どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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 ※これはアニメ艦これを題材にした作品です。幾つか私見の入った解釈や改変などがあります。
 また細かな軍事知識は持ち合わせておりません。一応調べていますが間違った知識を披露してしまうこともあるかもしれません。ご了承ください。


艦これ短編

 ある時、人類はとある外敵からの攻撃により危機に陥っていた。

 それは海からの進軍。海の底から現れた謎の艦艇群。それらを人類は深海棲艦と呼称した。

 艦艇群とあるだけに、深海棲艦は駆逐艦級から超弩級大型戦艦まで多彩を極める艦種が存在し、その苛烈な攻撃により人類は制海権を失いつつあった。

 

 深海棲艦には人類の既存の兵器による攻撃は効果がなかった。

 いや、全くなかった訳ではないが、深海棲艦には通常の兵器や戦略・戦術が効きにくかったのだ。

 それは深海棲艦の全てが人間大から大型の獣程度の大きさしか持たないことが最も大きな理由であった。

 兵器は時代と共に改良を成され、その攻撃対象も変化していった。単体の人間を攻撃する武器から、より多くの人間を同時に攻撃出来るように大きく強く変化していった。

 そしていつしか大型の兵器は同じく大型の兵器を相手にその力を発揮するようになっていった。

 軍艦で人間を攻撃する者はいない。軍艦は敵の兵器――軍艦や戦闘機など――を攻撃する為の兵器なのだから。

 

 だが深海戦艦は先も述べているように精々が大型の獣程度の大きさしか持っていない。そんなものにどうやって攻撃を当てろというのか?

 軍艦から放たれる砲弾を、遠く離れた人間に当てる。それは弓で100m以上離れた位置から米粒を正確に射るくらいの難易度と言えば分かりやすいだろうか。

 いや、並の人間であれば例え砲弾が直撃せずともある一定の距離内に着弾させればその衝撃で殺すことも出来るだろう。

 だが相手は深海棲艦だ。見た目が人間大だろうとその性能は軍艦のそれなのだ。いや、軍艦すら凌駕していると言えよう。

 そんな相手に直撃しない攻撃などどんな意味が有ると言うのか? ない。それどころか資源の無駄であった。

 そして例え直撃したところで倒しきれないのが深海棲艦なのだ。

 

 逆に深海棲艦の攻撃は人類に大打撃を与えた。

 深海棲艦は艦艇群だ。その攻撃力もそれに相当する。しかも通常の軍艦と違って人間大な故にその機動力も大きく上回っている。

 人間大の大きさで、海の上を自由に移動し、その攻撃力は軍艦を海に沈めるには十分過ぎる火力を持つ。

 そんなものを相手に戦えるような武器も、兵器も、戦術も戦略も、人類は持ち合わせていなかったのだ。

 

 人類は敗北に敗北を重ね、やがて制海権を喪失。それは人類にとって非常に大きな損害であった。

 このまま人類は深海棲艦によって徐々に滅びの一途を辿るのであろうか?

 いや、そうはならなかった。深海棲艦という脅威を前に、唯一対抗出来る存在がいたのだ。

 

 それこそが、在りし日の軍船(いくさぶね)の魂を持つ娘たち。艦娘(かんむす)である。

 艤装(ぎそう)と呼ばれる武器を装着し、生まれながらにして深海棲艦と互角に戦う力を持つ彼女たち。

 その活躍により、制海権奪還に向けた反攻作戦が開始されようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 ある一人の艦娘がいた。彼女の名前は吹雪(ふぶき)。駆逐艦の艦娘である。

 駆逐艦と一口に言っても様々であり、彼女は特型駆逐艦と呼ばれる艦船だ。

 従来の駆逐艦と速度は同等に、その上で重武装化を果たした新たな駆逐艦の基準となったのが特型駆逐艦だ。

 つまり彼女も駆逐艦として立派な性能を持っているということなのだ。――なのだが……。

 

「はぁ……どうして上手く行かないんだろう……」

 

 彼女は、落ちこぼれだった。

 

 艦娘とは娘とあるようにその見た目は人間の女性と殆ど変わらない容姿をしている。

 艤装を装着していない艦娘を一目見て知らない者が艦娘だと見抜くのは難しいだろう。

 そんな彼女たちがどうやって海上で深海棲艦と互角の戦いを繰り広げられるというのか。

 答えは簡単。艦娘は海の上を滑るように自由に移動出来るのだ。

 これは艦娘にとって特別なことではなく、当たり前の基本性能だ。そうでなくては軍船(いくさぶね)の力を有しているなどとは言えないだろう。

 

 だが彼女は、吹雪は少々勝手が違った。

 海上に浮けないわけではない。ないのだが……彼女はいわゆる運動音痴と呼ばれる部類の存在だったのだ。

 訓練してもまともに海上を進むことが出来ない。そんな艦娘は果たして戦力になると言えるだろうか?

 否。言えるわけがない。ここが従来の軍であれば彼女はとっくの昔に除隊させられているか後方任務へと移動させられていただろう。

 だが彼女は普通の兵ではない。深海棲艦と戦える人類唯一の力、艦娘なのだ。そんな貴重な戦力を捨てるような馬鹿はいない。例え今は役立たずだとしてもだ。

 これで艦娘が気軽に量産出来る兵器であれば話は別だっただろうが……。

 

 ともかく、彼女は落ちこぼれだった。まともに海上を進めない艦娘など彼女以外にはいるとは思えないと言われるくらい落ちこぼれだった。

 努力家ではある。性格も明るく前向きで、座学などは非常に優秀だった。だが運動音痴だ。

 今もこうして必死に訓練を積んでいるのだが、さっぱり上手く行っていないようだ。

 と言っても、彼女はまだ艦娘として軍に入って日が浅く、実戦は当然として訓練時間も大したものではないのだが。

 訓練し続ければいつかは他の艦娘と同様に海上を自由に走れるようになるだろう。尤も、他の艦娘たちは大した訓練なく海上移動が出来るのだが。

 

 そういう理由で彼女はこの鎮守府の提督から戦力外扱いされていた。鎮守府にいられるのは先の説明の通り艦娘だからというだけだ。

 それを理解しているからこそ彼女は精一杯努力している。……結果は散々だったが。

 

 吹雪は食事の為に一旦訓練を止め、宿舎へと移動する。もちろん食事の後も訓練は続行するつもりだったが。

 

(頑張って早く戦場に出られるようにならなきゃ!)

