どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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NARUTO 第二十一話

 木ノ葉の里は忍界にある忍の隠れ里の中でも最大と言っても良い強国である。

 多くの優秀な秘伝忍術を使える忍を有しており、血継限界も強力な瞳術である写輪眼のうちは一族と白眼の日向一族を有している。

 忍里の中では比較的穏やかな風潮もあり、更に肥沃で広大な土地を持っている為に忍の数そのものも他里と比べて多いのも強国の理由だろう。

 質と数。二つの力を共に有しているからこその強国だ。

 

 だが、その強国であるはずの木ノ葉の里が現在蜂の巣をつついたかの様な騒ぎとなっていた。

 その原因は何かと問われれば誰もがこう言うだろう。「化け物が現れた」と。

 

 化け物。それは二つの存在を指す言葉だった。

 一つは日向アカネ。怒りと共に発したチャクラは大瀑布の如くに木ノ葉へと一瞬で届いていた。

 それを感じ取れなかった忍は一人としていない。下忍はおろか、アカデミーの忍候補生も当然の如く、そればかりかチャクラをまともに感じ取る事が一生ないだろう一般人にすら感じ取れた程だ。

 この時点で木ノ葉の忍は何かとんでもない事が起こっていると漠然と理解し、アカネのチャクラを良く知る者達はそれ以上に恐ろしい何かが起こっているのだと恐怖した。アカネが全力を出す事態など易々と想像は出来ないのだから当然だ。

 

 そしてもう一つの化け物。

 それが突如として森の中から現れたチャクラの巨人、うちはマダラの完成体須佐能乎である。

 数kmは離れている為に流石に須佐能乎の姿は小さく映る程度だが、逆に言えば数kmは離れているというのにその大きさで見えるという事だ。

 多くの忍や民は塀で囲まれている為に巨人を見る事はなかったが、それでも少なくない数の忍は高所からそれを見つけて驚愕していた。

 

 しかもその巨人が巨大な剣を里に向けて振るっているのだ。その一撃は強大な衝撃波となって上空を通過していく。その際に雲は散り散りとなって消し飛んでいた。

 その威力は塀の中からも見えていた。雲を消し飛ばす程の威力を持つ何かが里に向けられている。それを理解して恐慌しない者は殆どいないだろう。

 特に一般人である里の住民は怯え竦んでいた。多くの忍が彼らの避難誘導を率先した事でパニックによる被害は少なく済んだが、それだけでも大騒ぎと言えた。

 

 この巨人に関してはアカネを知る者達も多くが知らない存在であったが、それを理解する者も少ないがいた。

 

「これは……! イタチ!」

 

 マダラの完成体須佐能乎を見たうちはフガクは隣にいる息子のイタチへと確認する。

 あれはオレの知るそれ(・・)であっているのか、と。

 

「須佐能乎なのか……!? だが、オレの須佐能乎とは……」

 

 桁が違う。イタチも須佐能乎に目覚めている史上でも数少ない万華鏡写輪眼の開眼者だ。

 だがイタチの目に映る完成体須佐能乎はまさに桁が違った。振るうだけで天を切り裂き、雲をかき消し、当たってもいない大地を揺るがす。まさに化け物の総称が相応しいだろう。

 

「まさかあれはうちはマダラの……!?」

 

 イタチはその鋭い分析力であの須佐能乎がマダラの力であると推測する。

 それを聞いたフガクはイタチの言葉を一度は否定した。

 

「馬鹿な……! うちはマダラは当に死んでいる! そんなはずは――」

 

 そんなはずはない。その言葉は次のイタチの言葉により飲み込む事となる。

 

「だが、アカネ様から聞かされていたうちはマダラの情報と符号します。それに穢土転生という例もあり、更にはアカネ様という例もまた……」

「……確かに。忍の世に想像を超える出来事など多いという事か」

 

 そう、死者が蘇るという一例を既に二人は二回も見ているのだ。

 初代火影と二代目火影の穢土転生に、転生を果たして今も生きる日向アカネ。それを思えばうちはマダラが復活したとあっても不思議ではなかった。

 

「ともかくこうしてはおられん。イタチ! お前はすぐに火影様にこの情報を伝えよ! シスイがいるとは思うが不在の可能性もある! オレは警務部隊を動かして里の住民を避難させる!」

「はっ!」

 

 迅速を尊ぶ二人の行動は早かった。だが、その二人の動きを止める事態が起こった。

 忍の世に想像を超える出来事など多い。そのフガクの言葉をまさに表している想像を超えた出来事が二人の目に映っていた。

 

 

 

 同時刻。木ノ葉の地に潜む“根”。木ノ葉という大木を目に見えぬ地の中より支えるという目的で作られた暗部、それが根だ。

 その根の創設者でありリーダーのダンゾウは薄暗い地下にあって地上の異変に気付いた。

 

「これは……」

「ダンゾウ様――」

 

 音も無く現れた一人の暗部がダンゾウへと地上の騒動を伝える。

 暗部の説明を聞いたダンゾウはこのチャクラの持ち主に得心がいった。

 強大なアカネのチャクラと、そしてもう一つ感じた別の恐ろしい程のチャクラの塊。この質は遥か以前にも感じた事のあるチャクラだった。

 

(やはりうちはマダラ……復活したというのか?)

