どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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NARUTO 第二話

『ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ』

「お疲れ様でした。いい勝負でしたね。僅差でマダラの勝利かな」

 

 倒れ伏している二人の頭上。何時の間にか樹上へと避難していたヒヨリが二人を労う。

 三人の騒動は次第に柱間とマダラのタイマンへと移行していった。

 まあヒヨリがさりげなく柱間を盾にして逃げたせいだが。

 

 そんな二人のタイマンはヒヨリの判定ではマダラの勝利と出た。

 これまでの組手から柱間とマダラでは僅かに柱間の方が上であったが、その僅かな差を写輪眼が覆した結果だろう。

 

「よ、よし、オレの……勝ちだぜ柱間……」

「ぐ、次は……負けんぞマダラァ……」

 

 既に互いに勝負の原因については忘れてしまっているようだ。

 マダラなんて柱間に辛勝とは言えまともに勝てたおかげでむしろ機嫌が良くなっているくらいだ。

 

 ヒヨリは樹上から降り立ち二人へと近づいていく。

 

「さて、それでは私が何の為にあなた達へと近づいたのかを教えましょう」

『……あ』

「……忘れてましたね?」

 

 勝負の原因どころかヒヨリの目的を暴く事すら忘れていたようだ。

 もしヒヨリの目的が二人の命ならばこの状況なら確実に殺されていただろう。

 

「安心してください。私の目的は、私の夢を叶えるのにあなた達の力を貸してほしい事です」

『夢……?』

「はい。私の夢は……子どもが戦場に出ずに、自由に遊べて、学ぶ事の出来る世界を作る事です」

『それは……』

 

 その夢は、二人と同じ夢だった。

 

「一族に関係なく子ども達は仲良く遊べ、一族に関係なく子ども達は共に学び、一族に関係なく協力しあえる。そんな世の中であってほしい」

「柱間と同じ夢……」

「違うぞマダラ。オレ達の夢ぞ」

 

 そう言ってくれる柱間にマダラは嬉しく思う。こういう奴だからこそ、性格は違えど共にいる事が出来るのだと。

 そんな二人を見てヒヨリも嬉しく思う。この二人となら絶対に成し遂げられると。

 

「一人では無理だと思っていた。そうして今の世の中を憂いているだけだった。でも、あなた達を見つけてそれが夢ではなくなったと思いました」

「……どうやってオレ達を見つけたんだ?」

「白眼で。会話は口の動きを読みました」

『おい?』

 

 まさかの覗き見である。これにはマダラどころか柱間も耐えられず突っ込んだ。

 

「いやね。今の世に嫌気が差してふと遠方を見つめていたら気になる二人がいましてね。だってチャクラ性質が違う一族のそれなんですよ? この時勢にあって違う一族同士の子どもが一緒に仲良く修行したり語りあっていたら気になるのも仕方ないでしょう?」

「だからと言って覗くかおい」

「そしたらこの乱世にあって私と同じ考えを持っているじゃないですか。この二人とならこの不毛な乱世を終わらせる事が出来るんじゃないかと思いまして」

「無視してるぞこやつ……」

「存外図太い神経してんな」

「そう思ったらいても立ってもいられず…………あ、その節はすいませんでした」

「オレの股間を見ながら言う台詞かテメェェェ!!」

 

 きっと一生ネタにされるのだろう。マダラとヒヨリを見て柱間はそう確信した。

 

「というわけで! 私もあなた達と一緒に集落作りをさせてください!」

「断る!」

「マダラ、お前個人的な感情で言ってないか?」

「いーや違うね! 股間見られた事なんか関係ねー! 嘘じゃねぇぞ!」

 

 誰が見ても関係していると思うだろう。そんな必死さがマダラから伝わっていた。

 

「大体こいつの言ってる事が嘘じゃないとどうして分かる?」

「オレは……嘘じゃないと思ってる。他の目的があるなら……自分から姓を名乗らないだろ?」

「それは……!」

 

 それはマダラにも解っていた。あの時姓を名乗った理由が今なら解る。

 あれはヒヨリの誠意だったのだ。遠くから覗き見し、目的有って近づいてきた。だからこそ嘘偽りなく姓も含めて自己紹介した。

 そして、姓も名乗れない世の中は嫌だというヒヨリの本音も知らしめる為の自己紹介だったのだと。

 今の世を変えたいと本気で願っている事を誰よりも早くに明言したのだ。

 

「オレ達どころか下手すればオレ達の一族と敵対しかねない。そんな可能性があったのに、姓を名乗ったんだ。オレは……信じたい」

「……」

 

 柱間の言う通り、姓を名乗る事は二人はおろかその一族まで敵に回しかねない愚行とも言える。

 だがそれでもヒヨリは姓を名乗った。それが分からない程馬鹿ではないだろう。つまりそれだけ自分達に賭けたのだとマダラも理解出来る。

 二人を殺す事が目的ならその機会はいくらでもあった。もしかしたら姓を名乗る事で二人を仲違いさせるのが目的かもしれない。結果的にそうなる可能姓は高かったと言えよう。

 だがそこまで疑っていてはもう誰も信用出来なくなるだろう。マダラは自身と柱間の夢を叶える為には他人を信用する必要がある事を思い出す。

 

「……分かった。ただし一度でも裏切ったら二度と信用しないからな」

「もちろんです!」

「……」

 

