どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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NARUTO 第九話

「なぜ私は口寄せが、時空間忍術が出来ないのか……」

 

 アカネは修行を終えてすぐにそう述べた。

 

 あの後、ナルトは口寄せの術に成功してからチャクラの使いすぎで気絶し病院に入院した。だがすぐに退院し、約束していた通りアカネと二人で柔拳に対抗する修行を積んでいた。

 そしてアカネはナルトに一通りの修行をつけた後、こっそりと未だ諦めきれていない口寄せの修行を一人でしていた。もちろん結界を張って周囲にばれない様にしてだ。

 だがまあ何十年も上手く行ってない物がいきなり出来るわけもなく、結局いつもの様にミクロなカツユを口寄せするだけに終わっていた。

 

 さて、修行を終えて家に戻り一休みしたアカネは今日が中忍試験の本戦だと思いだし、試験会場に向けて白眼を発動した。これでここからでも試合を見る事が可能である。白眼様々であった。

 ある程度の試合を見てアカネは満足そうに頷いた。下忍故にまだまだ未熟だが、注目すべき戦いは幾つかあった。まずはナルトとネジの試合だろう。

 二人の勝負はやはりというべきかネジが優位に立って進めていたが、土壇場になってナルトが爆発的な底力を発揮して最後にはネジを叩き伏せていた。

 これにはアカネも驚いていた。ナルトを鍛えたアカネだったが、それでもナルトの勝率は一割にも満たないと思っていたからだ。

 九尾の人柱力だからという理由ではなく、ナルトの諦めない根性と気合が生んだ勝利だろう。これはアカネも素直に称賛していた。

 

 もう一つ、木ノ葉の奈良一族の少年と砂隠れのくノ一との試合もかなり見応えがあった。

 純粋な戦闘力では砂隠れのくノ一が圧倒していただろう。風遁を利用したり奈良一族の影縛りの術――若い忍は影真似の術と呼ぶ――の効果や範囲を見切り戦術を組み立てていた。戦闘力だけでなく頭も切れるようだ。

 だが奈良一族の少年の頭脳はその更に上にあった。力量の低さを手持ちの武器と頭脳を駆使して覆したのだ。この試合に期待していなかった多くの観客も引き込まれる程見事な戦法と言えた。

 最後には自身のチャクラ切れを見越してさっさとギブアップをしてしまったが、頭脳に見合う実力とチャクラを手に入れたらと思うと将来が楽しみな逸材である。恐らく今回中忍試験を受けたどの下忍よりも隊長に向いているだろう。

 

 そして第三試験一回戦最後の試合。これが始まりの合図となった。そう、大蛇丸による木ノ葉崩しの始まりである。

 その試合はうちは一族の期待の少年うちはサスケと砂隠れの我愛羅という忍の闘いであった。

 そしてアカネは我愛羅を見た瞬間にある事実に気付いた。

 

(砂隠れの人柱力か!)

 

 アカネは我愛羅の中に我愛羅以外のチャクラを感じ取り、そしてその正体に気付いたのだ。この禍々しくも強大なチャクラ。完全に尾獣のそれであった。

 我愛羅の中には一尾という尾獣の一体が封印されていた。一尾は昔から砂隠れが所有していた尾獣だ。砂隠れの忍である我愛羅が一尾の人柱力なのもおかしな話ではない。

 そして人柱力が中忍試験を受ける事も珍しくはあれどあり得ない話ではない。実際ナルトも同じ様に試験を受けている。

 だが人柱力には常に暴走の危険性が伴っている。尾獣と完全に共生できる人柱力など忍の歴史でも稀なのだ。

 この試験で暴走の可能性も有り得る。そう判断したアカネは取り敢えずどうなっても対処しやすい様に試験会場へと移動を始めた。

 

 移動しながらアカネは白眼の焦点を試験会場から全体へと拡げる。

 大蛇丸が暗躍している可能性と、砂隠れの人柱力、そしてピリピリと気を張り緊張していた砂隠れの忍。これらがどうにも気になったのだ。

 そしてアカネは見た。火影である猿飛ヒルゼンの隣で中忍試験を観戦している砂隠れの風影。その中身が大蛇丸であるという事実を。

 

