【凍結】 突然転生チート最強でnot人間   作:竜人機

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2016.2/21
1話~10話まで一部手直しに付き、差し替えました。

2018.2/25
1話~31まで設定見直しにより一部設定変更+グロンギ語ルビ振りに付き手直し、差し替えました。



06 「やっぱり調味料は大事だよな」

 

 

 

 

 

 

 ドラゴン(地竜)の解体

 

 

 まずは鱗や鬣を全て毟り取る。毟らずに皮を剥ぐやり方もあるが、それは食用向きではないのでこちらを選択。

 解体にあたり首と尾を切り落とすのだが、既に狩りの際に切り落とし済みなので省略。

 もっとも皮膚の柔らかい腹を上に、仰向けに寝かせ喉から(でん)部まで腹側の表面だけを、内臓を傷付けないために腹膜を切らないように、皮と脂肪だけ撫でるように縦にかっ捌く。

 鳩尾から鎖骨までの部分を叩き切り、股の部分も左右に切り込みを入れる。

 

 次いで内臓の摘出だが、大型獣を超える巨体の竜ゆえに鱗剥ぎに次いでもっとも手間が掛かる大変な作業だ。

 まず肛門の周囲を切り、胸部を切開。

 横隔膜を切り、腹膜を脊椎側までを剥ぎ取る。

 ここまでできたら後は食道・気道を掴み一気に肛門側へ引っぱると内臓がすべて一塊になって取り出すことができる。

 まぁ、言うのは簡単だがコレが人間による作業であれば綱などの道具を使って10人前後での力仕事になる結構な重労働だ。

 

 内臓は心臓(ハツ)肺臓(フワ)横隔膜(ハラミ)肋骨側横隔膜(サガリ)肝臓(レバー)脾臓(タチギモ)腎臓(マメ)、そして(ミノ)系や(ホルモン)系などに細かく分けて大きさに苦労しながら川で洗った後、念のため【浄化】の魔法で洗浄し血抜き。

 

 中抜き、内臓の摘出が完了したら腹腔内と外側を綺麗に洗い、作業台ないし敷き物の上へ上げる。残念ながらどちらもないので【浄化】で清潔にした岩場へ。盗みを働く不届きな害獣避けに結界を張るのも忘れない。

 背側を背骨に沿って縦に一気に切り、脊椎に当たるまで切れ目を入れる。

 脊椎と肋骨の接点は軟骨で弱いので、通常の刃物であれば何回かなぞると切れ目が入る。左右に切れ目を入れ、肋を開くように押すと簡単に外すことができる。ちなみにオレの腕部の刃は数回なぞることなく一発両断だ。

 腹腔の股間近くに左右二本、ササミのような形状の肉がへばり付く様に着いている。これは内ロース(ヒレ肉)であるので削ぐように剥ぎ取る。

 後は脊椎に沿って刃を入れ、魚を三枚に下ろすように半身ずつに分ける。

 

 半身に分けたら、前肩・アバラ・股の3ブロックに分けて骨を抜く。骨抜きと狩りの際に傷んだ部位があれば切除し、ひとまず大きいまま各ブロックに分けて完了。

 

 

 なお、鬣と鱗に骨や革は良い素材になるため、よく洗浄し天日に干してから保存することにする。ちなみに骨は料理につかえそうなので半分ほど内臓と共に鮮度と品質が落ちないように保存する予定。

 

 

 

    突然の肆『採集+自分』

 

 

ギダザビ、ログ(いただき、もす)

 

 【遠見】の魔法と水の音や匂いを頼りに探すことしばし、川幅のある―― 目算だが、大よそ100mほどだろうか? ――大きな川を見つけ、開けた場所を探し、岩場や玉砂利で出来た広い場所を見つけてそこでにくの解体作業に取り掛かった。

 大きさが大きさで1人での作業はチートボディと言えどそれを終えるまでに半日ほどを要し、もうとっぷりと日は沈んで辺りは真っ暗、ということはなく、明かりは大小三つの月と満天の星々、そして用意した岩の竈の火で意外と明るい。

 やっと調理可能な状態の肉を手に入れ喜び勇んで作ってみたのはチート能力を無駄使いして最高の焼き加減でこんがりやいた骨付き肉に魔法でオーブンを代用したローストビーフもどき。

 

