八咫烏は勘違う (新装版)   作:マスクドライダー

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唐突な誕生日回に見せかけたラウラ回のようななにか。

今話は一部他作品、Fateシリーズのキャラと関連した内容で構成されています。そのような要素が苦手という方は一応ですが警戒しておいて下さい。


第87話 ハッピー・バースデー!

「それじゃ、せ~の!」

「「「2人共、誕生日おめでとう!」」」

「おう、ありがとな!」

(いやぁ、有り難いっすな~)

 

 キャノンボール・ファスト襲撃事件から明け、今日は9月27日―――無事にイッチーの誕生日を迎えるに至る。シャルの合図で皆が一斉にクラッカーを鳴らし、勢いよく飛び出た紙テープが私とイッチーへ降り注いだ。なんだかカラフルなドレッドヘアにでもなった気分である。

 

「めでたいのはいいが、狭いなしかし」

「俺んちでやるよかマシだぞ数馬」

「まぁツレだったメンバー的には、パーティは黒乃の家で……ってのが当たり前なんだがな」

「今回は人数が多いもん。でも、友達多いのはいいことだよ?ね、お姉!」

 

 カズくんに悪気はないのだろうが、思わず本音が漏れてしまったようだ。確かに中学時のメンバーなら事足りたろうが、なにぶん人数が増えて人口密度もそれなりに高まっている。それ故というか、パーティは藤堂家でやった方がいろいろ都合がいいんだよね。

 

 イッチーの発言から解るだろうが、藤堂家宅の方が気持ち織斑家より広い。それに加えて、私は基本的に織斑家で寝泊まりしている為、騒ぐのならこちらの方が準備も片付けもし易い。家具や家電は当時のままで製品の型は古いが問題なく使える。それを鑑みると、やはり藤堂家が最適だろう。

 

「黒乃の家か……何年ぶりだろうな。そうだ、覚えているか?あれは―――」

「ま、昔話はそのへんにしときましょうよ。ヨーロッパ組は置いてきぼり喰らっちゃうでしょうし」

「鈴よ、その気遣いは有り難いのだがな」

「その勝ち誇った顔はなんとかならないのかな?」

「重ねて来た思い出の数が違うからといって、それはあまりにもですわ!」

 

 要人保護プログラムにて会うことのなかったモッピーは、しみじみと思い起こすように昔話を語り出そうとするが、それは同じく幼馴染である鈴ちゃんに阻まれた。だからといって特に気を悪くする様子もなく、全面的にモッピーもその意見に賛成だったようだ。

 

 むしろ面白くなさそうなのはヨーロッパ組である。かつて連れ添った時期の長い7名との溝を確かなものとするのが、鈴ちゃんの悪戯っぽい笑みによく表れていた。なんというか、アタシ達は語ろうと思ったらいろいろあるけど、アンタ達はいう程じゃないもんね~……みたいな顔といえば解ってもらえる?

 

 鈴ちゃんのいいたいことを瞬時に察したらしく、欧州3人娘はご立腹である。というかシャル、時々思うけどその目が笑ってない笑顔ホント止めて。普段のシャルそのものが可愛らしさ満点なだけに、それをやられると怖さも倍になるんすわ。……シャルだけは怒らさんとこ。

 

「それいったら、私達なんてもっとなんにもないんだけどね~」

「ね~」

「だから私は遠慮すべきといったんです……」

「まぁまぁ布仏先輩、こういうのは楽しんだ者の勝ちですよ!」

「いや……いっちゃ悪いけど、楯無さん達は本当になんでここに……」

 

 何故か自然にこの場へ紛れこんでいるたっちゃんは、ケタケタ笑いながら扇子を開いた。そこには余所者という文字が達筆に書かれている。……イッチーの発言からするに、この人達は本当に招待されていないようだ。だからって、別に来ない方がよかったとかそういうのではないんだけどさ……。

 