 更に里の外壁近くに砂隠れの忍が百人程木々に隠れて待機しているのを発見。この時期にこんな場所にこんな人数が集まって何をする? まさか仲良く遊びに来たというわけがないだろう。それを証明するかのように、試験会場にて事態は動き始めた。

 

 試験会場では幻術が発動し多くの観客や木ノ葉の忍――主に下忍だが――を巻き込んで深い眠りへと(いざな)っていた。

 その瞬間を狙って風影に扮していた大蛇丸は三代目火影を連れて会場の屋根へと移動する。そして潜ませていた部下に強力な結界を張らせて周囲と孤立させた。

 

「ちっ! 砂と大蛇丸が手を組んでいたか。大蛇丸の狙いはヒルゼンの様だが……」

 

 アカネはヒルゼンの強さを知っている。木ノ葉の全ての術を網羅しているとも言われており、実際に全てではないがほぼ全ての術を理解している。

 そして五大性質変化である火遁・水遁・雷遁・土遁・風遁の全てを扱え、その術の使用法もまた効率的だ。教授(プロフェッサー)との異名は伊達ではない。

 だがそれも全盛期の話だ。今のヒルゼンは齢七十が近い老齢の身。スタミナも衰えチャクラも全盛期の半分にも満たないだろう。

 そんな状態で五影と同等の実力と言われる三忍の大蛇丸を相手に闘い倒す事が出来るのか。そう考えると流石にアカネも不安が勝る。

 

 だが危機に陥っているのは火影だけではない。突如として襲ってきた砂隠れと音隠れの忍に混乱した木ノ葉の民の多くは逃げ惑っている。しかも敵の中には大蛇丸が口寄せした家よりも大きな大蛇もいた。

 木ノ葉には忍だけでなく一般人も多い。砂と音の忍も一般人を狙うよりはまず木ノ葉の忍を攻撃するだろうが、身を守る術を持たない彼らを放置していたら忍術合戦に巻き込まれ被害は拡大する一方だろう。

 かと言って火影を見捨てる訳にもいかない。火影とは里の中心的存在だ。それが万が一にも死んでしまえば里の損失は非常に大きい。

 

 周囲の忍を片付けるか、それとも火影であるヒルゼンに加勢するか。結論はどっちも同時にやればいいというものだった。

 

「影分身!」

 

 影分身の術。これは実体のない通常の分身とは違い、術者と同じ肉体を持つ分身を生み出す高等忍術だ。更に無数の影分身を生み出す多重影分身という禁術に指定された危険な術もあるが、今回は三体の分身を生み出すだけに留めた。

 無数の影分身を生み出すとチャクラを均等に分散する為に一体あたりのチャクラ量は少なくなってしまう。それでは強大な敵が現れた時に本体ならいざ知らず分身では対処出来ない可能性もある。

 あとはアカネの実力なら三体の分身で十分だというのもある。敵が弱ければ一掃し、強ければ三体という少ない人数だからこそのチャクラ量で対応する事も可能だろう。

 

「もいっちょ影分身!」

 

 その上で殆どチャクラを籠めずに弱体化した影分身を百体ほど作り出す。この弱体化影分身には木ノ葉の住民を助ける為に動いてもらうつもりだった。その上でこの弱体化影分身で対応出来そうな忍は倒すようにする。

 

 アカネ本体はヒルゼンのいる試験会場を目指し、影分身は四方に別れそれぞれの役目を果たす為に活動を開始した。

 それでも守りきれない部分はあるだろうが、それは自里の忍を信じて託した。木ノ葉はこの程度で揺らぐほど貧弱な木ではない。友と築き上げた何者にも負けない大木なのだと。その大木の若葉達を信じてアカネは駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 中忍試験第三の試験本戦。その中の一戦、木ノ葉のうちはサスケと砂の我愛羅との戦闘中にそれは起こった。

 火影と共に観戦していた風影――砂隠れの長――が、突如として会場内を覆った幻術の発動を合図として火影を連れて会場の屋根へと移動したのだ。

 そして音隠れの忍を使って自分と火影を中心に四方へと結界を張らせる。四紫炎陣と言われるその結界は触れただけで対象を燃やし、その強度も並大抵ではない強さを誇っている。

 これだけだと砂が木ノ葉を裏切り戦争を仕掛けた様に見えるだろう。事実多くの砂の忍がこの戦争に加担している。

 