 

「ダンゾウ様、如何いたしましょう」

「放っておけ。アカネ様がどうにかするだろう」

 

 そう、うちはマダラを相手に自分達が出来る事はない。ダンゾウはそれを良く理解していた。

 下手にアカネの援護などしようものなら無駄に多くの忍を失うだけである。

 

「では、地上の混乱は……」

「それも構わん。綱手姫はお飾りではない。既に避難誘導の為の組織を向かわせているはずだ」

 

 その冷静な態度は里の民を想っていない様にも思えるだろう。だが――

 

「ワシ等にはワシ等のすべき事がある。ワシの予測が正しければこれより暁が攻め込んで来るはず。根の者は暁に備えて里に散開。見つけ次第交戦し時間を稼ぎ、そして情報を集めよ」

『はっ』

 

 何時の間にか、ダンゾウの周囲には多くの根が傅いていた。

 そしてダンゾウの命令に従って小隊を組み、木ノ葉の各地に散らばっていく。

 戦って勝てとはダンゾウは命令しなかった。いや、勝つ事が出来ればそれに越した事はないのだが、相手は暁だ。まともに戦って勝てたら苦労はしないだろう。

 最も大事なのは最終的に勝つ事だ。場当たり的に交戦するのではなく、防御に徹して時間を稼ぎ被害を少なくし、敵の能力などの情報を手に入れて多くの仲間に伝える。

 そうすればいずれ敵は丸裸となり対処も容易になるだろう。感情のままに動くのではなく感情を制御して里の為に貢献する。それが根の役目なのだ。

 

「さて、そろそろワシも……」

 

 時代は流れている。既に木ノ葉は磐石だ。

 かつてのある事件にて持ち出せなかった覚悟を、今この時に胸に秘めてダンゾウは地上へと赴いた。

 

 

 

 同時刻。火影である綱手と共に日々の業務をこなしているうちはシスイもイタチと同じく須佐能乎の正体とその術者を見抜いていた。

 

「間違いないのかシスイ!?」

「恐らくは……。あれは以前にアカネ様からお話しして頂いたうちはマダラの完成体須佐能乎、恐らくはその使い手もまたマダラかと……」

 

 うちは一族でアカネの正体を知る四人は、アカネに自分達の先祖にして最強のうちはの称号を持つマダラについて語ってもらった事がある。

 そしてその情報とシスイ自身の須佐能乎、そしてあの凄まじい須佐能乎を統合して考えるとその答えに行きついたのだ。

 

「うちはマダラが蘇ったと言うのか……!」

 

 シスイと同じく火影の警護と業務の手助けを任務としていた日向ヒザシもシスイの言葉に驚愕する。

 何が原因かは分からないが、うちはマダラが復活した。しかも見た限りマダラはその力を木ノ葉へと向けている。

 まだ里が無事なのはアカネが守ってくれているからだとヒザシには理解出来ていた。先程のチャクラはその為だったのだろう。

 だが、あのアカネと同等の力を持つ伝説の三忍が敵に回る。その恐ろしさを理解出来ないヒザシではない。

 

「綱手様!」

「分かっている! 今はばあ様が守ってくれているがいつまでもそれで良い訳がない! まずは里の民の避難だ! 恐らくフガクなら既に動いてくれていると思うがそれでは手が足りん! 緊急避難の訓練を積んでいた小隊をすぐに向かわせろ!」

 

 三年前の木ノ葉崩しは忍による被害こそ少なかったがその実逃げ惑う住民が起こしたパニックによる被害が大きかった。

 一度受けた痛みだ。次に同じ事があればそれを失くす、少なくとも被害を減らす事に注力するのは当然の事だ。その為に里の避難場所へと民を誘導する訓練を積んだ忍の小隊を組織していたのだ。

 

「次に各一族の長に木ノ葉襲撃に備えるよう通達しろ。この騒動、マダラだけでは終わらんぞ!」

「……まさか!?」

「暁!?」

 

 綱手の言葉を二人はすぐに理解した。この騒動に合わせて暁が攻めて来る。綱手がそう言っているのだと。

 

「急ぐぞ! 今は僅かな時間も……こ、これは」

 

 僅かな時間も惜しい。そう言おうとした綱手は空を見上げてその一言を発する事が出来なかった。

 空を見上げて呆然とする綱手と同じく、シスイとヒザシもまたそれを見て驚愕するしか出来ないでいた。

 

「ば、馬鹿な……」

「これが……人の業だと言うのか?」

 

 呆然とする三人。いや、この時木ノ葉の殆どの忍がそれを見て同じように呆然としていただろう。

 天を覆い隠すような大岩。そんな物が頭上から落ちて来ているのを見て、一瞬ではあるが呆然とした所でそれを咎める事が出来ようか。

 

「シスイ!」

「分かっている! 綱手様こちらに!」

「っ! お前ら何をする! 私よりも少しでも里の民を!」

 

 シスイは綱手を自らの須佐能乎の中に閉じ込める。外へ出ようとする綱手を羽交い絞めにしてでもだ。

 須佐能乎の防御力は並大抵の攻撃では超える事は出来ない。なのでそれで綱手を守るつもりなのだろう。

 だが、頭上から落ちる圧倒的な質量は並大抵という言葉を遥かに凌駕しているのは明白。だからヒザシは須佐能乎の中に入らなかった。

 僅かでも威力を軽減するべく須佐能乎の前にて廻天を展開するヒザシ。命を懸けて火影を守る。それこそが火影の左腕に選ばれたヒザシの任務なのだ。

 

