「で、ダイ。どうにかしてアイツを倒す手段はねぇのか?」
「今のザムザを相手に有効打を与えるのは難しいよ。動きが速すぎるんだ。もう少し時間を掛けたら動きを読めそうなんだけど……」
そう、ダイとて何も翻訳マシーンになっていたわけではない。ザムザの動きを見て、その倒し方を考えていたのだ。
ダイはメタルンとの戦闘経験が多く、その速度にもある程度は慣れている。ザムザの速度は確かに速いが、その動きはメタルンよりも直線的であり読みやすい。もう少し時間を掛ければ、ダイならばザムザの動きに対応出来るようになるだろう。
問題は、動きを読めたとしても、有効打を与えるのが難しいということだ。ダイならば動きを読めさえすれば、ザムザを相手に真っ向から闘えるようになる。だがそれだけだ。
速いだけならばいいのだが、ザムザはそれに加えてメタルボディによる圧倒的な防御力を有している。そのザムザに有効打を与えるとなると、ダイも相応の必殺技を使う必要がある。
だが、それにはどう考えてもまず動きを止める必要がある。当てさえすれば、たとえメタルンだろうとダメージを与える技をダイは持っていた。だがその技をザムザに当てる事が至難なのだ。
「新しい必殺技はタイミングがシビアなんだ。あれだけ速い動きに合わせるのはまだ自信がないかな」
「……当てさえすれば、勝てるんだな?」
「ダメージは与えられるはずだよ。メタルンでも当たれば効きそうな技を作ったつもりだから」
だからなんで誰も彼もが対メタルン用の技を開発しているのだろうか。
「よし、ならオレが何とかする。アイツが動きを止めたら全力でぶちかませダイ!」
「ピギィ? ピギピギギィ!」
――ほう? 貴様がオレの動きを止めると? 魔法使いの貴様がか? 笑わせてくれる!
ポップの発言を聞いて、笑みを浮かべながら――常に浮かべているが――ザムザがその動きを加速させる。
これまでは様子見だったのか、ザムザの攻撃が更に苛烈になっていく。
「ピギィピギピギィ!」
――この動き、この力、この魔法力! 貴様に止められるか!
超高速でダイ達の周囲を飛び回り、全方位から闘気弾を放つザムザ。それだけではない。闘気弾と同時にイオラを嵐の如く連射していた。
圧倒的な速度で動きながら、闘気弾を放つと同時に中級とはいえ呪文を連射する。一瞬で二手も三手も同時に行動するその様は、まさに大魔王バーンかメタルンを彷彿させる強さであった。
「ぐわぁっ!?」
「ぐぅっ! こ、これは!」
「ふ、防ぐのが限界か!」
ダイ達が迎撃に手一杯となり、反撃の一手に移れないでいた。むしろ、この攻撃の嵐を防げているだけダイ達の実力の高さが伺えた。
だが、このままではジリ貧となるだろう。防いでいるだけでは、いずれこちらの体力や魔法力が尽きてしまう。そうなれば敗北は必至といえた。
ポップには何か策や切り札があるのかもしれないが、この状況ではその札を切る事すら出来ないでいた。
「く、くそ! みんな、何とかオレが呪文に集中出来る時間を稼いでくれ! そしたら、オレがアイツを止めてやる!」
「か、簡単に言ってくれる……!」
ラーハルトがザムザの攻撃を凌ぎながら悪態を吐く。だが、その表情にはポップを信じているのか不敵な笑みが浮かんでいた。それと同じように、ポップがただの大口を叩くわけがないと理解しているマァムとヒュンケルもまた、全力でこの状況を打破すべく僅かな勝機を探る。
そしてダイもまた、親友を信じてその思いに応えようとする。
「そうすれば、どうにか出来るんだねポップ!」
「ああ、どうにかする! だから!」
「分かった!」
ポップの叫びを聞き、ダイが竜の騎士の力を開放する。全力で
「うおおおぉぉっ!」
「ピ、ピギィ!?」
――な、なにぃ!?