 喜び勇み、あーーーんっと顎が割れる全開の大口開けてこんがり肉にかぶりつく。

 

 もきゅもきゅ、もきゅもきゅ。もきゅもきゅ、もきゅもきゅ。

 

「………」

 

 咀嚼し終えてごきゅんと飲み込む。

 次に薄くスライスして洗った大きな葉っぱ(普通の葉の形で人の顔よりでかい)に載せていたローストビーフもどきを口に2、3枚放り込む。

 

 もきゅもきゅ、もきゅもきゅ。もきゅ、もきゅ………

 

「……………」

 

 味の感想は、みんなの腹ぺこ王の言葉を借りるなら………すごく、雑でした。

 肉の味そのままのしかしない。それに臭みもある。

 調味料は塩さえ無いんだからしょうがないと言えばしょうがないのだが。

 

 失敗した。空腹のあまり兎に角食べることしか頭になかった。せめてハーブ、香草代わりになりそうな野草を探してから料理すべきだった。

 

 空腹が最高の調味料というが、オレにはあまり当てはまらないようだ。

 チートボディの弊害とでも言うのか、味覚が人だった頃よりも鋭敏になってるみたいで、下味も味付けもしてないとものすごく素材の味がモロにくる。決して不味いわけではないから臭みを我慢すれば食べられはするのだが、残さず完食するのは難しいといった感じで、味覚を中心に非常に微妙な気分にさせられる。

 

 これは明日一日、インストールされている知識の中にこの世界の薬草学かなんかがあれば、朝からそれを頼りにハーブ採集に勤しもう。

 

 明日の予定を決めて食べかけのこんがり肉の消化に取り掛かる。完食するのは少々辛いが、かと言って明日に残して冷めてしまったら美味しさ半減で、この味でそれは本当に完食不能になってしまうからだ。それはモッタイナイ。この世界で初めて手に入れた食材だ。安易に粗末に扱いたくはない。

 ローストの方は調理法から言ってむしろ冷ましてしばらく置いておいたほうが旨みがますので問題ない。なので朝食にしようかと思っている。

 

ダデサセスジャゴグジャビンリロ(食べられる野草や木の実も)リヅバスドギギバ(見つかるといいな)ぁ」

 

 もきゅもきゅと塩味すらない肉を食べながらハーブ以外の食べられる野草なども見付からないかとこぼす。

 

 全ては明日―― もうとっくに日付は変わっているかもしれないが ――日が昇ってからだ。

 

 

 

 日が中天に差し掛かろうかという頃合。オレは採集の出来た野草を軽く分別し、中空に開いた真っ黒い穴へと入れていく。

 

 この黒い穴、いわゆるアイテムボックスと言うヤツらしい。

 

 事の起こりはドラゴンの解体の後。

 内臓や肉を各種各ブロックに分けたは良いものの、保管と保存の問題が当然出た。

 保存の方は魔法で冷やしたり出来るものの保管場所は魔法ではどうしようもなかった。いや少なくとも2、3思いついたのを試してはみたのだが、空間系の魔法はかなり難しいようでどれも失敗した。

 時間があれば研究してとなるのだが、生憎と空腹の上に日が暮れていたこともあり早々に断念し、害獣避けに結界を張るに留まった。

 

ゾグゲロソビビダゲバギバンザバサ(どうせMOLOに似た世界なんだから)ゲゲルリダギビ(ゲームみたいに)ゾガガガセダギギボビガアイテムボックス(アイテムボックスとかがあれば良いのにさ)

 

 と、MoLOに似た世界ゆえにゲーム上の便利機能を思い溜め息まじりに呟いた途端、中空にあの真っ黒い穴が開いたというわけだ。

 簡単に調べただけだが、某四次元なポッケと同じ模様。中に手を突っ込んだらかなりひんやりしていたから保存性も高いと思われ。食品を入れても問題ないと判断した。

 入れた物の品質が保持される、腐らないなどの効果があるかは今は調べ中といったところか。

 

 

 閑話休題(ともあれ)

 

 

 インストール知識にこの世界の薬草学と植物に関する詳細な情報があったおかげで―― レーダーのようなチート能力で探すことも相俟って ――難なく採集を行なえている。

 

 見つけた香草は塩味草(しおみそう)にレモングラスもどきとしそ山椒の三種。

 食べられる野草、いうより根菜はマッカダイコンとアマゴボウの二種類。

 