 まぁ本当に私的にはキニシナーイ!の精神で。皆もさほど気にしちゃいないのか、やんややんやとイッチー&私の誕生日会が始まった。総勢……なん名?ええ~っと―――14名か!わぉ、大所帯。そりゃ狭く感じるわけだよ。でも……こんなに大勢にお祝いされるの初めてだし、すっごく嬉しいんだけどね。

 

「一夏さん、お姉、本当におめでとう!あっ、私ケーキ焼いてきました!プレゼント用のお小遣い、材料費で飛んじゃったんですけどね」

「お、すげぇな蘭。ケーキってなかなか難し―――って、まぁ懐に優しく計画的にな……」

「あはは、人数の兼ね合いと張り切り過ぎちゃってつい……」

 

 人数が多いのを察してか、巨大ホールで焼いてきよったよこの子。いやぁ本当にやるね。なんて感心していると、どうにも大きさからして材料費がかさんでしまったことを示唆する発言が飛び出た。プレゼントっつったって気持ちが大事なわけよ。ケーキがプレゼントって認識でここは1つ。

 

 でも、顔見知りですらない人のことも考えちゃうなんて蘭ちゃんは優しいなぁ。なにこの天使。マジでなんだ、こういうのをヒロイン力っつーんすか?……私にもあるかな、これ……。祝いごとだっていってんのに途端に自信がなくなってきたぞ……。い、いや!私にもきっとあるよヒロイン力!ここはだね―――

 

「うむ、人数分は余裕で確保できそうだな」

「つーか、地味に女の子の手作りケーキ食べられるじゃん!俺、今日とか命日だったりして」

「大丈夫ですよ、数馬さんのために作ったつもりありませんから」

「お前の妹ちゃん俺に当たりきつくない?気のせい?」

「安心しろ、気のせいじゃない」

 

 ホールのケーキを蘭ちゃんがテキパキと切り分けていくと、全員の手元にいき渡った。そんな最中、中学校で知り合った組が自然な漫才を繰り広げる。このやりとりをみていた面子は和やかなムードを醸し出し、引き続き冷めた対応をされるカズくんへと注目。よし―――今だ!

 

(ほ、ほらイッチー……あ~ん)

「ん?あっ、あぁ……おう。あ~ん……」

 

 私は優しくイッチーの持っていた皿を抜き取ると、フォークでケーキを一口大へ分割して掬った。それをすかさずイッチーの口元へ運び、いわゆるその……あ~んという奴をですね……。するとイッチーもなにやら照れくさそうな様子をみせてから、私の差し出したケーキへかぶりついた。

 

 ヒ、ヒロイン力ってこういう奴ですよね?違う?どうなの?誰かおせーてよぉ!ダ、ダメだ……きっと変に意識するからダメなんだろう。うん、もっとこう……こんなの私とイッチーの間では当然ですけど、くらいのノリでいかねば。よ、よし……さすればもう1回―――

 

カシャ!

(カシャ……?)

「へぇ~……聞いてた通りナチュラルにイチャイチャするんだね。んでもって無自覚……と、メモメモ―――」

「教室でもだいたいこんな感じなんだよ~。こんなの序の口~」

「だっ、ちょっ、黛先輩!それにのほほんさんまで!」

 

 もう1回イッチーへケーキを食べさせようとすると、ふいにシャッター音が鳴り響いた。喧騒の中でもその音は私にはよく聞こえ、なにが起きたかを理解した途端に頭へガンガンと警鐘が響く。そう……よりによって、かおるんに今のシーン激写されてしまった!