まさかそのような力技で反撃してくるとは思っていなかったのか、自分が放った攻撃の幾らかが跳ね返って来た光景を見て、ザムザは驚きのあまり一瞬だが動きを止めてしまう。
ザムザの強さの元となったメタルンならば、この状況でも動きを止めることはなかっただろう。だが、ザムザは研究者であり、戦いを生業にしている専門家ではなかった。そこが、この隙を作ってしまう結果となった。
そして、戦いを生業としている専門家達が、その隙を見逃すはずもなかった。
「はぁっ!」
たまたまザムザの一番近くにいたマァムが、ラーハルトには僅かに及ばずとも凄まじい速度でザムザに近づき、闘技場中央に向けてザムザを蹴り飛ばす。
「ピギィ!」
――ぬぅ、この程度の攻撃!
蹴り飛ばされるも、ザムザにダメージはない。即座に態勢を整え、上空へ飛び上がりポップを攻撃しようとする。ポップの言葉を警戒しての行動だ。先ほどはポップの発言を魔法使いの戯言のように言っていたが、人間でありながらここまでの魔法力と高度な呪文を操るポップをそれなりに警戒しているようだ。自分が知らない、メタルスライム系に通用する何らかの呪文を会得している可能性もあるのだから。
だが、その動きは既に読まれていた。上空にはトベルーラで宙に浮いていたハドラーが待ち構えていたのだ。
「ザムザ! 貴様は強いが戦闘は素人だな! メタルンとは比べることも出来ん! はぁ!」
「ピギィ!?」
――ぐはぁっ!?
ザムザに確実なダメージが通った。それもそのはずだ。ハドラーが繰り出した攻撃は、全てを消滅させる聖魔滅爪撃だったからだ。
「まだまだっ!」
さらにハドラーは追撃として、聖魔闘気で強化された蹴りを食らわせる。それにより、ザムザは一気に闘技場中央に叩きつけられた。
「ピ、ピギィ!?」
――こ、このメタルボディを貫くだとぉ!?
「と言っているよ」
「くっくっく。その驚きよう。長年の溜飲が下がる思いだぞ」
かつてメタルンには意味をなさなかった攻撃が、似たような存在に通用したことでハドラーも歓喜する。よほど鬱憤が溜まっていたようだ。さもありなん。
「ピギィ、ピギピギィ!」
――お、おのれ!
闘技場に叩き落されたザムザは、警戒をポップからハドラーに移す。防御力を無視する不可思議な攻撃をするハドラーは、ザムザからすれば唯一の負け筋だと思えたのだ。
なお、ハドラーの体力は聖魔闘気と聖魔滅爪撃を発動させ続けていることで尽きかけていたりする。強いが燃費が最大の問題であった。
とにかく上空は駄目だ。ザムザからしたら、ハドラーの体力が尽きかけていることなど知る由もない。故に上空ではなく一旦この場を離れて傷の回復に集中しようと考える。
超魔生物には並の魔族を圧倒する再生能力がある。この程度の傷など、さほどの時間も掛からず癒えるだろう。
だが、そんな時間をくれるほど、勇者一行が甘い筈もなかった。
「ハーケンディストール!」
「ブラッディスクライド!」
「獣王痛恨撃!」
既にザムザを取り囲むように展開していたラーハルト、ヒュンケル、クロコダインが、三方向からそれぞれの必殺技をザムザに向けて撃ち放つ。
「ピギィィィ!?」
――ぐおおおおっ!?