 塩見草以外聞いたことの在るような名前なのは塩見草含めてオレが命名したから。

 なぜというのも、どうも野草を食べるという発想がないため、食べられる野草は身近に在ったとしてもこの世界の人々にはほとんど知られていないようで、インストール知識の植物に関する情報にも名前らしい名前は付いてなかったのだ。薬草には流石にちゃんと名前は付いてはいたが。

 

 なので、見た目や味からオレが勝手に命名させてもらった。

 

 

 「塩味草」は針型の厚みにある葉を持つ植物で生命力が強く、どこにでも生え、根が無事なら刈っても数日ですぐ元通りに伸びる雑草として知られているらしい。

 葉が塩味をしているが、塩そのものを含むわけではなく、塩味を(しょっぱいと)感じる舌の味蕾を刺激する成分が含まれてるらしい。その成分は熱、強い温度変化に強いようで、肉料理などの焼き物に最適と思える。

 

 「レモングラスもどき」は元の世界のハーブ、レモングラスと同じ味をした香草。

 レモングラスと同じようにレモンの香味成分であるシトラールを含有してる。葉の形はレモングラスの針型と違い、ネムノキの葉に良く似た形をしている。

 

 「しそ山椒」は名付けた名前の通り山椒の味と匂いがする見た目は紫蘇そのものな香草。

 

 「マッカダイコン」は皮も身も色が真っ赤かで、大根というより甜菜(テンサイ)に似た形の根菜で、甜菜のような甘味はなく味は大根その物といった感じのものらしい。

 

 「アマゴボウ」は牛蒡によく似た根菜で、味は若干ではあるが甘みがある。恐らく品種改良すれば砂糖の原料に出来そう、かもしれない。

 

 

 以上がこの世界の人々に知られていない、オレが命名、名付けた食べられる野草だ。

 これら以外に見付けた木の実には最初から名前があった。

 

 名前は「フルルミベリー」。いわゆる異世界産の木苺で、ブルーベリーのような青色をしてる。

 結構な数が採れたのでジャムに出来たらと思っている。鍋がないし、色的に食欲減退感があるけども。

 

 

 他に薬草学にあった薬草も見付けて採集している。

 

 乾燥させた根を煎じると眠り薬になる「スピア草」。

 名前の由来は針型の葉で先が菱形になっていて、(スピア)のように見えることからその名が付いたらしい。

 

 低級ポーションの原料にもなる「赤切り草」。

 赤くギザギザした葉を持つ傷薬になる薬草だ。

 名前は元々は赤鋸草(あかのこぎりそう)と言われていたらしいのだが、人の間で名を言われるうちに略されて今の名前になったそうだ。

 

 真っ白な花を咲かせる「患い百合」。

 葉と花弁に発熱と幻覚作用を持つ麻痺毒を含み、それに対して球根(百合根)に麻痺毒に対する解毒成分をもつ百合の花。

 

 「トカトブリ」。

 スズランのような花を咲かせる多年草で、毒性の強弱に関わらず食べると死に至ることもある毒草であり、球根も毒ではあるが乾燥し、調合次第で冷え性改善の薬になる。

 

 

 これら食用可能な野草6種に薬草4種が今日昼間での採集成果だ。

 薬草の方ははっきり言ってチートボディのオレには必要なさそうだが、いざと言う時に使えるのだから問題ない。まだ人との関わりを諦めちゃいないのよ。このオレは。

 

 そんなこんなで迎えた昼はローストビーフもどきの残りで塩見草やレモングラスもどきを巻いた物だ。名前を付けるなら「ローストドラゴンミートの香草巻き」といったところか?

