どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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NARUTO 第二十三話

 不死不滅。致命傷を負っても瞬く間に元に戻ってしまう化け物大蛇丸が己を称する言葉だ。

 だが実際に大蛇丸は完全な不死不滅という訳ではない。本体である巨大白蛇を殺せばそれで一応の死を迎えるだろう。

 アカネから大蛇丸の正体を聞いていたサスケも、本体を倒す事が大蛇丸を倒す事に繋がると理解している。問題はその本体をどうやって探し出せばいいかだ。

 サスケの写輪眼では大蛇丸の肉体の奥深くに潜むその白蛇を見抜く事は出来ない。なのでどうやってか引きずりだすか、肉体もろとも本体を滅する必要がある。

 問題は真っ二つにしたというのにその本体の白蛇が全くの無傷だろうという事だ。胴体を薙いで駄目なら頭部か、それとも心臓付近か、はたまた下半身か。

 とにかく見当が付かないので手当たり次第に攻撃するしかない。そう判断したサスケは、全力を出す為に自身に課せられていた修行の枷を解く事にした。

 

「……それは」

 

 サスケの行動を見て大蛇丸はまさかと思う。この状況でそんな物を着けていたのかと。

 そう、サスケが解いた枷。それは……修行の為に常に着けさせられていた高重量の重りであった。

 サスケが両手首と両足首に着けていたその重りを放り捨てる。重りが地面に落ちた時の重量感溢れる音と、柔らかい土が減り込む見た目によりその重りがどれ程の物かは想像に難くない。

 

「あなた……そんな物を着けて私を倒すつもりだったの?」

 

 本気で舐められたものね。そう怒りを顕わにする大蛇丸に対してサスケは平然と返す。

 

「修行中に攻め込んで来た貴様らが悪い。……だが、お前には少しだけ感謝している」

「……どう言う意味かしら?」

 

 サスケの言葉の意味が理解出来ない大蛇丸。なぜわざわざ感謝をするというのか。

 その意味をサスケは言葉と共に身を持って教えてやる事にした。

 

「おかげで仲間には試せない術が思う存分使えるんでな!」

「ッ!?」

 

――速い!――

 

 重りを外したサスケの速度は大蛇丸の予想以上だった。

 地を蹴って舞った土煙を残し、サスケは瞬速にて大蛇丸の背後を取る。

 だが大蛇丸も然るもの。この程度の速度ならば予想以上であっても予想外ではない。対応が遅れたのは事実だが、対応出来ない訳ではなかった。

 

――水遁・水陣壁!――

 

 チャクラを水に変化させ、術者の口から水を出す事で水の壁を作り出す術だ。熟練者になると術者の周囲360度に渡って水の壁を作り出す事が出来る。

 火の性質変化を持つサスケを相手に風の性質変化で防御する訳にも行かず、それ故に選んだのが水の性質変化による防御術だ。サスケの速度に驚愕しつつも、すぐに対応して術を選べるのが大蛇丸が歴戦の忍という証拠だろう。

 

 だが、水陣壁を見たサスケは体術ではなく忍術へと攻撃方法を切り替える。

 

――火遁・豪火滅却!――

 

 水の性質変化に対して火の性質変化を用いる。それは定石とは言えないどころか完全な悪手だ。

 だが、性質変化の相性はあくまで有利不利の話であり絶対ではない。水を掛ければ火は消えるが、森を焼き尽くす劫火に多少の水を掛けた所でまさに焼け石に水だろう。

 つまるところ、サスケは強引に水陣壁を突破しようとしているわけである。

 

 サスケの口から放たれた豪炎は大蛇丸の水陣壁を蒸発させ、そのまま大蛇丸自身も焼き払う。

 だがそれでサスケの攻撃は止まらない。これくらいで死ぬ相手ならばとっくに殺していると理解しているからだ。

 水陣壁が蒸発する際の水蒸気を利用してサスケはある仕掛けを施し、そして厄介な水陣壁が無くなった瞬間に更なる追撃を放つ。

 

――千鳥!――

 

 口寄せした苦無に千鳥を流し、その切れ味を圧倒的に高めて複数本投擲する。

 その千鳥苦無は岩すら貫通する威力となって焼け焦げた大蛇丸に命中。その身に幾つもの穴を作り出した。

 頭部に二つ、胴体に四つ、両手足に二つずつ。完全に即死のダメージだ。全身を攻撃したのは本体にダメージを与える確率を増やす為である。

 だが――

 

「あははははは! 残念ねサスケ君!」

 

 ボロボロとなった肉体の口から新たな大蛇丸が吐き出される。まさに不死身を思わせる再生力だ。

 いくら攻撃しても無意味の如くに復活する様を見せられ続ければ心が折れそうなものだ。だがサスケはそんな大蛇丸の不死性を見ても果敢に攻め続けた。

 

――千鳥千本!――

 

 針状に形態変化させた千鳥をその名の如く無数に投擲する術だ。

 これは致命傷を与える為ではなく、大蛇丸の点穴を狙った攻撃だ。点穴を突く事でその戦闘力を奪い去るつもりなのだ。これはサスケの写輪眼が点穴すら見抜けるまでに至ったからこその術である。

 だが――

 

「無駄よ。私の点穴はそこではないわ。日向アカネならばともかく、あなたでは私の真の点穴を見抜く事は出来ないわね」

「ち……」

 

 全身に刺さった千鳥千本を何の痛痒にも感じずにそう語る大蛇丸を見てサスケは舌打ちをする。

 いくら点穴を見抜ける様になったとはいえ、その辺りは白眼の十八番だ。流石に写輪眼ではこれ以上に大蛇丸の奥深くを見抜く事は出来ないでいた。

 いや、写輪眼で点穴を見抜ける時点で十分なのだが。何せ白眼の持ち主でさえ点穴を見抜ける者は稀なのだから。

 

 ここでサスケは大蛇丸の言葉から、アカネから聞いていた大蛇丸の弱体化について思いだした。

 本体である白蛇に直接チャクラの針を埋め込む事で、その点穴を封じ込め続けるという性質の悪い仕置きをアカネは大蛇丸に施していたはずだ。

 だがこの大蛇丸は弱体化しているようには到底思えない。いや、これで弱体化していると言うのだろうか。それならば流石は二代目三忍となるのだが。

 