咄嗟に逃げようとしたが、三方向から迫り来る攻撃を見て、思わず動きを止めてしまったザムザはそのまま三つの必殺技を受ける結果となったのだ。
これまでの戦いを経て、ザムザがその強大な肉体を持て余しているのをダイ達は理解していた。ポテンシャルは大魔王バーンやメタルンに匹敵するかもしれない。だが、その力を活かしきれていないのだ。
もしザムザが全てのポテンシャルを発揮出来ていれば、既にダイ達は敗れていただろう。
だが、どれほどifを語ろうと、この状況が覆るはずもなかった。
既に準備は整っていた。ポップはダイが
地上最強の大魔導士であるポップが、
師であるマトリフが作り出したオリジナルの呪文を、さらに改良して作り出した極大呪文。
ポップが両手に特殊な力場を発生させ、両手を組み合わせることでその力場をザムザに向けて撃ち放つ。
「圧し潰れろ!
「ピギィ!?」
ポップから放たれた力場がザムザを覆い尽くす。その力場は範囲内の重力を急速に増加させ、中心であるザムザに向かってその重力を収束させていた。
これぞ大魔導士ポップ最大最強にして、対メタルン用に開発した究極の呪文。
元は
その効果は広範囲に重力場を作り出し、その範囲内の対象を超重力で圧し潰すというものだ。その威力は高く、ポップが
そして重圧呪文の極大呪文が、
その効果範囲は
「ピギギィ!?」
――こ、これはっ!?
「ど、どうよ! お、オレが対メタルン用に開発した、極大呪文のお味はよぉっ!!」
ピギィ?
――なんで誰も彼も私用の技を作ってんの?
そんな声がどこからか聞こえた気がしたダイ達である。多分空耳だろう。そう思うことにした。怖いから。
「ピ、ピギィ!?」
――う、動けん!? ば、馬鹿な! この体に攻撃呪文が効くはずが!?
ザムザの疑問も当然だった。メタルスライム系に攻撃呪文は効かないのは常識である。
唯一の例外は全てを消滅させる
確かに基本となる全ての攻撃呪文はメタルスライム系に効かない。メラ系も、ヒャド系も、バギ系も、イオ系も、ギラ系も、竜の騎士のみが使えるデイン系もだ。
だが、ポップは考えた。呪文以外に取り柄がないポップは、どうすれば自分がメタルンを相手に有効打を与えられるのか、幾度も考えたのだ。
そして思いついたのが、重力であった。例えメタルンといえど、重力の影響は受ける。跳躍すれば物理現象に従って大地に落ちる。それは奇妙奇天烈奇想天外驚天動地摩訶不思議三千世界最バグ生命体であるメタルンですら変わらぬ摂理なのだ。
故にポップは重圧呪文を磨き上げた。重力を操り、重力を増加させれば、例えメタルンを倒せずとも、その動きを阻害するくらいは出来るのではと考えたのだ。
そしてその考えは間違いではなく、今ここにポップの執念と修練の成果が発揮された。確かにメタルスライム系の魔物に攻撃呪文は効き目がない。しかし、
対象を直接重くする呪文だったならば効果がなかっただろうが、周囲の重力が増加するだけならば、たとえ攻撃呪文を無効化しようが関係なかった。重力が違う星に移動したらその影響を受けるのは当然だといえば分かりやすいだろうか。
「うおおおっ!」
ポップが全魔法力を集中させ、重力場の威力を高めていく。それに伴い凄まじい重力が全方位からザムザに襲い掛かる。それだけではない。ポップが重力の力を更に高めるべく、重力場を更に狭めていく。その大きさはザムザとほぼ同じ大きさになっていた。
そのあまりの重力に、ザムザもその動きを止める結果となった。それだけではなく、ハドラーの爪が刺さった付近の肉体が砕けていく。さしものメタルボディといえど、ダメージを受けた肉体でこれほどの重力に晒されると更なるダメージを負うようだ。
メタルンの一部を取り込んだ超魔生物すら抑え込む超呪文。だが、その代償は激しかった。
発動するのにかなりの時間が必要であり、発動し続けるのには膨大な魔法力を消耗する。それが
もっとも、ダイにとって十秒という時間はお釣りが出るほどであったが。
ダイが全力で
「アバンストラッシュアロー!」
『は?』
ダイの放った技を見て、誰もが呆気に取られた。
それは、ただの
この程度の攻撃が、メタルボディであるザムザに通用するはずもない。誰もがそう思った。敵であるザムザですらだ。
「ピギィ!」
――この程度、避けれずとも何の問題ないわ!