 マダラが渋々と言った感じにヒヨリを認めたところ、それを聞いてヒヨリは喜びを顕わにする。

 そして柱間はヒヨリの台詞を聞いて、「いや、そいつはもちろんじゃなくてもろちんだっだぞ」などと口走ろうとしたが止めにした。

 恐らくこれを口にしたが最後、マダラとは完全に敵対関係になる様な気がしたのだ。やるなら時間が経ってほとぼりが醒めてからだ。あまり連続してからかうと相手を怒らすだけだろう。

 三年後くらいにまたからかってやろうと決意して、それを一切表には出さずに柱間は二人に話し掛ける。

 

「よし! これでオレ達は同志だ! これから三人でどうすれば良いか考えて行こうぞ!」

「お前今なんか良からぬ事を考えてなかったか? オレの首筋がチリチリするんだが?」

「気のせいぞ気のせい! オレは仲間が増えて嬉しく思ってただけぞ! アハハハハハ!」

 

 どこかわざとらしい乾いた笑いをしながら、柱間はそう言って誤魔化す。

 マダラもジト眼で柱間を見ているが、実際に証拠はないのだからこれ以上の追求はしなかった。

 

「さて! 今日の所はこれで終わりにしよう。思った以上に時間が過ぎている。これ以上は一族に余計な心配をされるだけぞ」

「……そうだな。下手に疑いを掛けられたらこの集まりも終いだ。今日は一旦解散して、また後日に会って話そうぜ」

「そうですね。ちょっとお待ちを……」

 

 そう言って白眼を発動するヒヨリ。感知に自信のあるヒヨリだが周囲に気配は感じない。だが完全に気配を消していればヒヨリでも感知出来ないやもしれない。

 この世界はヒヨリも初めての世界であり、どんな能力があるのか見当もつかないのだ。自身が強者である事は自覚しているが、絶対である等とは過信出来ない。

 取り敢えずヒヨリの感知と白眼による知覚にて誰もいなければ一先ずは安心と見ていいだろう。

 

「……周囲5kmに渡って人はいないか。ここがばれているという事は今の所ないと思いますよ」

「それが白眼か……オレも目には自信あったけど、望遠に関しちゃ負けてるな……くそ」

「写輪眼もすごいですよ。さっきの戦いを見る限り洞察力は高まっていますし、聞いた話だと見ただけで術をコピー出来たり、眼が合うだけで幻術を掛ける事も出来るんだよね。羨ましいですよー」

「そうか? まあそうだな。でもお前の白眼だって大したもんだぜ」

 

 そう言って笑い合うマダラとヒヨリ。マダラも目覚めたての写輪眼を褒められて満更ではないようだ。さっきまでの疑りは何処へ行ったのか。

 だがそんな二人を尻目に一人落ち込んでいる者がいた。そう、柱間である。

 

「ははは……お、おい? どうした柱間?」

「あの、何かあったの?」

 

 急に落ち込んでいる柱間を心配して二人が優しく声を掛ける。

 そんな二人の心配は、ぶっちゃけ意味のない物だった。

 

「どうせオレだけ何も持ってないぞ……二人だけ便利な目を持っててずるいなんて思ってないぞ……これっぽっちも悔しくないぞ……」

 

 二人からすれば果てしなく下らない理由で落ち込んでいた。

 こんな事を言ってるが三人の内一人だけ特別な眼を持っていない事に対して落ち込んでるのは明らかだ。

 まあ柱間も本気の本気で写輪眼や白眼を羨ましいと思っているわけではないが。

 

「お、おい。そんな事で落ち込むなよ。瞳術がなくてもお前は強いだろ?」

「そ、そうですよ。それにほら、こんなの持ってたら敵から狙われやすくなるから、持ってない方がいい事もありますよ」

「……慰めるでないぞ。別に落ち込んでなんかないぞ……」

『(う、うざい!)』

 

 ……思っているわけではないはずだ。

 

 

 

 ともあれ、三人は同志として友として幾度となく集った。

 

 

 

「思うに私達三人がそれぞれの一族の長になればいいんですよ」

「なるほど。うちはと千手と日向。この三つの一族がそれぞれ協力すれば!」

「忍の一族間のバランスは一気に崩れるぞ! そうすれば他の一族も力を貸してくれるやも知れぬ!」

「その為にはオレ達が強くならなくちゃな。よーし! 早速修行をするぞ!」

 

 

 

 ともに未来について話し合い――

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、ちょ、ちょっと待つぞ……」

「はぁ、はぁ、ひ、ヒヨリ……お前、強すぎだろおい……」

「私は私より強い奴に会いに行く……」

 

 

 

 ともに研鑚し――

 

 

 

「あ、こっちを目指して誰か来ますよ」

「何!?」

「誰ぞ?」

「白眼で確認した所、私達より少し年下の男の子ですね。チャクラ性質からして千手一族かな」

「それは恐らく弟の扉間ぞ! オレを探してるのか!?」

「やべぇな。見つかったら終いだぜ」

「取り敢えず逃げましょう!」

『おう!』

 

 

 

 時に逃げたり――

 

 

 

「だ、だから……強すぎぞヒヨリ……」

「もう……お前一人で……いいんじゃないか……」

「私一人でどうにかなるなら二人を見つけて喜びませんよ。私だって子どもだから体力とか足りませんし」

 

 

 

 時に理不尽に泣いたり――

 

 

 

 そうして三人は強くなっていった。

 

