どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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NARUTO 第三十四話

 忍連合軍が第四次忍界大戦に向けて動いている中、キラービーはとある土地にて発見・拘束された。彼は非常にマイペースな性格をしており、大蛇丸に襲われた時のいざこざを利用して里から抜け出し、心配する者や捜索する者の気持ちもそっちのけで自分の趣味に浸っていた。

 その趣味とは……演歌である。元々はラップが好きだったのだが、次は演歌だと急に言い出し、八尾の声も無視して演歌忍者棟梁であるサブちゃん先生の元へ演歌の教えを請いに行ったのだ。……演歌忍者という需要があるのかどうか分からない存在がいるこの世の中は、きっと広いのだろう。

 

 ともかく、多くの捜索隊やアカネの影分身による捜索によってキラービーは発見され、そして兄貴分であるエーによってしこたま怒られた後に保護された。暁に捕らえられる前に八尾と九尾の安全を確保でき、一先ずは有利に事を運べていると言えよう。

 さて、渦中の人物である九尾の人柱力のナルトだが、彼は今も激しい修行を積んでいる最中であった。

 

「はあぁぁ!」

「おおぉぉ!」

 

 相手は当然というべきか、最早終生のライバルとも言えるサスケである。

 仙人モードのナルトと、万華鏡写輪眼に目覚めたサスケ。多くの修行で高められた二人は、新たな力を得た事で更に激しいぶつかり合いをしていた。

 

 視界にある空間に直接黒炎を呼び出す天照。サスケがそれを発動した瞬間に、ナルトは仙人モードで感知して即座に回避する。

 サスケは呼び出した黒炎をもう一つの万華鏡である加具土命にて操作する。加具土命は天照の黒炎を自在に操る力を持つ。これにより強大だが扱いが難しく、消耗も激しい天照の欠点を補えるという訳だ。

 味方であるナルトに気兼ねなく天照を使用出来るのもこの加具土命のおかげである。これがあれば消えぬ黒炎も解除する事が出来るからだ。

 

 黒炎が鋭い無数の刃となってナルトに襲い掛かる。だがナルトは慌てる事なく対応した。影分身を作り出し、その影分身が大地に螺旋丸を叩き込む事で出来た破片を使って黒炎をガードする。

 影分身が黒炎を対処している間に本体はもう一体の影分身を伴ってサスケへと突撃する。そして本体と影分身の両方が同時に巨大螺旋丸を生み出し、それをサスケにぶつけようとする。

 もちろん影分身を前方に出して本体を死角とし、写輪眼や天照に対する防御とする事も忘れてはいない。

 

 仙術が加えられた巨大螺旋丸。だが、サスケはそれを回避しようとはせずに敢えて受け止めた。そう、サスケが開眼した第三の万華鏡、須佐能乎の力を確認する為にだ。

 絶対防御とまで言われる須佐能乎の防御。第二段階にまで至ったサスケの須佐能乎は、ナルトの巨大螺旋丸を確かに防いだ。だが、やはり螺旋丸の威力も然る物だ。そのあまりの威力に須佐能乎にも皹が入っている様だ。

 螺旋丸でこれならば、風遁螺旋手裏剣を防ぐ事は難しいな。サスケはそう考える。そしてそれ以上に、己を苛む痛みに思考が逸らされた。

 

「ぐ、ぅ……!」

「お、おい! 大丈夫かよサスケ! サクラちゃん!」

「ええ! 分かったわ!」

 

 天照を放った左目からは血が流れ、須佐能乎の反動か口からも血が溢れていた。

 

「問題、ない……! 続きをやるぞナルト……!」

 

 それが強がりであるのは誰の目から見ても明らかである。

 サスケは強くなった。悲しみと憎しみを得て万華鏡を開眼し、それを乗り越え、確実に強くなっている。

 だがその力は諸刃の剣なのだ。強すぎるが故に術者自身を苛む、それが万華鏡写輪眼なのだ。このまま多用すれば視力は無くなり、肉体はボロボロになるだろう。

 

「そこまでですサスケ。これ以上は修行の効果も少ないでしょう」

「止めるなアカネ! ……ッ!?」

 

 修行を見守っていたアカネもサスケのこれ以上の修行を止めに入るが、サスケはアカネの制止すら振り解こうとする。

 だが、やはり無理があったのだろう。サスケは更に口から吐血し、そのまま大地に膝を突いてしまう。

 

「サスケ君! 無茶しないで! もうこれ以上は無理よ! これまでに何度倒れていると思っているの!?」

 