「……お前、アカネの封印はどうした?」

「封印? ああ、あれね。私がいつまでもあんな術で封じられていると思うのかしら? とっくの昔に解除させてもらったわ」

 

 サスケにはどうやったのかの見当は付かないが、どうやら弱体化はとうに解けているようだ。

 大蛇丸がチャクラの針を取り除いた方法は単純だ。チャクラそのものを吸収したのである。これは大蛇丸の部下にそういう特殊能力を持つ者がいたからこその回復手段だった。

 尤も、大蛇丸自身すぐにその発想に至らなかったからこそ一度は綱手に助けを求めたのだが。人間窮すると思考が纏まらないものである。

 

「そうか。じゃあこれで全力って事か。やっぱり大した事はなさそうだな」

「……まあそうね。いつまでも舐められているのも癪だし、ここは挑発に乗って上げようかしら!」

 

――風遁・大突破!――

 

 大蛇丸が叫びと共に口から暴風を解き放つ。だがこれは攻撃ではなく目晦ましの為の術だった。

 その証拠に大突破はサスケではなく地面に向けられていた。それにより発生した膨大な土煙は周囲を覆い隠し視界を零にしてしまう。

 

「無駄な事を!」

 

 土煙で視界が遮られていようとサスケには関係ない。サスケの写輪眼はチャクラを色で見分ける事が出来る。それは視界が遮られていてもある程度は判別する事が出来るのだ。

 だが大蛇丸は土煙の中に自らの脱皮体を複数配置していた。この脱皮体には大蛇丸のチャクラが残されており、それによりサスケは大蛇丸の本体がどれなのか判断が出来ないでいた。

 

「ちっ!」

 

 風遁の性質変化を有していないサスケにこの土煙を掻き消す手段は少ない。

 いっその事全てを焼き払ってやろうかと思うが、本体が土煙の中にいるとは限らないので無駄撃ちをしてチャクラを消費をする訳にも行かない。

 一旦は土煙から離れて様子を見る。そう判断したサスケはその場から飛び立ち土煙から離れて木の枝に着地する。

 

 そして周囲を見渡し、写輪眼にてあらゆる物を注意深く観察する。そこでサスケは大蛇丸のチャクラを持ち、尚且つ動く物体を発見した。

 他の脱皮体は微動だにしていない事から、これが本体であると判断したサスケは即座に攻撃を放つ。

 

――雷遁・電磁投射の術!――

 

 導線を巻いた特殊な苦無、それを複数本投擲して雷遁により電流を流す。そうする事で苦無は電磁石と化すのだ。そして雷遁の巧みなコントロールにより磁石苦無同士を空中で引き寄せるという、サスケとアカネが開発したオリジナルの術が電磁投射の術である。

 電磁石は電気を流した時に磁力を発する。つまり通常は普通の苦無と殆ど変わらない。投擲した時に雷遁を籠めておき、雷遁の強弱によって磁力をコントロールし苦無同士を引き寄せ合わせる。擬似的な磁遁とも言えるだろうか。

 

 最初に投擲した磁石苦無が大蛇丸へ向かうが、それはあっさりと避けられてしまう。だがそれで問題はなかった。すぐに投擲された新たな磁石苦無が最初に投擲された磁石苦無を引き寄せ、後ろから大蛇丸を狙い撃つ。

 前方から迫る苦無に集中すればするほど後方の苦無に対しては一度避けた事もありその存在を感知する事も出来なくなるだろう。しかも互いに引き寄せあう性質により途中から苦無の速度が上がるのでその為に目測を見誤る事もある。

 

 確実に命中した。そう思っていたサスケは次の瞬間に驚愕する事となる。

 

「なに!?」

 

 不意を突いたはずの二段構えの攻撃が完全に躱されたのだ。

 しかも後ろを見る事もなく後方から迫る苦無を掴み取るという芸当も披露してだ。

 

「あれを初見で見抜いただと……!?」

 

 サスケ自身、何も知らなければこの術を見抜く事は出来ないだろうという自覚があった。それだけ特殊で意表を突いた攻撃だと言えよう。

 しかも土煙により視界がほぼ零の状態で、前後から迫る高速の苦無を避けたのだ。一体どういう絡繰なのか。

 

「無駄よサスケ君……今の私の感知能力にはあの程度の攻撃は通用しないわ」

 

 大蛇丸がそう呟くと同時に土煙は霧散していき、そして大蛇丸の全貌が顕わになった。

 

「これは……!」

 

 そこにいたのは大蛇丸だ。だが、その見た目は大きく変貌していた。

 頭部には4本の角が生えており、全身の皮膚はまるで爬虫類の鱗のように変質している。そして両目の周囲には隈取りが現れていた。

 その見た目の変貌、そして大蛇丸の言う感知能力。そこからサスケは大蛇丸の変化の答えに行きついた。

 

「まさか……仙人モードか!」

「知っていたのねぇ。そう、これが私がこの三年で得た力よ! 完全な仙人モードに至った私を相手に勝てるかしら!?」

 

 そう、この三年間で大蛇丸は仙人モードを会得していたのだ。

 大蛇丸は実験にて自然エネルギーを体に取り込む特殊な性質を持つ一族を分析していた。

 そこから大蛇丸はその一族の秘密を探り当て、そして龍地洞を発見したのだ。だが大蛇丸はその時はまだ仙人へと至る事は出来なかった。仙人モードに耐えうる肉体を持っていなかったのだ。

 だがこの三年という年月は、大蛇丸が自身の肉体を強化するには十分過ぎる時間だった。そして再び訪れた龍地洞にて、大蛇丸はとうとう仙人モードを会得したのだ。

 

「ふん! 見た目が人間からより蛇に近付いただけだろうが!」

 

 口ではそう言うが、サスケは仙人モードの恐ろしさをアカネの口から説明されて実感はなくとも理解はしていた。

 事実、先の攻撃を完全に見切り躱しているのだ。油断しよう物なら一瞬でやられてしまう。そう認識してサスケは全神経を集中させて写輪眼にて大蛇丸を睨みつける。

 あらゆる動きを見逃してなるものか。仙人となった大蛇丸を最大限に警戒してのその判断は、それ故にサスケを窮地へと陥れてしまった。

 

「ふふふ。既に私は蛇じゃないわ……。完全な仙人の力を手にした私は蛇を脱し、龍へと至ったのよ!!」

 