 

 

 そして、時は流れた。

 

 

 

 

 

 

 広大な森を一望出来る大きな崖の上で、三人は向かい合っていた。

 

「……これからオレ達はそれぞれ一族の長になるべく行動する」

「ああ。もうこうして会う事も出来なくなるな」

「全てが上手く行けばまた三人で笑い合える日々が来ます。その時を楽しみに待っていますよ」

「ああ」

「そうだな」

 

 三人が一緒に行動するようになってそれなりの年月が経つ。

 だが、いい加減それぞれの家族から疑われ始めたのだ。

 無理もないだろう。月に何度も姿が見えない日々があるのだ。後を付けられた事も何度もあった。

 修行をしてると誤魔化したり、付けられる度に撒いたり、例え気付けなくてもヒヨリの白眼や感知で気付いて逃げたりして、一族にこの集いが気付かれる事はなかったが、それももう限界だろう。

 このままでは強硬手段を取られると判断した三人は、もうこうして三人で集う事を終わりにした。

 

「これからオレ達は戦場で何度も出会う事になると思う……一族同士でぶつかり合って、互いの一族を殺す事もあると思う……」

 

 柱間の言う事は、これまでの話し合いで既に理解していた事だ。

 既に千手とうちはは幾度となく戦場でぶつかりあっている。これから三人が長になる過程でも、それは起こるだろう。

 

「けど、それでもオレ達はやるしかない。オレ達の夢を叶えるにはオレ達が長になるしかない!」

「ああ。一刻も早く長になる。それが一族同士の殺し合いを防ぐ一番の近道だ」

「ええ。私達が長となり、それぞれの一族で協力を結ぶ。そうすれば」

「オレ達の夢は夢でなくなる!」

 

 三人の夢。この広大に広がる森と大地に大きな集落を作ること。

 子どもが子どもらしく育つ事が出来る集落を。一族の垣根を無くす事が出来る集落を。

 それを夢見て、三人は共に歩んできたのだ。

 

「必ず夢を実現するぞ!」

『おう!』

 

 柱間の想いを籠めた叫びに二人が同意する。

 

「必ずヒヨリに勝つぞ!」

「おう!」

「お……おう?」

 

 柱間の想いを籠めた叫びにマダラが同意する。

 ヒヨリは困惑している。

 

「ヒヨリに一度も勝てないのは納得いかんぞ!」

「そうだ! 何でそんなに強いんだこらァ!?」

「そこはその……年季が違うとしか、ねぇ?」

「オレ達と同い年だろうが!! それなのに二人掛かりで勝てないのは納得いかねー!!」

 

 実年齢はともかく、中身は年季が違うどころではないのは秘密である。

 戦闘経験で言えば言うに柱間やマダラの数千倍ですむかどうか。文字通り桁が違いすぎた。まだ若い二人が敵わなくても仕方ない事だ。

 まあ、それを知らない二人が納得出来るわけがなかったが。

 

「そこはほら、女の子の方が成長は早いといいますし」

「一族の女でオレより強い奴なんてもういねーよ!」

 

 すでに柱間もマダラも一族の中では一級の実力者となっている。

 二人に勝るのはそれぞれの父親を含め僅か数人と言うところだろう。女性だけならば皆無と言えた。

 

「丁度いいぞマダラ。この機に徹底的に修行してヒヨリを超えようぞ!」

「ああ。いつか絶対に追い抜いてやる。うちはの血を舐めるなよ」

「ほほう。面白い。いつでも挑戦を待ってますよ。ふはははははは!」

『ぐぅ、むかつく!』

 

 ヒヨリという大敵を相手に負けじと対抗する柱間とマダラ!

 果たして二人はこの強大な敵に打ち勝つ事が出来るのか!

 

 

 

 さて、この楽しげな茶番にも終わりを告げる時が来たようだ。

 

「……二人とも。扉間とイズナがあなた達を探しているようです」

「……そうか」

「もうお別れだな」

 

 ヒヨリの感知網に柱間の弟である扉間と、マダラの弟であるイズナの存在が引っかかったのだ。

 柱間もマダラもヒヨリの感知を疑ってはいない。それ程に感知に置いてヒヨリの練度は高かった。

 どうやら扉間とイズナはそれぞれの兄を探しているようだ。それぞれの一族の集落が別の場所にあるから扉間もイズナも互いに出会ってはいないが、この場まで来れば確実に戦闘となってしまうだろう。

 これで完全に終わりであった。

 

「別れじゃないぞマダラ! オレ達は再びここに集う!」

「そうだな。その時まで死ぬなよ柱間。オレはお前に勝ち越すんだからな」

「アハハハハ! その時を楽しみにしてるぞマダラ! だからお前も死ぬなよ!」

「……私の心配は?」

『ない』

「鬼! 悪魔! 忍!」

『いや忍だよ』

「か弱い女の子になんて失礼な奴らだ!」

『……はっ』

「鼻で笑いやがった!?」

 

 お前がか弱かったら人間は全員死にかけの老人だとばかりに笑う二人。

 そうして最後まで仲良く口喧嘩をして、三人は別れを告げた。

 

「それじゃあな」

「ああ」

「またね」

 

 後に集落を作ると決めた森を一望出来る崖の上にて、三人は再会の約束をしてその場から立ち去り、それぞれの一族の元へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 柱間とマダラと別れてからヒヨリは日向一族の長となるべく行動を開始した。