「止めろヒザシ!! 死ぬぞ!! あんな岩程度私が砕いてやる! だからお前が須佐能乎の中に!」

「これで里の全てが終わるわけではありませぬ! 多くの犠牲は出るが、生き残る者もまた多いはず! その時あなたは必要なのです!」

 

 大岩を砕くという綱手の言葉だが、綱手の怪力を知るヒザシでもそれが自分を生き残らせる為の嘘だと気付いていた。だが、あの大岩に向かおうとしている事が嘘ではないのも気付いていた。

 里の為に、部下の為に命を懸けて大岩を砕こうとする。そんな綱手だからこそ火影に相応しく、今後の木ノ葉に必要な人物なのだ。そんな火影だからこそ命を懸けるのに相応しい。

 

(すまないネジ……生きていてくれよ)

 

 一人残す事になる息子を想い、そして全力で大岩に備えるヒザシ。

 だが、ヒザシの覚悟はどうやらここが発揮する場ではなかったようだ。

 

「こ、これは!?」

「なんと……!」

「……ば、ばあ様か!」

 

 木ノ葉へと降り注がれようとしていた絶望は瞬きの間に消滅したのだ。正確には粉微塵となり砂となって風に乗って彼方へと消え去ったのだ。

 それがアカネの仕業であると理解し、次に新たに落ちる二つ目の大岩に驚愕し、またそれが膨大な水流で砕けながら彼方へと消えるのを見る。

 

『……』

 

 怒涛の展開に三人は言葉もなかった。だが、そうして呆けている事を許してくれるほど暁は優しくはなかった。

 

「……ちっ! 少しぐらいゆっくりさせてくれてもいいものを!」

 

 空を見上げていた綱手はそれに気付いた。そう、天から侵入して来た暁の一員を。

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、分かりやすい合図だ」

 

 空から落ちる巨大な岩を見て、ペインはそう呟く。

 合図。それはマダラ――実際はイズナ――がペインへと教えていた作戦開始の合図だ。

 離れた位置から木ノ葉を眺めていればすぐに気付くと言われて待機していたが、なるほど確かにすぐに気付ける合図の様だ。

 

「そうね。でも、これでは私たちが出るまでもなく木ノ葉は終わりでは?」

 

 ペインにそう訪ねたのは小南だ。作戦も何も、天から落ちる絶望を見れば木ノ葉の未来は容易く想像が出来ていた。

 そして内心でうちはマダラの力を小南は恐れる。完全に信用していたわけではないが、ここまで予想を超えた力を持っているとは流石に思ってもいなかったようだ。

 

「ペイン……」

「ああ、オレも奴を信用はしていない。だが、奴の協力がなければここまでこれなかったのも事実だ」

 

 そう、ペイン――長門が世界平和という目的の為にここまで強大な組織を作り尾獣を集める事が出来たのもマダラの協力あっての物だ。

 あの時、二人の友にして仲間にして、そして最高の家族であった弥彦が死んだ時、マダラがいなければそれから先に何を成せていたか。

 恐らく感情のままに暴れて程なくして力尽きていただろう。マダラが道を示してくれたからこそ今の暁が、今のペインがあった。

 

「もうすぐだ。もうすぐ世界は痛みを知る。そうなれば争いはなくなり世界は平和になる。その時にマダラが世界の悪になるというのなら……オレが殺す」

「……分かったわ」

 

 ペインが、最後に残された最愛の家族である長門がそう言うのならと小南は納得する。

 

「さて、オレ達の出番が来たようだな」

「そうね……日向ヒヨリ、まさかここまでの存在だとは……奴も危険過ぎるわ」

 

 天から落ちる絶望を吹き飛ばしたアカネの手腕に小南はマダラと同じ脅威を覚える。

 人外の者と思わざるを得ない化け物二体。果たして無敵のペインであっても勝てるかどうか。ペインではなく長門の弱点を知っている小南としてはそれが不安であった。

 

「では行って来る。お前はオレの本体(・・)を頼む」

「気をつけて。木ノ葉は強いわ」

「分かっている。だからこその暁の総力戦だ」

 

 そう言ってペインは六道の内、口寄せ能力を持つ畜生道を地獄道によって木ノ葉に向けて投げ飛ばす。

 易々と里を囲む壁を飛び越え、木ノ葉の里を覆う感知結界を突き破って畜生道は里の内部へと侵入し、そして口寄せの術を使用した。

 

「やっとかよ待ちくたびれたぜ! ジャシン様見てて下さいよォォォ! オレめっちゃ殺すから! 本気で殺しまくりますからよォォ!」

「……どうやら日向ヒヨリの足止めは成功しているようだな。これなら心置きなく暴れられる」

「ち、気にくわねーな。オイラの芸術をあの女に魅せつけてやりたかったのによ、うん」

「やられるのがオチだ。それよりも、木ノ葉の連中にお前の良く分からん芸術を見せるんだな。前回は不発だったんだろう?」

「木ノ葉崩し再び……次は防げるかしらねぇ」

「やれやれ。これだけの面子が揃っての任務は暁初ですからねぇ。纏まりがなくて実に暁らしいですよ」

 

