【凍結】 突然転生チート最強でnot人間   作:竜人機

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2016.2/21
1話~10話まで一部手直しに付き、差し替えました。

2018.2/25
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。



04 「肉料理で好きなのは臓物系で、軟骨も好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 駆ける駆ける駆ける翔ける。

 

 

 逆関節の足が生み出す走力というよりも跳躍力と言う方が正しいスピードで森の中を翔け抜ける。

 

 初めて全力で走り出した時、森に突っ込み木に激突仕掛けたのがウソのようにレーシングカー並みかそれ以上の速さを出しながら余裕で木々の間をすり抜けていく。

 無意識に馴染んだ身体が生前の不可能だったことを、漫画やアニメに特撮に映画といった空想の世界の超人的動きを然も当然、出来て当たり前だというように可能にして見せる。

 

 どん引き物だが、そんな余裕は今はまるでない。

 

 

    ぐ ぅ る あ ら お お ぉ ぉ お ぉ お あ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ っ ! !

 

 

 腹の虫が引っ切り無しにうるさく(わめ)くほど空腹で仕方ないからだ。

 

 本当に空腹で空腹で空腹で空腹で腹が減って腹が減って腹が減ってどうしようもない。

 

「【ドゴリ(遠見)】!」

 

 

 呪文を唱えるのは面倒だと魔法名だけを苛立たしげに呟き、翔けるのを止めずに片目にのみ発動させてにk、もといドラゴンの様子を確かめる。

 

 【遠見】で目に入って来たのは火を吹くにく、もといドラゴンとソレに魔法で作ったらしい氷の壁や障壁で耐える騎士たちの姿。

 最初見た時と違い騎士たちの後方に赤い女の子と杖を持ったメイドさんがいるが――

 

ゴンバボダダ(そんなこたー)ゾグゼロギギ(どうでもいい)

 

 そう、どうでもいい。問題は肉、もといドラゴンの吐く火に耐え忍んでいる様がギリギリだということだ。もう一度火を吹き付けられたら力足りず耐えられずにオシマイだろう。

 

 問題: 騎士たちを襲うドラゴン(にく)-騎士たち=

 

 答え: 次の獲物を求める等でドラゴン(肉)はその場からいなくなる。

 

 ドラゴン、もとい肉が現在いる場所まで今の調子でも辿り着くころには半日くらい過ぎているほど離れている。

 このまま走って行っても

間に合わない。痕跡辿って追いかけ狩ることも出来るかもしれんが、腹が減り過ぎてそんな面倒なことはしたくない。空腹の苛立ちで周りの物に八つ当たりして暴れてしまいそうだ。十一回蘇生できる某狂戦士みたいに咆えながら。

 

 走って間に合わないなら答えは一つ。

 

 走ってダメなら飛べば良いじゃない Byマリなんたらかんたら風

 

 おあつらえ向きに既に助走は充分以上準備万端覚悟完了!

 

 助走で付いた速度全てを上空へ向けるために「力」を込めて踏み込み――

 

 

     ド   ン   ッ   ! !

 

 

 ――という轟音と共に踏み込んだ地面にクレーターを作り、オレは砲弾になったかのように大空目掛けて跳び立つ。

 

 

 

 突風を肌に全身に感じながら青空へと落ちていき(・・・・・)、勢いが止まって感じていた風が不意に落ち着いたと同時に襲ってくる浮遊感。

 

 目線を空から跳び立った大地へと下げれば眼下に広がる自然豊かで雄大な景色。森や平原と山々の織り成す美しい曲線を描く地平線に目を奪われ、激しい空腹も一時忘れて感動した。

 

 人工物はほとんどなく、あっても街道と思しき曲がりくねった線と小さな点のように城壁に囲まれた街と村らしきものが見えるだけで、それ以外は現代社会の日本は都会の雑踏で20年以上暮らしてきた者にとって見たこともない只ただ緑あふれる大自然があるのだ。ほんの一時でも我を忘れて感動しないなど居るならそいつは人間じゃあない。オレは人間じゃなくなっちゃったけども………

 

 気を取り直して見渡せば太陽の傾きから凡そ正面の方向が西、今いる土地がフリアヒュルム皇国ならゲームの、「MoLO」の通りであればアルブレス聖霊国がある方角だ。心なし自然が他より豊かに見えるのは、多分気のせいだろう。ゲームの通りエルフや獣人の小国、同盟国が本当にあるなら触れられずとも是非に長耳獣耳尻尾を眺めるだけででも堪能したいものだ。