 臭みが取れるわけじゃないが、幾分誤魔化せてローストだけで食べるよりもずっと美味かった。

 

 今日の夕食はリベンジ出来そうだ。

 

 

 

 最低限必要な量を採集し、昼食を切っ掛けに採集を切り上げると にくの解体をした川辺へと戻り、風呂代わりに川で水浴びして(くつろ)ぐことしばし、ぽかぽかとした日の光りを浴びながら寝湯よろしく浅瀬で横になりながら今後のことについてオレは考えを巡らせていた。

 

 当初の予定では村か町を見付けて【遠見】で観察、この世界の情報を集めるつもりだった。

 しかし、それも言葉や文字が理解できればの話だ。

 オレは漠然と自分の言葉はグロンギ語に自動変換されて通じないが、この世界の人々の話す言葉を自分は理解できる物だと思っていた。だから、魔法で村か町を遠くから盗み見たり、話している人たちの話を盗み聞きする形で情報を集めようと考えていたのだ。

 当然だろう。異形とは言え、知らないはずの知識まで入れられたトンデモチートな身体で異世界に放り込まれたんだから。同じ立場になれば誰だってそう思うはずだ。

 

 なのに昨日、にくを狩る際に居合わせた騎士たちに指示を出したのだろう赤い女の子の発した言葉を耳にした時、その言葉はオレには全く意味不明の物だった。

 

 言葉がわからない。ならば、文字も同様と考えるべきだ。そうじゃない可能性もあるが、期待はしない方が無難だろう。

 

 魔法で翻訳が出来ないかとも考えはしたが、チートの他にわざわざ色んな知識をインストールしたのにこの世界の言葉だけ、わからないようにしている(・・・・・・・・・・・・)のだから望みは薄い。

 

 確信は、ない。ないがそう考えざるおえないのだ。少なくとも。

 

 オレは死んだ。通り魔という外的要因ではあるが突然死という奴で間違いない。そして目覚めたら異形()の身体。

 素人創作物お決まりのKAMSAMA(カミサマ)との邂逅も、呼び声なんて物もなかった。しかし、そういった存在の手がオレに入れられていると思えてならない。冷静になればなるほどに。

 目覚めたばかりの間はテンパってたり現実逃避で考えないようにしていたが、そうもいかない。ような。気がする。少なくともこの世界で、この身体で、生きていくのなら頭の片隅に入れておくべき事柄なのだと思う。

 

 この身は転生だと、オレは現実逃避中も口走っていたが、憑依の可能性についても考えなかったわけじゃない。

 しかしそれだと説明が付かないというか、説得力がないというか、「全部KAMSAMA(カミサマ)のせい」の一言で流されかねないので確固として言えないが、憑依だとしたらおかしいのだ。この身体にオレの魂がオレとしてあることが。

 

 まず、憑依だとしても憑依元のこの身体の主、いわゆる中の人がいないのだ。中の人が死んだからオレが入ったというには目覚めた時、身体のどこにも傷はなかったし、ましてやこれほどのチートを超えたバグといえるような異形の生き物が自らの物と別の魂が入ったくらいで上書きされたり消えたりするだろうか?

 むしろオレが消される気がする。

 

 またオレを残して中の人だけが何がしかの理由で消えたにしろ、一切の記憶の断片もなくというのもどうかとオレは思うし、それゆえに人格統合した可能性も薄い。

 止めに生前に身に付けた覚えのない『元の世界の現代知識や技術』に、この世界に対応した知識などがあるのだから、会った記憶のないKAMSAMA(カミサマ)にこの身体に生まれ変わらせられたりしたからだとか言われたら信じてしまいそうだ。

 

 

 在り得ない、KAMISAMA(カミサマ)マジありえない。

 

 

 まぁ、KAMISAMA(カミサマ)でなくてもなにか人為的なものを感じるのは確かなのだ。超常的な存在な影を。

 

 なんとも気味悪く薄ら寒い話だ。死んだオレを理由も告げずにこんな目に遭わせながら、今もどこかでオレの行動を微に入り細に入り調べ、観察しているかもしれないなどと。

 

 これがVRモノの話ならオチはどんなもんか予想付くんだが、生憎元の世界でVRマシンなんてものは軍用であっても実現してなかったし、今感じているこの五感がウソというにはリアルすぎる。

 

ジドラズ、ギショブジュグングヂ(ひとまず、衣食住の内)ショグパブシガギダンザギ(食はクリアしたんだし)ボボシンギドジュグゾゾグビバギジョグ(残りの衣と住をどうにかしよう)………」

 

 ひとまず、どうしようにもないことは頭の片隅に追いやって、今後の展開として必要な衣食住、特に服と住む場所をどうになかしないと、と考えを巡らせつつ、川のせせらぎを子守唄に睡魔に身を任せた。

 

 

 

 

 

         ドグ・ヂヂ・ボンデギビジュジュゾ(To Be Continued)………

 


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