 それは風の国が行った軍縮によって砂隠れの里の戦力維持が難しくなった事が起因している。軍縮による戦力低下に危機感を感じた風影は音隠れと組んで木ノ葉を襲ったのだ。

 全ては里の為。風の国の大名に国の危機管理の甘さを教え、里の回復の為に木ノ葉を襲ったのだ。これ以上時が経てば木ノ葉を襲う戦力を完全に失う為、今この時を最後の機会として。

 

 だが全ては大蛇丸の、ひいては暁の手の内だった。

 里に木ノ葉を襲う様に命令した風影は……既に殺されており、その姿は大蛇丸の物とされていたのだ。そう、三代目を襲った風影は大蛇丸が化けていた物だったのだ。

 

 大蛇丸の狙いは初めから三代目火影の命。それは禁術を開発していた所を見つけられ、木ノ葉から追い出された恨み……だけではなかった。

 真の理由は二つ。一つは止まっている物を見るのが退屈という極個人的にして手前勝手な物。

 そしてもう一つは自らの組織からの命令である木ノ葉の戦力低下であった。火影を殺す事は間違いなく里の戦力低下を招くだろう。

 

 もちろんそれを黙って見過ごす木ノ葉ではない。暗部と呼ばれる木ノ葉の部隊が三代目に加勢しようとする。

 だが四紫炎陣に阻まれて加勢は叶わなかった。外から四紫炎陣を破るのは優秀な忍である暗部でも簡単ではなかったのだ。

 内側で結界を張っている4人の音忍を倒せばいいのだが、それも音忍が内側から更に結界を張る事で自分達の身を守っていた。

 暗部達は三代目火影を案じながらも見守るしか出来ないでいた……。

 

 

 

 三代目と大蛇丸が対峙し、二人が放つプレッシャーは高まり続けて行く。

 やがてプレッシャーは物理的な力すら持つようになり、二人の中心にある屋根の一部はひび割れる程に高まった。そしてそれが戦闘開始の合図となった。

 

 三代目は手裏剣を一つだけ投擲し、印を結んでその手裏剣に対して術を掛ける。

 

――手裏剣影分身の術!――

 

 それは影分身と呼ばれる従来の分身の術ではなく実体を持った分身を生み出す高等忍術と手裏剣術を組み合わせた術。

 投擲された手裏剣は無数の実体を持つ手裏剣を生み出し、大蛇丸を襲う。

 

――口寄せ・穢土転生!!

 

 それを大蛇丸は口寄せの術の一種で防いだ。

 それはかつて二代目火影が考案した禁術中の禁術。死者を浄土から穢土に口寄せして自由に使役するという、まさに死者を冒涜する術であった。

 二代目は敵であるならば死者であろうと利用する程に現実主義者であり、その有用性からこの術を考案したのだが、あまりに非道な術ゆえに禁術として封じられていた。

 それを大蛇丸が解き明かして己の術としたのだ。

 

「ひとつ! ふたつ!」

 

 そして口寄せされた死人が収められている棺には文字が書かれていた。

 一つ目の棺には【初】、二つ目の棺には【二】。これを見て三代目は口寄せされた死人の正体を理解し、三つ目の口寄せだけは口寄せ解除の印を組む事で防いだ。

 だからこそ、四つ目の口寄せを防ぐ事が出来なかった。

 

「よっつ! ……ふふふ。三人目は防いだ様ですが、この方は防げなかった様ですねぇ」

「四人目!? まさか!」

「さあ、懐かしい顔とご対面ですよ猿飛先生ぃ……!」

 

 三代目が危惧していたのは自分を除く初代から四代目までの三人の火影を口寄せされる事。

 そしてその危惧の通り、口寄せされたのは死した火影である。だがそれならば四人目はいないはずだ。

 火影は現在までで四代目まで存在しており、三代目を除き全員亡くなっている。ならば口寄せされるのは三人のはずだ。

 だが三代目はすぐに最後の一人に思い至った。木ノ葉を語る上で外す事の出来ない、火影と同等の位置にいた人物を。

 

 そして三代目はかつて木ノ葉にあった懐かしい面々と再会する事になる。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって木ノ葉の東口門。ここには巨大な蛇が複数体も口寄せされて暴れていた。

 あまりの巨大さゆえに討伐に駆けつけた忍も手が付けられないでいたが、その巨大蛇を圧倒する巨大蛙が突如として現れた。

 