 

 決意を新たにし落ち込んでいた気持ちを吹き飛ばして吹雪は前を向いて進む。

 そんな時だ。吹雪の耳にある話し声が聞こえてきたのは。それは鎮守府で働いている一般兵士の会話だった。

 当然だが鎮守府には艦娘以外に普通の人間も存在している。艦娘は戦力であって、必要なのはその戦闘力だ。

 雑務などの鎮守府を運用する為に必要な細かな仕事を艦娘に任せることは基本的にない。その為に人間の兵士も鎮守府内で働いているのだ。

 そんな彼らの会話は吹雪にとって人生を変える程の衝撃を与えた。

 

「すごいな呉鎮守府の一航戦は!」

「ああ! たった一艦隊で数十を超える深海棲艦を相手に勝利! 素晴らしい戦果じゃないか!」

「俺が聞いた話だと百に届く数だったと聞いたぞ!?」

「それは話を盛りすぎではないか? 一艦隊では弾数が持つとは思えん」

「確かにそうだな。流石にここまで話が届くうちに誇張されたのだろうな」

「それとは別に、自分は赤城という空母型艦娘一人の戦果が大きいと聞きましたが」

「ああ。誇張もあるかもしれんが、撃破数の内の六割が空母赤城によるものらしい。これは確かな筋の情報だ」

「本当か! 一人で六割か。そんな艦娘が内の鎮守府にもいてくれればなぁ」

「無茶を言うな。この海域は深海棲艦の攻め入る量や回数が少ないんだ。それ程の戦力を回してくれるものかよ」

 

 段々と話が上司や軍に対する不満に変わっていったが、彼らのそんな話は吹雪の耳にはすでに入っていなかった。

 

(たった一艦隊で数十、ううん百もの敵を!? それも一人でその内の六割!?)

 

 未だ戦場に出る事すら叶わぬ吹雪にもその戦果の偉業が理解出来た。

 有り得ないと言ってもいいだろう。いや、これが生涯に渡る戦果ならば理解出来る。

 だが赤城はそうではない。そもそも深海棲艦と艦娘が戦いだしてからそれほどの年月は経ってはいない。

 それは自然と深海棲艦と戦う回数も少ないということを意味する。未だ実戦経験をしていない艦娘は吹雪以外にも当然存在しているし、実戦経験が一度や二度という艦娘など鎮守府のどこにもいるだろう。

 例え艦娘と深海棲艦の戦いの発端から常に最前線で戦い続けていたとしても、そこまでの戦果を出すことなど出来るだろうか? 大抵の人間――艦娘も含む――がこう言うだろう。無理だ、と

 

 だが吹雪の中で既にこの話は現実の物と認識していた。下らない法螺だとか、他の鎮守府を鼓舞する為に戦果を誇張した結果だとか、そんな風に考える事はなかった。

 この話を信じた者が次に思うことが幾つかある。尊敬・嫉妬・畏怖・恐怖などだ。圧倒的な力という物は必ずしも万人が受け入れられる物ではない。中には恐怖し怯える者もいるだろう。

 だが吹雪の中には尊敬という感情しかなかった。自分が戦場に立つことはおろか海上に立つことさえ覚束ない中、伝説とも言えるような戦果を誇る者もいる。

 吹雪は赤城を尊敬し憧憬し、いつしか赤城の横で共に戦うことを夢見るようになった。

 

(ああ、いつか絶対に赤城さんと一緒の艦隊になって、赤城さんの護衛艦になるんだ!)

 

 吹雪の決意は固かった。思い立ったが吉日と言わんばかりに行動を開始した。

 

「提督! お願いがあります!」

 

 吹雪は鎮守府を任されている提督に異動願いを出したのだ。

 吹雪のいきなりの願い届けとその迫力に圧倒されていた提督だったが、その転属願いは受理された。

 別にこれは提督が吹雪のことを想っての事ではない。ぶっちゃけると戦力にならない吹雪を厄介払い出来るという判断だった。

 吹雪が呉鎮守府へと異動すればこの鎮守府の艦娘の保有艦隊数に空きが出来る。そうなれば軍の上層部に新たな艦娘を要求する事も出来るだろう。

 言うなれば吹雪の異動願いは渡りに船だったのだ。

 

 そうして陳情した吹雪自身が呆気に取られる程迅速に呉鎮守府への異動が決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

「失礼しました!」

 

 呉鎮守府へと異動して来た吹雪は鎮守府到着後すぐに呉鎮守府提督に着任の挨拶をした。

 呉提督は異動したてで誰が見ても緊張していると理解出来る吹雪を優しく迎え入れた。

 だが吹雪は挨拶を終えて提督室から退出したというのにどこか落ち込んだ雰囲気を漂わせ、しかも溜め息をついていた。

 

「はぁ……」

 

 なぜ吹雪がこうも落ち込んでいるのか。それは提督から第三水雷戦隊への配属命令を受けたからだ。

 提督は吹雪が未だに海上をまともに移動出来ないことを理解していた。恐らく吹雪が異動する前の鎮守府から吹雪の詳しい情報を得ていたのだろう。

 だというのにどうして戦隊の中に組み込むのか。このまま戦場に出れば夢である赤城の護衛艦になるどころか味方の足を引っ張ってしまうだろう。

 提督は優しくこう言った。失敗も経験の内だ、とか、君が失敗してもそれを助けてくれる仲間がいる、とか、本番でなら意外と上手く出来るかもしれないよ、と……。

 しかし、前向きだが失敗続きで自分に自信がない吹雪には提督の言葉は慰めにもならなかった。

 

 失敗したらどうしよう。そんな吹雪の考えはある人物の登場によって一旦掻き消えた。

 

「あのぅ~」

「は、はい!?」

 

 そこにいたのは吹雪と同じ第三水雷戦隊に所属する駆逐艦・睦月(むつき)であった。

 互いに挨拶を交わした後、二人は鎮守府の中を共に歩みだした。

 睦月はとても面倒見が良く思慮深い性格をしていた為、着任したばかりの吹雪に色々と世話を焼こうとしたのだ。

 それは吹雪にとっても嬉しい話だった。赤城に憧れて呉鎮守府に着任したのは良いが、知り合いなど一人もいなかった為心細かったのだ。

 こうして優しく迎え入れてくれ、その上面倒まで見てくれる睦月に対して吹雪の好感度は急上昇中であった。

 

 睦月自身も特型駆逐艦という従来の駆逐艦を上回る性能と言われている駆逐艦が新たに同じ戦隊に配属されることはあらかじめ聞いていたのでそれなりに緊張していたのだ。

 だが出会ってみれば吹雪はとても話し易く真面目で好感の持てる人物だった。緊張もなくなり、気が合う仲間や友達として一緒に過ごせそうだと嬉しく感じていた。

 

 意気投合した二人はそのまま鎮守府内を楽しそうに歩いていく。

 吹雪は鎮守府の案内と施設の説明を睦月から受け、異動前の鎮守府と比べその大きさや整えられた設備の良さに素直に感動する。

 そうして案内されやがて吹雪は第三水雷戦隊に与えられた一室に辿り付く。

 そこで吹雪は新たな仲間たちに出会った。

 

「夕立ちゃん。吹雪ちゃん連れてきたよ」

「ぽい~?」

「吹雪です! よろしくお願いします!」

「夕立だよ。あなたが特型駆逐艦の一番艦~? 何だか地味っぽい~」

 

 妙な語尾を口癖とする少女。彼女は吹雪・睦月と同じく駆逐艦の艦娘、夕立である。

 少々おちゃらけた性格のようで大雑把なところもあるが、その性根は悪いわけではない。

 

 もちろん駆逐艦以外の艦娘も第三水雷戦隊には存在する。軽巡洋艦の川内・神通・那珂の三人がそれだ。

 この三人は同じ川内型と言われる型の軽巡洋艦であり、言うなれば姉妹のようなものである。

 それだけにそれぞれ仲はいい。その性格には大分個性差があるが。

 