 阿呆な自分に苦笑を浮かべて今度は右へ、北へ目を向ける。

 北もゲーム通りならば国内にドワーフやドラゴニアンの同盟国があり、多くの鉱山を有し製鉄技術に秀でている山々に囲まれた技術国家、ウィーリディス帝国があるはずだ。

 その技術力は他の国との違いをゲームの世界観ががらりと変わるほど顕著に見せつけ、地下都市も内包する四段構造の学術都市は蒸気機関などのアンティークなエレベーターに路面電車やロープウェイもあってよく目を引いたものだった。

 左は南の方角には弓状に海に面し優れた航海技術を持つ、大陸最強と名高い大騎士団を有するルベール王国がある。

 ゲームでは有名な騎士団があると言うことで竜騎士や聖騎士と言った物を思わせる騎士関係のスキル取得クエストや騎士にまつわるクエストが豊富で、グラングローア天下一武闘祭なんてイベントもあった。

 

 

   ヴ ぉ る る ル ぶ ラ ぁ あ ア あ あ お ぉ ア゛ あ゛ あ゛ ア゛ ア゛ っ ! ! !

 

 

「………」

 

 感動で空腹を忘れるのもどうやらここまでが限界のようだ。

 

 オレは尻尾を振った勢いで後ろ宙返りで身体の上下を入れ替えて頭は肉の居る方へ、そして足は空はやや斜め上方へ向けて、「力」を込めて思いっきり蹴る。

 

  ドパァンッ! と破裂音を響かせ撃ち出され、砲弾になったオレ再び、肉と言う名の飯目掛けて爆進する。

 

 一切の障害物なしに目標へ一直線。加速も地面を走って―― というか飛び跳ねて ――いた時とは段違い。

 瞬く間に目標地点の上空に到達。すぐさま尻尾と足を振って体勢を変えて空を蹴り、膝と尻尾を抱えた前転で勢いを僅かながらに殺しつつ地面へ急降下。

 

 ドゴンとう轟音と土煙を上げて道のある開けた野原に無事着地。

 ああ、もう少し、もう少しで飯にありつける。

 

ビブビブビブ(にくにくにく)ビブンドラゴン(ドラゴンの肉)ジョグズビジャギデボンガシビブ(上手に焼いてこんがり肉)ビブジュグギダダス(肉汁滴る)ミディアムレア()ドラゴンステーキ、スキヤキシャブシャブハンバーグ………」

 

 思いつく限りの、作れる限りの肉料理。実に楽しみで仕方ない。

 

 

「  ゼ ダ ダ ゾ 、 ザ ぁ ぁ サ(は ぁ ぁ ら 、 へ っ た ぞ) ぁ あ  ぁ あ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! 」

 

 

 勢い良く立ち上がると共に思わず腹の底を通り過ぎた魂の底からの声を上げる。なんか少し某バトルアニメみたいに大気が震えたっぽい気がしたのは気のせいか?

 

 ………まあいいか、今はそんなことよりも飯だ、肉だ、ドラゴンだ。

 肉の他に臓物系も食えるかな? オレ、モツ煮にハツや砂肝、軟骨って好きなんだよね。食えると良いな~、あると良いな~。

 

 

「resyuiju!! resyufafanju!

 「obirye」fasyoberyafadhengomyokadhezirofoboryahuju! dhinmujoeresyuiiju!! 」

 

 ドラゴン()に熱視線を向けていたら突然右手側から何を言っているかわからない、と言うか何語を喋っているのかわからない女の子の声が聞こえて騎士たちがどこか慌てた風に後退をし始めた。

 

 問答無用で攻撃を仕掛けられなくて良かった思う反面、問答無用で逃げ(引か)れるのもそれはそれで来るわ。精神的に。

 でもオレにとってこれがこれからのスタンダードなんだよな。ヒトとであえば問答無用で怖がられて、攻撃されるか逃げられるかの二択。心の安らぎ的にも精神衛生的にもシンドイことたまらない日常が………

 

 ダメだ、これから飯だってのにダウナー気分なんて。

 モノを食べる時は誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃダメなんだ。

 そうだ飯のことを考えよう。この後に待ってる楽しい楽しいスーパーにっくにくご飯タイムを。

 

「ギ、ギ、ギギャゲェーー!! 」

 

「ゴ、ギ、ゴゲギャギャギャギャア゛ーーーッ!! 」

 

 不快で耳障りな声に意識を戻せば目に飛び込んできたのは緑系の肌した大きいのと小さいの、おそらくオークとゴブリンだろうそれ。

 そして目の前に迫り、青銅の板を巻いた樫の棍棒を振り上げたオーク。

 