「忍法・口寄せ! 屋台崩しの術!!」

 

 空から降り立った巨大蛙はそのまま巨大蛇を踏み潰してしまう。

 そしてその巨大蛙の上には三忍である自来也が立っていた。

 

「ヒヨっ子ども!! その小せー目ェ根限り開けて良ーく拝んどけ! 有難や! 異仙忍者自来也の! 天外魔境暴れ舞い!」

 

 木ノ葉の忍に囲まれ注目を浴びている自来也は調子に乗って見栄を切る。

 だが見栄を切った対象である残りの巨大蛇はその見栄を見る前に息絶えていた。

 

「……あれ?」

「お疲れ様です自来也様」

「流石は三忍の一人……噂以上の実力ですね」

 

 残った二匹の巨大蛇を倒したのは二人の忍。うちはシスイとうちはイタチであった。

 二人は巨大蛇の出現を聞き、まずは並の忍では止められないだろうそれを防ぐ為に駆けつけたのだ。

 だがまあ自来也がいれば来る必要もなかったかと思っている所だが。

 

「シスイにイタチか……お前ら揃いも揃って人の見栄張りを邪魔しおってからに!」

「ははは……申し訳ありません。ですが、非常事態ですので……」

「まあ良い。三代目は?」

「試験会場で大蛇丸と……」

「我々は加勢よりも里をと三代目に命じられたのです。ですが、自来也様がいらっしゃるならば今からでも三代目の加勢に――」

 

 シスイは火影の右腕としてその護衛も兼ねている。だが三代目はシスイと左腕のヒザシの加勢を断り、里の防衛を課したのだ。

 自分よりも里を大事にしている三代目らしい命令である。だが、里に三忍である自来也が加勢してくれたとあらば後顧の憂いもなく三代目の加勢に行けるというものだ。

 あの結界も強固であるが、シスイとイタチならば破壊する事も可能であり、また加勢に加わったところで三代目の邪魔になる事も無い実力の持ち主である。

 

 だが、すぐにでも三代目を助けに行きたい二人を自来也は止めた。

 

「まあ待て。三代目の加勢は必要ないのォ」

「自来也様何を!?」

 

 三代目を守る必要がないと言いのける自来也にシスイは憤慨する。

 だが、自来也も何の意味も無くそんな言葉を吐いた訳ではなかった。

 

「すでに三代目にはとびっきりの加勢が行った。これ以上は過剰戦力というものだの」

 

 自来也の感知に高速で試験会場に近づいて来る良く知ったチャクラの持ち主が引っかかっていた。

 あれが加勢する限り、三代目が死ぬ事はまずない。その確信が自来也にはあった。

 

「それよりも、里を守る方が先決だの。上を見ろ」

 

 自来也の言葉を聞く前から、シスイとイタチもそれに気付いて既に上を見ていた。

 そこには上空を飛ぶ巨大な鳥の様な物に乗った一人の忍の姿があった。

 その忍は雲の模様が入った黒色の衣を付けていた。そしてそれに自来也は見覚えがあった。

 

「暁か……どうやら大蛇丸と一緒に里を攻めてきた様だの。一筋縄では行かん相手だ。気を引き締めろよ」

『はっ!』

 

 三人は警戒しながら空を飛ぶ暁の一人を見る。

 空を飛んでいる故に中々手出しは出来ず、遠距離の忍術で牽制するかと考えていると、空を飛ぶ暁は空から何かを落とした。

 

「あれは……!? 高密度のチャクラが籠められている! 爆弾か!」

 

 イタチが写輪眼にて投下された物体を見切る。それは粘土にチャクラを混ぜて起爆させる起爆粘土と呼ばれる動く爆弾だ。

 そこまではイタチも知らないが、チャクラを大量に含んでおり、そして上空から落とした事で爆弾だろうと予測したのだ。

 あれだけ上空にいるのも爆発の範囲から逃れる為。つまりそれ相応の威力を持った爆弾という事が予測された。

 

 イタチとシスイはすぐに爆弾に対処すべく万華鏡写輪眼を発動する。

 万華鏡写輪眼とは写輪眼開眼者がある条件を満たす事で開眼する事が出来る写輪眼を超えた写輪眼である。

 その力は万華鏡の名の通り個人によって変わる。イタチの左目には月読(つくよみ)、右目には天照(アマテラス)という瞳力が、シスイの両目には別天神(ことあまつかみ)という瞳力が宿っている。