 例えば長女の川内。彼女は大の夜戦好きだ。これには元となった軍船(いくさぶね)が夜戦ばかりで戦っていたことが原因だと思われる。

 口を開けば夜だ夜戦だと叫び、夜戦がなくとも夜に活動することも多い。どうやら夜行性のようだ。

 

 そして三女の那珂。艦隊のアイドルを自称する少々痛い子である。

 自分のことを那珂ちゃんと呼んでおり、よく無許可でビラ配りをしたりステージで歌ったりと勝手なアイドル活動をしてたりする。

 

 最後に次女の神通。夜戦馬鹿な姉とアイドル馬鹿な妹に挟まれた可哀想な子である。

 丁寧でしっかりとした性格で、姉と妹のブレーキ役となることが多い。大抵ブレーキになってないが。ちなみに第三水雷戦隊の旗艦(リーダー)を勤めている。

 

 個性豊かな新たな仲間たちに囲まれて、吹雪の新たな鎮守府での生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 吹雪は睦月に引き続き鎮守府の案内をされる。

 第三水雷戦隊の部屋と艦隊の仲間への紹介を優先した為まだ鎮守府内を殆ど回ってはいなかったのだ。

 ちなみに暇だった夕立も付いて来ている。

 

「ここが教室っぽい」

 

 その言い方ではここが教室ではない可能性もあるということだろうか。

 夕立の口癖を深く考えては駄目だと出会ってものの数分で吹雪は悟った。

 

「今日は日曜日で誰もいないから、明日皆に紹介するね」

「うん、ありがとう」

 

 睦月の言葉に礼を述べ、そこで吹雪は黒板の隣に貼ってある授業の時間割を見つける。

 そしてそこにある一つの単語がふと気になった。

 【演習】。それは実戦を模した訓練を指す言葉だ。それによって吹雪は様々な連想をした。

 演習によって実戦を思い浮かべ、実戦から深海棲艦を思い浮かべ、更にそこから赤城の戦果を思い浮かべ、そして自らの夢を夢想する。

 

「どうしたの吹雪ちゃん?」

 

 睦月は突然トリップしたように幸せそうな笑みを浮かべている吹雪を怪訝に思い声を掛ける。

 どうやら吹雪は夢想状態から覚めていないようだ。「えへ、えへへ、私が赤城さんを守るんだぁ」などと口走っている。かなり危ない状態のようだ。

 

「吹雪ちゃん帰ってこーい!」

「はわっ! え? 何どうしたの!?」

 

 夕立が珍しく語尾を付けずに叫んだ所でようやく吹雪は現実世界に帰還した。だが自分がトリップしたことは覚えていないようである。

 

「どうしたのはこっちの台詞っぽい。いくら呼んでも返事なかったぽい~」

「あは、あはは。ご、ごめんね夕立ちゃん、睦月ちゃん」

「それはいいんだけど……。何か気になることでもあったの吹雪ちゃん?」

 

 そう言われて吹雪は自分が何を考えていたのかを思い出す。

 

「そうだ! ねぇ、この鎮守府には一航戦の人達がいるんだよね?」

「うん、いるよ。赤城先輩と加賀先輩だよね」

「あ、噂をすれば!」

 

 空に響く音を聞きつけて夕立が教室の窓際まで移動する。吹雪と睦月も同じように窓際まで移動した。

 そして空から聞こえる音の正体を見る。そこには綺麗に編隊を組んで飛行する戦闘機の姿があった。

 

「一航戦の先輩たちの練習っぽ~い」

「あぁ~、やっぱりここにいるんだぁ!」

 

 夕立の言葉に興奮を隠しきれない吹雪。

 

「たった一艦隊で百以上の深海棲艦を相手に完全勝利したあの伝説の艦娘たち! しかもその内の六割は赤城さんの活躍って話なんだよね!」

 

 瞳を爛々と輝かせて我が事のように嬉しそうに話す吹雪を見て、これは完全に一航戦に、特に赤城に憧れていると睦月と夕立は気付いた。

 というかこれで気付けない奴がいたら恐らくそれは日本語を理解出来ていないだろう。

 

「あはは。その話、やっぱり有名なんだね」

「もちろんだよぉ! 私は赤城さんの護衛艦になりたくてここに来たんだから!」

 

 完全にアイドルの追っかけである。いや、同じ艦娘同士だからアイドルによるアイドルの追っかけと言った方が正確だろうか。

 

「でもその話ちょっと間違ってるっぽい」

「え?」

 

 夕立の突然の声に吹雪は動揺する。

 もしかしたら噂は誇張された物に過ぎず、赤城の戦果は大したものではなかったのでは? そんな考えが一瞬で脳内を巡ってしまった。

 それは仕方ないだろう。実際に直接戦果を見たわけでなく人伝に聞いただけだ。

 しかもその話の内容があまりにも過剰な内容なのだ。誇張されていたとしてもおかしくない程にだ。

 

(いや、それでも! 例え戦果が少なかろうとも赤城先輩が立派な艦娘であることに変わりはないはず!)

 

 だが吹雪の赤城への憧れは揺るがなかった。

 例え赤城の戦果が百もなかろうとも、それでも数十はあるだろう。それぐらいなければそこまでの誇張表現は有り得ない。

 実際の戦果が数機程度だとしたらそれを百に盛る訳がないのだから。

 だったら十分過ぎる程の戦果だ。数十だとしても伝説と言えるだろう。

 吹雪はそう考えて赤城への憧れを落とすことはなかった。

 

「倒したのは確か百五十を超えてるっぽい」

「増えるのっ!?」

 

 まさかの増量である。戦果が下方修正どころか上方修正されてしまった。吹雪の頭が混乱する。

 

「いや、でも、赤城先輩がその内の六割っていうのは、違ったりするんだよね?」

 

 まさかの戦果増量のせいで何故か信じていた噂を自ら疑い出してしまった。吹雪は己を見失っているようだ。

 

「うーん」

「あ、やっぱりそれはないんだ……」

 

 夕立の悩み方からして流石に一人で百五十の内の六割撃破という戦果はなさそうだと吹雪は悟った。

 一艦隊でまさかの百五十以上の撃破だったが、その内の何割かは赤城のはず。

 六割が誇張であったとしても、五割、いや四割でも恐ろしい戦果だ。

 艦娘の一艦隊は最大で六人編成だ。六人の中で一人が四割の撃破ならば十分過ぎるだろう。吹雪の憧れは憧れのままなのだ。

 

「まああれ(・・)も赤城先輩の力だから、やっぱり赤城先輩の戦果でいいんじゃないかな?」

「そうっぽい~?」

「?」

 

 なにやら二人だけで納得しているようだが、会話の意味が理解出来ない吹雪は置いて行かれている。

 だがそんな吹雪の疑問は次の夕立の言葉に吹き飛ばされる事となった。

 

「それなら赤城先輩の戦果は八割くらいっぽい~」

「また増えたっ!?」

 

 吹雪の許容量はそろそろ限界だ。

 夕立の話が真実ならば、百五十以上の撃破数の内八割、百二十以上の深海棲艦を赤城一人で撃破したということになる。

 

「え? いや、流石にそれは……」

 

 これには赤城崇拝(ただし互いに出会った事はない)の吹雪も苦笑いである。というか流石に簡単には信じ切れない。

 