 

 存在を忘れていたなんてことは全くないのだが、どうにも油断してしまっていたらしい。っていうかメモて!もしかして記事にするつもりでしょうかね!?う、うぐぐ……だからって強引にカメラのデータを消すとかはアレだしな。イッチーみたく照れ隠しできれば御の字だろうけど……。

 

「今度プリントしたらちゃんとあげるからね」

「あ、それはありがとうございます……じゃなくて!誰もそんな心配はしてな―――」

「まぁまぁ、落ち着きなよ一夏。そんなことより、僕らからのプレゼントタイム!」

 

 あっけらかんとした様子でそう返され、なんだかイッチーは拍子が抜けたように返答してしまう。数秒後に自ら違う!って思ったのか、まるで漫才師のようなツッコミを送った。更に続けようとしていたみたいだが、それはなし崩し的にシャルに阻まれてしまう。まぁ、かおるんが消せっつって消すような性格なら苦労はしないよねってことでファイナルアンサー。

 

「押し切っちゃったし僕からってことで、はいこれ2人共」

「腕時計?しかも俺らに1本ずつって……。ありがとな、大切に使うよ」

「うん、末永く2人の時間を刻んでね」

「「ゴフッ!?」」

 

 原作での描写と同じく、シャルは私にまで多機能の腕時計をくれるではないか。戦々恐々としながらそれを受け取ってイッチーが礼をいうと、飛び切りの笑顔で余計な一言が付け足された。思わず知らず、盛大にむせてしまう。……というか、むせることができるんだね私って……革命的だよ。

 

「黛先輩、今の決定的瞬間を抑えまして!?」

「もっちろん!やっぱり来て正解だね、黒乃ちゃんのむせる姿とかレア中のレアだよ!」

「黛先輩、言い値で買わせてもらおうか」

「あ、あの~……よければ私も……」

 

 いったいどうしたね、そこまでして私の写真をご所望か?そんなに私を辱めて楽しいかね?いや、例の如くそれはそれで興奮するけどさ。でもこの様子からするに、大半のメンバーには今の写真が行き渡りそうだな。だからって皆が悪用するわけでもなし、恥ずかしいってだけで別に騒ぐようなことでもないか……。

 

「ふむ……ペア用か、地味に被っているような気もするが致し方あるまい。一夏、黒乃、受け取ってくれ」

「おっ、着物か。サンキューな、機会をみつけて着てみるよ」

「2人は着物とか似合いそうだね~」

「野郎はともかくとして、黒乃に着物はドハマりだろうな!」

 

 モッピーのプレゼントも原作同様か……。というか、詳しく描写されてない人を除いて同じになる運命なんだろうなぁ。けど、和服っていう響きに胸躍るのはサムライ魂みたいなのが宿ってる証拠なのかね。これ着て日本刀なんか持ったら様になるかも。イッチーのいう通り、機会をみつけて遊んでみーようっと。

 

「アタシはこれね。はい、黒乃!」

(おおう?リボンにヘアピンにヘアゴムに―――とにかく、髪に関わるあれこれがいっぱいだ……)

「黒乃ってば最近髪遊ばせてる癖して、こういうのあんまり持ってないでしょ?気合入ってんだかそうでもないんだか……」

 

 さ、流石は鈴ちゃん……幼馴染は伊達じゃないか。確かに、いろんな髪型にしてるが道具を必要としない場合が多い。イッチーも道具なしだと限界があるのか、最近は似た髪型をローテーションさせたりだったし……。私も多少は物に頼ることも覚えないと。

 

「催促するわけじゃないけどさ、俺にはなにもないのかよ?」

「はぁ?アンタのお楽しみタイムに手助けしてあげてんの。アンタからしたらそれで十分でしょ」

「確かにな」

「そんな自信満々に肯定されると流石に引くわ~……」

 

 うん……?なにやらイッチーと鈴ちゃんがよく解らないやりとりをしているな。お楽しみタイムとはなんぞや?私の話を下へもっていこうとする思考回路なら浮かばないことも無いが、イッチーが私以外とそんな時間過ごすとか考えたくもないからパスで。ともかく、ありがと鈴ちゃん。

 

「はーいはいはいはい!じゃあ次俺!」

「おうこら、テメーと俺は共同だろうが」

「固いこというなって、喜ぶ黒乃がみられればプライスレスだろ!さぁ黒乃、受け取れ!」

(……な、なんだってー!?最新……次世代機種じゃないっすかー!)