 よく牙生えてたりする豚面メタボなのが描かれたりしてるけど、コイツはどっちかと言うとゴリラ面。毛のないトンガリ耳のマッチョな、キャラクタークリエイトの種族にオークがあるゲームのそれがイメージに近いだろうか。

 

 というかいつまで振り上げてんだ? 動きも遅いし、ハエがとまるぞ。2、3匹くらい。

 

 あまりに遅いから避けるとか受け止めるとか、なんか面倒に思えて気付けば自分から棍棒を左手で掴みに行っていた。

 

 その結果。オークのクセに、ヒトでもないのに驚いた顔とか驚愕の眼差しをオレに向けてきやがって、なんかイラッときたので――

 

ジャラザ(じゃまだ)!! 」

 

 右手の掌底一発、腹に叩き込んでや、て飛んだーーーーー!? 

 

 (たか)って来ていたゴブリンたちを巻き込んでワイヤーアクション使った殴られ役よろしく野原をすっ飛んでいった。

 あ、あの落ち方は首折れたか?

 

 頭から落ちた後にゴロンゴロン転がって止まったけどピクリとも動かないから多分そうだろう。気絶という線もあるが、受身もなく頭から落ちたんじゃな。

 

 ……………あれ? オレなんでこんなに冷静なの?

 いくらオーク、モンスターとはいえ人型の生き物殺しておいてなんの感慨も感じない。

 養豚場の豚でも見るかのように冷たい目で、残酷な目で……“かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね”って感じ にオークやゴブリンたちを見ている自分がいる?

 

 思わず掌底を撃った右手を閉じたり開いたりしてまじまじと見つめてしまった。

 この手が殺した。生き物を。血を吸った蚊だとか釣った魚だとかとは違う。猿よりも知能のある道具を持ったり身に付けたりするようなヒトに近い人型の生き物を。

 

 ……………気持ち、悪い。

 

 何で何も感じない? なんで、こんな………

 

 

  ば る ば る ば る ば る ば る う ぉ ぉ ぉ ー ー む っ

 

 

「………ゼダダ、ザサ(腹、減った)

 

 お前の腹の虫がどこの来訪者だと言いたくなるような音を響かせるので、お悩みは保留にすることにする。

 頭使って悩み考えるのはお腹をくちくして休んで頭に充分な栄養を送った後で良い。腹減ってたらイライラするし頭なんて碌に回らないのは世界を違えようとも不変にして普遍の道理。

 

 現実逃避だろうとなんだろうとも今優先するのは只ただどらごん(にく)だ、メシだ、ご飯ですよ!

 

 

   がごんっ!?

 

 

 あ゛?

 

 さあどらごん(にく)狩るぞと思い立った矢先に受けた衝撃。

 

 さしたダメージはないが、なんだろう無償にイラッときた。

 

 衝撃が飛んできたらしい方へ顔を向ければ杖を掲げてなんか「力」を込めてるメイジらしいゴブリンと弓を持ったうろたえてるゴブリン数匹。

 

「ゲゲギャギャンゲギャーー」

 

 呪文らしき物を喚き杖を振り回すゴブリンメジ。放たれた魔法は野球の球くらいの大きさをした石飛礫。飛んで来てがごん、とオレの身体、甲殻に中って弾かれて地面を転がる。矢が飛んでき以下同文。

 

ゴセンごはんンジャラゾグスンバ(オレのご飯の邪魔をするのか)………」

 

 意気込んでさあこれからと何かやろうとしようとした時、些細なことでも出鼻を挫かれるように邪魔が入ると人の反応は大体二通りだ。

 一つは(すこぶ)るやる気が失せて何もやる気が出ず、不貞寝する。

 もう一つはイライラがピークに達し、溜まったイライラ(ストレス)を発散するまで何も手に付かなくなる。

 

 絶対ではないし、人によっては全く違う反応もあるだろうがオレはいつも大体こうだ。そして今のオレの反応は後者だ。

 

 ただし、腹が減って腹が減って腹が減って仕方ない空腹に空腹を重ねまくた今のオレはイライラがピークどころか天元突破で自分で自分を制御できそうになく、したがって暴れてストレス発散程度では収まることなどなく――

 

 

ゴ ラ ゲ サ ヅ ヅ ヅ ヅ グ(お ま え ら ぶ っ つ ぶ す)! ! 」

 

 

 オークとゴブリンどもを血祭りに上げないと止まれそうにないようだ。

 

 

 

 

 

 

      ドグ・ヂヂ・ボンデギビジュジュゾ(To Be Continued)………

 


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