「私たちもその伝説の一戦は見てないの。先輩たちから話を聞いただけだから。でも嘘じゃないと思うよ」

「伝説の一戦以外でも赤城先輩のあれ(・・)を見た事はあるし、多分本当っぽい」

あれ(・・)?」

 

 吹雪は先程から二人が思わせぶりに口にしているあれ(・・)とやらが気になる。

 だが二人はそんな吹雪に対して少し微笑みながら異口同音に答えた。

 

『見れば分かる(よ)(っぽい)』

 

 ……少々同音ではなかったようだ。

 とにかく、どうやら赤城のあれ(・・)とやらを話すつもりは今はないようだ。

 

「えー、意地悪言わないで話してよー」

「そうだ。それなら今から一航戦の先輩たちの所へ行ってみない? もしかしたらあれ(・・)も見られるかも」

「え!? 行く行く!」

 

 睦月の申し出は渡りに船というべきか、吹雪にとって最高の提案だった。

 こうして元いた鎮守府から異動願いを出してまで呉鎮守府に来たのは(ひとえ)に赤城と共に戦いたいが為だ。

 そんな吹雪が赤城を見に行こうと言われて嬉しくない訳がなかった。

 

 

 

 

 

 所変わって、吹雪たちは鎮守府内にある鍛錬所の一つに来ていた。

 そこはまるで弓道場を模したような鍛錬所であった。射場があり、矢道があり、海の上にだが的がある。

 少々変則的だが誰が見ても弓道場だと思うだろう。

 

 何故鎮守府内に弓道場があるのか? その答えは吹雪の視界の中にあった。

 

 そこには、和弓を構え、弦を引き絞り、的に向かって矢を放つ艦娘の姿があった。

 

「わぁ……きれい」

 

 弓を射るその凛とした佇まいと一直線に飛んでいく矢姿。そしてその矢が小型の戦闘機へと変化し的を射抜く様を見て、吹雪は素直に感動した。

 

 矢が戦闘機に変化するという本来なら有り得ない現象。これこそが空母型の艦娘に備わっている力である。

 

「あれが第一航空戦隊。通称一航戦の誇り、赤城先輩だよ」

「あの人が……」

 

 とうとうその御姿を拝見する事が出来、吹雪は至上の多幸感に包まれていく。どうやら脳内麻薬がドパドパ溢れているようだ。

 艦娘にも脳内麻薬があると実証されるのも近いかもしれない。

 

 だが、そんな吹雪のトリップは赤城の隣に立つ女性、赤城と同じく一航戦である加賀によって冷水を浴びたかのように覚めることとなる。

 

「断りもなく入ってきては駄目よ」

「す、すみません!」

 

 三人を代表して睦月が謝罪する。といっても加賀も本気で怒っているわけではないが。

 加賀はドライな性格をしており、規則は規則と注意しただけのことだ。この程度で罰するようなことはない。

 ただ一見冷たそうに見える為、注意を受けた側である三人は少々萎縮してしまったのだが。

 

 そうして三人が萎縮している間に赤城と加賀は三人の近くにまで近寄ってきた。

 赤城は見慣れぬ艦娘がいることを不思議に思い、もしかして話に聞いていた特型駆逐艦なのかと確認の為吹雪に声を掛けようとする。

 だがそれよりも早くに吹雪が赤城に対して言葉を掛けた。

 

「あの! 私特型駆逐艦の吹雪と言います! あ、赤城先輩ですよね! その、私、今は未熟ですけど! いつか絶対赤城さんの艦隊で一緒に戦えるくらい強くなりますから! だから、その」

 

 突然の、まるでプロポーズでもするかのような勢いのある告白に赤城も少々戸惑ってしまう。

 だがすぐに吹雪が何を言いたいのかを理解して、穏やかで包みこむような笑顔を吹雪へと向けた。

 

「ええ、楽しみに待っていますよ吹雪さん」

「は、はい!」

 

 憧れの存在からのそんな思いがけない温かい言葉に、吹雪は感動して敬礼で返す。

 だが次の赤城と加賀の会話に吹雪は疑問を抱いた。

 

「でも、困ったわね。私の事を尊敬してくれているのは嬉しいのだけれど、あれは私だけの力じゃ――」

「――そんな事はないわ赤城さん。あの力(・・・)は赤城さんがいなくては意味がないのだから」

「でもあれはあの子の……あら? そう言えばあの子はどこに?」

 

 誰かを探すように辺りを見渡す赤城。

 あの子とやらを探しているのだろう。吹雪も釣られて回りをきょろきょろと見るも、この場には他に誰も居はしなかった。

 

「きっとまた間宮に行っているのでしょう。全く……」

「ふふ、そう言わないであげて加賀さん。あっと、ごめんなさいね吹雪さん。それじゃあ私たちはまだ訓練の続きがあるから、これで失礼しますね」

 

 

 

 

 

 赤城たちと別れた吹雪たちは鎮守府内にある甘味所・間宮へと移動していた。

 そこで間宮名物の特盛り餡蜜に舌鼓を打ちながら話に花を咲かせていた。

 

「あ~赤城先輩素敵すぎる~!」

「確かに赤城先輩はかっこいいっぽいー」

「そうよね。でも残念。吹雪ちゃんにあれ(・・)を見せられなかったね」

 

 睦月にそう言われて吹雪は当初の疑問を思いだした。

 

あれ(・・)って結局何なのー!? 赤城先輩たちも何か意味深な事を言ってたし、気になるよー!」

 

 結局気になっていた何かを知る事は出来なかった。それが余計に気になる吹雪。

 だが、そんな吹雪の気持ちはすぐに切り替わる事になる。

 

『っ!?』

 

 突如として鎮守府内に鳴り響く警報。それが吹雪の様々な疑問を吹き飛ばした。

 軍事基地にて警報が鳴る。その意味を軽視する者はこの場には存在しない。

 

 深海棲艦に対して、反撃の狼煙が上がろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 空母赤城率いる主力の第一機動部隊。

 戦艦金剛率いる第二支援艦隊。

 軽巡洋艦神通率いる第三水雷戦隊。

 今、呉鎮守府において稼動可能な全艦隊が出撃準備を終えて出港の時を待っていた。

 

「秘書艦の長門だ――」

 

 司令官である提督の秘書艦を務めている戦艦長門から全艦隊へと通達が送られる。

 遠征に出ていた第四艦隊が敵深海棲艦と遭遇し、その際敵棲地を発見した。

 呉鎮守府正面海域を制圧している艦隊の棲地であると推測され、これより敵棲地を強襲するという作戦が通達される。

 

 長門の言葉に多くの艦娘たちが沸き立つ。いよいよ深海棲艦への反撃の狼煙が上げられるのだ。興奮するのも無理はない。

 だが、長門の次の言葉に多くの艦娘たちがどよめいた。

 

「皆心して聴け。第四艦隊からの情報によると、敵の総数は数え切れない、という物だったそうだ」

『っ!?』

 

 本来軍に置いて曖昧な内容を正式な情報として伝達することは殆どない。

 長門も軍に所属する艦娘としてそういった未確定の情報を公にして軍内部の不安を煽る様な真似など本来はしないだろう。

 だが、それでも伝達しなければならない規模の敵だったのだ。

 敵深海棲艦と遭遇した第四艦隊が、命からがら逃げ延びて伝えてくれた情報だ。蔑ろにする事は出来なかった。

 