 

 カズくんが騒ぎ立てるように手を上げると、次は自分の番だと申し出た。どうにも弾くんとお金でも持ち合わせたのか、1人の手柄にしようとするなとでも言いたげだ。ふむ?私が喜ぶのは前提なのかなーなんて思ってたらあらびっくり、ゲームの最新ハードじゃないっすかヒャッハー!

 

(え、なに、マジで!?ホントに貰っちゃっていいのかなこれ!)

「今日は随分と珍しい姉様がみられるな……」

「そうか?ゲームを前にした黒乃はこんなものだが」

「だからさ、そのドヤ顔は止めない?」

 

 私は思わずカズくんの手元から強奪するようにハードを奪取。そのまま興奮しながらパッケージを愛でていいると、ラウラたんは携帯のカメラを向けながらそんなことを呟く。しかし、後に続いたモッピーの言葉はホントそれ。もうパブロフの犬とかのレベルで条件反射だからね。

 

 ちなみに、私だけでなくイッチーへのプレゼントとしての役割も果たしているそうだ。これで対戦とか協力プレイしろって話しか。協力はともかく、対戦の方となるとイッチー乗り気じゃなくなるからなぁ。ま、協力プレイが主体のソフトでも探してみることにしようかね。

 

「ではお次はわたくしが。お2人で優雅な時間をお過ごしくださいませ」

「おおう……これはまた高級そうなティーセットだな」

「いただいたことあるけど、ここのメーカー美味しいのよね~。ね、虚ちゃん」

「基本的にはイギリス王室御用達ですからね。我々は普段から常備しているというほどでもありませんが」

 

 セシリーは原作と特に変わらずか。だけど、渡されたティーセットがロイヤルなセレブがセレクションした品と聞くだけで恐ろしくなってくる。でも、お高いんでしょう?と聞けばマジで値も張るだろうし。確か愛飲とかいってたもんな~……。相変わらずガチのセレブって怖い。

 

「さて、ならば最後は私か。とりあえずは嫁よ、こいつを受け取るがいい」

 

 そんなこんなで最後はラウラたん。これも原作同様で軍用ナイフとホルスターみたい……なのだけれど、ラウラたんは私になにも寄越さない。催促してるわけじゃないんだよ?ただ、ラウラたんって律儀だからなんか変だなって。そうやってラウラたんをまじまじとみていると、なんだか困ったような反応をされてしまう。

 

「あ~……姉様には、だな……。なんというか、その……」

「はいはい、わざわざ付き合ってあげたんだからさっさと渡す」

「安心しろ、いろいろと指摘したが黒乃も喜ぶはずだ」

「う……りょ、了解した……。姉様、こいつを受け取れ!」

 

 どうやら我が家の死角に忍ばせていたようで、ラウラたんは紙袋を取り出して私に手渡す。中を覗いてみると、そこには服が入っていた。いや、服というにはいささか語弊がある。服ではあるが、これは衣装だ。うん、ほら、そのさ……コスプレの。もっと具体的にいうならば、某ぐだぐだでロリババアな戦国武将であるノッブの―――

 

「……どうしてこのチョイスになったのかしら?」

「だ、黙れ!それは私が1番そう思っている!」

 

 一同がポカンとした空気を醸し出す中、比較的にズバズバものをいう方でもないはずのセシリーがそう呟く。静寂に包まれている為、それは送り主にはよく届いたようで。ラウラたんは顔を真っ赤に染めながら、なにやらこのチョイスに自分自身で納得いかないかのように叫ぶ。

 

「姉様が……姉様が日本のサブカルチャーに精通していると聞き及びだな。ならばそれ関連のプレゼントをと思い、似合うキャラクターを探したまではよかったんだが……」

「ほら、ラウラって間違った日本の知識を吹き込まれてるっぽいじゃん?それで日本に住んでたからって秋葉原案内しろーっていわれたんだけどね」

「嫌な予感はしていたが、完全にテンションが迷子だったぞ……。それを黒乃に渡してどうすると一応の説得もしたのだが……」

 