 いや、一応は長となる下準備はヒヨリが産まれた時から出来ていた。

 そう、ヒヨリは日向一族の本家の姫君であった。正確には現日向当主の次女であり第三子と言うべきか。

 

 日向の歴史は古い。その歴史を遡ると忍の祖と言われる六道仙人へと繋がる。

 六道仙人、その名を大筒木(おおつつき)ハゴロモ。彼こそがチャクラの教えを説き忍宗(にんしゅう)を広めた忍の祖。

 忍の神として崇められた始まりの人物とされており、乱れた世界に安寧と秩序をもたらす創造神とも、世界を無にする破壊神とも伝えられている実在したかも曖昧な神話の存在だ。

 説明の通り、今では六道仙人は神話やお伽話としてしか語り継がれず、多くの人がその存在を空想上の人物だと思っている。だが彼は確かに実在していた。

 

 そして大筒木ハゴロモには弟がいた。その名は大筒木ハムラ。

 ハムラはある理由にて月へと旅立ったが、その時に地上に残された子孫が後の日向一族であった。

 これは千年もの遥か昔の出来事だ。故にそれを知っている者は日向一族でも極一部である。

 

 話を戻そう。千年という永き年月に渡って伝わってきた血を持つ一族だ。

 当然その血統に対する誇りも並の一族のそれではない。

 宗家の血は絶対であり、分家は宗家を立てる為の礎に過ぎない。全員ではないが、そう思っている日向一族は宗家・分家問わずに多い。

 誇り高き日向一族に取って一族の掟は絶対であり、どれほど優秀だろうと分家の人間が宗家に成り変わって長となる事は不可能なのだ。

 

 故に、ヒヨリはギリギリだが日向の長、当主となる資格を有していた。

 尤もヒヨリが長となる確率は非常に低いと言える。理由は日向が掟を重んじているからだ。

 基本的に長となるのは当主の第一子だ。この場合はヒヨリの兄である。これは余程の事がない限り覆される事はない。それが名家の掟という物だ。

 万が一ヒヨリの兄が死した場合は次に第二子、長女であるヒヨリの姉が長となるだろう。そしてその姉が死した場合、ヒヨリが長となるのだ。

 つまりヒヨリが長となるには兄と姉が死なねばならない訳だ。柱間とマダラに長となると言ったが、流石にヒヨリもそれは許容出来ない。

 

 宗家のみが一族の長となれる掟だからヒヨリには長になれる可能性があり、掟を重視する一族だからこそ第一子が長に選ばれやすい。何とも皮肉な事である。

 まあ第三子という立場だからこそ、ヒヨリが頻繁に一族の集落から姿を消していても注意はされど厳重に罰せられたり、隔離されたりはしなかったのだが。

 そうでなくてはあれ程頻繁に柱間とマダラに会う事は出来なかっただろう。

 こういった名家に置いて子どもは後継者のみを重視して、それ以外は後継者が死んだ時の為の予備と考えられている事も多かった。

 今代の日向の当主もそうであったというだけだ。それ故にヒヨリはあまり父親が好きではなかったが。まあ親には変わらないので憎くまではないが。

 

 話を戻そう。どうすればヒヨリが長になれるかだが、まだ方法はあった。可能性は低いが、この戦乱の世ならばこその方法が。

 平時ならば先の説明の様に何らかの理由で兄と姉が死なねばまず無理だろう。

 だが、戦乱の世ならば話は違う。戦乱の世に一番必要なのは何か。多くの者がこう言うだろう、それは力だ、と。

 そしてその力を日向一族の誰よりも持っていると自負しているのがヒヨリである。

 

 忍の強さは主に体術・幻術・忍術の三つの項目で計られる。その中で日向が得意としているのが体術だ。

 日向には柔拳と呼ばれる独自の体術があり、その力は触れただけで相手の経絡系にチャクラを流し内部から破壊する事が出来るという凶悪なものだ。

 経絡系は眼には見えぬ物だが、日向一族は白眼にて見切る事が出来る。そして白眼の瞳力が強い者は点穴すら見抜き、その点穴を突く事で相手のチャクラの流れを止める事も出来る。

 白眼と、この恐るべき体術こそが日向を強者足らしめている最大の要素と言えよう。

 

 さて、ヒヨリの強さだが。彼女は転生者である。そしてその転生回数は一度や二度ではなかった。

 そう、ヒヨリは幾度となく転生を繰り返して来たのだ。何故ヒヨリがその様な転生人生を歩むようになったかは今は置いておくとしよう。

 ヒヨリはある理由から強くなりたかった。そして転生を繰り返す度に強くなる為に修行を続けた。まあ二度目の転生で既に最初に強くなる理由はないも同然になってしまったのだが。

 

 そしてヒヨリは転生しても記憶と技術、そして生命のエネルギーとも言うべきモノを引き継いでいた。

 そのエネルギーは世界によって呼び名は様々だ。オーラとも、気とも、そしてチャクラとも呼ばれる。

 そう、ヒヨリは転生して修行をし続けた事により、膨大なチャクラをその身に宿していたのだ。

 

 ヒヨリに匹敵するチャクラを持つモノはこの世には現状存在しなかった。そう言っても過言ではない程のチャクラ量だ。

 あまりに膨大故に絶対に恐れられるだろうと予測している為、一族の誰にもチャクラ量に関しては秘密にしていた程だ。

 ちなみにこの予測は今までの転生人生による経験則だ。まず間違いないとヒヨリは思っている。

 