 畜生道の口寄せにて現れたのはゼツ・小南・マダラを除く暁とペイン六道だ。

 そしてリーダーであるペイン天道が集合した暁全員に命令を下す。

 

「思う存分暴れろ」

 

 その言葉に従い、暁は木ノ葉を滅ぼすべく動き出した。

 各個に分かれて好き放題に暴れる。それが暁の作戦とも言えない作戦だ。唯一守るべきは九尾の人柱力であるナルトを殺さずに捕らえる事だけ。

 だが暁の運用法としてはこれで合っていた。元々我が強い連中の集まりなのだ。連携して動けと言われてそれが出来れば苦労はしない。せいぜい二人一組(ツーマンセル)が限界だろう。

 そして、暁はそれで何も問題はなかった。我が強いだけの忍が集められた組織ではない。忍界屈指の使い手が集められた組織が暁なのだから。

 

 木ノ葉の里に戦火が舞った。

 

 

 

 

 

 

 迫り来るイズナの凶刃を背後に感じながら、アカネに出来た事は耐える為にチャクラを活性化させる事だけだった。

 耐える自信はあった。仙人モードとなって身体能力が圧倒的に向上しているアカネの防御力は桁違いだ。だが、ダメージは確実に負うだろうし、何より須佐能乎の威力を殺し切る事が出来ないだろう。

 そうなれば木ノ葉は甚大な被害を被ってしまう。だがアカネにはどうする事も出来ない。そういうタイミングでイズナは攻撃を放ったのだ。そうすればアカネがより苦しむだろうと理解して。

 

 だが、アカネが想像する地獄の様な光景も、イズナが想像する愉悦極まる光景も、いつまで経っても来る事はなかった。

 アカネは痛みも衝撃も来ない事を疑問に思うもすぐに体勢を立て直してイズナへと向き直る。するとそこにはアカネに当たる直前で止められている須佐能乎の剣があった。

 

「……なぜ振り下ろさなかった」

 

 確実に当てる機会だったはずだ。自慢になるが、自分にまともに攻撃を命中させる機会など滅多にある物ではないとアカネは自覚している。

 外道な手段を使ってまで手に入れたその機会をイズナが潰すとはアカネには思えなかった。一体何のつもりだ? 疑問に思うアカネはイズナの、いやマダラの苦しそうに歪む顔を見て更に怪訝に思った。

 何故? 何故穢土転生の肉体で苦しそうに呻いているのか。腕がもがれようが首が千切れようが気にせずに戦える不死身の肉体で、何が苦しいと言うのか。

 その答えはイズナ本人が教えてくれた。

 

「ば、馬鹿な……まだ、意識が……!?」

「意識が……? ま、まさか!?」

 

 イズナの言葉から考えられる事はアカネには一つしかない。

 

「何でだ!? 何で邪魔をするんだ……!? 兄さん!!」

「マダラ! マダラなのか!」

 

 二人の叫びに応えるかの様に、マダラの口からイズナではない、そう、マダラ本人の言葉が紡がれた。

 

「この、うちはマダラを……舐めるなよイズナ!」

 

 まだ意識を保っていたとは。完全にイズナは意表を突かれていた。

 イズナがマダラを穢土転生にて口寄せしてから二十年近い年月が経っている。その間にもマダラは何度かイズナの縛りを解いて意識を取り戻していた。

 だが、その度にイズナはより強固に穢土転生の縛りを強くし、マダラの意識を封じ込め続けていた。

 最後にマダラが意識を取り戻したのは十六年程前、九尾復活事件の時だ。おかげで九尾という最強のチャクラの化け物を奪う事が出来なかった苦い記憶をイズナは思い出す。

 当時は他の尾獣を奪い封印する準備が整っていなかった為に九尾は保留にしたが、マダラへの縛りは念入りに強固にしていた。

 だと言うのにこれだ。アカネを守る為に意識を取り戻したと思うとイズナの怒りは更に膨れ上がった。そこまでこの女が大事なのかと。

 

「マダラ……」

「ふ、久しいなヒヨリ。姿は違えどこうして再び会えるとは思ってもいなかったぞ……とんだ再会になってしまったがな」

 

 軽口に聞こえるかもしれないが、今もマダラは必死にイズナの力に抗っていた。振り下ろし掛けている剣は僅かに震えている、それだけ力を籠めて耐えているのだろう。

 自分の為にそこまでの力を発揮してくれている。それがアカネには心底嬉しかった。

 

「ありがとうマダラ……お前のおかげで木ノ葉は無事だ」

「転生しても相変わらずだな……少しは自分の身を心配したらどうだ?」

 

 須佐能乎の力を受ける直前でも自分ではなく木ノ葉を心配していたアカネを見てマダラは変わっていないなと安堵する。

 例え姿が変われどアカネはヒヨリのままだった。それがマダラには嬉しかったのだ。かつての友は友のままであったと感じる事が出来て。

 

「く……ヒヨリよ! イズナはオレの意識ではなく肉体の操作のみに力を注いでいる……! もう、持たんぞ……!」

「っ! 分かった……! 穢土転生のお前の全力程度なら幾らでも受け止めてやる。だから安心しろ!」

 

 イズナはマダラの全てを操る事を諦め、肉体の操作のみに力を注いでいた。ギリギリの所でイズナの縛りに耐えていたマダラは意識はそのままだが肉体の動きを自由にする事が出来なくなった。

