どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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NARUTO 第十八話

 暁が捕らえた尾獣の内、六体を封印し終わるのに要した時間は約二週間。尾獣一体に辺り二日はかかるので、流石に合間に休憩を挟みながらであった。

 そして最後の八尾の人柱力であるキラービーから尾獣を抜き取り封印をする。だが、そこで思わぬトラブルが生じた。

 キラービーを捕らえていた大蛇丸が口寄せにてキラービーを封印の間に呼び出す。それを見た仮面の男はピクリと反応し、滅多に開かない口を開いた。

 

「……分身か」

『!?』

 

 仮面の男の言葉に驚愕する暁。そして仮面の男にその言葉の意味を追求する前に、仮面の男はキラービーに苦無を投げつける。

 薬で意識を奪われた上に鎖で雁字搦めにされたキラービーは当然その苦無を避ける事が出来ない。だが、苦無が命中した瞬間、キラービーの肉体は巨大な蛸の足へと変化した。

 

「これは……」

「情けねーな大蛇丸! いっぱい食わされてるじゃねーか!」

 

 飛段が言うように、キラービーを担当したのは大蛇丸だ。つまり大蛇丸がキラービーに騙されたという事になる。恐らく戦闘中に上手く尾獣の一部を囮にして逃げ出したのだろう。

 

「……申し訳ないわね。私の失態よ」

 

 だがこれは大蛇丸がわざとキラービーを逃がした結果であった。大蛇丸は全てが暁の思い通りに動かないように手を抜いていたのだ。

 このまま暁の思い通りに事が進めば自分の野望を達成出来そうにない。そういう勘のようなものがあったのだ。後は様々な情報を集めた結果からの判断でもある。

 

「どうするんだ? また八尾を捕らえに行くのか?」

「だが確実に逃げてるな、うん。また居場所を探す手間がいるぜ、うん」

「その手間は大体ゼツが払うんですがねぇ」

 

 口々に自分の考えを語る暁に、仮面の男は特に焦る事もなく儀式を続ける。

 

「問題ない。蛸足一本でもいいから外道魔像に封印しておけ」

「……そう言う事だ。全員封印の準備にかかれ」

 

 仮面の男の言葉を聞いたペインはその通りに取り掛かるように全員に命令を下す。

 それを見た大蛇丸はやはりペインの裏にいるのが仮面の男だと確信する。あれが裏でペインを操っているか、それとも共謀しているだけなのかまでは分からないが。

 

 

 

 暁が八尾の蛸足を封印し終える。これで不完全ではあるが捕らえた尾獣は全て封印された事になる。

 

「では、各々休息して最後の準備に取りかかれ。それが終われば……木ノ葉を落としに行く」

「よっしゃー! やっと思い切り人を殺せるぜ! ジャシン様ァァ! 見てて下さいよぉ!」

「お前はこの三年間で大分殺しただろうに。まだ殺したりないのか。まあ、オレは金が手に入ればそれでいい」

「芸術は爆発だ。それを木ノ葉の連中に教えてやるぜ、うん」

「違うな。芸術とは永遠に残る美の結晶だ。オレはこの傀儡の体でそれを永久に伝えていくのだ」

「さて……私も準備に取りかかろうかしらねぇ」

 

 暁のメンバーそれぞれが自分の欲望のままに動ける事に喜びを顕わにする。

 この三年間で溜まった鬱憤を全てぶつける事が出来る機会が来て、真実嬉しいのだろう。

 

「作戦は以前に言った通りだ。では、一度解散する」

 

 そうしてその場から暁は一人、一人と消えていく。最後に残ったのはペインと仮面の男のみだ。

 

「……あの作戦で良かったのか? あれではお前一人で日向ヒヨリを抑える事になるが」

 

 暁には作戦通りと口にしたが、ペインは仮面の男一人であの日向ヒヨリを抑える事が出来るのかと疑問に思い問いかける。

 それに対して仮面の男は不敵に笑い、その問いに答えた。

 

「ふ……問題ない。オレを誰だと思っている?」

「……そうだったな。日向ヒヨリと同じ初代三忍の一人……うちはマダラならば不可能ではないか」

 

 仮面の男、うちはマダラはその言葉に頷き宣言する。

 

「教えてやろう。オレは……うちはマダラは日向ヒヨリに劣らぬという事をな」

 

 マダラは仮面の下にある瞳を怪しく輝かせ、その顔を喜色に歪めた。

 

 

 

 

 

 

 時は僅かに遡る。暁が尾獣封印に時間を掛けている時、木ノ葉の二代目三忍である自来也はある任務をこなしていた。

 それは大蛇丸のアジトの探索である。自来也は自分が持つ情報網から暁がしばらくの間は動けないという事を知っていた。それはつまり大蛇丸も動く事が出来ないというわけだ。

 今が好機と断じて自来也は兼ねてからの任務をここで終わらせようとしていた。その任務とは……。

 

「ここが当たりであって欲しいのぅ……」

 

 既に幾つかのアジトは見たが、そのどれにも目当てのモノはなかった。まあ、多くの実験体がいたのでそれらを開放はしたが。

 そして新たに見つけた大蛇丸のアジトに、どうか目当てのモノがあるようにと祈る。というのも協力者から得た情報で見つけられたアジトはこれが最後だからだ。ここから先は目的のモノを見つけるまで、自力でアジトを探さなければならなくなるだろう。

 焦る気持ちを抑えてアジトを丁寧に探索する自来也。探索の為に自来也は仙人モードと呼ばれる状態になっており、大きく広がった感知能力で周囲を探る。ちなみにかつての自来也は一人で仙人モードになる事は出来なかったのだが、色々と修行した結果それを可能としていた。