 チャクラは忍にとって最も重要な力の源だ。チャクラを練って忍術を繰り出し、体術を強化し、相手のチャクラを乱す事で幻術に掛ける。

 チャクラ無くして忍は語れないだろう。チャクラは忍という兵器を動かす為の燃料と言った所か。当然多ければ多いほど有利なのは言うまでもない。

 同じ術でも籠められたチャクラが違えばその威力も違ってくることもある。同じ技術、同じ忍術、同じ知力で忍が戦えば、チャクラが多い方が勝つ確率が高くなるだろう。

 そんなチャクラを誰よりも多く有している。それだけでヒヨリは圧倒的に他の忍よりも有利だった。

 

 そして体術。日向流の柔拳に関してはともかく、千年を超える研鑚が築き上げたヒヨリの体術レベルは父である日向当主など歯牙にも掛けぬ程だ。接近戦にてヒヨリに勝つ事は日向をしてまず不可能と言えるだろう。

 柔拳に関しても既に体得済みだ。元々ヒヨリの極めていた体術は元の世界で柔術や合気と呼ばれる武術だ。柔拳とはそこそこ相性も良く、それ故に覚えも早かった。恐らく後数年もせずに純粋な柔拳の技術も父を超えるだろう。

 

 まあ忍術と幻術に関しては未だお察しレベルではある。体術と比べると月とスッポン、鯨とミジンコ程の差があるだろう。

 この二つに関して本格的に修行するのは日向に認められて長となり、戦乱の世を終えてからでも良いとヒヨリは思っている。理由はやはり日向が体術に重きを置いているからだ。

 

 さて、日向にあって既に最強と言える力を有していたヒヨリだったが、今までは目立たずに一族の中で過ごしてきた。目立てば目立つほど自由に動きにくくなるから、それが嫌だったのだ。

 だが最早そんな事は言えない。共に夢を叶えようとする柱間とマダラ。今ごろは必死になって長となるべく行動している二人を前に、目立つのが嫌だとか口が裂けても言える訳がなかった。

 

 そうしてヒヨリは日向一族で頭角を現していった。

 その圧倒的な力を徐々に周囲に知らしめ、兄や姉を差し置いても当主に据えるべきだと言う意見を日向の長老連から出させる程に成長した姿を見せ付けた。

 そしてとうとう一族の多くに認めさせ、兄と幾つかの契約を結んだ結果、ヒヨリは日向の当主となった。

 

 

 

 

 

 

 長きに渡った戦乱の世。その一部にだが、終止符が打たれようとしていた。

 互いにいがみ合い憎しみ合い、殺し合って来た千手一族とうちは一族が同盟を結んだのだ。

 そしてそれと同時に日向一族もその二つの一族と同盟を結んだ。

 

 これにより戦乱の世のバランスは千手・うちは・日向の忍連合軍によって一気に崩れる事になる。

 最強の忍一族はと問われて出てくる答えの大半がこの三つの一族だ。それが手を組んだとなると他の一族に勝てる見込みは万が一、いや億が一にもなかった。

 そして忍連合は周辺国家にて火の国と呼ばれる大国と手を組み、国と里が同等の立場で組織する平安の国づくりを始めた。

 その国づくりには猿飛一族や志村一族と言った名の知れた忍一族も協力し、それに伴い更に多くの忍一族が同盟の元に集った。

 

 

 

 かつて崖から一望出来ていた広大な森は、今ではその多くが切り開かれ大きな里へと変化していた。

 その里を崖の上から見下ろす三人の男女の姿があった。

 

「見よマダラ、ヒヨリ。これが、オレ達の――」

「ああ。夢の実現だ」

「長かったのか、それとも短かったのか……ようやくここまで来ましたね」

 

 かつてと違い大人となった三人は、子どもの頃に語り合った夢が現実になった事に素直に感動していた。

 里が出来上がっていく様を見てもどこか浮世離れした物を見ている気分だったが、こうして三人揃ってかつて夢を語った崖の上から夢の塊を見る事でようやく実感したのだ。

 

「何をいうかヒヨリ! まだまだこれからぞ! 猿飛一族や志村一族も仲間に入りたいそうだからな。これからこの里はもっと大きくなるぞ!」

「聞いた話じゃまだ他にもいるらしいな」

「ええ。恐らく火の国周辺に潜んでいた一族の多くがここへと集うようになるでしょうね」

 

 それは火の国の中という限定した空間かもしれないが、その中では忍の一族同士での殺し合いが殆ど無くなるという事を示している。

 それこそがこの三人が望んで止まなかった世界への架け橋なのだ。

 

「火の国から里の代表を決めるよう要請があってな。火の国を守る影の忍の長……名を火影としようと思うのだが、どうだ?」

「ひねりのない安直な名前だなおい。ま、悪くは……おい、お前まだ治ってなかったのかその落ち込み癖……」

 

 密かに自信があったネーミングを安直と言われ、ぶつぶつと何かを呟きながら落ち込んでいる柱間。大人になってもかつての癖は抜けてない様であった。

 

「うーん、まあ火影でいいんじゃない? どうせやるのは柱間でしょうし」

「うん? 何を言う。オレはマダラを推薦しようと思ってたところぞ」

「オレ!? ……冗談だろ?」

「何を言う。あの時約束したではないか。全てが終わった時、お前に集落を、里を託すと」

 