 再び振り下ろされた須佐能乎の剣。だがアカネの臨戦態勢は疾うに整っている。その一撃を廻天にて逸らし、空へと受け流していく。 

 

「お前は全く……穢土転生とはいえ、そうも容易くオレの力を止められるのも癪なんだがな!」

「だったらかつてより強い姿を見せてみるんだな! まあ、私も大分強くなっているけどな!」

「ふん! 永遠の万華鏡を手に入れて輪廻眼に目覚めたオレの力を侮るなよ! まだ隠し玉はあるから精々注意するんだな!」

 

 想像を絶する戦いの中とは思えない会話だ。二人は戦いの中であって旧友を確かめあっているのだ。

 

「む! 暁が木ノ葉を襲っているぞヒヨリ!」

「分かっている! だが里の忍は強い! 私たちの子は皆逞しく育ってくれているさ! それに私の影分身も里には多く居るから――」

 

 アカネのその言葉に対抗するように、マダラを操るイズナはある術を発動する。

 その術を見たアカネは不安が的中した事に舌打ちをする。やはり柱間を取り込んでいたのか、と。

 

「その胸のモノはお前の趣味じゃないようだな!」

「誰がこんなモノ(・・・・・)を好きで埋め込むか! 下らない事を言わずに木ノ葉を守れ!!」

 

 合計して二十体の木遁分身のマダラが作り出され、その全てが須佐能乎を発動して木ノ葉へとその力を振るう。

 それを防ぐ為に里に残っていたアカネの影分身全てが対応した。それぞれが廻天にて全ての須佐能乎の力を逸らしていく。

 だが、修行用に作り出された影分身ではそれが限界。全ての影分身がその一撃によって消滅していった。

 

「次はどうする!?」

 

 マダラのその叫びが示す通り、新たな一撃が全ての木遁分身から放たれようとしている。

 

「問題ない!」

 

 アカネはマダラ本体の一撃を捌きながらも一瞬で仙術チャクラを籠めた影分身を二十体作り出した。

 その仙術・影分身達は一瞬でそれぞれ木遁分身のマダラへと駆けつけ、全ての攻撃を捌き切った。

 

「つくづく規格外だなお前は!」

「良く言われる! だが、木遁使ってるお前に言われたくない!」

「黙れ! 何だそのチャクラ量は! 以前よりも増えてるだろうが! チャクラの化け物とか言われている尾獣に謝れ!」

「私が修行で手に入れたチャクラだ! 文句があるなら尾獣も修行すればいいだろうが!」

「修行する尾獣とか笑えないんだよ!」

 

 いがみ合っている様に見えて、その実二人は笑いあっていた。

 再会するまでの長い時間を埋めるかの様に二人は互いに罵倒しながら死闘を繰り広げる。だが、そこに殺意は欠片もなかった。

 これでマダラが操られてさえいなければ。そう思うアカネ。そして楽しく戦っている場合ではない事も思い出す。

 

「いつまでもこうしていたいがそういう訳にもいかないか……! マダラ! 一体何が有ったんだ!?」

 

 須佐能乎の横薙ぎの一撃を下から蹴り上げて弾き、アカネは問う。

 何故穢土転生してイズナに操られているのか。何故イズナは今も生きているのか。何故輪廻眼に目覚めているのか。何故……木ノ葉を裏切り柱間に戦いを挑んだのか。

 少なくとも今のマダラを見てアカネはマダラが木ノ葉を裏切ったとは思えない。何か理由があり、それにイズナが関わっているのは明白だ。

 

「……オレはイズナに頼まれて互いの両眼を交換した。それが全ての始まりだった……!」

「眼を!? どういう事だ!?」

 

 何故兄弟で眼を交換する必要があるのか。それが何になるのか。アカネとてうちは一族の全てを知っている訳ではない。

 当主のマダラ自身イズナが手渡した古文書がなければ、イズナと目を交換しなければ気付かなかった事実だ。

 

「万華鏡に目覚めた者同士が互いの眼を交換すると視力の低下と肉体への負担が無くなる永遠の万華鏡写輪眼に目覚めるのだ!」

「なっ!?」

 

 それは確かに凄まじい情報だ。万華鏡写輪眼は強大な力を誇る。開眼者固有の瞳術に目覚め、極めると須佐能乎という恐ろしい力の権化を手に入れる事が出来る。

 だが、その代償は重い。使えば使うほどに肉体は反動で痛み、そして視力は徐々に低下していく。最後には光を失ってしまうだろう。

 アカネもそれを心配してマダラには出来るだけ万華鏡の使用を控える様に頼み、マダラもそれに応えて別の力を手に入れていた。

 その代償が無くなるというのは喜ばしい事だ。マダラとイズナの力は確実に高まる結果となっただろう。

 だが、どうしてそれが全ての原因となるのだろうか。それがアカネには理解出来なかった。

 

「それだけではない……! 永遠の万華鏡を開眼した者は新たな瞳術に目覚める事があるのだ……! イズナが、そうだ!」

「イズナが!? イズナの万華鏡は天照(あまてらす)加具土命(かぐつち)……新たに目覚めた瞳術は何なんだ!?」

 

 何十合もの攻撃を交わし続けながら二人は情報を共有し合う。そしてアカネはイズナが目覚めた最強の瞳術の名を聞いた。

 