 そして両目の瞳力を宿した者にのみ使用可能な須佐能乎(スサノオ)。この須佐能乎こそが二人が使用しようとしている術である。

 

 須佐能乎はチャクラで構成された巨人を作り出し、術者を守る絶対防御の鎧と化す術だ。

 そしてそれは同時に強力な攻撃手段にもなる。あのうちはマダラもこの瞳術の使い手であり、その威力は山を斬り大地を裂き地形を大きく変えた程だ。

 だが今二人が求めているのは防御としての須佐能乎だ。これで空から落ちてくる爆弾と思わしき物体から里を守るつもりなのだ。

 

「イタチ。お前は須佐能乎を使うな。お前の体の事を知らないと思っているのか?」

「……シスイ。オレの事は気にするな。お前こそ、良い人が出来たんだろう? ここで死ぬのは先のないオレだけで十分だ」

 

 イタチは死の病に侵されていた。今はまだ良いが、もう数年もすると命を失くすだろう死病だ。

 それを知りつつ、いや知っているからこそ、イタチはここで木ノ葉の為に散っても良いと思っていた。

 弟の事は気がかりだが、それでも弟が生きる里を守る事は弟を守る事に繋がるのだ。

 爆弾の威力が須佐能乎で防げる程度ならば良いが、予想以上という事はどんな時でもある物だ。

 里の為に生かすべきは先のあるシスイ。そう考えているイタチはシスイを置いて爆弾へと飛び立とうとする。

 

 だが――

 

「なっ!?」

「あれは!?」

 

 爆弾が里に落ちるよりも、爆弾を防ぐ為にイタチが飛び立つよりも先に、一人の少女が爆弾を掴んでいた。両手で収まり切らない爆弾をチャクラで覆っている。それで爆発を防ぐつもりだろうか。

 イタチも、その少女を知っているシスイも、その少女の行動に驚く。そして自来也は頭を抱えていた。

 

「流石にそれは無茶なのでは――」

 

 途端に爆音が辺りに響いた。その爆音は爆弾の威力の程を理解させるに十分なほどであった。だが、木ノ葉の里には一切の被害はなかった。

 あの少女が身を挺して守ったのかと、その自己犠牲を嘆きながらもイタチが空を見ると、そこには爆発の影響で吹き飛ばされているが五体満足な少女の姿があった。

 しかも空中で姿勢を制御し、その上でチャクラを放出する事で軌道まで修正して元の位置へと戻っていく。

 

「な、なんとまあ。死なんとは思っとったがダメージ無しとはの。あやつ、本当に人間か?」

 

 自来也は少女の、アカネの頑丈さにほとほと呆れていた。流石にダメージくらい負うかと思っていたが、あの爆発を間近で受けても無事の様だ。

 ちなみに流石のアカネもあの爆発を直接喰らえばダメージも負うし、死ぬ可能性もある。あれはチャクラで爆弾を覆い、一箇所だけ穴を開けてそこから爆発を逃がしていたのだ。当然自身の肉体もチャクラで強化して守ってある。

 それにより威力を最小限にしていたのだ。その結果が無傷な姿なのだが、空を飛ぶ暁の一員もこの結果に大きく動揺したようだ。

 

 アカネはチラリと自来也を見て、すぐに上空の暁を無視して試験会場へと駆けて行く。どうやら自来也達に上空の敵を任せたみたいだ。

 そして自来也達も暁の動揺を見逃す程お人好しではなかった。

 

――火遁・大炎弾!――

――風遁・大突破!――

――火遁・龍炎放歌の術!――

 

 自来也とイタチが火遁を、シスイが風遁を放ち上空の暁に攻撃をする。強力な火遁は風遁を受ける事で更に強大となり、そのまま上空の暁へと迫って行った。

 渾身の爆弾を防がれた暁の一員はそれに気付くのが遅れて回避し損なってしまう。だが、完全に喰らったわけではないようで、上空を覆う大火炎の中を大きな鳥の様なモノが突き破っていくのが三人の目に映った。そしてそれはそのまま木ノ葉から飛び立っていった。

 