 サクラの言う通り、サスケが万華鏡写輪眼の反動で倒れるのはこれが初めてではない。

 アカネの本体が五影会談に出向いている間にも、ナルト達は影分身のアカネと共に何度も修行を繰り返していた。その間に当然サスケは万華鏡写輪眼の力を把握し、自在に操れる様にする為の修行を行っている。

 万華鏡写輪眼を駆使してナルトと全力で戦ったのはこれが初めてだったが、それ以外の修行では幾度も万華鏡写輪眼を使用しており、その度に限界ぎりぎりまで肉体を酷使していたのだ。

 おかげでサスケは自身の新たな力を把握し切ったと言える。そして、その代償として今のサスケの視力は大分落ちていた。集中している時ならばともかく、こうして戦闘により力を消耗した時、その視力はまともな視界をサスケから奪う様になるのだ。

 

「サスケ、もう十分です。あなたは新たな力を十分に把握しました。その代償も……。今のあなたならば、永遠の万華鏡を手にしても力に酔う事はないと信じています」

「……」

 

 アカネからのお墨付きだがサスケの気持ちは晴れる事はなかった。

 サスケからすれば、今の自分は己の力を到底扱え切れているとは思えなかったのだ。強大な力に振り回され、その代償に苦しむ様は無様そのものだと自身を罵倒していた。

 そんなサスケの心情を知ってか、アカネはサスケへと声を掛ける。

 

「サスケ。自信は過ぎれば過信となり、慢心を生み、死を呼びます。ですが、自信を持つこと自体は何も悪い事ではありません」

 

 そう、自信を持つ。それ自体は悪い事ではない。むしろ良い面を多く持つだろう。

 自分に自信を持てずに様々な機会を逃した者は世に多い。自信を持つ。それだけで人は成功出来る可能性を高める事が出来るのだ。

 過信せず、さりとて過小せず、己を知る。それが大事なのだとアカネは語る。

 

「イタチの左目も既に馴染みました。あなたも万華鏡の力を理解しました。眼の交換は今日行います。分かりましたね?」

「……分かったよ」

 

 戦争に向けて五大忍里は着々と準備を進めている。それは木の葉隠れも例外ではないし、サスケ達も戦争に参加する事は通達されている。

 サスケやアカネは未だに下忍という立場だが、二人の戦力は下忍のそれを遥かに上回り、そこらの上忍すら歯が立つ事はない。忍界全ての未来が掛かっている戦争だ。下忍だからと言って力ある者を遊ばせておく余裕はないのだ。

 そして万華鏡写輪眼を交換した場合、その万華鏡が自身の身体に馴染むのに時間が掛かる事が予想される。その為に出来るだけ早くサスケとイタチの両目を交換した方が良いのだ。

 

 アカネの言葉を理解したサスケは、まだ自身の不甲斐なさに思う事はあれど一応の納得をする。

 もっとも、サスケの考えは少々的外れでもある。サスケは万華鏡写輪眼の反動に屈する事を不甲斐ないと思っているが、そもそも歴史上に置いて万華鏡写輪眼の反動を抑え込んだうちは一族は一人としていないのだ。

 永遠の万華鏡を手に入れる事が唯一の道であり、それ以外で自力の克服は有り得ない。これはうちはマダラをして覆らない法則だ。

 それをサスケが出来ないからと自身を貶めるのは、ある意味傲慢と言ってもいいだろう。だが、だからこそのうちはサスケだとも言える。他人が出来なかったから自分も出来ない等と、サスケは思わなかったのだ。

 

「全く、自信を持つのは悪い事ではないと言いましたが……持ち過ぎも駄目とも教えているんですがねぇ」

 

 そんなサスケの傲慢を読み取ったアカネは、サスケが自信を無くして落ち込んでいたのではなく、自信がありすぎたせいで落ち込んでいたのだと理解して肩を竦める。

 天才故の傲慢と言うべきか。どことなくマダラを思い出させるサスケにアカネは苦笑した。

 

「これで痛みは和らいだはずよサスケ君。でも無茶はしないでね」

「ああ……悪いなサクラ」

 

 会話の最中にサクラはサスケへと医療忍術を掛けていた。それによりサスケの痛みは和らいではいる。

 だがこれが一時しのぎでしかない事は他ならぬサクラが理解していた。サクラとしては出来るだけ早くにサスケに永遠の万華鏡を手に入れて欲しいと願っている。

 最愛の人が苦しむ様を見せられ、それを和らげる事しか出来ないのは医療忍者としても、サスケを愛する一人の女性としても苦しい事なのだ。

 

「それでは今日の修行はこれまでとします。サスケとサクラは私に付いて来てください。サクラは今後の為に少しでも多くの経験を積んだ方がいいので、眼の交換を良く観ておくように」