 な、なるほど……そんな経緯が……。うん、確かにノッブの衣装は私に似合うだろう。……っつっても色白で黒髪ロングってくらいしか共通点ないけどね。それに衣装がジャーマンの流れを汲んでいるし、ドイツ出身なラウラたん的には惹かれる部分があったのだろう。

 

「……すまない、これは誕生日プレゼントというにはあまりにもだな。これは私が後日処分して―――」

「嬉しい」

「ほ、ほ……?本当か、本当に本当だな!?」

 

 うん、普通に嬉しい。実をいうと、前々からコスプレって興味あったんだよね。ほら、せっかく美人な女の子の身体借りてるわけだし、そういうこともしないと損でしょ。だからって1歩が踏み出せなかったっていうか、無表情でコスプレのイベントに参加するのもなんだかな……といった感じで断念していた。

 

 私からすればタイミングのいい話である。これでどうにか決心がつきそうだよ。それならばラウラたんを巻き込むもよし―――というかせっかくなんだし、皆を巻き込むのもよし!だから素直に嬉しいと伝えれば、ラウラたんは私の胸に姉様~!なんていいながら飛びついてくる。うむ、カワユイっすな。

 

「ならば早速着てみてくれ!」

(えぇ……?)

「マジか、黒乃のコスプレ!?」

「いつもなら反対してるかもだが、正直なとこ俺もみたいかもしんねー……」

「俺も!」

 

 決心はついたが、今すぐ着れといわれれば羞恥心が勝る。なのに男性陣を筆頭に、着てくれよオーラが周囲に伝染を始めてしまった。こ、これは……断ったら雰囲気ダダ下がりの奴じゃん……。え、ええい!ノッブの衣装にて露出は皆無―――ハードル低い方だと思っていざ出陣!

 

「おお、流石は姉様―――話が早い!」

「ねぇラウラ、そのキャラクターってどんななの?」

「むっ、そうだな、知らぬ者は予習した方がよいだろう。私の携帯に画像がだな―――」

 

 私が脱衣所へ向かおうと立ち上がると、なんだかちょっとした歓声が沸いたぞ。なんやねんこの空気。そんな私を尻目に、ラウラたんたちはノッブのビジュアルについて予習を始めたようだ。ええ、好きなだけ予習しなさいな、どうせその雰囲気とはかけ離れたのが出てくるから。

 

 というわけで、手早く服を脱いぎ、手早くノッブの衣装へ袖を通す。黒いジャーマン風の軍服は……思った通り少し胸のとこがきつい、がボタンが止まらない程ではないね。え~っと……この赤マントってどう着れば―――なんて苦戦しながらなんとか着終わり、後は金の装飾のついた帽子を被ればはい完成。

 

 うむ……やはり我ながらノッブ率が高めじゃね?彼女が成長することがあるのなら、もしかすると今の私に近かったりするのかも知れない。さて、それじゃお披露目といきましょうか。仮にも彼女は織田 信長が元ネタなわけでという理由から、なんの意味もなく高圧的に扉を開いた。

 

「姉様、着替えおわっ―――こ、これは……!?」

「よ、予想以上に似合いすぎ―――というかハマり過ぎ?」

「ああ、なんていうか……元ネタのキャラのあどけなさが消え失せてる感じっていうかもう―――」

「綺麗―――だよな」

 

 ……あのさ、もっとこうそこは似合ってんじゃーん!ってな感じで盛り上げてくれないとさ。そんなマジな反応されると私ゃどうすればいいのって感じになるといいますか……。いや、うん、ラウラたん&かおるんは大興奮なんだけどね。もうデジカメ&携帯のカメラがシャッター音鳴りやまないもん。

 