「……逃げおったか」

「その様です。分身などではありません」

 

 写輪眼は忍術や幻術を見抜く力を持っている。そのため先程逃げたのは分身などの囮ではないと見抜いたのだ。

 

「しかし、アカネちゃんは一体……」

「おお、シスイはアカネを知っておるのか」

「ええ、日向の敷地で何度か。……ですが、あそこまでの実力を持っているとは……」

「まあ今はそれどころではあるまい。気になるだろうが、一先ずは里の防衛に専念せよ」

「そうですね……。イタチ、大丈夫か?」

「問題ない。それでは自来也様。私達はこれにて……」

 

 二人は里の防衛の為に各地に散っていった。

 

――三代目を頼むぞ、アカネ――

 

 そしてアカネに想いを託し、自来也もまた別の場所を襲う砂の忍を倒す為に移動するのであった。

 移動の先々で無数のアカネ(影分身)を目撃したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 試験会場では試験を観戦していた木ノ葉の上忍が攻めて来た砂の忍に対応していた。

 突如として同盟国が敵国へと変わり、火影も連れ去られ敵に襲われているという危機的現状だが、上忍達は三代目火影を信じてまずは襲い来る砂の忍に対処するよう冷静に行動する。

 

「三代目が心配だ。一気に奴らを叩くぞカカシ!」

 

 ……若干一名は冷静さを欠いているようだ。だが襲い来る砂の忍に不覚を取る事無く次々と倒している。その腕は上忍に相応しいようだ。

 

「落ち着けよオビト。上は暗部に任せろ。火影様はそうやすやすとやられるような人じゃない」

「お前には老人を労わる心がないのかこの人非人!」

「お前ね……三代目を老人扱いするのはどうなの?」

 

 軽口を言い合いつつも二人の動きは止まっていない。矢継ぎ早に攻撃を繰り出し、見事なコンビネーションで砂忍を仕留めて行く。

 この二人こそ木ノ葉一のコンビネーションを誇るはたけカカシとうちはオビトである。

 両者は対称的に片目のみに写輪眼を持っていた。カカシは左目に、オビトは右目にだ。これは両方とも元々オビトの写輪眼なのだが、かつての戦争でいざこざがあり左目の写輪眼をカカシに譲った結果だ。

 その時は死を覚悟したが故の写輪眼のプレゼントだったが、オビトは日向ヒヨリに助けられる事で九死に一生を得たのだ。

 右半身が岩に潰されるという重傷を負っていたが、ヒヨリの二代目火影すら癒した再生忍術にて命を長らえたのだ。そのせいで多少寿命が縮まってしまったが。

 再生忍術は対象の細胞分裂の回数を急激に速めて細胞を再構築する術だ。だが人の一生の細胞分裂回数は決まっている為、それを速める事は寿命を縮める結果に繋がるのだ。

 まあすぐに死ぬか、寿命が縮んでも生き延びるかならば大半の人間が後者を選ぶだろう。事実オビトもヒヨリには感謝していた。元々老人愛護が強いオビトだったが、そのせいで余計に老人愛護が高まっていたりする。

 

 とにかく、両者とも同じ瞳を持ち、長年の友にしてライバルとも言える関係だ。

 おかげでそのコンビネーションも群を抜いていた。同じくカカシのライバルを自称する体術の達人マイト・ガイも嫉妬する程であった。

 

「お前らぁ! 相変わらず仲がいいなぁ羨ましいぞコンチクショー!」

「お前は相変わらず暑苦しいんだよ! 火遁使ってるんじゃねーのか!?」

 

 ガイは木ノ葉でも、いや世界で見ても右に出る者が少ない体術を披露して次々と砂忍を倒し、オビトも写輪眼を駆使して敵の動きを読みながらカウンターを決めていく。

 この二人も意外と仲が良かったりする。と言うか、かつて中忍試験でガイにボコボコに負けた経験のあるオビトはガイもライバル視しているのだ。

 青春と熱血が大好きなガイもそんなオビトを気に入っており、いつでもどこでも挑戦を受けて立っている。そんな関係を続けている内に仲も良くなっていったのだ。

 そんな暑苦しい両者を見て呆れるのがカカシであり、そんな三人の関係は木ノ葉では有名であった。

 