 そうして仙人モードでアジトを探る事十数分。とうとう自来也は見つけた。そのアジトの奥にある牢屋の中に捕らえられた一人の女性、孤児院のマザーであるノノウを。

 

「この女性か!」

 

 写真で見た通りの見た目の女性を見つける。仙人モードで目を凝らして見た限り、どうやら変化などの偽者ではなさそうだ。

 自来也が見る限りノノウは衰弱はしているが外傷などはない様である。だがその瞳は開いてはいるが完全に焦点があっておらず、目の前に自来也が現れても虚空を眺め続けていた。

 

「幻術か。薬も打たれているな。大蛇丸めむごい事を……」

 

 大蛇丸がノノウに仕出かした処置を思うと自来也は大蛇丸への怒りと、そして自身への怒りを膨らませる。

 かつては里の同志であったと言うのに、ここまで歪んでしまったのかという怒りと、大蛇丸の近くにいながらそれを止める事が出来なかった自身への怒りだ。

 

 だが今は過去の後悔を思っている場合ではない。自来也はノノウを縛る鎖を壊し、そしてノノウの体内チャクラを正常に戻す事で幻術を解く。

 

「う……」

 

 だが薬を打たれているノノウは幻術から目を覚ましてもすぐに意識を取り戻す事はなかった。

 自来也はそれを気にせずに、更にノノウに施された呪印を解く。

 

「ぬん!」

 

 既にここに至るまでに大蛇丸の研究資料を見てきた自来也にとってノノウを縛る呪印の解除は簡単……とまでは行かなかったが、不可能ではなかった。

 少々面倒な呪印を解除し、これで完全にノノウが自由の身になった事を自来也は確認する。

 どうやら後は薬を抜くだけのようだ。それ自体は特に難しい事ではないのでノノウは大蛇丸から開放されたと見ていいだろう。

 念には念を入れて口寄せ解除の術式をノノウに刻み、そして自来也はノノウを担いでその場から離れて行った。

 

 

 

 

 

 火の国のある場所にて自来也は一人の青年と落ちあう。その青年とは大蛇丸に仕えている忍、薬師カブトであった。

 いや、カブトは大蛇丸に脅されて協力を強要されているだけであり、その内心は大蛇丸への復讐を誓っていた。だからこそカブトは大蛇丸と敵対している自来也に暁の情報を渡していた。

 そしてその見返りがノノウの救出であった。この三年間は暁が動かなかったのでカブトも中々手の出しようがなかったが、暁が尾獣封印の為にしばらくは自由に動けない事を知ってこうして自来也に頼みこんだのである。

 

「待たせたのカブト。ほれ、お前が助けたがっていたノノウだ。受け取れ」

「マザー!」

 

 自来也からノノウを受け取ったカブトは、意識を失っているノノウを心配して声を掛ける。

 

「安心しろ。薬の影響で意識を失っとるだけだの。解毒は施してあるから程なく目覚めるはずだ」

 

 その言葉を証明するかのようにノノウはカブトの声を聞いて少しずつ意識を取り戻していく。

 そしてノノウの目蓋が薄く開かれていく。まだ覚醒しきっていないせいかノノウのぼやけた視界の中に、カブトの姿が映った。

 

「マザー! 良かった! ボクです、分かりますか!」

「……だれ、なの?」

 

 ノノウのその言葉にカブトは頭をガツンと殴られたかの様な錯覚を覚える。だが、すぐにある事を思いだした。

 ノノウは普段から眼鏡をかけている事を。そして今はその眼鏡をかけていない事を。

 かつてプレゼントした眼鏡が無くなっている事を悲しく思うが、今はそれを無視してカブトはすぐに自分の眼鏡をノノウにかける。

 かつて視力が悪くて時計の針が見えなかった時にノノウから貰った大切な、とても大切な思い出の眼鏡だ。あれから十年以上が経つのにこうして大事に使っているのがその証拠だろう。

 そして眼鏡をかけた事でぼやけた視界が綺麗になったノノウは、改めてカブトを見た。

 

「ああ……カブト……良かった、無事だったのね」

「っ! マザー! マザー!」

 

 意識を取り戻し、視力も取り戻したノノウはカブトをカブトと認識する事が出来た。それを嬉しく思わないカブトではない。

 

「もう……駄目じゃないカブト……もう寝る時間でしょ……」

 

 辺りはすでに暗くなっている。時間としては夜の九時を過ぎたところだ。

 孤児院では夜の九時を消灯時間としている。カブトは孤児院を出た後もそれを出来るだけ習慣付けていた。だが今はそれを言うべき時ではないのだが、どうやらノノウの意識は完全には戻っていないようだ。

 

「うん、ごめんよマザー……! あとで叱ってくれてもいいから……今はマザーがゆっくり休んでよ……」

「そう、ね。ごめんなさいカブト……少し、寝るから……」

 

 そうしてノノウは再び意識を失う。いや、眠りについたようだ。まだ体力が戻っておらず、解毒はしたが薬の影響も残っているのだ。

 眠りについたノノウを優しく抱きしめて、自身の頬を伝う涙を拭ってカブトは自来也へと顔を向ける。

 

「ありがとうございました自来也様。あなたのおかげでマザーは無事に戻って来ました」

「うむ。だが大蛇丸がいる限り再びお前もマザーも、そして孤児院も狙われるだろう、の」

 

 自来也の言葉に顔を顰めるカブト。分かってはいたが、マザーが戻ってきた喜びを奪われると思うと怒りと憎しみが煮えくり返る思いになるのだ。

 