――仙法・白激の術!――

 

 大蛇丸がその口から黒い球を持った白い龍を吹き出す。龍は黒い玉を中心に渦巻いて行き、そして炸裂した。

 

「――ッ!?」

 

 何が起こっても対応出来る様に注意深く写輪眼でその龍を見ていたサスケに対して、その術は最大限に効果を発揮した。

 炸裂した龍は凄まじい光と音を発したのだ。その光量と轟音に思わずサスケは目蓋を落とし目を瞑り、そして耳を塞いでしまう。

 咄嗟にその場を離れようとするが、骨すら軋むような轟音にサスケの感覚は麻痺してしまいまともに動く事すら叶わなかった。

 

 激しい光で視界を奪い、轟音で聴覚を奪い、空気振動で感覚を麻痺させて動きを奪う術、それが白激の術だ。

 この状況で動く事が出来るのは大蛇丸のみだ。蛇の角膜で視界を閉じることで光を無視し、体内を液化するという大蛇丸の実験体から得た能力で音と振動に柔軟に耐える。

 白激の術をまともに受けてしまった時点でサスケに対処する手段は皆無となった。当然この大きな隙を大蛇丸が狙わない訳が無い。颯爽とサスケに近付いて行きその口を大きく、サスケを飲み込める程に大きく広げてそのままサスケを体内へと捕らえようとする。

 体内にてサスケの動きを麻痺させ、ゆっくりと意識を朦朧とさせ、そして最後にはその肉体を乗っ取る。これで大蛇丸は今までで一番強く美しい肉体を手に入れる事が出来るだろう。

 

「頂いたわサスケ君!! ――ちぃっ!?」

 

 だがそうはならなかった。後一歩の所でサスケの肉体を飲み込もうとしていた大蛇丸は、突如として身を翻しその場から離れる事となったのだ。

 何故千載一遇の好機を逃したのか。その理由はサスケと大蛇丸の間を塞ぐように振り下ろされた巨大な剣が物語っていた。

 

「ここに来て邪魔が入るとは……麗しい兄弟愛ねぇ、うちはイタチ!!」

「……」

 

 そう、それが大蛇丸の邪魔をした男の名。うちはサスケの兄にしてうちは最強の男。うちはイタチである。

 

「ぐ、ぅ、な、何が……」

 

 白激の術自体は既に消えているが、その効果がまだ残っているサスケには現状の把握が出来ないでいた。

 そんなサスケの傍にイタチは降り立ち、サスケを守る様に大蛇丸と対峙する。

 

「まるで見ていたかの様に完璧なタイミングでの登場じゃない……どうやってここが分かったのかしら?」

「あれほどの火遁が上がればな……」

「ああ、なるほどねぇ」

 

 そう、サスケが放った火遁・豪火滅却は、木ノ葉の里でサスケ以外に使用する者はイタチしかいない。そして豪火滅却は炎が広範囲に広がるので遠目からでも確認する事が出来る術だ。

 イタチはフガクの命令通りに綱手の元に赴き情報を伝え、その後に暁に対抗する為に動き出していた。

 だがサスケの術を確認した為にサスケと暁が交戦中だと判断し、弟を守る事と暁の数を減らすという名目を同時にこなせるだろうこの場へと急遽赴いたのだ。

 

 そしてタイミングに関しては大蛇丸の言う通り、見ていたからこその完璧なタイミングだった。

 暁はどのメンバーも得体の知れない能力を有する者達だ。そんな敵を相手に何も考えずに戦闘に参加し、何の情報もないままに未見の能力で一網打尽にされては堪った物ではない。

 そう判断したイタチは、サスケが優勢に戦闘を進めていた事もあってまずは大蛇丸の能力を見切る為に忍んで(けん)に回っていたのだ。

 そして白激の術の範囲外にてその効果を理解し、サスケを飲み込もうとする大蛇丸を牽制する為にサスケの眼前に須佐能乎の剣を振り下ろしたのである。

 

「これは……に、兄さん!?」

 

 ようやく視界が元に戻ったのか、傍に立つイタチを確認してサスケは驚きの声を上げる。

 

「ああ。遅くなってすまなかったな」

「くっ……!」

 

 尊敬する兄に助けられた事はサスケに二つの想いを抱かせていた。安堵と、己への不甲斐なさだ。

 超えるべき兄に助けられる。成長し強くなっても未だに兄の手の平の上に立っているに過ぎないのかと、己の不甲斐なさに情けなくなるくらいだ。

 そんなサスケを見てイタチはそれを否定した。

 

「そう嘆くな。今のはオレも初見では対応する事は出来なかっただろう……気を引き締めろよ。奴は強い」

「っ! ああ、分かっているさ!」

 

 イタチですら初見では対応出来なかったという事実は脅威以外の何物でもない。

 それは慰めにはなったかもしれないが、逆に言えば大蛇丸の恐ろしさを表している事に他ならないのだ。

 

「二対一ね……いいわよ。イタチ、あなたの肉体も十分に魅力的だしねぇ……。加減を間違えてどちらかを殺してしまってもスペアがあるというのは魅力的じゃない!」

 

 現うちは一族で五本の指に入る実力者を二人同時に相手にしても大蛇丸の余裕は崩れなかった。それだけ今の自分の実力に自信があるということだろう。

 そしてそれは驕りではなかった。真実大蛇丸はそれだけの力を手にしていた。仙人モードとはそれほどの物を秘めているのだ。

 

「ふざけやがって……! おれ達はお前なんぞの替えじゃないんだよ!」

 

 サスケは大蛇丸の不死性に対抗する為にチャクラを温存していたが、もはやそうも言ってられる状況ではなくなったと判断して全力を開放する。

 すなわち雷遁チャクラモードの発動である。仙人モードの大蛇丸は完全にサスケを上回る実力を有している。そんな敵を相手にチャクラの温存などと悠長な事を言っていられる訳もなかった。

 

「行くぞサスケ」

「ああ!」

 

 雷遁を纏うサスケと須佐能乎を纏うイタチ。うちはの兄弟コンビが狂った龍退治に挑む。

 

 

 

 先手はサスケだった。雷遁チャクラモードによる高速移動を駆使して瞬く間に大蛇丸に近づき手刀を繰り出す。

 雷遁チャクラモードは体内を走る雷が神経伝達を上げる事で高速戦闘を可能とし、その上全身を覆う雷が肉体を守る強固な鎧と化す。

 そして攻撃においても同様だ。千鳥と同じく一点に集中させた電撃によりサスケの手刀はあらゆる物を貫く矛となっている。

 