「さっさと倒して三代目を助けに行くぞ! そんで怪我したらリンに治してもらう!」

「お前欲望に忠実だね。ほんとそこ等辺は尊敬するよ」

 

 リンとはオビトの台詞から分かる通りオビトの想い人だ。医療忍術の使い手であり、その実力は医療忍者の最先端を行く綱手に次ぐとまで言われている。

 だが、彼女は実はカカシが好きであり、オビトの想いが報われる事は今の所ない。今の所というのも、人の心は移ろうものだからだ。実際リンもオビトに対して想う所が無い訳ではなかった。

 オビトの未来はまだ閉ざされてはいないのだ。人の可能性は無限なのである。……多分。

 

「うるせー! お前が影で隠れてこっそりとイチャイチャシリーズ読んでるの知ってるんだぞオレはァ!!」

「ちょ! おま! それは言わない約束でしょーが!」

「そんな約束した覚えねーよ!」

 

 秘密にしていた趣味を知られていたカカシは思い切り動揺する。

 だがその動揺を怒りに変え、怒りを力に変え、それを全て砂忍にぶつける事にした。

 

「ええい! 一気にやるなら合わせろよオビト!」

「あれか! お前が風遁を使えりゃオレが火遁するのによ! 風遁覚えろよカカシ!」

「四つの性質変化覚えてれば十分でしょ! 行くぞ!」

「おう!」

 

「雷遁!」

 

――水遁・水龍弾の術!――

 

 オビトが放った水龍弾にカカシが雷遁のチャクラを混ぜ込む。

 これが二人の合体忍術・雷水龍弾の術である。雷を帯びた水の龍はオビトの操作により自在に動き、会場内の砂忍を次々と襲っていく。

 触れただけで感電し、その上高圧水流に押し潰されるという強力な忍術によって会場内の砂忍はほぼ全てが無力化される事となった。

 

「やるじゃないかお前達! オレも負けてられん!」

「どうよ見たか! これが未来の火影の力だぜ!」

「オレ達の力だろ。さあ、次の――なんだ!?」

 

 次の敵を倒すぞ。そう言おうとしたカカシは、視界の中で起こった出来事に圧倒されてその先を言う事が出来なかった。

 空に巨大な爆発が広がっていく光景が見え、そしてそれに驚いている内に高速でこちらに迫って来る少女をカカシは見た。

 その少女は会場内に着地し、すぐにその場を飛び立った。目指した場所は、三代目火影と大蛇丸が戦っている屋根の上だ。

 

「あれは!?」

「木ノ葉の下忍か! だがそれにしては!」

 

 それにしては強すぎるチャクラを纏っている。

 ガイのその考えは次のオビトの言葉によって口から出る事はなかった。

 

「あれは……ヒヨリ様だ……!」

「なに!?」

「オレが間違えるものか! あのチャクラはヒヨリ様のチャクラだ!」

 

 オビトはかつてヒヨリに助けられた時にヒヨリのチャクラをその身で感じ取っていた。

 更に右目の写輪眼でもヒヨリのチャクラを確認している。白眼程ではないが高い洞察力を持つ写輪眼によってオビトはヒヨリのチャクラを良く覚えていた。

 そのチャクラと先の少女のチャクラが完全に同質だったのだ。ヒヨリと同じく白眼を発動している少女を、オビトはヒヨリとしか見る事が出来なかった。

 

 そしてオビトの言葉にカカシ達が驚く暇もなく、少女は三代目と大蛇丸を取り囲む結界を突き破って中に侵入していった。

 

 




 主人公による原作との変更点。

 うちはオビト……第三次忍界大戦の神無毘橋の戦いで重傷を負うがヒヨリに助けられて生き延びる。左目はカカシに譲ったため隻眼となっている。今も火影を目指して邁進中。万華鏡は未開眼。

 のはらリン……霧隠れの忍に攫われる事なく、今も生きて木ノ葉の忍として活躍している。医療忍術のスペシャリストに成長した。

 はたけカカシ……オビトとリンが生きているのでオープンむっつりではなくただのむっつりに。愛読書は変わらずイチャイチャシリーズ。誰にも秘密にしているがオビトにはばれていた。万華鏡は未開眼。

 デイダラ……設定的に特に変更はないが主人公のせいで木ノ葉の戦力が原作より整っていたので暁の一員として木ノ葉崩しに助っ人参戦する。







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