「それでもお前たちに出撃を命じるのは、このままその敵深海棲艦を放置していれば更にその数は増し、確実にこの鎮守府へと進撃してくるからだ」

 

 つまり、これ以上敵が強大になる前に先に敵を叩けということだ。

 放置してより強大になった深海棲艦がこの鎮守府に攻撃を仕掛けてくれば、確実に鎮守府は壊滅するだろう。

 赤城が一度の出撃で百を超える戦果を上げた伝説と呼ばれる艦娘だとしても、数に任せた波状攻撃を仕掛けられれば鎮守府を守りきれる訳がない。

 だが逆にこちらが攻撃を仕掛け敵棲地にいる敵旗艦を叩けば敵の統率は乱れ、その隙を突いて勝利を掴む事も出来るだろう。

 

 敵深海棲艦の狙いは長門には理解出来た。恐らく赤城だ、と。

 

 これまでにも細かな深海棲艦との戦闘はあったが、大きな戦闘は二回だけだ。

 その一度目は赤城によって大半の深海棲艦が撃破された。

 そして二度目。深海棲艦は赤城を脅威と見たのか二百もの艦隊を繰り出してきた。

 だがそれも赤城率いる第一機動部隊によって大打撃を受けて逃走した。

 

 深海棲艦はここで確実に赤城を水底(みなぞこ)へと沈めようとしているのだ。

 その為に近海から多くの戦力を集めたのだろう。

 

「布陣は、一航戦赤城たちを主力とした第一機動部隊が敵棲地を強襲。第二支援艦隊と第三水雷戦隊はこれを援護」

『え?』

 

 長門のこの命令には幾人かの艦娘が疑問を覚えた。

 第一機動部隊と第二支援艦隊の布陣は問題ないだろう。

 だが第三水雷戦隊。この艦隊は本来なら先の二つの艦隊よりも先行して主力の前衛として警戒に当たるのが基本だろう。

 

 そんな当たり前の疑問に対して、長門はすぐに答えを返した。

 

「今回の敵総数は二百以上だと推測される。その様な数を相手に先行していては務めを果たす事も出来ずに壊滅の危機に追いやられるだろう。だからこそ、今回は全艦隊が一丸となって敵棲地を一気に攻め落とす」

 

 長門の命令を理解した艦娘たちの何人かは死を覚悟した。その殆どが経験の浅い艦娘たちだ。

 当然だ。戦力比が何倍もの敵を相手に突撃しろというのだ。作戦が成功したとしても誰かが死ぬ。いやそもそも成功するのか?

 まだ経験の浅い者がそう思うのは無理もないだろう。

 

「……こうして敵がこの海域に集中しているということは、他の海域では敵は手薄になっているという事だ」

『!』

 

 長門のその言葉の意味を誰もが理解した。

 そう、例えここで死んだとしても、この作戦が失敗したとしても、それは無駄にはならない。

 他の海域で戦っている艦娘たちが、必ず多くの制海権を取り戻してくれるだろう。例え死しても礎にはなれるはずだ。

 そう思った瞬間に、誰しも死の恐怖を乗り越えられた。いや、死にたくはない。死にたいわけがない。

 それでもこの死地に飛び込む勇気が湧いて来たのだ。

 

「案ずるな。私もお前たちを無闇に死地へと送り込みはしない。……赤城、あの子(・・・)は?」

「大丈夫です」

「そうか……」

 

 長門と赤城の間にまたも吹雪が理解出来ない会話が成されていた。

 どうやら赤城に何かしらの秘密があるようなのだが、それが何なのかは理解出来ない。

 だが吹雪以外の艦娘はどうやらその秘密を知っているようで、どこか先程よりも安心感が増している様に吹雪は感じられた。

 

 そんな少し緊張感が抜けた者達を嗜めるように長門からの通達が続く。

 

「本作戦の目標は深海棲艦の脅威を排除し、この鎮守府正面海域からの海上護衛航路を回復する事にある。各自、心して作戦に掛かってほしい。油断は禁物だ」

 

 結局赤城の秘密が何なのか知る事も、そして呉鎮守府に来て一度も訓練をする機会もなく、吹雪の初実戦が始まろうとする。

 

「暁の水平線に勝利を刻むのだ!」

 

 長門のその締め括りの言葉と共に、とうとう吹雪の初実戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

『第三水雷戦隊。出撃して下さい』

 

 通信室から下された出撃命令。それを聞いて吹雪は覚悟を決める。

 もうここまで来れば何をどう言おうと出撃を取り止める事など出来る訳がない。

 だったらもう覚悟を決めて出撃するしかない訳だ。そう、覚悟を決めて、まともに動く事が出来ない海上に……。

 

「第三水雷戦隊。旗艦神通、行きます」

「吹雪、行きまーす!」

 

 旗艦である神通の出撃に合わせ、吹雪もまた出撃する。

 吹雪の下半身に艤装が装着される。そうしてカタパルトから射出されるように、吹雪は海上へと出撃した。

 

「きゃあぁぁぁぁあぁ!」

 

 ……悲鳴を上げながらだったが。

 

 海上へと出撃されていく最中、吹雪の上半身にも艤装が装着されていく。これで吹雪は真に深海棲艦に対抗する力を手にした事になる。

 

「うわぁぁあぁぁ!?」

 

 ……まともに海上を動く事が出来ればの話だが。

 

「特型駆逐艦! 陣形崩れてるよー!」

「す、すみません!」

「大丈夫?」

「どこか調子悪いっぽい?」

「う、うん、だいじょうぶ、あ、あわわ!」

 

 綺麗な陣形を組んで移動する他の第三水雷戦隊と違い、吹雪はどうにかして彼女たちに付いて行くのがやっとだった。

 心配する睦月や夕立の声にも余裕なく返事をするしか出来ないでいた。

 

「吹雪ちゃんもしかしてあなた……」

 

 そんな吹雪の動きや態度を見て、神通は何かに勘付いたようだ。

 吹雪も神通に悟られたと気付き、思わず目が泳いでいた。

 

 そうして吹雪の驚愕の事実に全員が異口同音に叫ぶ。

 

『実戦経験がない(っぽい)ー!?』

 

 ……いや、やはり少々同音ではないようだ。恐らく夕立がいる限りその面子で異口同音が成される事はないのだろう。別段どうでもいい事ではあるが。

 とにかく、吹雪のまさかの実戦経験零という事実に全員が唖然とした。それは決して吹雪を悪く思っての事ではない。

 前鎮守府では実戦経験を積ませる所か、練度を積む事すらさせてもらえなかったと言うのか。そういう吹雪が以前に務めていた鎮守府に対しての反応だ。

 だがそれは前鎮守府が悪いということではない。どちらかというと前鎮守府は吹雪を守っていたと言えるだろう。

 

「私、運動が……」

 

 そう言い掛けた吹雪は、言葉を言い終える前に海上を転がり滑っていった。

 それを見た第三水雷戦隊は全員が吹雪の言いたい事を完全に理解した。

 ああ、運動音痴なんだ、と。

 

「何で言わなかったの?」

「司令官が心配ない。皆が助けてくれるって……」

「いいかげんっぽーい……」

 