「分かっています。大蛇丸は絶対に……!」

「まあ待て。大蛇丸はワシに任せておけ。それがお前の為だの」

 

 カブトのその暗く冷たい思いを知っている自来也はそれを止めようとする。

 復讐に走った者の末路は多くが悲惨な物になる。長くを生きてきた自来也はそれを知っていた。

 

「幸いお前は失ったわけではない。お前が復讐に走って、それで残された者はどう思う? それに大蛇丸の仕出かした事はワシの、木ノ葉の不祥事でもある。お前は孤児院でマザーや兄弟達を守ってやれ」

「……分かりました」

 

 自来也の気持ちを理解したカブトは未だ燻る復讐心を抑える。

 自来也の言う通りだ。こうして無事に戻ってきたマザーを置いて復讐に走るなど本末転倒だ。また離れ離れになるだけである。

 だが、大蛇丸をどうにかしない限り孤児院に平穏は戻らない事も確かだ。自来也がどうにかしてくれるとは言うが、この後に自来也が何をするつもりか知っているカブトとしてはその点が不安であった。

 

「ですが、本当に暁のリーダー……ペインの所に乗り込む気ですか?」

「暁のリーダーであるペインの居場所。それがマザーを助けた時にお前が渡す最後の情報だったな」

 

 そう、それがカブトが自来也に渡す最後にして最大の情報。

 暁という得体の知れない組織のリーダー。ペインの居場所である。これが分かればペインの情報を更に探り、多くの忍による奇襲作戦も可能となるだろう。

 

「安心しろ。ワシとて一人でペインに挑もう等とは思わん。敵のアジトになるのだから、のぅ。それに、お前の所の孤児院にも助っ人を付けておくよう頼んでおくからそっちの問題もないわい」

「……分かりました」

 

 自来也の言葉を信じたカブトは自分の知る情報を伝えていく。ペインの居場所は……雨隠れの里だと。

 

 

 

 

 

 

 ペインの情報を入手した自来也は里へと戻りその情報を火影である綱手へと伝える。もっとも、それは酒を酌み交わしながらであったが。火影として、三忍としてどうなのかと思うが、幸か不幸かそれを注意する者は近くにはいなかった。

 

 自来也から話を聞いた綱手は奇襲作戦にてペインを叩く好機だと判断する。だが、肝心のペインの居場所がまずかった。

 雨隠れの里は土・風・火の三大国に囲まれた小国だ。だから雨隠れはその三大国の戦争に巻き込まれその土地を戦場とする事が多かった。

 それにより雨隠れは閉鎖的な国になり、雨隠れを出入りする者には入国審査と滞在期間中の監視を徹底するようになったのだ。そんな国で奇襲作戦を行おうにも複数の忍が侵入しては気付かれる可能性も高まってしまうだろう。

 だからこそ、自来也は一人で雨隠れに侵入する事にした。

 

 綱手は危険だと一度は反対するが、自来也の説得に押し切られてしまう……わけがなかった。

 いや、その場ではいつも損な役目をさせている事を申し訳なく思う(さま)を見せていたが、内心ではある事を考えていたのだ。

 

 そうして自来也は綱手の心中など知らずに一人(・・)で雨隠れへの侵入任務に出る。

 綱手はそれを見送り、そして何事もなく帰ってくれば自来也の秘めた思いを受け入れてやると誓い……何かしらあって帰ってくればその時はまだまだだと笑ってやるつもりでいた。

 

 

 

 雨隠れへと侵入した自来也は雨隠れの忍を二人ほど捕らえ、彼らから情報を入手する。

 と言っても捕らえた忍は下っ端であり、あまり良い情報を得る事は出来なかった。いや、ペインに関する情報は例え里の上層部でも知らされていない事なので、彼らが知らないのも当然の事なのだが。

 だがその中で自来也は信じられない情報を聞いた。それは、ペインが雨隠れの長であった“山椒魚の半蔵”を殺したというものだった。

 

 半蔵はかつて自来也を含む二代目三忍が戦い、そして敗れた程の実力者だ。忍の世界では知らぬ者がいないとまで言われている忍であり、その強さは世界に知れ渡っていた。

 そんな半蔵と戦い生き延びたからこそ、半蔵は彼らを二代目三忍と呼ぶようにし、それが木ノ葉にも他里にも定着したのだ。つまり、それだけの発言力を持つ人物だったのだ。

 だが、その半蔵がペインに殺された。あの強かった半蔵を倒したというペインに、自来也は底知れぬ何かを感じ取る。

 

 それ以上のペインの情報を得る事は出来なかった。どんな術を使うのか、どんな見た目をしているのか。それらが分からない以上、交戦してでも情報を得るしかない。そう思った自来也は覚悟を決める。

 覚悟を決めた自来也は己の中に封印してあった八卦封印に結合する鍵を解放する。それはナルトの中にいる九尾を封印している術である八卦封印が弱まった時に、再び封印を閉め直す鍵であった。

 自分が死ねばこの大事な鍵も失われてしまう。それを恐れた自来也が一度解放したのだ。ちなみに、鍵は特殊な蛙によって守られている巻物に記されており、その蛙は意識も知恵も持っていた。なので自来也の次の言葉に反発をしていた。

 

「ワシに何かあった時はナルトに蔵入りしろ」

 

 ナルトに蔵入りしろとはすなわちナルトの中に封印されておけ、という意味だ。それは金庫と鍵を一緒に保管する事と同じ意味になるだろう。

 それを蛙は反対する。当然だろう。何処の世界に金庫を開ける鍵を金庫の傍に置く者がいる? それはどうぞ金庫を開けて下さいと言っているようなものだろう。

 