「……別天神(ことあまつかみ)。対象に幻術に掛けられた事に気付かせずに意識を誘導して操る最強幻術だ……!」

「なっ!? ま、まさか……!」

 

 幻術に掛けられた者はいずれそれに気付く事が出来る。相手が格上ならばいつ幻術に掛けられたかも気付く事は出来ないが、その幻術の真っ只中にあれば殺されない限りはいずれ気付くだろう。

 だが別天神は別だ。対象の意識を誘導し、さも自分が考えて決めた意志の様に思いこませる事でその行動を誘導する。対象者がそれに気付く事はない、第三者が解除しない限りは自力での解除は不可能。まさに最強の幻術と言えよう。

 そしてアカネはその幻術の存在を知る事で理解した。マダラが木ノ葉から離反した理由を。

 

「そうだ……! イズナはオレを別天神にて操ったのだ……! そして目的の為にオレと柱間を戦わせたのさ!」

 

 穢土転生となり蘇ったマダラの思考は別天神で操られる前のそれに戻っている。

 だからこそ操られてからの自身の行動を思い出し、自身を殴り飛ばしたくて仕方がなかった。だからこそ別天神の恐ろしさを誰よりも理解していた。

 木ノ葉を、仲間を、友を、全てを捨てて裏切るなど、考えられない事を自ら進んで仕出かしてしまったのだ。それも何の疑問も抱かずにだ。

 

「イズナはオレに対して、自分に疑問を持つなという類いの幻術を仕掛けたのだろう! オレはイズナの言う通りに行動した……何の疑問も抱かずにな!」

「い、イズナ……! 貴様はどこまで堕ちれば!」

 

 何処かでこの会話を聞いているだろうイズナにアカネはありったけの怒りをぶつける。だが、当のイズナは何の痛痒も感じずにマダラを操り攻撃を繰り返していた。

 

「すまぬ……。兄であるオレがイズナを止めるべきだった。オレが不甲斐ないばかりにお前に、柱間に、木ノ葉に、世界に迷惑を掛けてしまった……。オレがあの時イズナを止める事が出来ていれば……!」

 

 マダラの中には後悔が溢れていた。全ての元凶は自分、そういう思いがひしめいているのだ。

 自分がイズナを止めてやる事が出来ていれば。そうすれば全ては上手く行っていたはずだと。柱間とヒヨリと自分。そこにイズナや扉間も加わり、更に自分達の家族が増えて行き、最後には多くに見守られて穏やかに終わる。そうなるはずだった。

 だと言うのにこれだ。何が三忍だ。何がうちは最強だ。何が伝説の忍だ。忍としての締め括りを失敗した己が誇れる事などあるわけがない。

 

「違う! お前が悪いわけがない! お前はイズナを誰よりも想っていた! イズナの為にお前は憎しみを捨てて平和な世界を作ろうと努力した! 私たちはその切っ掛けに過ぎない! それを理解せずに自分勝手な怒りをぶつけてくるイズナこそが!」

 

 イズナこそが全ての元凶。マダラの想いを踏みにじり、全てを自らの思い通りに進めようとする。そんなイズナが元凶でなくて何だと言うのか。

 

「……そう言ってくれるな。イズナの想いはオレにも分かる。あいつは、オレよりも、誰よりも家族を、友を愛していた。だから許せなかったのさ。支払った犠牲に対して得られたモノの小ささに……」

 

 大切な兄弟と、大切な友や仲間たち。それらが死して、その憎しみや恨みを我慢し耐えて、そして得られたのは完全には程遠い僅かな平和。

 その平和もすぐに崩れる砂上の楼閣、少なくともイズナにはそう見えていた。

 

「戦乱の世から、僅か数十年であの里に至った……。それがどれ程の事か、イズナには理解出来ないのか……」

 

 様々な世界の知識や常識を知っているアカネにはそれがどれだけ途方もない事か理解していた。

 世界の流れを変えるという事は非常に困難な道のりだ。長い年月を掛けて徐々に徐々に人々の意識を変えて行き、そうして何百年何千年と掛けて辿り着ける。それが平和な世という物だ。

 だと言うのに、僅かな時間で得た結果を見て見切りをつけて、全てを幻術の中に落とそうとしているイズナはアカネにとってただの我が侭な子どもにしか見えなかった。

 

 確かに完全な平和は到達しようがないが、それでも幻術でそれを強制しようなど間違っている。

 

「オレだって、あの里が尊い物だと理解している。それをもっとイズナに語るべきだった……」

 

 いや、マダラは語らなかったわけではない。ただ、完全な平和という夢物語の可能性を見つけてしまったイズナがそれを理解するのを拒んでしまったのだ。

 イズナがあの古文書を見つけなければ、そしてうちは一族に伝わる石碑を曲解しなければ……話はまた変わっていたかもしれない。

 

「マダラ……」

「……話を戻すぞ。とにかく、オレはイズナに言われるがままに柱間と戦った。それにはある理由があった」

 

 そう、イズナがマダラを柱間と戦わせたのはただ千手憎し、木ノ葉憎しだからではない。

 全ては千手柱間の細胞を手に入れる為だったのだ。

 

「木遁を得る為にか!?」

 

 アカネはその白眼と、そして持ち前の感知能力で疾うの昔に理解していた。

 マダラの胸に柱間の細胞が埋め込まれている事に。だからこそマダラが木遁忍術を使用しているのだろう。

 

