いたことがあるけど。でも、山からは下りてこないって話しよ」

 

 情報を求めて筆談用の麻紙に書き込めば、リザが情報をもたらしてくれた。

 

[そうびの さくせいに あらくねのいとが ほしいんだが]

 

「アーズの実力はどうか知らないけど無理よ、そんなの。

 アラクネは成体なら全長3メルト前後もあって、一対一パーティー、Bランク以上の腕利きの冒険者6人でやっと戦えるレベルよ。

 フェフたちが一緒でも勝てるか怪しいし、どんな物を作る気か知らないけれど割に合わないわ」

 

 うーむ、絶対にほしいというわけではないし、諦めた方が良いか。

 オレ一人で狩りに行くという手もあるが、一人抜け出してまでやらなければならないことでもない。何より一人でなんでもなんて慢心やらは持ちたくはないしな。

 

[わかった、あきらめよう。

 ぜったいに ほしいと いうもの でも ないしな]

 

 アラクネの話はそれで終りとなった。その場では。

 

 

 

 翌日の朝。またアラクネの話が出てきた。

 

 話題を振ったのはオレではなく、村を出立する挨拶に村長の家に赴いた際に、その村長たちからだった。

 

「本当にアラクネが……」

 

「冒険者ギルドに依頼を出すべきだ」

 

「依頼料はどうする、村中の金を集めても足りるとは」

 

「なら、フストレーの自警団に頼るのはどうだろう」

 

「たった一人が遠目にアラクネを見たというだけで、被害は出ていないんだ。来てくれるかどうか」

 

 と言う内容の話し声が、集会所ともなっているらしい村長の家から聞こえてきたのだ。

 どうやら思っていた以上に噂は大事になっていたらしい。

 

「キーゴ、お前さん本当にアラクネを見たのか、何かを見間違えたんじゃ」

 

「俺が何年猟師をやってると思ってんだ。遠目だろうと何かを見間違えるようじゃ猟師なんてやってられるか。

 大体アラクネなんて特徴的な魔物、森ん中で一体何と見間違えるって言うんだ」

 

「それは、しかし……」

 

 話を聞いたオレは昨夜下火になったアラクネへの興味を再燃させた。

 ここで村に何がしかの恩を売れば、アラクネをどうにかできれば、少しはオレを受け入れてくれるかもしれないという考えが浮かんだ。打算的だが、村も助かるのだから間違ったものではないはずだ。

 

 オレはシャンフィたちの顔を見回し、最後にリザとマリーに視線を合わせた。

 

「……討伐は無理よ。

 まあ、本当にいるかどうか確かめるっていうだけなら、このメンツでもどうにかできるかもしれないけど」

 

 溜め息一つ吐いて、リザは消極的ながら賛成してくれた。マリーも同様のようで頷いてくれた。

 

「え? も、もしかして、アラクネ討伐を請ける気なんですか!? 」

 

 どうも顔を見回した時、意味に気付いていなかったらしいレイルが声を上げる。

 

「ムリムリムリ、無理ですよ!

 Bランク以上のヒトが6人がかりでやっとの魔物なんですよ!! 」

 

 ヘタレ発動でアラクネに関わることを全否定のレイル。男の子なんだからもう少し挑戦的になれんのだろうか、この子は。まあ、己を過信した無謀者よりはよほど良いけれども。

 

「だから、遠目から確認して勝てそうになければ、本当にアラクネだったなら退避、村長たちに報告するだけだ、だって」

 

「うう、で、でもですねぇ……」

 

 オレの言葉を訳してくれたシャンフィはというと、オレを信頼してか特に反対ではないようだ。ただ、留守番を頼んでもついて行くと言い出しそうな雰囲気だ。非戦闘要員のシャンフィには出来れば村で留守番していて欲しいのだが、アラクネに関わるのがオレの我が侭であるだけに説得は難しそうだな。

 

 

 ともあれ、愚図るレイルをシャンフィが叱咤したことでひとまずこの場はまとまり、意を決して村長の家の戸を叩いた。

 

 交渉前に怖がられるのを覚悟しながら。

 

 アラクネ云々よりそっちの方がオレにとって難敵だったりするのはどうなんだろうか。

 

 

 

 

 

 

         ドグ・ヂヂ・ボンデギビジュジュゾ(To Be Continued)………

 

 

 


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