 だが自来也は違った。この鍵はミナトから預かったものだった。そして自来也はそれをいずれナルトに託して欲しいというミナトの願いだと受け取ったのだ。

 ナルトならばいずれ九尾の力をコントロールする事が出来る様になる。そうミナトは信じていただろうと確信しているし、自来也もミナトと同じくナルトを信じているのだ。

 

 八卦封印の鍵をナルトに託した自来也は心置きなく潜入任務を再開する。

 ペインと戦う覚悟は決めていたが、だからと言って堂々と強引に事を進めるつもりはなかった。こうして侵入して別の場所から情報を得たり、ペイン本人を見つけて奇襲で事なきを得られたならばそれに越した事はないからだ。

 だが、自来也が雨隠れの里に侵入した瞬間から、すでにペインは侵入者の存在に気付いていたのだった。

 

 

 

 そして、自来也は懐かしい顔と再会する事となった。

 それは暁の一員にして、かつての自来也の弟子、小南であった。

 小南と再会した事で自来也は薄々と勘付いていたペインの正体をほぼ確信した。自来也が小南と同時に取った弟子は残り二人。その内のどちらか……いや、奴だけだと。

 

 ペイン。痛みを冠するその名を掲げる男の正体。それは、自来也の弟子であり、幼い頃に三大瞳術の一つにして、最も崇高とされる輪廻眼に目覚めた少年……長門であった。

 

 長門と再会した自来也は見た目も、そして思考も大きく変わったかつての弟子を嘆く。

 だが嘆いてばかりではいられない。かつての弟子と言えど、木ノ葉はおろか忍界全てを巻き込む騒動を起こそうとしているのなら倒さなくてはならないからだ。

 長門の目的を聞いた自来也は到底それに共感出来なかった。長門は尾獣を集め、その力を元にして強大な破壊を齎す禁術兵器を開発しようとしていたのだ。

 それを各国にばら撒き、国々が戦争でその力を使用する。そして互いに大きな代償を払って痛みを知り、初めて平和が築かれる。世界に痛みを教える事で世界の成長を促す。それが長門の目的であった。

 自来也には欠片も理解出来ない思想だ。何千何万、いやそれ以上の人間を犠牲にして得られる平和に何の価値があるというのか。

 

 かつての優しかった愛弟子は歪み変わってしまった。ならば、その後始末をつけるのは師の役目だろう。

 そうして自来也と長門。二人の強者の闘いは始まった。

 

 

 

 自来也は長門との戦いの中で妙木山の二大蝦蟇仙人を口寄せし、仙法両生の術にて融合する。これが自来也の仙人モードの最終形態である。

 自来也はかつては一人で仙人モードになる事は出来なかったが、ここ数年の修行でそれを可能とした。だがそれでも二大蝦蟇仙人と融合した方が強いのでこうして口寄せにて呼び出したのだ。

 理由としてはやはり仙人モードの持続時間が挙げられる。周囲の自然エネルギーを集め、それを自身のチャクラと混ぜ合わせる事で仙人モードに至る事が出来る。だがそれではいずれ集めた自然エネルギーがなくなり、元に戻ってしまうのだ。

 それを防ぐ方法として蝦蟇仙人との融合があるのだ。自来也の肩に融合した蝦蟇仙人――フカサクとシマの蝦蟇夫婦――が自然エネルギーを集め続ける事で、自来也の仙人モードを持続するというわけだ。

 これには自然エネルギーを集めるのにしばらく動かずにじっとしなければならないという欠点を補うという利点もある。

 更にはフカサクとシマはそれぞれが幻術や仙術にて自来也の戦闘をサポートしてくれるのだ。これで通常の仙人モードより弱いわけがなかった。

 

 だが、その仙人モードに至った自来也でも輪廻眼の持ち主である長門は強敵と言わざるを得なかった。

 いや、相手が一人ならば既に決着は付いていただろう。だが長門は二人の人間を己の味方として口寄せしたのだ。しかもその二人の両目にも輪廻眼が存在していた。

 これには驚愕するしかない自来也である。伝説とまで称されている輪廻眼の持ち主が同時に三人も現れるなどどうして予想出来ようか。

 

 疑問に思う自来也だが、それで敵が待ってくれるわけもない。三人に増えた事により長門との戦いは更に加速していく。

 その中で自来也は敵の能力の幾つかに気付いた。まず、輪廻眼はそれぞれが視界を共有しているという事だ。これに気付いたのは正確にはフカサクであったが。

 視界を共有する事で誰かが敵を視認していれば、他の二人は敵を見ずともその位置や何をしているのかが分かるという事だ。

 

 更に自来也が気付いたのは、敵の能力が一個体に付き一系統しかないのでは、という事だった。

 最初に戦った長門は口寄せの術のみを使用し、もう一人は術を吸収するという異能のみを使用する。残る一人は分からなかったが、その二人はそれ以外の術を使用する事はなかった。

 

 まだ確定ではないが、これを前提として自来也は賭けに出る。

 

 戦闘で出来た大穴の中に入り自来也は敵と距離を取る。そして二大蝦蟇仙人による音を使った幻術にて敵を幻術の中に落としこもうとする。

 当然それを黙って待つペイン達ではない。自来也を捜索し、そして手遅れになる前に始末しようとする。

 自来也を発見したペイン達はそのまま自来也に駆け寄っていく。だが、その自来也は影分身であった。

 壁に隠れていた本体はペインの後ろを取り、そこから火遁の術を放つ。そうする事で術を吸収する敵がその火遁を吸収するのを自来也は確認した。

 