 かつての、一歩間違えれば殺し合いになっていたあの時。その時の約束を、柱間は未だに忘れてはいなかった。

 マダラの全ての憎しみをその身に受け止め、そして里をマダラに託すと。

 そんな柱間に、マダラは本当の馬鹿を見た気がした。底抜けの馬鹿で、そして度がつく程にお人好しを。

 

「……馬鹿が。そんな約束忘れちまったよ。オレは長なんて柄じゃねーよ。うちはだけでも精一杯なんだ。お前かヒヨリがやればいいさ」

「そういう面倒なのは人に丸投げするのがヒヨリ流長生きの秘訣。よって私はパス」

「なんぞそれ!?」

「ふむ。マダラさんや、柱間さんは何やらご不満の様子。ここは一つ多くの一族が集う里にちなんで多数決で決めませぬか?」

「それはいいな。では、柱間が火影になるのが良いと思う人は挙手を」

 

 即座にマダラとヒヨリの手が上がった。三人中二人が賛成。よって可決である。

 

「はい決定。おめでとう柱間、お前がナンバーワンだ!」

「悔しいが……お前なら許せるぜ……頑張れよ柱間!」

「なんぞこの茶番はー!!」

 

 怒鳴る柱間に笑いながら逃げるマダラとヒヨリ。

 戦乱の世を、理想のために駆け抜けた。意に沿わぬも、どうしても必要な戦いを一族間でした。

 千手も、うちはも、日向も、この里が出来るまでに多くの忍が死んでいった。この中の三人で、相手の一族を殺していない者は一人としていない。

 それはどうしても避ける事が出来ない必要な戦いだったのだ。限りなく死を少なくしても、人のやる事に限界はある。

 ましてや彼らは一族の長となった者達だ。その立場上、一族を優先して守らなくてはならない。そうしなければすぐに一族の者から不満が溢れるだろう。

 

 何度も何度もそんな戦いを繰り広げ、何度も何度も別の一族を憎み恨みもした。それでも理想の為に心を殺して戦い続けた。

 その結果が目の前にあるのだ。もう、一族間で殺し合う事はないのだ。

 火の国以外では未だに忍一族の闘争は続いている。完全に無くなる事はないだろう。

 だが、それでもこうして自らの手が届き眼で見える範囲でだが、争いを減らす事が出来た。

 ようやく、三人揃って馬鹿な話で笑い合う事が出来る様になったのだ。

 

「おお、そうだ柱間! この里だが、木々が茂り木の葉が舞う里故に木ノ葉隠れの里っていうのはどうだ?」

「ごまかす気かマダラ! 大体人のセンスを安直呼ばわりしておいて、お前のネーミングも安直ではないか!」

「ぬぬ、二人が里に関する名前をつけたなら私も何か考えねば!」

「どうしてそこで張り合うのだヒヨリよ……」

「うーむ。里長の名称に里の名前と来たから……火影直属の護衛部隊の名前でも……四天王……いや、死天王……弐天羅刹……八卦衆……煉獄……光輪疾風漆黒矢零式……うう、何故か頭が痛い……!」

「どうしたヒヨリ!?」

「お、おい、何があった!?」

 

 何故か頭を抑えて大地に膝をつくヒヨリを心配する柱間とマダラ。

 まあ気にする事はないだろう。遠い過去の痛々しい傷痕が疼いただけなのだから。

 

「ふ、ふぅ……わ、私は何かを名付けるのは止めておくとしよう」

「それがいいぞ……」

「ああ、見てて痛々しかったぜ……」

 

 そんな風に幼かった頃を思い出す様な話を繰り広げながら、三人は里の為に働き続けた。

 ちなみにヒヨリは最後に思い浮かんだ言葉を何処かで聞いたような気がしていたが、まあ気のせいだろうとすぐに忘れる事にした。

 

 

 

 里の長、火影には柱間が就任した。これはマダラとヒヨリだけでなく火の国や里の民意と上役との相談によって決定された。

 もちろんマダラやヒヨリもその候補として名が上がっていたが、柱間にその両人からの推薦が有ったというのが大きかった。

 そしてマダラとヒヨリの両人も火影の補佐役としての立場につく事になった。

 これはぶっちゃけると二人から火影を押し付けられた柱間の意趣返しである。

 

 木ノ葉隠れの里のシステムが思いの他上手く回っていた為、他国の忍達もそれを真似する様になってきた。

 火の国の忍が纏まった事に対して危機感を覚えたのもあるのだろう。やがて火の国と同等に大国と言われる四つの国にもそれぞれ大きな忍の隠れ里が出来た。

 これを後に忍五大国と呼ぶようになった。

 

 これにより他国でも一族間の小競り合いや任務での殺し合いは少なくなっていった。

 三人の夢が世界に広がろうとしていたのだ。少なくとも柱間はそう思っていた。

 

 だが、事はそう簡単には動かなかった。

 

 

 

 一族間での争いはなくなったが、だからと言って忍同士の争いがなくなったわけではない。

 忍五大国の誕生は、新たな戦乱の世の幕開けとなったのだ。

 

 一族間ではない、大国間での争い。忍五大国を中心として忍界全体を巻き込む初の大戦。第一次忍界大戦が勃発したのである。

 