そう嘲り笑うザムザ。だが、その直後にその目は驚愕で見開くことになる。
「アバンストラッシュブレイク!」
そして、二つのストラッシュがザムザの肉体で交差する。これぞダイの新たな必殺技――
「アバンストラッシュクロス!!」
二つのストラッシュを交差させる新必殺技。アバンストラッシュクロスが、ザムザのメタルボディに直撃した。
「ピギィィィィィ!!」
――ぐわぁぁぁぁぁ!!
アバンストラッシュクロス。二つの特性を持つストラッシュを立て続けに放ち、それをタイミングを完全に合わせて対象に命中させるという、神業ともいえる必殺技だ。その威力は、通常のアバンストラッシュの五倍にもなる。
この技を実現させるためには、刹那のタイミングを見切る必要がある。戦闘中に動き続ける対象に、二つのストラッシュを完全なタイミングで交差させなければならないのだ。
二つのストラッシュを使いこなせるアバン、ヒュンケル、マァムの誰であっても使えない、竜の騎士としての肉体性能と、天性の戦闘センスを持つダイだからこそ実現出来た超必殺技ともいうべきものであった。
「ピ、ピギギィ! ピギピギィ!?」
――ば、馬鹿なぁ! さ、最強の生物であるはずの、このオレがぁぁぁ!?
ザムザの肉体が砕けていく。メタルボディは確かに凄まじい防御力を有しているが、その防御力を超える威力を受ければ貫けるのは道理だ。
あまりのダメージを受けて、肉体が大きく損傷し、ザムザの肉片――メタルキング片?――が周囲に散らばっていく。
「ピ、ピギィ!?」
――さ、再生しない……!? だ、ダメージを受け過ぎたというのか!?
超魔生物の再生能力は高く、多少の傷ならば回復呪文を使用する必要もなく、瞬時に回復する。
だが、如何に高い再生能力を有しているとはいえ、限界というものはある。ここまで大きな損傷を再生させるには、相応の時間を要するだろう。そしてそれだけの時間を与えてくれるダイ達ではない。
「オレ達の勝ちだ、ザムザ!」
ダイがザムザに剣を向けて勝利宣言をする。そしてザムザにそれを覆す体力はなかった。
「ピギィ……! ピギピギピギギィ!」
――お、オレは最強の生物になったんだ……! そのオレが負けるなんてことあるはずがない!
「と言っているよ」
「ザムザよ。確かにお前は強い。だが、その強さは肉体に頼り切ったものだったのだ」
「肉体の強さのみで戦う貴様では、如何に強かろうと限界がある。肉体のポテンシャルを完全に引き出し、十全に使いこなせる者こそが真の強者足り得るのだ」
「ピギィ……!」
――そんなことが……!
「と言っているよ」
ヒュンケルとラーハルトの残酷な言葉に、ザムザが打ちひしがれる。
肉体の強さはまさに最強だった。ザムザの超魔生物学は確かに凄まじいものだった。だが、ザムザは研究者でしかなかったのだ。その力を得たことで満足し、その力を使いこなす努力を怠っていたのだ。
もしザムザが修行に時間を費やし、十分な鍛錬を積んだ上でこの場にいたとしたら、この結果は逆のものとなっていた可能性が高かっただろう。
「ピ、ピギピギィ! ピッピギギィ!」
――お、オレが負けたのは一人だったからだ! 一対一だったならば、お前たちの誰であれ負けるはずがなかったのだ!