 自来也の推測は合っていた様だ。そして影分身の自来也はすぐに真正面からも火遁の術を放った。

 後ろからも吸収されているとは言え火遁が放たれ続け、前からも火遁が迫る。術を吸収する者は後ろで火遁を吸収しているので前から迫る火遁は避ける他ない。

 そして逃げ道は上空のみだった。そう判断したペイン達は天井高くへと飛び上がる。だが、それすらも自来也の罠であった。

 

 天井を足場とした敵の一人はその天井に足を取られたのだ。予め自来也が仕掛けていた地面を底無し沼へと変化させる土遁黄泉沼の術である。それを天井に使用していたのだ。

 残る一人は足を取られた味方に手を突く事で黄泉沼からは逃れる事が出来たが、これで完全に分断される事となった。

 そうして各個が分断された事でコンビネーションを失ったペイン達はそれぞれが動きを封じられ、やがて二大蝦蟇仙人が放つ幻術に捕われる事となる。

 

 幻術に掛かり無力化されたペイン達はあえなく自来也によって止めを刺された。

 巨大な剣を胴体に突き立てられたのだ、生きてはいられないだろう。それは自来也も確認をした。

 全てが終わった。そう思った自来也の後ろには……別の敵が存在していた。

 

「油断するなとアンタから教わったはずだが……自来也先生」

 

 そしてその奇襲は自来也を傷つけ吹き飛ばす……ことはなく、自来也の左腕によって防がれる事となる。

 

「油断? そんな物はワシにはないのぉ」

「!?」

 

 完璧なタイミングの奇襲を防がれた事に、新たな敵は逆に動揺する。

 

「ぬん!」

 

 その敵が動揺した瞬間を狙って自来也は大玉螺旋丸を叩きつける。吹き飛ばされていくその敵は完全に意識を、いやその命すら失っていた。

 

「こ、こいつは!?」

 

 倒しはしたものの、いきなり現れた新たな敵にフカサクは驚きの声を上げる。

 

「どうやら前もって口寄せしておいたんでしょうのォ」

「そうか、ワシらの幻術に掛かり切る前に……。だが、これで終わり――」

「とは、行かんようですな……御二方! 気を引き締めて下されよ! ここからが本番のようです!」

 

 自来也の言葉が示す通り、自来也の前には更に新たな敵が現れた。そして、その敵を見た時に自来也は驚愕する事になる。

 

「まさか……その顔……弥彦なのか」

「……」

 

 自来也は新たな敵の顔に弥彦の面影を見たのだ。弥彦とは長門と小南と共に弟子にした最後の一人である。そして、彼ら三人の中でリーダー格となっていた者だった。

 自来也と長門が戦う前に、長門は弥彦は死んだと言っていた。だが、こうして目の前にいる敵はまさしく成長した弥彦にしか見えなかった。

 驚愕する自来也を無視して、弥彦の面影を持つ敵は自身が持つ能力を発動する。

 

「ぐおぅっ!?」

『!!?』

 

 目に見えない強い力に自来也は吹き飛ばされていく。新たに現れた弥彦似の敵に、詳細がつかめない新たな能力。

 そして……吹き飛ばされて壁を突き破り外へと飛び出した自来也の目に、更に理解出来ない光景が広がっていた。

 

「ペイン六道……ここに見参」

 

 そこには先程倒したはずの四人の敵を含む、六人の敵が揃っていた。そしてその六人全員が輪廻眼を宿している。

 そう、暁のリーダーペイン。その名はこの六人全員を指し示す呼び名であったのだ。

 六人で一個の生命のように動く忍。そしてその能力はそれぞれが通常の能力とは一線を画す力を持っている。まさに暁のリーダーに相応しい力の持ち主だろう。

 

「何故だ……弥彦は死んだはずじゃ……」

 

 戦いの前に確かに長門はそう言った。だが目の前にいるペインの中の一人は確かに弥彦だ。

 しかし解せないのはその弥彦が輪廻眼を持っている事だ。輪廻眼を持っていたのは長門一人のはず。弥彦は普通の眼であった。

 六人全員が輪廻眼を持っている事といい、輪廻眼を持っていなかった弥彦が輪廻眼を持っている事といい、死んだはずの弥彦がこうして生きている事といい、倒したはずのペインが生き返っている事といい、もう分からない事だらけである。

 だがその中で分かった事が一つだけあった。それは、長門と思っていた最初に出会ったペインが、長門ではないという事だ。

 風貌が変わっていたが全くの別人というほどの変化ではなく、輪廻眼を持っていたという事もあって最初のペインを長門と思いこんでいた。

 だが弥彦の肉体を見てそれは違うと確信したのだ。弥彦には長門の面影を感じるというのに、この六人のペインの中に長門の面影を感じる者は一人としていない。またも分からない事が増えてしまった。

 

「弥彦なのか……長門なのか……? お前らは一体何なんだ!?」

 

 ここまで分からない事だらけの状況は自来也とて初めてだ。苛立ちと困惑を見せる自来也に対して弥彦は、ペインは言う。

 

「我々はペイン……神だ」

 

 そう言って、ペイン六道は全員で自来也を始末するべく動き出した。

 

 

 

 自来也とペインの戦いは熾烈を極めた。

 ただでさえ一体一体が強く厄介な能力を個別に持っている上に、六人全員が一個の生命のように連携を取って掛かってくるペイン。

 更に輪廻眼による視界の共有によりそのコンビネーションは更に高まっている。このペインを相手に戦って無事でいられる忍が果たしているのだろうか。

 だが自来也はそんなペインを相手に善戦していた。

 