 多くの忍が争い、そして死んでいった。だが、思いの他早くに戦争は終結へと辿り着いた。

 その決め手となったのが、木ノ葉の里の三人の忍。千手柱間、うちはマダラ、日向ヒヨリである。

 三人は圧倒的な力を他国に示した。そうする事が終戦に繋がる近道だと三人で判断したのだ。

 敵対するのも馬鹿らしくなる程の力を見せ付ける。言うなれば木ノ葉の里を作る為に三人がした事と似たようなものだ。

 

 もちろん敵も国を背景に持つ故に一族間の争いの様に、はい負けました、と言って戦争が終わる事はない。

 だが、このまま戦争を続けても確実に木ノ葉の利となるだけと判断した各里の長達――影達――は、木ノ葉からの休戦条約に飛びついた。

 

 ちなみに余談だが、この三人はその圧倒的な力から木ノ葉の三忍と他国からは恐れ、自国からはより敬われる様になった

 

 優勢だった木ノ葉からの提案故に、残りの忍五大国も条約や協定に関して無茶を通したりはしなかった。

 むしろ木ノ葉から各国の戦力バランスの為に尾獣と呼ばれる強大なチャクラの塊であり巨大な魔獣を各国に分配した。

 もちろんタダではなかったが。いや、柱間本人はタダで分配しようとしていたが、柱間の外付け政治回路である扉間によって阻止された結果だ。

 

 とにかく、これにより第一次忍界大戦は終戦へと導かれた。だが――

 

 

 

 いつからだろうか。木ノ葉の歯車は狂い始めていた。

 第一次忍界大戦から数年後……うちはマダラが木ノ葉の里に反旗を翻したのだ。

 何故木ノ葉の里設立の立役者であり、第一次忍界大戦の英雄であり、うちはの現当主であるマダラが反旗を翻したのか。その真相は明らかになってはいない。

 そもそもうちはマダラが木ノ葉に反旗を翻した事実を知る者自体が里の極一部の上層部のみだった。里の安定の為に闇に葬られた歴史の真実である。

 

 ともかく、反旗を翻したマダラは柱間と激しい死闘を繰り広げた。

 地形が変わる程の激戦の末、勝利したのは柱間だった。この時、うちはマダラは死亡したとされる。

 

 そしてそれから程なくして、柱間はマダラを追うようにこの世を去った。

 

 多くの者が悲しむが、時の流れは人を待ってはくれない。火影が亡くなったのだ、次代の火影が必要となった。

 二代目火影に選ばれたのは柱間の弟、千手扉間だった。ヒヨリにもその話は来ていたが、ヒヨリはそれを自分には相応しくないと断ったのだ。

 ヒヨリとしては最大の友であった柱間とマダラがいなくなった事で時代の流れを感じたのだ。もう、自分が前に出る幕ではないのだと。

 ヒヨリは火影をサポートし、里を見守る役目に終始する事を決意したのだ。

 

 

 

 時は流れる。

 

 

 

 扉間はその政治手腕で里に多くの制度や施設を設け、柱間が残した里をより良く導いていった。

 時折その現実主義な性格により人によっては非道と思われる政策を提案していたが、全ては里の為を思っての事だった。

 尤も、あまりにあまりだと判断された政策はヒヨリが口を入れる事で若干修正されていったが。

 

 その一つがうちは一族による警務部隊の設立だろう。

 当初の扉間の予定では暴走の可能性のあるうちは一族に里の中枢への権限を無くし、それでいて里の警備を取り締まるという立場を与える事でうちはを一つに纏め監視しやすくする為の政策だった。

 だが、それでは里の上層部から遠ざけられた事に対していずれ反発が来る可能性があるとヒヨリから示唆され、扉間は火影が選ぶ優秀なうちはの忍を代々の火影の補佐とする事でそれを緩和させる様にした。

 そして日向一族から不満が出ないように日向からも同じ様に火影の補佐を選ぶようになった。これによりうちはの動きを日向が見張ることが出来るという意味合いも持たせていた。これはヒヨリには秘密にしていたが。

 

 扉間がここまでうちは一族を危険視しているのには理由がある。

 それはうちは一族が愛情と憎悪に支配された呪われた悲しい一族だからだ。

 うちは一族の愛情は非常に深い。だが、うちははそれを封印してきた。

 一度うちは一族の者が愛情を知ると、その強すぎる愛情が暴走する可能性を秘めていたのだ。

 

 愛を知ったうちはの者がその強い愛情を失った時、それがより強い憎しみに取って代わり人が変わってしまう事があるのだ。

 扉間はそれを戦乱の世で幾度となく見てきた。そしてそうなる事でうちはにある症状が発現する。それこそが写輪眼である。

 更に写輪眼は心の憎しみと共に力を増していく。その行き着く果ては扉間にも分からない。だが、憎しみに捉われた者が里に安定をもたらすとは扉間は思えなかったのだ。

 

 扉間とてうちはを蔑ろにするつもりはない。扉間にとってどの一族とて里に危険性があるものと注意深く捉えていた。ただうちはが特に考慮すべき一族だっただけだ。

 うちは一族に警務部隊を任せた事がその証だろう。犯罪者を取り締まる部隊だ。信用の置けぬ者には与えられない役目と言える。

 更に火影の補佐という大役もうちはと日向から選ばれるので、うちはが蔑ろにされていないという分かりやすい実証となった。

 他の一族が火影の補佐に選ばれぬ事に不満を覚えるかもしれないが、元々木の葉の設立の立役者がうちはと日向だ。更に里長たる火影は一族に関係なく優秀な忍が選ばれる。そうであれば特に不満も上がらなかった。