「いや違う……輪廻眼に目覚める為にだ!」

「なっ……!」

 

 今日一日で何度驚いただろうか。アカネも今までの人生でそう経験のない事だ。そんなアカネを他所にマダラは全てを説明していく。

 輪廻眼。それはかつて六道仙人が開眼したと言われる伝説の瞳術。そして輪廻眼は何が要因となって開眼するかは全く解明されていなかった。

 突然変異として現れるという説もあり、少なくとも血継限界の様に遺伝で受け継がれている物ではないとされていた。

 

 だが、実際は写輪眼の行きつく先が輪廻眼だったのだ。そしてイズナはうちは一族秘伝の石碑を読み解いてその開眼方法を見つけたのだ。

 石碑にはこんな文があった。“一つの神が安定を求め陰と陽に分極した。相反する二つは作用し合い森羅万象を得る”。

 うちはと千手。それは両方とも六道仙人の直系の子孫であり、その力をそれぞれ受け継いでいる一族。

 陰と陽。うちはと千手。二つの力を手に入れたモノが森羅万象を得る。そうイズナは解釈したのだ。

 

 そして……最強の千手の力を手に入れるべく、イズナはマダラと柱間が闘う様に仕向けたのだ。

 

 その死闘は柱間の勝利で終わったとされている。だが、それは実は誤りであった。

 当時の柱間とマダラの実力は完全に互角。いや、九尾という最強最悪の尾獣を用意していたマダラが有利であった。

 だが実際に勝ったのは柱間だ。それはイズナがマダラにわざと負けるように命じていたからだった。

 ここで勝つと柱間以上に面倒な日向ヒヨリが出てくるだろう。そう予想していたイズナはマダラに戦闘中柱間の細胞を不自然の無い様に手に入れさせ、その上でわざと負けさせたのだ。

 

 この時、柱間は確実にマダラに止めを刺していた。だが、マダラはある幻術にて柱間の目を欺いていたのだ。

 それがうちは一族に伝わる幻術・イザナギである。このイザナギもまた別天神に劣らぬ凶悪な幻術だ。

 本来幻術とは現実ではなく文字通り実体のない幻覚を見せる術だ。だがイザナギは現実に干渉するという幻術の枠を超えた幻術であった。

 

 他者ではなく自身に掛けるという幻術で、不利な事象を「夢」、有利な事象を「現実」に変えるというまさに究極の幻術。

 しかも時間差で術を発動することも可能であり、これによってマダラは柱間に殺されたという現実を書き換えることで表向きには死亡したように装ったのだ。

 ただし、やはり強大な力を持つ幻術ゆえに代償はあり、使用した場合必ず失明するというリスクがある。一度の使用につき一つの目を失明するので、他人の写輪眼を得ない限り二度しか使えないという幻術であった。

 

 そうしてマダラは、いやイズナは千手柱間の細胞を手に入れた。それをイズナは自身とマダラの体へと移植した。全ては輪廻眼を得る為に。

 だが――

 

「だが、それでもイズナは輪廻眼に目覚めなかった……!」

「何だって? じゃあ輪廻眼に目覚めたのはお前だけと言う事か?」

 

 そう、イズナは輪廻眼に目覚めなかった。輪廻眼に目覚めたのはマダラのみ。しかも寿命によって死ぬ間際になってようやくだ。

 それを見たイズナは自分が死の間際になっても輪廻眼に開眼する事はないと悟った。自分よりも優秀な兄が死の間際になってようやく開眼した物を、自分が生きている内に開眼する事はないと考えたのだ。

 うちはの肉体に千手の力を加えても自分は輪廻眼に目覚める事はない。ならばどうすればいい? 考えたイズナは……兄の細胞すら自分の体へと移植したのだった。

 

「柱間と、お前の!?」

「そうだ……オレと柱間。うちはと千手、二つの一族最強の細胞とチャクラ。それらを取り込んだイズナは……」

 

 輪廻眼に開眼したのだ。まさにイズナの執念が産み出した産物であった。

 そうと言うのも輪廻眼の開眼条件をイズナもマダラも真に理解していなかったからだ。

 真に輪廻眼に開眼するにはある特殊な条件がある。それが、六道仙人の息子であるインドラとアシュラ。その二人の転生体のチャクラを一つにするという途方も無く可能性の低い条件だった。

 

 インドラとアシュラは互いに六道仙人から受け継いだ力がある。インドラは仙人の眼《チャクラと精神エネルギー》を、アシュラは仙人の肉体《身体エネルギーと生命力》を。それらを一つにするとどうなるか。そう、六道仙人そのものになるだろう。

 つまりインドラの転生体であるうちは一族の者――この場合うちはマダラ――が、アシュラの転生体――この場合千手柱間――のチャクラを得る事で初めて輪廻眼は開眼するのだ。

 そこまでして初めて六道仙人に近付く事が出来るという訳である。輪廻眼を開眼した者は六道仙人を除きマダラが初めてだ。それほど困難な条件だったのだ。

 

 そう、つまるところイズナは……インドラの転生体でないイズナは本来なら輪廻眼に目覚める事は出来ないのだ。

 だがそれをイズナは執念で乗り越えた。その身にインドラの転生体であるマダラの細胞(チャクラ)とアシュラの転生体である柱間の細胞(チャクラ)を取り込む事でその条件を満たし、そして本来なら開眼するはずもない故に起こった途方もない激痛に耐えて、とうとう輪廻眼に開眼したのだ。