 口寄せを使うペイン――畜生道――が口寄せした巨大な犬を髪の毛を伸ばして操作し対象を締め付ける乱獅子髪の術にて縛り、そしてそれを振り回して巨大な武器とする。

 この巨大犬は増幅口寄せと呼ばれる特殊な術に縛られており、攻撃を受ける度に体が増えるという特殊な口寄せだ。しかも分裂と融合までする事が出来る。

 それは先の戦闘にて理解していたので自来也は髪の毛で縛りつけて増幅しても分裂出来ないようにしたのだ。

 

 巨大な質量の武器と化した口寄せ動物はペインに当たる前に口寄せを解除される。

 そして全身に兵器を仕込んだ傀儡人形のペイン――修羅道――が肉体のあらゆる箇所からミサイルを放つ。

 自来也はそれをシマの火遁とフカサクの風遁、そして自身の蝦蟇油弾を組み合わせて放たれる強大な火遁、仙法・五右衛門にて迎撃。

 そのままあわよくば修羅道をとも思っていたが、それは術を吸収するペイン――餓鬼道――によって防がれてしまう。

 

 対象の頭に手を当てる事で対象の記憶や情報を読み取る能力を持つペイン――人間道――が黒い棒状の武器を持って自来也を攻撃する。

 それを避けて反撃をするが、その反撃は弥彦の肉体を持つペイン――天道――によって防がれた。

 だがそれは自来也には予想された行動だった。どのペインも人間道を庇うには遠く、唯一近くにいた天道のペインのみが助ける事が可能だと読んでいたのだ。

 弥彦の肉体だが、もはや問答は無用。ここで倒さなくてはペインは更なる災厄を生み出すだろう。その果てに平和があったとしても受ける痛みは代償としてはあまりにも高すぎる。

 既に覚悟を決めていた自来也は螺旋丸を作り出し、それに更に火遁を混ぜ合わせた火遁・極炎螺旋丸を放つ。

 

 形態変化の極限である螺旋丸に火の性質変化を組み合わせるという会得難易度で言えば最高峰のSランクに当たる術だ。

 そしてその威力は桁外れと言ってもいいだろう。螺旋丸によって高速回転している渦が炎を帯びて更に威力を増し、あらゆる物を焼き滅ぼす極炎と化すのだ。

 当たればまず死は免れない。そして、避けられるタイミングではなかった。ペイン六道が不可思議な力にて蘇るとしても、肉体が欠片も残っていなければ復活も到底出来ないだろう。

 

(すまんな弥彦! 地獄で会おうぞ!)

 

 だが、自来也のその必殺の一撃は……攻撃対象であるペイン天道によって防がれる事となる。

 

「ぐぅぅっ!?」

「な、なんじゃこれは!?」

「自来也ちゃん!? 大丈夫か!?」

 

 攻撃が当たる寸前に、何故か自来也は後方へと大きく吹き飛ばされ、そして雨隠れの里の周囲を覆っている水へと叩きつけられる。

 この謎の力によって吹き飛ばされるという現象に自来也だけでなくフカサクとシマも困惑しているようだ。

 それもそのはず。極炎螺旋丸は確実に当たるタイミングだった。あの瞬間に何をしようとも避ける事はおろか防ぐ事も不可能なはず。だと言うのに、自来也は突如として謎の力によって吹き飛ばされたのだ。

 

「こ、これはあの時の……!」

 

 水面から上がってきた自来也は驚愕の瞳でペイン天道を見つめ、そしてそれがペイン天道が最初に放った謎の力と同じ物であると判断する。

 相手を吹き飛ばすどころか、自来也の持つ術の中で最大の攻撃力を誇る極炎螺旋丸まで無効化するという有り得ない力。

 これがペイン天道の能力。己を中心として引力と斥力を操るという強大無比な能力である。

 その力は物体はおろか忍術全般を弾き返す。つまりこの力がある限りペイン天道にダメージを与える事は実質不可能というわけだ。

 いや、幻術ならば可能性はあるが、六人の敵に囲まれているこの状況で幻術などしてもすぐに無効化されるか、そもそもペインに効果的な強力な幻術など発動自体を許しはしないだろう。

 

「流石は伝説の三忍。流石は我が師。たった一人でこのペイン六道を相手にここまで戦えるとはな……」

 

 それは素直な賞賛の言葉であり、そして上から見た意見でもある。

 だが真実それは自身が負ける事がないという自負からの言葉なのだろう。ペイン六道に隠された秘密を解き明かし攻略しない限り、ペイン六道に対して勝ち目等ないのだから。

 

「随分と上から目線だのぉ。そういうのはな……」

 

 水面の上に立ち、全てのペインから見下ろされている自来也はそう言いつつ一拍間を置く。

 そして、次の言葉を放つ前に、ペイン餓鬼道の後ろの水面から現れたもう一人の自来也が餓鬼道へと奇襲の一撃を喰らわせた。

 

「なに!?」

「ワシを倒してからほざくんだのゥ!!」

 

 強烈な一撃は確実に餓鬼道の命を奪った。術を吸収する厄介な防御役であるこのペインさえ倒せば、一番厄介なのはペイン天道のみ。

 自来也は水の中に入ってから水面に上がってくるまでに影分身の術を使用していたのだ。それを水中で気配を消して餓鬼道の裏側へと移動させる。

 ペイン六道は視界を共有しているが、その全員が自来也を見ていた上に、囲んでいなかったので後ろに回った影分身に気付くのが遅れたという訳だ。

 