「くっ、惜しむらくは火縄銃のレプリカを用意できなかったところだろうか……!あれさえあれば―――」

「ん~……お姉さん模造刀なら持ってるわよ?それで雰囲気でるんじゃないかしら」

「なんでそんなもん持ってるんです!?」

「近江先生から預かってたのよね~。一夏くんのもあるわよ。ちょっと待ってて」

 

 どうやら鷹兄も私達にプレゼントを用意してくれたらしい。模造刀ってチョイスがラウラたん以上に意味解らなかったけど、手紙も添えられていたので意図はつかめそうだね。えっと、なになに―――やはりキミ達を連想するのが僕からすれば刀でした。それ故、キミ達の専用機に積まれている刀を玩具にして造りました……だとか。

 

「スケール小さいけど、まんまこれ雪片弐型なんだが……。ご丁寧に展開装甲まで再現されてるし」

「青白い光はLEDライトのようですわね」

「重量はそれなりにあるな……。イメージトレーニングに使えるかも知れんぞ」

「黒乃の方は鳴神だね。スケール小さくしてもやっぱり長いけど……」

「だがこれでより雰囲気を出せること請け合いだ!さ、姉様―――これを!」

 

 ラウラたんはたっちゃんからミニ鳴神を受け取ると、私の傍でわざわざ跪いて、まるで出陣前に小姓が刀を渡すかのように差し出してきた。私はそれに応え、うむ……苦しゅうない―――みたいな感じで少し乱暴にそれを受け取る。そして強めに鞘を床へダン!と叩きつけると、両手で柄頭を押さえて構えた。

 

「わぁ、くろっちカックイイ~!」

「確かにかっこいいんだけどこれ、なにこれ!?プレッシャー的ななにかが黒乃の背後で視覚化されてるのはアタシの幻覚!?」

「あ、安心くださいませ―――わたくしにもハッキリと!」

「お、お前達もか、安心したぞ!さきほどから骸骨のようなものが―――」

「つーか痛ったい!肌ピリピリするんすけど!?助けて弾!」

「なんで俺にいうんだよ!?俺だって立ってるのがやっと―――というか、蘭がもっとヤバイんだっての!」

 

 ハッハッハ、もーなんだよ皆ノリノリじゃん。最初からそれでいいんだって、それで。若干リアクションの取り過ぎな気もしなくもないが、騒ぐ皆がみれて私も嬉しい。フハハ、私も興が乗ってきた!写真でも動画でも、撮りたいならば好きにするがよいぞ!ほれ、ポーズも決めてやろうではないか!

 

「姉様、素敵だぞ姉様!あぁ、やはり日本の文化は奥が深い!」

「……こうしてラウラがまた間違った知識を得るわけか……」

「ま、まぁいいんじゃない?黒乃も満足そうだし」

「でもこれ、間違いなくラウラにとってのご褒美になってるよな」

「……そこは否定しない―――っていうかできないかな」

 

 阿鼻叫喚な皆や興奮するラウラたんを尻目に、少し引いた場所でイッチーとシャルがそんなやり取りを交わしていた。い、いわれてみれば……ラウラたんのアレな部分を余計に拗らせてしまったかも。まーいいでしょ!クールジャパンってやつだよ、クールジャパン!

 

 ん、しかし―――私からイッチーへプレゼントを渡すタイミングを逃してしまったような気がする。……まぁ、構わないか。別に大したものではないし、イッチーとは同室になったし……渡そうと思えばいつでも可能だ。とりあえずは、全力でパーティーを楽しむことにしよう。……その前にラウラたんをどうにかせねば……。

 

 

 




黒乃→ノリノリでコスプレ!
大多数のメンバー→な、なんていうプレッシャー……!

ノッブかわいいよノッブ。CVがくぎゅなのも致命的。
黒乃のモデルの内の1人なのでいつかコスプレさせるつもりではいました。
本当は是非もないよネ!って言わせたかったり、けど調子に乗り過ぎと思ったのでボツ。

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