 

「なるほどな……だが、それでも解せない事がある」

 

 マダラの説明を戦いながら聞いたアカネは全てに納得する。マダラが裏切っておらず、そして何のために柱間と戦ったかを。

 途方もない話故に動揺はしたが、それでも筋が通っており理解出来る話だ。だが、それでも解せない点が一つだけあった。

 

「何故イズナは今も生きている(・・・・・・・)?」

 

 そう、それが最後に残る疑問だ。イズナはマダラの弟であり、当然マダラよりは年下だ。

 だがそれでもイズナが今も生きているとしたら百に近い高齢となる。生きているだけならばまだ納得も出来るが、このマダラをこれほど操れる程の力を保ったままとなると納得が行かない現象だ。

 この世界は戦乱の世が続いていた為に人間の平均寿命は短い。それは戦争で早く死んでしまうのが原因だが、それ故にこの世界の人間の最大寿命もまた低くなっているのだ。

 長く生きる事がなく、医療技術なども完全に発達しているとは言い難い世界だ。老いが早いのは当然の話となる。戦乱から離れて医療技術が発展し続け食生活が安定した時代が長く続けば自然と寿命も延びるだろうが、それは先の話だ。

 

 とにかく今の世で八十まで生きれば長寿であり、そして老いによって衰えるのもまた早い。三代目火影である猿飛ヒルゼンは全盛期の半分の実力もないだろう。

 それはアカネも同じであり、かつてヒヨリとして最期に戦った時は全盛期と比べて見る影もない程だった。

 そして老いとは全ての存在に平等に訪れる現象だ。イズナもまた同じ。どうにか今も生き延びていたとしても、その力は全盛期とは程遠いはずなのだ。

 

 その謎に、マダラは更なる驚愕の真実を語った。

 

「イズナは一度死んだ……そして蘇ったのだ。オレの輪廻眼の力、輪廻天生でな……」

 

 輪廻天生。輪廻眼を持つ者が使える多くの能力の一つであり、他人を生き返らせる事が出来る転生忍術。

 砂隠れのチヨが使用していた己生転生(きしょうてんせい)と同じ転生忍術だが、己生転生と違い肉体が滅びた者でも蘇生でき、死から然したる時間が経過していなければ一度に多くの者を生き返らせる事も出来るという瞳術だ。

 もっとも、己生転生と同じく使用した術者はその命を失う事となるのだが……。

 

「だがそれでも若返るわけではないだろう!?」

 

 そう、例え生き返ったとしてもそれは転生とは違って元の肉体で蘇るだけだ。つまり元の老人のままだと言う事になる。

 だが輪廻眼はその理屈すら覆す力を持っていた。輪廻天生にて蘇ったイズナは全盛期の体で復活していたのだ。

 

「そして、輪廻天生の反動で死んだオレを穢土転生にて復活させたのだ……」

 

 それが全ての真相であった。穢土転生で復活したマダラは別天神の影響から外れており、正気に戻ってイズナを説得した。

 だが輪廻眼を開眼し、更に生前のマダラの輪廻眼を手に入れたイズナにマダラの言葉は届かなかった。

 夢で見るしかない完全なる平和が後一歩の、手を伸ばせば届く距離にまで近付いているのだ。今更マダラが何を言おうともイズナがそれで止まる訳がなかった。

 

 老いてなお厄介な日向ヒヨリを戦争をコントロールし三尾を操る事で排除し、全ての準備が整うまで闇に潜んで焦らずに計画を進めていく。

 若さを取り戻し、輪廻眼を手に入れた事で誰よりも強く、六道仙人に近しい存在となったイズナに焦る理由はなかったのだ。

 すでに計画は最終段階に入っている。例え日向ヒヨリの転生体であるアカネがいようと、木ノ葉がどれだけ強国となろうと、全ての忍里が手を組もうと、それでどうにかなる段階ではない。

 全てはイズナの手の上に集まっているのだから。

 

 




 真相回。詰め込み過ぎたかも。
 イズナの万華鏡は捏造設定です。扉間の、あれほどの加具土命を見た事がないという台詞からして扉間は加具土命を見た事がある。そして万華鏡写輪眼は開眼者が少ない。以上の事からイズナの万華鏡が天照と加具土命だと予想して捏造しました。
 そして別天神に関しても同様です。原作では永遠の万華鏡写輪眼に目覚めると新たな瞳術にも目覚めるという説明がありましたが、実際に永遠の万華鏡であるマダラとサスケを見ても新たな瞳術に関しては情報が全く分かりません。
 もしかしたらこれは説明していたイタチの嘘かもしれないし、新たな瞳術とは完成体須佐能乎の事なのかもしれません。ですがこの小説ではマダラを操れる様にする為にイズナに別天神を開眼させました。
 初めからイズナに別天神を覚えさせていなかったのは、イズナの万華鏡が別天神なら既に柱間やヒヨリに使っているだろうし、マダラも永遠の万華鏡を手に入れるという提案の時にもっと警戒して承諾しない可能性もあったからです。
 なお、輪廻眼の輪廻天生で若返って生き返ることが出来るのも半分は捏造ですが、原作マダラが元々長門の輪廻天生で復活する予定だったようなので、恐らく可能だと判断しました。じいさんの体で復活しても意味ないですしね。





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