 この時自来也が天道を狙わなかったのは奇襲すらも気付かれた瞬間にあの謎の力で防がれる可能性があったからである。

 あの避ける事も防ぐ事も出来ないタイミングですら弾かれたのだ。能力を発動するのに要する時間は限りなく零に近く、その上予備動作も必要としない。これでは奇襲も成功しづらいだろう。

 確実に殺せるだろう餓鬼道を先に始末する。敵の数は減り、そして術を吸収される事もないからやりやすくもなる。あとは蘇らされない様に攻撃を加え続けることでその隙を無くせばいい。

 だが、そう事は簡単には進まなかった。自来也はまだペイン天道の能力を過小評価していたのだ。

 

「残念だったな自来也先生……」

「ぬ!?」

 

 ペイン天道は餓鬼道と自来也の中心に立ち、そして天道の力を発動する。

 

「な、なにぃ!?」

 

 自来也が驚いたのは天道の力を発動した事ではない。その力の範囲が先程よりも圧倒的に伸びていたからだ。

 自来也は先の攻撃で天道の力の及ぶ範囲を測っていた。だが、今回のそれはその計算を遥かに上回っていたのだ。

 自来也が後方へ吹き飛ばされると同時に餓鬼道の死体も反対方向へと吹き飛ばされる。そしてそこにいたのは地獄道と呼ばれるペインだった。

 

 地獄道が手をかざすと、そこから閻魔を模したかのような巨大な顔が現れる。

 その閻魔像が餓鬼道の死体を口の中に入れ、そして再び口を開いた時……その口の中から餓鬼道は完全な姿となって新たに現れたのであった。

 

「何じゃと!」

「こげん馬鹿な話があるかい!?」

 

 フカサクとシマが驚愕する。ペインと戦い始めて何度目かも分からない驚愕だ。

 だがそれも当然だろう。倒しても倒しても復活をするというふざけた能力を持つ敵を相手にしているのだから。

 

「そ、そうか! あのペインが他のペインを復活させていたのか! だから……!」

 

 だから後ろにいたのか。自来也はペインの陣形を理解した。

 自来也の予想通り、地獄道は他のペインを復活させる能力を持っている。正確には人間の魂を抜き取り、それを死したペインに与える事で復活させているのだ。

 この地獄道こそがペイン六道の生命線だ。だからこそ常に自来也から一番離れた位置で積極的に攻撃をせずに戦闘を見守っていたのだ。

 

「これで再び元の六対一だ。ここまで善戦出来るとはな、伝説に偽りなしか。……だが、もう終わりだ」

 

 ペイン六道が、自来也に止めを刺すべく襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

「くっ……! よ、ようやく一体か……」

 

 自来也はどうにかペインの一人、畜生道を倒す事に成功する。蝦蟇結界により蝦蟇の中に引きずり込んで止めを刺したのだ。

 これにより結界内部に死体を留めておく事で地獄道による復活を阻止する事が出来る。つまりペインの数が減ったという事だ。

 だが、それに至るまでに自来也が受けた傷はとても代償にあっているとは言えなかった。

 全身の多くは傷ついており、右肩にはペインが持っている黒い棒状の武器が突き刺さっている。いくつか骨も折れているだろう。

 自来也の強さを警戒したペインが天道の力を巧みに使い、自来也から攻撃の手段やタイミングを奪いさったのが苦戦の一番の理由だ。

 ペインの生命線は地獄道だが、もっとも厄介なのは天道であると自来也は身を持って知った。

 

「ッ!? 体が……!? チャクラが乱される!!」

 

 畜生道を倒して結界の中で一息ついていた自来也のチャクラが突如として乱される。

 その原因が自来也に突き刺さっている黒い棒だと察したフカサクは即座に自来也から黒い棒を抜きさった。

 黒い棒が抜かれた事で自来也のチャクラの乱れは収まる。正体も奇妙ならば武器まで奇妙と来たものだ。どうすればペインに対抗する事が出来るのか、自来也には見当も付かなかった。

 

(いや……アカネならばどうにか出来そうだから笑えるのォ)

 

 自分よりも遥かに長く生きている理不尽の権化を思いだして自来也は苦笑する。

 きっとアカネならばペイン六道が相手でもどうにかしてしまいそうだと思わずにはいられなかった。

 

 自来也は今ここにいない人間を思う事を止め、ペインの謎について思考を巡らせる。

 ペイン天道の顔は間違いなく弥彦であると自来也は確信する。だが、弥彦は輪廻眼を持っていなかった。

 ならば弥彦が何らかの理由で長門から輪廻眼を奪い取ったのか。しかしそれも解せない。何故なら他にも輪廻眼を持つ者があれだけいるからだ。

 更に戦いの前に人間道が話していた内容からは長門の言葉を思わせるものもあったのだ。ならば目の前で死体となっている畜生道はやはり長門なのだろうか。

 

 自来也がそう思った時、畜生道の額当てが外れ落ちた。激戦の中で留め金が緩んでしまったのだろう。

 そうして畜生道の額が顕わになったのを見た時、自来也はかつての記憶を思いだした。

 

「そうだ……思いだした! こいつは長門なんかじゃない!」

 

 そう。畜生道の体は長門の物ではなかった。自来也は畜生道の額にある横一筋の傷を見てそれを思いだした。

 それはかつて自来也が旅をし始めたばかりの頃に山道で襲ってきた風魔一族の男だったのだ。額の傷を付けたのは自来也なので間違えようがなかった。

 何故その男がペインの一人としてここにいるのか。深まる謎に対して、自来也にはある予想が浮かび上がっていた。

 だが予想は予想。確信には至らない。ならば確信する必要があった。それがペイン打倒に繋がる秘密となるからだ。

 