「と言っているよ」
自分から多人数との戦いを望んでいながらのその発言は負け惜しみに過ぎないが、ザムザの中ではその思いは強かった。
確かに、発言自体は的外れなものではない。一対一ならば、ダイ達の大半がザムザに勝つことは難しいだろう。唯一の例外はダイだ。時間を掛けてザムザの動きを見切ることが出来たならば、ダイならば勝ち目はあった。
「ピギピギィ!」
――一対一ならば、最強はこの超魔生物ザムザであるはずなんだ!
「と言っているよ、いやそれはない」
『ああ、それはない』
ザムザの悲しい負け惜しみを、ダイ達全員が否定する。彼らは知っていた。真の最強の生命体を。
「アレに勝てる奴がいたら見てみたいぜ」
「冗談はよせポップ。そんな存在がいるはずもないだろう」
「ヒュンケルの言う通りだ。あんな存在が二体以上いてたまるか」
「同感だ。あれがもう一体だと? 想像しただけで吐き気を催すわ」
「ハハハ。みんな言い過ぎだぞ。う、吐き気が……」
「もう、みんなしてメタルンの事を悪く言い過ぎよ? 確かに修行は厳しいけど、とっても良い子じゃない」
「そうだよ。メタルンは良いスライムだよ?」
「ピギィピギィ」
――そうだそうだ。マァムとダイは今度の修行は手加減してあげるね。
「とメタルンが言っているよ。……うん?」
『うん?』
「ピギィ?」
――うん?
突如後ろから聞こえてきたメタルン語をダイが癖で翻訳する。それを聞いて、全員が後ろを振り向いた。
そこには、でっぷり巨体にメタルの輝き、頭部には威厳溢れる王冠、愛らしいスライムスマイルを携えたラブリーメタルキング、メタルンの姿があった。
一斉にこちらに振り向かれたメタルンは、後ろに何かいるのかな? とばかりに自分も後ろを振り返り、何もいないよとばかりにダイ達に向き直った。分かっててとぼけているだけだが。
『め、メタルン!?』
「ピギィ」
――はい、皆の愛されアイドルメタルンです。
「と言っているよ。じゃないよ! いつから居たのさメタルン!」
「ピギィ。ピギピギィ」
――いつからと言われたら、決勝辺りからずっといたけど。でろりんはまあ、相手が悪かったね。逃げるのも止む無しだったし。むしろ良く無事に逃げ延びたね。後で褒めてあげよう。
そう、実はメタルン、決勝戦が始まる前から闘技場に来ていたのだ。理由は当然、武具を作る優勝者の戦いや強さを見ておこう、というものだ。
鍛冶師として、武具とはただ作るだけでは意味がない。武具の使い手を知り、その使い手に合わせた武具を作らなければ真の武具は完成しないだろう。故に決勝戦だけは見に来ていたのだ。
だが、観客席でメタルキングが堂々と観戦していては、流石に大騒ぎになる。なのでメタルンは闘気を放出して空を飛び、遥か上空から大会を観戦していたのだ。
そしてダイ達の戦いを見守り、危なくなったら乱入しようと思っていたのである。だが、無事にダイ達が勝ったために、こうして普通にやって来たわけだ。なお、結界をぶち壊そうと思ったところでメタルンの存在にいち早く気付いたアバンが、結界を操作してメタルンを結界内に誘導していたりする。さすアバ。
「ピギィ? ピギピギィ?」
――君たち、私がいないと思って色々と好き放題言ってくれたね? 全部聞いたり口の動きを読んで分かっていたよ?