「分かった」

「はい!」

 

 どうやらサクラも眼の交換に立ち合う様だ。アカネの言葉の通り医療忍者としての経験の為である。今までにも似たような経験は積んでいるが、だからと言って更なる経験を積まないでいい理由にはならない。

 と、そこで特にする事がないナルトがアカネに問い掛けた。

 

「アカネ! オレはどうすればいいってばよ!? 影分身のアカネと組み手でもしてればいいのか?」

 

 修行相手がいなくなり、手持ち無沙汰となったナルト。だが兄弟子である長門の想いに応える為にも足踏みしている暇はないのだ。

 そう意気込んでアカネに問い掛けるナルトだが、アカネがナルトに課したのは修行ではなく、任務であった。

 

「いえ、ナルトにはある任務についてもらいます」

「ある、任務?」

 

 アカネの答えに疑問を持つナルト。そして、そんなナルトが雲隠れの国の、とある孤島――という名の何か(・・)――に出荷されるまで約二日。

 ナルトは任務という名目の保護拘束と、人柱力として尾獣の力を自在に引き出せる様になる為の修行を行う事となった。

 

 

 

 

 

 

 ナルトは極秘の任務を受けて雲隠れにある孤島へと移動する。道中は同じ任務を受けたヤマトと、幾人かの木ノ葉隠れの忍、そして案内として雲隠れの忍が同行していた。

 ヤマトが同行しているのは当然ナルトの監視と尾獣の抑制の為である。ナルトが九尾を抑えられずに暴走した時に、それを抑える力を持つヤマトが傍にいるのは当然だ。

 木ノ葉隠れの復興といい、尾獣の制御といい、まさに獅子奮迅の活躍である。木ノ葉隠れはヤマトにもっと感謝してもいいかもしれない。

 

 ヤマトの功績はともかく、ナルトはこの島である人物と出会った。それはナルトにとってある意味運命的な出会いだったのかもしれない。

 その人物こそ、ナルトと同じく尾獣を宿した人柱力にして、尾獣を完全にコントロールする事が出来る史上でも数少ない忍、キラービーである。

 出会った当初は互いにまだ分かり合えずにいた二人だが、ナルトはビーの過去を知り、そしてビーに共感した。同じ人柱力として似たような過去を持っている事に気付いたのだ。

 だからこそ、ナルトはビーを尊敬した。同じ様な過去を持ち、他人に害され疎まれ、そして殺されそうになった事もあった。だがビーはそれを吹き飛ばす程に陽気で、自身を殺そうとしていた存在すら受け入れるその度量の大きさを持っていたのだ。

 

 そしてビーも同じ様な事をナルトに感じていた。結局は二人は似た者同士だったのだ。過去や己の境遇に負けず、前向きで明るく生きている。

 そんな二人が互いを受け入れて、年齢を超えた友となるのに然したる時間は掛からなかった。

 

 ビーの過去を知り、ビーと打ち解けあったナルトは己を受け入れる試練に挑んだ。

 この島には真実の滝と呼ばれる場所がある。そこは己の中にある闇と向き合う場所。自身の闇そのものに討ち勝たねば、憎しみの塊である尾獣の力は到底扱えないのだ。

 ナルトもビーと打ち解ける前にここで試練に挑み、そして一度は敗れた。己の闇に討ち勝つ事が出来なかったのだ。

 だが、ビーとその仲間と会話している内に、どうすればいいのかという答えをナルトは得ていた。己の闇に討ち勝つのではない。己を受け入れなければならないのだと。

 

 自分自身を信じられずにどうして前に進めようか。自分を疑わず自分に誇りを持っているビーを見て、ナルトはそれに気付いたのだ。

 そして、ナルトは自分自身を受け入れた。他人を憎み、疎ましく思う闇もまた、自分なのだと。

 己の中の闇を捨てず、受け入れ、そして乗り越えたナルト。これでナルトは己の中にある九尾と向き合う資格を得たのだった。

 

 

 

 真実の滝の試練を乗り越えたナルトは、次に本命である九尾のコントロールを得る修行へと挑む。

 その修行法は、滝の裏にある特殊な遺跡にて行われるものだ。その遺跡は尾獣と対話出来るシステムとして作られた遺跡だ。その中で人柱力に選ばれた者は尾獣と対話し、そして尾獣の力を自在に引き出せる様になったのだ。

 ただし、ごく限られた僅かな人柱力のみが、であったが。尾獣との対話を失敗した多くの人柱力はそこで死に、尾獣は新たな人柱力が来るまで遺跡の中に封印される仕組みとなっているのだ。