 司令官には恐らく何らかの考えがあるのだろう。

 だがまともに動く事が出来ず実戦経験なしの状態で、初実戦でこのような戦地に送り込まれた本人はたまった物ではないだろう。

 それはある意味足手纏いを任された他の艦娘も同様である。

 だが戦場は彼女たちに状況の整理を許す時間を与えなかった。

 

「皆さん! 第二支援艦隊が敵深海棲艦と戦闘を開始! 私たちもすぐに敵海域に突入します!」

 

 旗艦である神通からの報告に全員が第二支援艦隊が展開している方角を見る。

 その海域では既に味方と敵によって多くの砲弾が飛び交っていた。

 第二支援艦隊とはほぼ横並びに陣形を拡げて移動していた第三水雷戦隊もすぐに敵との戦闘海域に入るはずだ。

 

 そして神通のその言葉はすぐに現実の物となった。

 

「っ! なんて数!」

 

 突如として海面に深海棲艦が現れた。

 吹雪は初めて(まみ)える深海棲艦に怯えを見せる。予想よりも大きく異形であった事も原因だろう。

 この大型の異形の魚のような見た目は駆逐イ級と呼ばれる種類の深海棲艦だ。見た目は恐ろしいが深海棲艦の中ではその脅威度は低いと言える。

 だが問題はその数だ。イ級は数えられるだけで二十は出現していた。しかもそれ以外の種類の深海棲艦も存在している。中には未確認の種類すらいた。

 未確認も含め、これらは全て駆逐艦級だった。だが問題は数だ。これだけの数に責め立てられれば個々の練度で勝っていようともいずれは力尽きるだろう。

 

「砲雷撃戦初め!」

 

 神通の攻撃命令により、第三水雷戦隊は次々と各々の艤装から攻撃を繰り出す。

 何せ敵の数は甚大だ。とにかく撃って攻撃をして敵の数を減らさなければ話にならないだろう。

 

「きゃあああ!」

 

 だがその数を減らすという行為すら容易ではなかった。

 数が数だけに敵からの攻撃の密度が高く、攻撃どころか回避に専念せねばすぐに撃破されてしまう程だったのだ。

 

「このままでは……! ここは一度陣形を組み直します!」

 

 このまま攻撃に晒されるままでは確実にやられてしまう。

 そう悟った神通は一度陣形を組み直してから再度攻撃を開始することを提言する。

 苛烈な攻撃を掻い潜りながらどうにかその場を切り抜けようとする。

 だが、やはり数で圧倒的に劣るということは大きな不利であった。

 

「うわぁぁあ!?」

 

 最初に被弾したのは川内だ。撃破にはいたってないがあちこちを損傷し艤装は中破している。戦闘力は大幅に下がっただろう。

 

「か、顔はやめてー!」

 

 続けて那珂も損傷する。損傷は小破と言ったところだが、今は小破でもこのままではいずれ撃破されてしまうだろう。

 

「川内さん、那珂ちゃん……!」

 

 頼れる仲間たちが傷ついていく。これが戦いなのだと吹雪は実感する。

 敵艦は更に数を増し、確実に第三水雷戦隊を追い詰めようとしていた。

 このままでは皆やられてしまう。そんな未来を想像し、吹雪は戦場を恐怖する。

 だが、傷ついた仲間は誰もこの現状に恐怖していなかった。

 誰もが敵に負けじと攻撃を返していく。

 

「どうして……」

 

 どうしてこんなどうしようもない様な状況でも戦う事が出来るのだろうか。

 そんな吹雪の疑問には、吹雪の隣で弾幕を張り続けている睦月が答えてくれた。

 

「大丈夫だよ吹雪ちゃん。私たちには助け合える仲間がいるんだから」

「え――」

 

 睦月のその答えはすぐに目に見える形で現れた。

 戦場の空を多くの戦闘機が編隊を組んで飛び交っていく。

 戦闘機はそれぞれに備わっている機銃や爆弾などの武装で次々と敵深海棲艦を撃破していった。

 

「あれは!」

「主力艦隊っぽいー!」

 

 第二支援艦隊と第三水雷戦隊の僅か後方に位置していた主力の第一機動部隊が戦列に加わったのだ。

 その中でも一航戦である空母赤城と加賀の航空攻撃だろう。この攻撃によって前線は勢いを取り戻した。

 

「私たちも続きます!」

 

 第三水雷戦隊も主力艦隊に負けじと攻撃を加え続ける。

 そして吹雪もまた不慣れながらも砲弾を放ち続け、危なげながらもどうにかこの海域を切り抜ける事が出来た。

 

 だが、これはこの作戦の前哨戦に過ぎない。最終目標は敵棲地にいる敵艦主力を撃破し、この海域全般を開放する事である。

 しかし前哨戦とも言える戦いに全艦隊で出向いた為、主力の第一機動部隊も損耗してしまっている。

 このような状態で敵本隊が待ち構えている敵棲地に赴き、果たして任務を遂行する事が出来るのだろうか。

 

 そんな吹雪の不安が具現したかのような光景が、吹雪の視界に広がっていた。

 

「うそ……」

 

 空は暗雲が覆い、海も何故か不気味に暗く染まっている。

 その中央にある泊地に、敵の旗艦がその姿を現していた。

 それだけではない。敵旗艦を守るように、そして攻め込んできた艦娘たちを屠る様に、数え切れない深海棲艦が伯地の周りに終結していたのだ。

 

「こんなの無理だよ……」

 

 吹雪がそう呟いたのは誰にも聞こえなかったが、例え聞こえていたとしても誰も咎めなかっただろう。

 初の実戦でこの様な光景を見せられては心が折れたとしても仕方のない事だ。

 どうすればこの絶望から逃れられるのか。不安と恐怖に押し潰されそうだった吹雪は助けを求める様に後ろを振り向き、尊敬する赤城の姿を探した。

 赤城はすぐに見つかった。彼女は弓道場で見た時と同じように弓を構えていた。

 その表情には微塵も恐怖の色は感じ取れなかった。凛とした佇まいのまま、正射必中の心得を以ってして、矢を放った。

 

「赤城先輩……」

 

 赤城のその姿を見て、何時の間にか吹雪の中の不安や恐怖は何処かへ消えてなくなっていた。

 

(これが、私が憧れた人……)

 

 この大軍を見ても、この戦力差を見ても、赤城は微塵も揺るいではいなかった。

 それが吹雪に力を与える。赤城と共にならば必ず勝てると。

 それを証明するように、赤城が放った矢は戦闘機へと姿を変え、敵旗艦に向かって一直戦に飛翔し……爆発四散した。

 

「……え?」

 

 吹雪は呆然としたが、まあ驚く事ではない。

 あれだけの深海棲艦に守られた旗艦にたった一機の戦闘機で何が出来たというのか。

 哀れ戦闘機は過剰とも言える対空攻撃によって海の藻屑となった。……戦闘機は、だが。

 

「来るよ吹雪ちゃん!」

「え?」

「刮目するっぽい!」

「ええ?」

 

 睦月と夕立の言葉に慌てふためく吹雪。先程から何が何やら訳が分からない状態だ。

 だがそんな吹雪の動揺は一瞬で更なる動揺によって塗り替えられる事となった。

 

 砕けた戦闘機から一つの小さな影が飛翔する。

 それを狙って海上から先程よりも更に凄まじい対空攻撃が加えられた。

 深海棲艦は理解しているのだ。これこそ、自分たちの同胞を沈めた最強最悪の敵。

 妖精であると!