 だが、どれだけ鋭い矛だろうと当たらなければ意味はない。

 仙人モードの感知能力は桁違いだ。通常の大蛇丸ならば敢え無くこの一撃を受けていただろうが、仙人に至った大蛇丸は瞬きする間もないサスケの攻撃でさえ見切っていたのだ。

 

 紙一重でサスケの手刀を躱した大蛇丸は反撃にサスケへと拳を振り下ろす。

 その攻撃は雷速を手に入れたサスケには余裕で回避出来る速度であった。現にサスケは不敵な笑みを浮かべて余裕をもって回避している。

 

「ぐあっ!?」

 

 だが、サスケは理解出来ない攻撃によって大きく吹き飛ばされた。

 確実に避けたはずだった。大蛇丸の腕はサスケの肉体には全く触れずに通り過ぎたはずだった。それは離れていたイタチも写輪眼にて確認していた。

 

「これは……!?」

 

 経験豊富で洞察力と分析力が高いイタチにも理解出来ないその攻撃。これが仙人モードの特徴の一つ、自然エネルギーを利用した攻撃である。

 仙人モードになると自然エネルギーをその身に纏う様になる。その自然エネルギーを術者の体の一部の様に操り、対象に攻撃する事が出来るのだ。

 しかも自然エネルギーは仙人でない限り感知する事は出来ない。つまりサスケにもイタチにもこの攻撃を見切る事は出来ないという訳だ。

 

 吹き飛ばされるサスケに大蛇丸が高速で迫る。ここで一気に止めを刺そうとしているようだ。

 致命傷を与えて放置し、その後にゆっくりとイタチを相手にするつもりだろう。だがそれを黙って見ているイタチではない。

 

――八坂ノ勾玉!――

 

 イタチが写輪眼の瞳の勾玉の形をした巨大なチャクラの塊を須佐能乎から投擲する。

 これがイタチの須佐能乎の最強の遠距離忍術、八坂ノ勾玉である。その威力は凄まじく直撃すれば仙人モードですら致命的なダメージを負うだろう。

 

「くっ!」

 

 流石に危険と判断したのか大蛇丸は八坂ノ勾玉を回避する事に専念しサスケに止めを刺すのを断念した。

 やはりうちはイタチはうちはサスケ以上に危険な存在か。そう大蛇丸は判断する。

 純粋な実力ではサスケもイタチに十分追い縋っている。だがイタチは大蛇丸をして何を秘めているのか分からない何かがあった。

 今の八坂ノ勾玉もそうだ。大蛇丸が知らない術であり、その威力は計り知れない。

 大蛇丸ならば先の忍術で致命傷を受けても再生するだろうが、その再生の間に得体の知れない術で封印でもされたらたまった物ではない。

 

(やはりイタチを先に仕留めるべきかしらねぇ)

 

 そう考えていた大蛇丸にイタチが言葉を投げ掛ける。

 

「大蛇丸……かつては二代目三忍と謡われたあなたが何故そこまで堕ちた……?」

「堕ちた? 目覚めたと言って欲しいわね。そんな質問をするだなんて平和ボケした木ノ葉に住んでいるとうちはも腐っていくのね」

「かつてのあなたはそうではなかったと聞く。少なくともかつてはあなたも木ノ葉の為に命を懸けて戦っていたはずだ」

「だから言ってるでしょう。目覚めたのよ。木ノ葉の為? 下らないわ。私は私の為に生きる。猿飛先生が言っていたわねぇ。里は家族だって。愚かしい、どう言おうが所詮は赤の他人よ。そんなものの為に命を懸けて戦っていたなんて反吐が出そうよ」

 

 そう吐き捨てて大蛇丸は風に乗って眼前に落ちて来た木の葉を振り払い微塵にする。まるで木ノ葉に対する憤りを表すかのように……。

 

「私にとって忍者とは忍術を扱う者の事。全ての術を手に入れ全ての真理を理解する事が私の望み。そんな私にとって仲良しこよしのあなた達木ノ葉と一緒にいるのはうんざりだったわぁ」

「そちらの方が下らないな。例え永遠を生きたとしても全ての真理を手に入れるなど不可能だ」

「日向ヒヨリも同じような事を言っていたわね。でも、やってみなければ分からないでしょう?」

「無駄な事は止めて三代目の教えを思い出すんだな。その方が余程身の為になる」

 

 話は完全に平行線だった。大蛇丸の里への想いなど負の感情しか残っておらず、イタチの言葉など聞く耳も持たなかった。

 

「無駄だ兄さん。こいつは瞳と共に心も閉じている。何を言おうが意味はない」

 

 イタチと大蛇丸が会話をしている間にサスケは態勢を立て直し再び大蛇丸と対峙していた。

 自然エネルギーを利用した一撃は非常に強力であり、並の忍ならば一撃で即死となっている。だが雷遁チャクラを纏っていたサスケの防御力はどうにかダメージを最小限に抑えていたのだ。

 それでも復帰するのにここまでの時間を要したのだ。感知不能な威力の高い攻撃。接近戦は不利だとサスケは悟った。

 

「時間稼ぎは終わりかしら。それじゃあそろそろ行かせてもらうわよ!」

 

 イタチの会話をサスケが戻るまでの時間稼ぎと理解しつつもそれに乗っていた大蛇丸は、サスケが戻って来たのを確認してその力を発揮し始める。

 

――仙法・無機転生!――

 

 大蛇丸が周囲の自然物に自身の生命力を分け与える。それにより生体機能を持たない土や岩、鉱物に生命が与えられ、大蛇丸のコントロール化に下った。

 土遁などの忍術で操る術とはその攻撃速度も術の範囲内でのコントロールも桁が違っていた。恐るべきは仙人の術か。

 

「ちぃ!」

「っ!」

 

 だがサスケとイタチも然る者。サスケは雷遁による圧倒的な速度で躱し、イタチは須佐能乎が誇る絶対防御でその攻撃を防ぎ切った。

 しかし大蛇丸の攻撃は止まらない。サスケを追って次々と周囲の自然物が牙を剥いて攻撃を仕掛けてくる。大地にまともに降り立つ事も出来ないサスケは木々を足場として利用してその攻撃を躱し続ける。