 この火影の補佐は次第に火影の右腕左腕と称されるようになってくる。

 

 他にも扉間は忍の養成学校――通称アカデミー――を設立したり、中忍試験の制度を定めたりと、次々と里の基盤を作り出した。

 これらを見て、やはり二代目火影は扉間しか有りえなかったとヒヨリは語っている。ちなみにその時扉間は面倒だから押し付けただけではないのかと呟いたそうだが、定かではない。

 

 そんな扉間も火影の座を次代に譲る事となる。

 それは雲隠れの里との会談の際、雲隠れの里の忍の一部が起こしたクーデターが切っ掛けであった。

 クーデターにより扉間は瀕死の重傷を負ったのだ。共に会談へと赴いていた忍を逃がすため、一人残って多くの敵を相手に囮を務めたのが原因だ。

 瀕死の重傷を負いつつも、扉間は木ノ葉へと帰還した。だが、傷ついた肉体を治療する事が得意な医療忍者はこの時代には数が少なく、またその質も良くなかった。

 そうして扉間はその傷が元で死亡した……わけではなかった。

 

 扉間はこの瀕死の重傷を乗り越え生き延びたのだ。それは何故か?

 ヒヨリがその溢れんばかりのチャクラと、白眼を利用して鍛えた医療忍術を超える再生忍術を用いた事で、半ば無理矢理治療した為である。

 九死に一生を得た扉間は、火影後継者として猿飛ヒルゼンという忍を推薦。火影引退後、忍としては一線を退くも多くの優秀な忍を育てる事となる。

 

 

 

 時は流れる。

 

 

 

 三代目火影が木ノ葉を治める時代は長く、二度も大戦が繰り広げられた。

 それが第二次忍界大戦と第三次忍界大戦である。これにより多くの忍が戦争を経験し、そして死んでいった。

 

 第一次忍界大戦より約二十年。再び起こった大戦である第二次忍界大戦。

 この大戦で、二代目火影であった扉間も死亡した。忍として一線を退いており、最早木ノ葉に自らが要る必要がなくなったと判断したのか、窮地に陥った里の忍を助ける為に奮戦し死亡したという。

 その大戦の最中、木ノ葉のある三人の忍が二代目三忍と謳われる様になる。初代三忍は既に一人しか残っておらず、その偉業も力も既に過去の物として捉えられている事も多かった。これも時代の流れなのだろう。

 

 そして、第二次忍界大戦から更に二十年程の年月が経ち、第三次忍界大戦が勃発。

 その大戦にて、初代三忍で最後まで生き延びていた日向ヒヨリもその命を落とした。

 平均寿命が三十歳と言われていた時代から生き延び、齢八十近くまで生きたのである。当時の力はすでに全盛期の半分以下だったと言われている。

 それでもなお戦場に赴き、多くの同胞を助け、最後には尾獣の一体を食い止めて、瀕死の重傷で里に帰り、畳の上で死んだという。

 

 

 

 そして……少しだけ時は流れる。

 

 

 

 戦争によって多くの人が命を落とした。それは変えられぬ事実であり、悲しい現実だろう。

 だが、生があるから死があり、そしてまた死によって失われる命があるなら新たに生まれる命もあるのだ。

 

「おぎゃぁ! おぎゃぁ!」

 

 ここ木ノ葉の里にも新たな命が芽生えていた。とても喜ばしいことだろう。赤子の父も母も、そして産婆もその誕生を喜んでいた。

 

「おめでとうございます! 無事元気な赤子が産まれました!」

「おお、良くやった! 良くやったぞ! ホノカ!」

「ありがとうございますあなた……初めまして、私があなたのお母さんよ」

「おぎゃぁ!(あ、どうもよろしくお願いします今世の母さん、そして父さん)」

 

 さて、この赤子だが、実は普通の赤子ではなかった。産まれたての赤子に自我がある時点でまあ普通ではないだろう。

 まだ喉や舌が発達してないからまともな発語は出来ないが、それも半年もすればそれなりに喋れる様になるだろう。至って異常な赤子である。

 それもそのはず、この赤子は転生者である。かつては日向ヒヨリと名乗っていた人物が死んで生まれ変わったのがこの赤子なのだ。

 さて、そんな赤子が産まれてまず最初に気になる事があった。

 

「おぎゃあ……(ところで差し支えなければ早く私の性別を教えてくれませんか? まだ産まれて間もないので自分の肉体も把握出来ないんですよね……)」

 

 それはこの者が最も重要視している自身の性別である。

 この転生者、これまでに幾度も転生を繰り返しているが、その大半が女性として生まれてきた。

 そして数少ない女性でない転生は、男ではなく雄であったり、そもそも性別がない存在に生まれたりと散々だったのだ。

 ちなみにこの者の記憶が残っている最初の性別は男である。運がないとしか言い様がなかった。

 

「あなた、この子の名前は?」

「うむ、以前に話し合った様に、女の子だからアカネと名付けよう!」

「おぎゃあ(知ってた)」

 

 それはそれは諦観が籠もった泣き声だったという。

 

 




 マダラが離反したのには理由があります。まあそれが開かされる場面まで進む事が出来るかどうか……。







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