 

「ええー!?」

 

 妖精が自在に宙を飛び、無数の砲弾を掻い潜る!

 いや、全ての弾丸を避け切れてはいない。だが命中してもいない。

 なぜなら、妖精の体に触れた弾はその軌道を変えて深海棲艦へと降り注いでいるのだ!

 

「ええぇぇ!?」

 

 自ら放った攻撃で撃破されていく深海棲艦。だが彼女らも負けてはいない。

 空母型が戦闘機を繰り出し、駆逐艦型が機銃で弾幕を張り、軽巡・重巡型が中口径主砲を放ち、戦艦型が大口径主砲の火力で押し込む。

 妖精がいる地点はまさに地獄そのものだ。あの場にいればどんな艦娘だろうと物の数秒で撃破されているだろう。

 

 だが妖精はそうはならなかった。全身を何かオーラの様な光が覆ったと思うと、それらの攻撃の全てを弾き返したのだ。

 

「嘘でしょぉぉぉおぉぉ!?!?」

 

 常識とは何だったのか。妖精とは何だったのか。大口径主砲って弾き返せるの? どう言う事なの?

 最早吹雪の脳は限界だった。何が現実で何が夢なのかも曖昧だ。もしかしたら今は夢の中で、目を覚ますと以前の鎮守府の布団に包まれているのかもしれない。

 

 そもそも妖精とはあんなに強いものなのか? 否、そんな訳がない。

 妖精とは艦娘を様々な面で補助をしてくれる重要かつ大事な味方である。

 その仕事ぶりは様々だが、戦場に置いて最も重要な仕事として、戦闘機の操縦がある。

 空母が放った戦闘機は妖精が操縦しているのだ。そういう意味では彼女たち妖精は強いと言えるだろう。

 空母の強さは妖精なくして語る事は出来ないのだから。

 

 だがこれはない。この妖精の強さはそんな次元の話ではないだろう。

 どこに戦艦が放った大口径主砲をオーラで弾き返す妖精がいる。どこに無数の銃弾を正確に敵へと返す妖精がいる。

 妖精がそれだけ強ければ空母型の艦娘は全員戦闘機から妖精を取り出して放つだろう。その方が効率的である。

 

「え? 妖精さんが? 妖精さんで? 妖精さんじゃなくて? 妖精様ですか?」

「落ち着いて吹雪ちゃん!」

「気持ちは分かるっぽい。でも今は戦闘に集中しようよ」

「これで落ち着いていられるわけないよ!」

 

 正論である。初見でこれを冷静に処理出来る者が果たして世界に何人いるのだろうか。

 ちなみに某鎮守府の秘書艦は数日程現実逃避したという。

 

「あれって何なのぉぉぉ!?」

「あれこそ、赤城先輩の伝説の立役者!」

「妖精を超え艦娘を超え深海棲艦を超え、全ての生物の頂点に立つ、妖精女王!」

『その名もヨウちゃん(だよ)(っぽい)!』

 

 睦月と夕立が交互に、そして最後には同時にあの奇怪な妖精について説明する。

 

「ヨウ、ちゃん?」

 

 今もなお二百を超える深海棲艦を相手に互角以上の戦いを繰り広げる存在の名前にしては随分可愛らしいものだ。

 だがまあ見た目は普通の妖精その物なので可愛くても可笑しくはないのだが。

 そんな可愛く二頭身で短い手足を付けて身長三十cmもあるか分からないデフォルメされたぬいぐるみの様な存在がこの強さという事が既に可笑しくはあるが。

 

「そう、ヨウちゃんだよ」

「ヨウちゃんは赤城先輩が放つ戦闘機の操縦妖精として何時の間にか生まれてたっぽい」

「他の妖精さんと違って戦闘機が無くなってもああして自由に動けるし、その強さも意味分からないくらいとんでもないの」

「あまりにも意味分かんなくてその内皆思考するのを止めたっぽい……」

「だから吹雪ちゃんも深く考えない方がいいよ。すぐに達観出来るから」

 

 またも交互に詳しく説明されたが、それで納得出来る程簡単な存在ではないだろう。

 

「いやそんな事言われて――きゃっ!?」

 

 あまりの光景と話の内容に完全に戦場から気を逸らしてしまっていた吹雪は、近くの海に着弾した敵の攻撃に驚き身を竦めてしまう。

 

「吹雪ちゃん!?」

「あ……」

 

 そして目の前に急に現れた深海棲艦。すでにその深海棲艦は攻撃態勢に入っていた。

 避ける事は不可能。最早これまでか。死を覚悟した吹雪だったが――次の瞬間には妖精……ヨウちゃんから放たれたビームの様な攻撃でその深海棲艦は消し飛んでいた。

 

「……」

「(ぐっ!)」

 

 吹雪が見るとヨウちゃんが吹雪に向かって親指を立ててサムズアップしているのが分かった。大丈夫だ、こっちは任せろ、と言っているかのようだ。

 そのままヨウちゃんは全身からビームを四方八方に放ち深海棲艦を次々と沈めていった。

 更には敵の数が減ってくるとビームを放つのを止め、近くに寄ってその小さな腕や足を振るって自分よりも遥かに巨大な深海棲艦を木っ端微塵に粉砕していった。

 

 終いには旗艦だと思われる人型の深海棲艦――深海棲艦の上位個体は艦娘の様に人型をしている事が多い――に対してサブミッションらしき攻撃を仕掛けている。

 あの短い手足でどうやっているというのか。その前に旗艦である深海棲艦はその身をバリアらしき物で守っていたのだが、そんなものヨウちゃんは殴って壊していた。深海棲艦も唖然である。

 いまや敵旗艦はヨウちゃんの繰り出す数多のサブミッションで涙目になっている。何度もタップを繰り返しギブアップを表現しているようだが、ヨウちゃんに容赦は無い。

 周りの深海棲艦たちもリーダーを守りたいのだが、攻撃するとリーダーを巻き込んでしまうのであたふたしている。

 最早先程までの空気は何処かへ消え去っていた。吹雪はもう深く考えるのを止めた。

 

「ヨウちゃん凄いねー!」

『ねー!』

 

 

 

 

 

 

 呉鎮守府近海海域奪還作戦成功。全艦娘帰還。

 敵深海棲艦撃破数三百二十六(確認出来うる限りの数なのでこれ以上の可能性有り)。

 その内八割が赤城(その内更に九割がヨウちゃん)による物である。

 この情報は瞬く間に全鎮守府に伝わり、赤城最強伝説を更に膨らませる原因となった。

 

 この戦果は全てが赤城の物となっている。これは軍としては当然の情報操作だ。

 敵深海棲艦を倒したのはヨウちゃんが殆どだが、それを馬鹿正直に広めて信じる者がどれだけいると言うのか。馬鹿にされて終わりなのが関の山だろう。

 そもそも空母級が放った戦闘機の操縦者である妖精が敵を撃破すればそれはその空母級艦娘の戦果となるのだ。だからヨウちゃんの戦果が赤城の戦果となっても別に不思議な事では無い。

 