 

「やるじゃない! 確かに命を持っている木は私にも操れないわねぇ!」

 

 そう、無機転生は命を持たない自然物に命を与えて操る術。つまり元から命を持っている木々ならば足場にするに問題はないという事だ。

 これはサスケも一か八かの賭けだった。大蛇丸の術の詳細が理解出来ていない状況だったが、大地の全てが襲ってくる状況でどうにか足場を得なければ逃げようがなかったのだ。

 木ですら操る事が出来ていれば今頃サスケは大蛇丸の餌食になっていただろう。

 

「この!」

 

 サスケは空中で大蛇丸目掛けて苦無を投擲する。だが回避しながら攻撃に転じた為か空中で姿勢が崩れ、その苦無はあらぬ方向へと飛んで行った。

 

「くそ!」

 

 姿勢が崩れたサスケに向かって大地が刃と化して迫り来る。

 

――火遁・業火滅却!――

 

 迫り来る無機物に対してサスケは火遁で応戦する。範囲の広い術で一気に無機転生を焼き尽くすつもりだろう。

 そしてそれは好手となった。無機転生で操られた自然物はサスケの火遁を受けて元の大地へと戻って行ったのだ。

 

「サスケ、オレの傍に来い!」

 

 それを見たイタチは無機転生の弱点を理解した。

 その言葉を聞いたサスケがイタチの元に戻って来た瞬間にイタチは自分たちの周囲に万華鏡写輪眼の一つを仕掛ける。

 

――天照!――

 

 天照。視界の中で焦点を合わせた空間に黒い炎を生み出す万華鏡写輪眼だ。その黒炎はけして消える事はなく、対象を燃やし尽くすまで存在し続けるという。

 封印する以外に天照の黒炎を取り除くことはほぼ不可能であり、下手すれば術者にも牙を剥きかねない強力にして危険な瞳術だ。

 その黒炎を周囲の大地に仕掛ける事でイタチは無機転生を封じ込めたのだ。

 

「なるほどねぇ。生命を得たが故に炎の熱さで大地が元に戻ってしまったのね。良い実験になったわ」

 

 そう、それが無機転生の弱点だった。生命を得た事で強力な術となったが、それ故に弱点も増えてしまったわけだ。

 

 安全な足場を得たサスケは接近戦を避けて遠距離で大蛇丸を仕留めるべく術を放つ。

 

――雷遁・電磁投射の術!――

 

 すでに大蛇丸に破られた術だが、サスケは敢えてこの術を選択した。

 大蛇丸に向けて磁石苦無を投擲。そしてすかさずサスケは上空に向けて雷光剣化により口寄せした苦無や手裏剣を無数に投擲した。

 それらを見た大蛇丸はサスケの狙いを看破した。仙人モードの感知能力が高いならば感知しようが避け切れない量の攻撃を加えようという気だろう。

 単純だが確かに効果的かもしれない。まあ、見破られなければの話だが。

 

 サスケが投擲した磁石苦無が大蛇丸の元に飛来する。瞬時にサスケが磁石苦無に籠めていた雷遁を一気に活性化させる。

 強力な電磁石と化した苦無目掛けて空中の苦無や手裏剣が一気に引き寄せられた。だが当然そうなると理解していた大蛇丸は空に向かって風遁・大突破を放っていた。

 仙術となった大突破ならばこの程度の磁力を無視して上空の苦無を吹き飛ばすだろう。後は高々一本の磁石苦無を処理するだけだ。……そのはずだった。

 

 電磁石の磁力は導線を巻いた回数と流される電流の強さによって変わる。そしてサスケが投擲した苦無には重ならないよう数十回も導線が巻かれ、その上雷遁により強力な電流が流れている。

 つまりこの電磁石は非常に強い磁力を放っているわけだ。空中に飛来していた苦無や手裏剣は当然の如く……地中に隠されていた苦無も反応して引き寄せられる程にだ。

 

「なに!?」

 

 これには大蛇丸も驚愕した。空中はともかく、地中の苦無はいつ仕掛けたのか全く理解が出来なかったのだ。

 感知能力が高まり、視界は蛇の角膜で閉ざしているので幻術で騙す事も出来ない。そんな仙人モードの自分をいつ欺いたのか。

 

 実はサスケは大蛇丸が仙人モードになる前に地面に苦無を仕掛けていたのだ。

 大蛇丸の水陣壁を業火滅却にて蒸発させた後。水蒸気で視界が遮られている隙に地面に苦無を仕込んでいたのだ。後の電磁投射の術に利用する仕込みとしてだ。

 一度目の電磁投射で仕留める事が出来れば利用するつもりはなかったが、どうやら無駄な仕込みにはならなかったようである。

 

「こんなもので!」

 

 意表を突かれた大蛇丸だがその素早い感知で咄嗟に動きその場から離れる。

 結局は苦無は大蛇丸目掛けてではなく磁石苦無目掛けて引き寄せられているのだ。つまり磁石苦無から離れれば残りの苦無も全て回避する事が出来る。

 だが、そんな弱点を術者であるサスケが理解していない訳がない。磁石苦無へと引き寄せられていた無数の苦無は突如としてその軌道を変え、大蛇丸目掛けて再び飛翔する。

 

「これは!? まさか!」

 

 大蛇丸は咄嗟に背後を振り返った。そして大蛇丸の視界に木に刺さって放電している苦無が映る。そう、サスケの磁石苦無である。

 サスケが無機転生から逃れている時に放った苦無は姿勢が崩れた為にあらぬ方向へ投擲されたのではない。この展開を狙って仕掛けていたのだ。

 更に大蛇丸を囲む磁石苦無がそれぞれ電撃を放ち大蛇丸を囲む電撃の壁、電磁結界を作り出す。これで逃げ場はない、結界を抜け出ようとすれば強力な電撃を浴びてダメージを負い、生き延びても電撃により動きを硬直させる。これぞ電磁投射包囲の陣である。

 

「下らないわね! 所詮はたかが苦無! 仙人モードの私に効きはしないわ!」

 

 仙人モードは自然エネルギーにより身体能力が向上し防御力もまた高まっている。苦無程度では多少の傷にもならないだろう。こうして回避していたのはまともに受けるのも癪だという大蛇丸の忍としての矜持みたいなものだ。