「と言っているよ」
『申し訳ございませんでした』
「……すまん」
ポップ、ハドラー、クロコダインの三人が一斉に頭を垂れて謝罪する。それはそれは立派な謝罪だったという。
ヒュンケルはプライドが邪魔をしてこれくらいの謝罪しか出来ない。仕方ない。ギャグに屈して頭を垂れるヒュンケルは解釈違いなのである。
なお、ラーハルトは家族なのでこれくらいで謝ったりはしない。互いに喧嘩はするも、これくらいでどうにかなる間柄ではないのだ。互いにわかった上で軽口を叩いているだけなのである。
「ピギピギィ」
――今度久しぶりに修行を付けてあげるよ。皆大分強くなっているし、前よりもきつくしても大丈夫そうだね。
「と言っているよ……」
「わぁい。うれしいなー」
ポップの感情が籠っていない言葉が虚しく響く。全員の目が死んでいた。
ポップ達が意気消沈している中、メタルンとメタルザムザが相対する。かたやメタルキング、かたや角の生えたメタルキング。二体の奇怪な生命体が互いを見つめ合う。シュール。
「ピギィ……!」
――き、貴様は、オレの素材となったメタルキングか……!
「ピギィ」
――その通り。まさか私の欠片を使って自分を改造するなんて思ってもいなかったよ。
「ピギギィ」
――なるほど。普通のメタルキングとは違うようだな。だが、おかげで助かったぞ。
「ピギィ?」
――うん?
「ピギギィ!」
――貴様が現れて無駄に時間を使ってくれたおかげで、身体が完全に回復したぞ!
「ピギィ」
――再生能力あるんだ。やるじゃん。
「ピ~ギッギッギ! ピギギ――」
――ピ~ギッギッギ! この場は退くとしよう! だが、最強はこのオレだ! いずれ一対一で全員を倒してや――
「ピギィ」
――いずれと言わずにこの場で教えてやんよ。
「――ギィ……ピ?」
――るぞ……え?
「ピ~ギピギピギピギピギピギピギピギピギピギピギピギピギピギィ!」
――オ~ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
「ピギィィィィッ!?」
――ぐわぁぁぁぁっ!?
「と言っているよ。はぁ、はぁ」
「お疲れダイ」
「大丈夫ダイ? お水いる?」
「ありがとうマァム」
ザムザが逃げ出す間もなくメタルンによって
その間の通訳を一手に引き受けたダイには流石に疲れが見えており、ポップとマァムが労った。
「ピ、ピギィ……」
――つ、強すぎる……。
「ピギィ」
――裁くのはオレのスタンドだ。
「と言っているよ。スタンドってなに?」
それはこの世界の誰にも分からないことである。
メタルスライム系にベタン系の呪文が効果あるのは捏造。重力なら多少は効果あってもいいんじゃねって思った。ゲームだと当然効かない。
ダイ大原作だと、ベタンは対象を重くするのではなく、対象の周囲の重力を重くして、その超重力で敵や範囲内の地面を圧し潰しているように見えました。重力を重くしているのなら、メタルスライム系にも効くんじゃないかと思って。賛否あるかもしれませんが、この作品では効果ありにしています。
この呪文はボス属性でも防げません。メタルンを重くするのではなく、メタルンの周囲の重力を強くしているだけなので。ポップが唯一メタルンに通じる系統の呪文です。
なおベタロールはモンスターズジョーカー3に出ています。ベタンが逆輸入されて、その三段階目の呪文がベタロールですね。立ち位置的にベギラゴンとかイオナズンと同じ極大呪文になると思って、今回使わせていただきました。なおベタン、ベタドロン、ベタロール、ベタランブルの順番で強くなるもよう。ベタランブルは四段階目なので、イオグランデとかと同じ立ち位置だろうと思って、この作品では存在しません。
今のポップならば、ベタロールを命中させることが出来さえすれば、バラン相手でも勝てます。竜魔人バランだと当てても効果時間内に倒せないかな。まあ発動時間が掛かりすぎるから発動前に倒されますが。レベル80くらいになったらベギラゴンくらいの速度で撃てるかな。頑張れポップ。
ちなみにメタルンが天高くにいた描写は三話くらいからたまに入れています。物凄く分かりにくいけど。漫画だったら太陽とかが描かれたコマに、太陽に重なるようにうっすらと小さなメタルンの輪郭が描かれていたことでしょう。
次話が後日談最終話となります。