「……私の力ではないのですけど」

「いえ、赤城さんがいなければヨウちゃんも生まれていないわ。だから赤城さんがそんなに気にする事はないの」

「(コクコク)」

 

 がっくりと肩を落とす赤城を励ます加賀。そんな二人の肩をポンポンと叩き加賀の言葉を肯定するように頷くヨウちゃん。

 妖精は話す事が出来ないからこうしてジェスチャーで感情や想いを表現するのだ。

 流石の規格外妖精もそこら辺は妖精の範囲内に収まっているようだ。もっとも、戦闘機乗りの妖精だというのに自由に出歩ける時点でどうかと思うが。

 

「加賀さん、ヨウちゃん、ありがとう」

 

 赤城の礼の言葉にヨウちゃんはぐっと親指を立てて応える。

 そんな仕草に赤城は笑みを浮かべる。ヨウちゃんがどういう存在なのかは解明されてないが、心優しく赤城の、いや艦娘の味方だということは確信を持って言えた。

 だったら他の妖精のように信頼して接するだけだ。

 

 

 

 さて、赤城が改めてヨウちゃんへの信頼を確認しその絆を深めているところで、ヨウちゃんという規格外妖精について説明しよう。

 率直に言えば、彼女は転生者と呼ばれる存在である。転生者と言えば読んで字の如く死して生まれ変わった者だ。

 仏教徒であればこの世の生物は命が輪廻転生して巡っているのだと信じているだろう。実際はどうなのか転生者であるヨウちゃんにも完全には理解出来てはいないが。

 

 普通の輪廻転生と違い、ヨウちゃんには生前……前世の記憶が残っているのが特徴か。

 それはそういう能力をかつてのヨウちゃんが作り出したことが原因だ。

 これはとある目的の為に意図して作り出した能力だったが、それが意図していない結果を生み出してしまった。

 

 それが転生人生である。ヨウちゃんは死んでは生まれ変わり死んでは生まれ変わりを繰り返すようになったのだ。

 しかもその能力をある程度の制限があるとは言え引き継いで生まれ変わっていく。記憶があるから技術なども引き継げる。

 つまり生まれ変われば生まれ変わる程に強くなっていくのだ。もちろん様々な要因により前世より弱くなる事も有るには有るが。

 

 ともかく、そんな延々と続く転生人生を歩んでいたが、これは真実永遠に続くわけではない。終わる方法が幾つかあるのだ。

 その最たる方法が自殺である。自殺をすれば転生の能力が発動しなくなるというルールを能力の中に組み込んでいるのだ。

 最も、今の彼女に自殺をするつもりはない。それは負けの様な気がするのだ。まあ本当にどうしようもなく生に疲れたら自殺をするかもしれないが。

 今は生まれ変わったら以前の人生は大事な事以外忘れ、今の人生を楽しもうと割り切っているようだ。現在の妖精人生(妖精生?)も中々刺激的で楽しんでいるヨウちゃんである。

 

 他の転生を終える方法としては、単純に確率の問題と、もう一つある方法が有る。

 確率とは、能力発動が絶対ではないことを現している。その人生で長く生きれば生きるほど転生の能力は発動しやすくなるのだ。生まれてすぐにでも死ねば発動確率はほぼ0%だろう。

 ちなみにこうして今も転生している事からこれまでは確実に発動してきている。正直ヨウちゃん自身この確率については完全に綺麗さっぱり忘れている条件であった。

 

 もう一つ……最後に残された方法。それは女性と性交することでこの転生能力が消滅するというものだった。

 なぜこの様な条件を組み込んだのか? それはヨウちゃんの最初の人生が大きく関わっているのだが、ここでは記す事も憚られる。

 とにかくヨウちゃんはこれまでの人生で女性と一度たりとも性交する事なく過ごしてきた。

 それは別にヨウちゃんが女性嫌いという訳ではない。……単純に一度もその機会が巡ってくる事がなかったのだ。

 

 大抵は女性として生まれてきた。性別がある生命に転生すれば性別の確率はほぼ半々だ。

 だが運が悪いのか、何故かほぼ全て女性として生まれてきたのだ。女性に生まれれば余程の状況にならない限り女性と性交などするわけがない。

 一応は男性として生まれる事も有るには有った。だが、男性というか、それは雄だった。

 雄。人間には使われない性別の総称だ。つまりはその時は人間ではなく異種の存在だった。異形である。

 そして同種の雌ももちろん異形だ。精神は人間であり、その美的感覚も人間のままである当時の彼には同種との性交は御免であった。

 結局彼――当時のヨウちゃん――はその生涯を童貞で終えた。最後は涙したのを覚えている。こればかりは今もなお忘れる事が出来ない悲しい記憶となってこびりついていた。

 

 さて、そんな彼(彼女)が巡り巡って生まれ変わったのが、妖精であった。

 初めて意識が出来たのは戦闘機の中であった。これには流石に驚愕である。今まで生まれた時は当然赤子なのが殆どなのに、急に意識が浮上したと思ったら戦闘機の中なのだ。

 戦闘機の操縦は何故か理解出来た。これは戦闘機の操縦妖精に生まれつき備わっている特性なのだろう。

 だがそれを別としていきなりの状況に久しぶりに戸惑っていたヨウちゃんはいきなり敵の機銃に被弾。そのまま戦闘機は無残に爆発四散した。

 

 しかしそこは百戦錬磨どころか百生練磨というくらいに戦い続けて来た経験を持つヨウちゃんだ。

 戦闘機が四散する前に中から飛び出し、状況を確認。海面には多くの異形(深海棲艦)が存在、本能としてそれらを敵と判断する。

 後はまあ説明するまでもないだろう。結果だけを述べよう。哀れ深海棲艦は海の藻屑と化した。

 

 そこからは産みの親とも言うべき赤城に驚かれたり、加賀に驚かれたり、秘書艦を呆然とさせたり、間宮で特盛り餡蜜を食べてご満悦したりと楽しい日々を送っているわけだ。

 

「こらヨウちゃん待ちなさい。まずは入渠して汚れを落としますよ」

「(……こくこく)」

 

 いつもの様に戦闘を終えて間宮にて好物の餡蜜を食べに行こうとしたヨウちゃんだったが、そこは赤城によって止められた。

 傷は付いてないが戦場故に汚れはある。砲弾が飛び交う中にいたのだ。煤汚れなどは流石にあった。

 楽しみにしていた餡蜜が少しお預けされたが、まあ入渠(お風呂)は嫌いではない。というか元日本人なヨウちゃんなので大好きと言っても過言じゃなかった。

 

 すぐに赤城の言葉に嬉しそうに頷き、そのまま赤城の肩に乗って共に風呂場を目指す。

 

「お風呂が終わったら一緒に餡蜜を食べに行きましょう」

「私も行くわ」

「(ぐっ!)」

 

 入浴後の餡蜜を楽しみに思い笑顔全開のヨウちゃん。全力でサムズアップしていた。

 ままならない転生人生を送っているが、彼女は何だかんだで楽しんでいるようであった。

 

 




 この先に欝展開なんてありません。深海棲艦死すべし慈悲はない。ただしほっぽちゃん、キミだけは別だ。
 ちなみに艦これ編に続きはありません。ぶっちゃけ書く意味がないw このまま主人公が大暴れして哀れ深海棲艦となるだけですので。







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