 水遁か風遁で防ぐ事も考えたが、水遁では雷遁の力で電気を帯びて下手をすれば自分が巻き込まれる恐れもあり、風遁は確実に火遁による追撃を誘発するだけだろう。

 苦無程度で多少の傷を負ったとしてもすぐに再生する事が出来る。逆に全てを防ぐ事で仙人モードの力をより見せ付ける事になるだけだろう。

 そう判断した大蛇丸は迫り来る苦無をその身で受け、そして弾き返した。

 

「ふん、所詮はこの程度よ。あなたの忍術では私は殺せないわ」

 

 大蛇丸に刺さったのはたった一本の苦無だけだった。最初に投擲した磁石苦無である。雷遁により切れ味が増していたのでこれだけが突き刺さったのであろう。

 残りの苦無は大蛇丸に何の痛痒も与える事なく大地に転がっている。サスケが再び電磁投射の術を使用すればまた再利用出来るだろうが、それも結局は無意味となるだろう。

 勝ち誇る大蛇丸。そんな大蛇丸に対してサスケは続けて攻撃を仕掛けた。

 

「なら、これでどうだ!?」

 

――千鳥流し!――

 

「ぐっ!?」

 

 大蛇丸に刺さった唯一の苦無。その磁石苦無にはワイヤーが張られており、サスケと繋がっていた。それに千鳥を流し大蛇丸の体内に直接電撃を加えたのだ。

 これには流石の大蛇丸も多少のダメージと、そして電撃による一時的な麻痺を受けた。その隙を狙わない二人ではない。

 

――火遁・豪龍火の術!――

――天照!――

 

 サスケの口から龍を形取った炎が幾数も放出されて大蛇丸に襲い掛かる。

 そしてイタチもその右目に宿った瞳力・天照を使用する。天照の反動で右目から血を流し多大なチャクラを消耗するが、この機を逃す手はなかった。

 

「ぐあぁあああぁっ!!」

 

 流石の仙人モードと言えどこの連撃は、特に天照は防ぎようがなかった。

 肉体に燃え移るとその部位を切り落とさない限りは逃れる(すべ)はなく、そしてどれだけ強固な防御力をも無意味とするのが天照なのだから。

 そしてサスケは悶え苦しむ大蛇丸に更なる追撃を加える為に、空に向けて更に豪龍火を放った。

 

「はぁ、はぁ! これで、終わりだ!」

 

 手を天高く掲げるサスケ。この場の上空にはいつの間にか雷雲が集まっていた。

 木ノ葉の里の上空はマダラの須佐能乎の攻撃による衝撃で雲一つないというのに、この場だけにある雷雲にイタチが怪訝に思う。

 そしてその怪訝はすぐに理解へと変わった。そう、これはサスケの放つ術の為の前準備だったのだ。

 

「喰らえ!」

 

 麒麟。それがサスケが使用する術の名。対アカネ用に編み出したサスケのとっておきである。

 火遁の熱を大量に利用して大気を急激に暖める事で上昇気流を発生させ、積乱雲――雷雲――を作る。

 雷雲から発生する自然の力、雷。人がチャクラで生み出す雷遁とは比べ物にならないエネルギー。

 それを誘導し敵に叩き付けるという荒業が麒麟なのだ。

 

 サスケが大蛇丸と戦闘を始めてから放った様々な火遁の術に、イタチの天照。そして最後にサスケが上空に放った豪龍火の術が決め手となり、積乱雲は作り出された。

 後は積乱雲が発生させる雷を大蛇丸へと振り下ろすのみ。ここまで来ればもはやチャクラは僅かしか必要としない。術の大本は天にあるのだから。

 そしてサスケが天高く掲げたその手を振り下ろした。

 

――麒麟!――

 

 天の怒りが大蛇丸目掛けて落ちてくる。轟音が鳴り響き、その衝撃で大蛇丸付近の大地は消し飛んだ。

 

「はぁ、はぁ、どうだ……」

「凄まじいな……」

 

 麒麟の一撃にイタチも驚嘆していた。これほどの威力、そして仙人モードと同じ自然のエネルギーを利用した一撃だ。流石の大蛇丸とてただではすむまい。

 やがて砂煙が晴れ渡り、麒麟の直撃を食らった大蛇丸の姿が現れる。そこには無残にもバラバラになって焼け焦げた大蛇丸の遺体が存在していた。

 

「ようやく、くたばりやがったか……」

「……」

 

 サスケは消耗激しく、ようやく大蛇丸を倒す事が出来て安堵していた。このまま戦闘が長引けば確実に大蛇丸よりも先にサスケのチャクラが尽きていただろう。

 そうなる前に勝負を決する為に、これほどの大技を連発したのだ。だが、その甲斐は……どうやらなかったようだ。

 

「まだだサスケ!」

「……っ! くそが!」

 

 油断なく周囲を見据えていたイタチも、勝ったと思いつつも日々の修行で残心を心掛けていたサスケもそれに気づいた。

 麒麟の直撃を受けた大地が盛り上がり、そこから大蛇丸が姿を現した。……完全に無傷の状態で、だ。

 

「あはははは! 今のは危なかったわサスケ君! まともに受けていれば私でも死んでいたかもしれないわね!」

 

 そう、麒麟をまともに受けていれば大蛇丸とて危険であった。つまり大蛇丸は麒麟の直撃を回避していた事になる。

 大蛇丸は豪龍火と天照を受けた時に、その炎を目晦ましとして本体のみを地面の下へと避難させていたのだ。

 天照は触れた物を焼き滅ぼす消えない黒炎だが、天照に晒されたガワのみを切り捨てれば本体は問題ない。

 そして麒麟はそのガワを砕いたにすぎなかった。本体は悠々と地下深くに潜み、自然エネルギーを蓄えて新たなガワを作り出してこうして再び姿を現したのだ。

 

「く……」

「……」

「あら、二人とも大分消耗しているわねぇ。対して私は自然エネルギーのおかげで万全の状態よ。さて、そんな状態で私を殺し尽くせるかしらねぇ」

 

 自然エネルギーは人間が持つチャクラとは比べ物にならないほど膨大であり、それを吸収出来る仙人は消耗してもすぐに回復する。

 本人の純粋なスタミナが切れない限りは戦い続ける事が出来るのだ。これも仙人モードの強みであった。

 そして大蛇丸のスタミナは蛇の如くに多くこの戦闘で尽きる事はまずないだろう。つまり、大蛇丸の衰弱は有り得ないという事だ。

 