「ワシはもう一度奴らの前に出て確かめたい事があります……お二人はお帰り下され」

 

 それにはフカサクもシマも猛反対した。既に自来也は死に体だ。生きているのが不思議な程の猛攻を受けたのだ。

 ペイン六道を相手に今も生き延びている。それは自来也の強さの証と言えよう。

 だが次にペインと相対すれば間違いなく自来也は死ぬ。そうフカサクとシマは確信していた。

 

 だが自来也が自身の意見を曲げる事はなかった。今を除いてペインの正体を掴む機会はないだろう。

 先程はああ思ったが、実際にペインを相手にしてアカネですら勝てる保証はないのだ。

 そもそもペインが里を襲ったとして、アカネを頼る事すら出来ない状況に陥る可能性もある。そうなれば多くの忍が命を落とすだろう。

 それを防ぐ為にもここで少しでも多くの情報を手に入れなければならないのだ。

 

 覚悟を決めていた自来也はフカサクとシマに今までの情報と人間道の死体を持ち帰るよう頼む。

 そしてそれを了承したのはシマのみだった。フカサクは自来也に付き合ってペインと戦おうと言っているのだ。

 全てが終わったら自来也と共に飯を食べに帰ると妻であるシマに約束して……。

 

(ありがとうございます……。……ぬっ!?)

 

 自来也は二人の優しさに深く感謝する。だが、次の瞬間に何かに気付いて驚愕した。

 

 

 

 

 

 

 蝦蟇結界から外へと飛び出した自来也は気配を消して水中を進み、静かに水面から顔を出して修羅道に苦無を投擲する。

 死角から放たれた苦無だが、それは五つの視界を共有するペインには通用しなかった。鋭く投擲された苦無は容易く躱されてしまう。

 そして残る五人全てのペインが自来也を睨みつける。そして同じく自来也も五人のペインを良く見ていた。

 そこで自来也は予想を確信へと変えた。

 

(間違いない! こいつら全員ワシの会った事のある忍だ!!)

 

 その確信を得て、そしてこれまでの全ての情報を繋ぎ合わせた結果、自来也はペインの正体に行きついた。

 この情報を必ず木ノ葉へと伝える。そしてその為にするべき事も理解しており、覚悟も決めていた。

 

「ッ!!」

 

 水面から奇襲を仕掛けてきた修羅道の一撃により自来也は喉を潰される。その上で残る四人のペインがあの黒い棒にて自来也を串刺しにしようとする。

 それを自来也はどうにか二本ほど防ぐが、やはり奇襲により体勢を崩していた事により残る二本を避ける事は出来なかった。

 

「――ッ!」

 

 喉を潰されて声も出ないままに自来也は血を吐き出す。

 だが最後に残った力を振り絞り、一人でも多くのペインを倒そうとして螺旋丸を作り出して……そのまま倒れ込んでしまい、最後の螺旋丸は足場である岩を崩すだけに終わった。

 

 そうして自来也は力なく水中へと沈んで行く。それを見届けたペインは自来也の死を確信する。そして再び同じ言葉を口にした。

 

「伝説の三忍自来也もついに死す、か。我らにこの秘密が無ければ勝てはしなかっただろうな。流石は我が師だ」

 

 そうして自来也の強さを褒め称えた所でペインは誰もいない方向に顔を向けて話だす。

 

「ところで……そろそろ出て来い」

 

 その言葉と共に現れたのはゼツだ。地面や木々と同化するという特殊な能力を持っており、潜入任務や情報収集にはうってつけの男である。

 

「かなりかかったね」「相手ハアノ自来也ダッタノダカラナ」

 

 ゼツはその左半身が白く、右半身が黒く染まっていた。そして思考もそれぞれ左と右で違っているという不可思議な存在であった。その正体を知る者は殆どいない暁でも謎の存在である。

 

「とんだ邪魔が入った。他の奴らは準備が出来ているか?」

「うん。後はペインだけだよ」「サテ、木ノ葉ガ崩壊スルノヲ見学サセテモラオウカ」

 

 ゼツは情報収集に特化した能力ゆえかそれほどの戦闘力は持ち合わせていない。少なくとも木ノ葉襲撃に参加すると途中で倒される事は間違いないと他の暁には思われている。

 なので暁が木ノ葉へと仕掛ける戦争には参加せず、能力を駆使して見学に徹するつもりなのだ。それに関しては暁全員が認めていた。うかつに死なれては今後の情報収集に差し支えるからだ。

 

「悪いが少しばかり時間を貰う。オレも少々消耗したからな」

「そうなの?」「三忍ノ名ハ伊達ジャナカッタカ。大蛇丸ヨリ強インジャナイカ?」

 

 自来也の奮闘はペインを大きく消耗させていた。その回復にはしばしの時間が掛かるだろう。

 それをペインは苦々しく思うも、今はそれを忘れて回復に集中する事にした。

 

「じゃあ回復したら教えてね」「ソノ時ガ木ノ葉ノ最後カ。楽シミダ」

 

 そう言ってゼツは地面へと溶け込み姿を消していく。

 ゼツの姿が消えて無くなった後にペインは小さく呟いた。

 

「さあ、世界に痛みを与えよう」

 

 痛み。それこそが世界を成長させて平和へと至らせる唯一無二の手段。そう信じてペインは歩み続ける。

 

 




アカネ(影分身)「どうも、孤児院の護衛です」
大蛇丸「ちょ、おま」

アカネのこの便利さである。







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