 対してサスケとイタチは既に半分以上のチャクラを使い果たしていた。

 大技を連発し、雷遁チャクラモードというチャクラの消費の激しい術を発動し続けているサスケは持って後数分でチャクラが尽きるだろう。

 イタチも天照に須佐能乎というチャクラの消耗が激しいだけでなく、肉体への負担も激しい反動の大きな術を連発しているのだ。その消耗は計り知れなかった。

 

「サスケ……ここから先はオレだけでやる」

「なっ!? 兄さんを置いてオレだけ逃げろって言うのか!」

 

 イタチの発言はサスケには到底受け入れられない物だ。そんな事を言い出すイタチが信じられず、サスケは未だに一人前に扱ってもらえない事にイタチに苛立ちすらした。

 

「言う事を聞け。もうオレ達でどうにかなる相手ではない」

「だったら兄さんが下がってろ! オレが食い止めておくから援軍でも何でも呼んで来ればいい!」

 

 イタチの言葉は忍としては正しく、それはサスケにも理解出来る。

 だがそれでも自分を犠牲にしてサスケを逃がすというイタチの言葉にサスケは反発する事しか出来なかった。

 そんなサスケにイタチはある瞳術を発動した。

 

――月読(つくよみ)!――

 

 月読。イタチの左目に宿る万華鏡写輪眼である。その効果はイタチの左目と目を合わせた対象に幻術を仕掛けるというもの。

 だがただの幻術ではない。月読は幻術内の時間を引き延ばし、術者の思う通りの幻術を対象に見せる事が出来るのだ。

 現実では一瞬だが、幻術内では何十時間にも引き伸ばされた時間を拷問や対象が見たくないトラウマなどを見せつけ続け、そして発狂させてしまうという恐ろしい術だ。

 それをイタチはサスケに使用した。

 

「ぐっ!?」

 

 一瞬。現実時間ではほんの一瞬だが、サスケはイタチが作り出した幻術世界にてそれ以上の時間を過ごした。

 そして現実世界に帰還したサスケはイタチを睨みつけ……イタチを無視して大蛇丸に向かって行った。

 

「おおおお!」

 

 それは大蛇丸には兄に逆らう青い少年の無謀な突進にしか見えなかった。

 

「くくく。お兄ちゃんの言う事を聞いていれば、もしかしたら逃げられたかもしれないのにねぇ」

 

 雷遁チャクラモードによる高速移動で大蛇丸に接近したサスケは鋭い手刀を繰り出す。

 だが感知能力が高まっている大蛇丸にその攻撃は通用しなかった。紙一重で手刀を回避した大蛇丸はサスケに反撃として自然エネルギーによる攻撃を叩きこむ。

 

「ぐあっ!?」

 

 サスケとイタチが揃ってから始まった攻防を焼き直したかの様にサスケは感知出来ない攻撃を受ける。

 だが若干結果は変わっていた。最初の攻防は吹き飛ばされたサスケだったが、今度は大地に叩きつけられたのだ。

 大蛇丸がサスケを逃がさない様に自身から離れない位置に留めておこうとしたのだ。だがサスケは雷速の反応で大地を蹴り大蛇丸から遠ざかっていく。

 それを逃がすまいと追う大蛇丸だが、それを黙って見ているイタチではない。

 

――八坂ノ勾玉!――

 

 咄嗟に放った八坂ノ勾玉にてイタチは大蛇丸を牽制する。

 

 

 

 

 

 

 八坂ノ勾玉によるイタチの牽制に大蛇丸はサスケから離れ、そしてイタチに向けて口を開いた。

 

「まるでデジャブね。でも最初との違いはやはりあなた達の消耗。もう万華鏡を使う事も厳しいのではなくて?」

「大蛇丸、かつての自分を思い出せ。お前にも木ノ葉の為に命を懸けて戦っていた頃があったはずだ。三代目の教えを思い出すんだ」

「……はあ、また下らない説法? いい加減聞き飽きたわ!」

 

 大蛇丸は目の前に落ちてきた木の葉を振り払い叫ぶ。

 大蛇丸はかつての友である自来也にも似たような言葉を言われた事を思い出して辟易としたのだ。

 そんな大蛇丸に対して態勢を立て直したサスケが辛辣な言葉を放った。

 

「無駄だ兄さん。こいつは瞳と共に心も閉じている。何を言おうが意味はない」

「……?」

 

 ここで大蛇丸は何かがおかしい事に気づく。だがそんな大蛇丸にお構いなしにサスケは電磁投射の術を放った。

 

「何度も意味のない事を!」

 

 再び大蛇丸に迫る無数の苦無。だが大蛇丸とて馬鹿ではない、何度も同じ術を喰らえば対処法も編み出す事くらい出来る。

 無機転生にて大地に命を与え、そして周囲にある磁石苦無を取り除く。これで結界は解除された。後は眼前の苦無を処理するだけだ。

 眼前の苦無に対しても大蛇丸は無機転生にて対処した。水遁や風遁よりはこちらの方が敵に利用されない分マシだろうという判断だ。

 

――火遁・業火滅却!――

――天照!――

 

 サスケとイタチは無機転生が苦手な火遁を放ち、再び無機転生を封じ込める。

 そしてサスケは火遁により上空に発生した雷雲を利用して再び麒麟を放った。

 だが大蛇丸は麒麟発生を感知して既に地中深くに避難しており、麒麟はまたも不発となってしまう。

 

「無駄よ! 一度通用しなかった術が二度も三度も通用するわけないでしょう!」

 

 同じ事を繰り返すサスケとイタチに大蛇丸が苛立ちを見せる。

 そんな大蛇丸にサスケが接近戦を仕掛け、それを自然エネルギーの力で反撃し、だが追撃はイタチの八坂ノ勾玉にて防がれる。

 

「こ、これは……!?」

「大蛇丸。お前は既にオレの術中に嵌っている。かつての自分を思い出せ。お前にも木ノ葉の為に命を懸けて戦っていた頃があったはずだ。三代目の教えを思い出すんだ」

「だ、黙れ! 黙れ黙れ黙れェェェッ!」

 

 叫ぶ大蛇丸の目の前に木の葉が舞い落ちる。

 同じタイミングで同じ様に落ちて来る木の葉に恐怖する大蛇丸に対してサスケが攻撃を仕掛けようとする。

 それを見て大蛇丸は電磁投射だと判断し無機転生を発動させようとするが、その術は火遁・業火滅却であった。

 

「ぎゃああああ!! こ、こんな――」

 

 こんなはずでは。大蛇丸の中に様々な想いが巡る。仙人の力を手に入れて龍へと昇華し、うちはサスケの肉体を手に入れて日向アカネを超え、そして日向アカネの肉体すら手に入れるはずだった。

 こんなはずではなかった。一体どこで間違ったというのだ。イタチがサスケの助けに来たからか? サスケに勝負を挑む時期が遅かったのか? 暁に入った事が間違っていたのか? 木ノ葉に反逆したのが間違っていたのか? 三代目の教えを無視したのが間違っていたのか? それとも……。

 大蛇丸のその苦悩には、今はまだ答えが出ないでいた。

 

 

 

 

 

 

「……これで、終わりだ。奴はこのループから逃れる事は出来ない」

「これが兄さんの言っていた……」

「そう、運命を決める術……イザナミだ」

 

 立ったまま一切の反応を見せなくなった大蛇丸の前でサスケとイタチが会話を交わしていた。

 圧倒的な力を振るい、視覚による幻術を無効化していた大蛇丸を陥れた幻術。それがイザナミである。

 

 イタチはこのイザナミを大蛇丸に使用していた。だがイザナミの使用条件は非常に困難であり、その条件の達成の為にクリアしなければならない手順をイタチは戦闘中にこなしていた。

 その為にイタチはサスケに対して月読を使用したのである。それに関してはまずイザナミの使用条件について説明しなければならないだろう。

 

 イザナミは視覚ではなく術者と対象の二人の体の感覚によって発動させる瞳術だ。

 行動の中の任意の一瞬、その一瞬の術者と対象の感覚を瞳力にて写真の様に記憶する。仮にこれをAとしよう。

 そしてAと同じ体の感覚をわざともう一度再現し、その一瞬を同じように瞳力で写真の様に記憶しA'を作る。

 イザナミはそのAとA'を重ね繋げる事によりそれまでの二つの間の時の流れまで繋げて無限ループを作り出す能力なのだ。

 

 そしてイタチがサスケに月読を仕掛けた理由。それはサスケにイザナミの説明をする為であった。

 イタチは月読の幻術世界でサスケにイザナミの概要と、その仕掛け方を説明していたのだ。イタチの意思で月読の効果時間は変更可能。そして現実世界ではほんの一瞬。作戦説明には持って来いの術であった。

 そしてサスケはイタチが記憶したAという事象を再現する為にイタチに苛立った様に見せて大蛇丸へと突進したのだ。イタチがサスケを煽る様な発言をしたのは大蛇丸がサスケの突進に疑問を持たないようにさせる為の芝居だったのだ。

 

 全てはイタチの思い描いた通りに事は進んでいた。これにて大蛇丸は完全に無力化された。……イタチの左目の失明を引き換えにして。

 

 




 イタチが大蛇丸を十拳剣で封印しなかったのには理由があります。次回それが判明する予定です。



 イタチによるイザナミ講座。

 イタチ「イザナミとは運命を決める術だ。行動の中の任意の一瞬、その一瞬の己と相手の体の感覚を一度瞳力で写真の様に記憶する。仮にこれをAとする。そして同じ体の感覚をわざともう一度再現し、その一瞬を同じように瞳力で写真の様に記憶しA'を作る。イザナミはそのAとA'を重ね繋げる事によりそれまでの二つの間の時の流れまで繋げてしまう」
 ナルト「つ、つまり、どういうことだってばよ!?」
 イタチ「つまり無限ループを作る能力。それがイザナミだ」
 ナルト「だめだ、何回聞いても分かる気がしねー……」

 イタチ「もう一度説明するぞ。行動の中の任意の一瞬、その一瞬の己と相手の体の感覚を一度瞳力で写真の様に記憶する。仮にこれをAとする。そして同じ体の感覚をわざともう一度再現し、その一瞬を同じように瞳力で写真の様に記憶しA'を作る。イザナミはそのAとA'を重ね繋げる事によりそれまでの二つの間の時の流れまで繋げてしまう」
 ナルト「だからどういうことだってばよ!」
 イタチ「無限ループを作る能力。それがイザナミだ」
 ナルト「だめだ、何回聞いても分かる気がしねー……」

 イタチ「もう一度説明するぞ。行動の中の任意の一瞬、その一瞬の己と相手の体の感覚を一度瞳力で写真の様に記憶する。仮にこれをAとする。そして同じ体の感覚をわざともう一度再現し、その一瞬を同じように瞳力で写真の様に記憶しA'を作る。イザナミはそのAとA'を重ね繋げる事によりそれまでの二つの間の時の流れまで繋げてしまう」
 ナルト「だからどういうことだってばよ!」
 イタチ「無限ループを作る能力。それがイザナミだ」
 ナルト「だめだ、何回聞いても分かる気がしねー……」

 イタチ「もう一度説明するぞ。行動の中の任意の一瞬、その一瞬の己と相手の体の感覚を一度瞳力で写真の様に記憶する。仮にこれをAとする。そして同じ体の感覚をわざともう一度再現し、その一瞬を同じように瞳力で写真の様に記憶しA'を作る。イザナミはそのAとA'を重ね繋げる事によりそれまでの二つの間の時の流れまで繋げてしまう」
 ナルト「だからどういうことだってばよ!」
 イタチ「無限ループを作る能力。それがイザナミだ」
 ナルト「だめだ、何回聞いても分かる気がしねー……」

 イタチ「もう一度説明するぞ。行動の中の任意の一瞬、その一瞬の己と相手の体の感覚を一度瞳力で写真の様に記憶する。仮にこれをAとする。そして同じ体の感覚をわざともう一度再現し、その一瞬を同じように瞳力で写真の様に記憶しA'を作る。イザナミはそのAとA'を重ね繋げる事によりそれまでの二つの間の時の流れまで繋げてしまう」
 ナルト「だからどういうことだってばよ!」
 イタチ「無限ループを作る能力。それがイザナミだ」
 ナルト「だめだ、何回聞いても分かる気がしねー……」
 イタチ「イザナミだ」







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