 

 死ぬ可能性がある。ビーからの説明でそれを理解したナルトは、その事実に恐れず九尾と相対する事を選んだ。

 遺跡の奥には何もない白く広大な部屋があった。そこは真実の滝と似たシステムで作られた部屋であり、この場所で集中する事で己の精神世界にて尾獣と対話する事が出来る様になっている。

 そしてナルトは、九尾の力をコントロールする為に……九尾の封印を解いた。

 

 ナルトの精神世界での九尾との戦いはナルトの優位に進んでいた。

 ビーがナルトの精神世界に八尾の力を送り、それで援護し、ナルトも本体がじっと座って己の精神世界に没頭しているのを利用し、仙人モードとなって一気に九尾を追い詰めたのだ。

 だが、尾獣の力をコントロールするにはここからが本番だった。人柱力が尾獣の力を得る為には、尾獣の意思から尾獣のチャクラを奪う必要がある。

 奪ったチャクラは人柱力の物となる。だが、その際に必ずと言って良いデメリットがあった。尾獣の意思からチャクラを奪うという事は、尾獣の意思に触れるという事なのだ。

 つまりナルトは九尾の意思に、九尾の憎しみに触れるという事になる。それを防ぐ為には強い意思が必要であり、その為の真実の滝の試練だったのだ。

 

 だが、九尾の憎しみはビーの予想に反して強すぎた。ナルトは九尾のチャクラを吸収すると同時に九尾の憎しみも吸収してしまう。

 

――憎い!!――

――苦しい……!――

――殺してやりたい……!――

――助けて!――

――復讐してやる……!――

――あいつさえ居なければ!――

――どうせうまくいかない……――

――あいつばっかり……!――

 

 それは、無数の憎しみの塊だった。一つではない。一人ではない。多くの意思による憎しみの塊。それが九尾の憎しみの正体。

 尾獣とは、十尾と呼ばれる最強のチャクラを持つ存在の一部だ。十尾が九つに分離したのが九体の尾獣の始まりである。

 そして十尾はその力でかつて人々を苦しめていた。元々は十尾のチャクラは純粋な力の塊だったのかもしれない。そこに多くの人々の苦しみや憎しみが混ざり、黒に染まってしまった。

 憎しみのチャクラは九体に分離しても消えなかった。それどころか尾獣は長く在り続ける内に、尾獣としての力を利用され人々に振るわれる度に、更なる憎しみを得ていったのだ。

 

 特に九尾に染み付いた憎しみは他の尾獣を上回っていた。九尾は尾獣の中でも最大の力を持つ存在だ。それ故に積もり積もった憎しみも強大なのだろう。

 九尾の憎しみに飲み込まれかけたナルトは暴走の一歩手前まで陥ってしまう。傍で見守っていたヤマトはそれを抑えようと木遁の力を振るおうとする。

 だが、その前にナルトの内面で変化が起こっていた。

 

 

 

 

 

 

「お前にワシの力をコントロールする事などできん! お前はワシの憎しみの小さな一部にすぎん!」

 

 九尾の言葉はナルトに重く圧し掛かっていた。九尾が発する言葉を聞く度に、ナルトは暗く重たい過去を思い出す。

 だが、ナルトは耐えた。認められず、相手にされず、疎ましがられ、迫害された事もある。だがそれだけじゃなかった。

 三代目火影は忙しい中も自分に愛情を向けてくれた。その妻ビワコは忙しいヒルゼンに代わり、ナルトを本当の孫の様に扱ってくれた。

 多くの子どもからは嫌われていたが、それでも友はいた。一緒にいたずらをする悪友。共に修行する仲間。互いに認め合った好敵手。こんな自分を愛してくれる女性。

 憎しみだけで育った訳ではない。それがナルトを九尾の憎しみから押し止めていた。

 

「存外しぶとい……! だが、それもここまでだ小僧!」

 

 だが、そんなナルトに対して、九尾はわざと大量のチャクラを分け与えた。

 

「うわああああ!?」

 

 今までの比ではないチャクラをその身に吸収したナルト。それと同時に九尾の憎しみも大量に浴びてしまったのだ。

 

――消えろ! 消えちまえ! 消えていなくなれ!!――

 

 一人では耐えようのない憎しみがナルトの中に渦巻き、ナルトを支配しようとする。その時だった。

 

――いいえ……ここに居ていいのよ――

 

「!!」

 

 ナルトの中に憎しみ以外の声が響いた。その声はとても穏やかで、何故か愛しく、ナルトの心に染み渡っていく。

 不思議とナルトを締め付ける憎しみは収まっていた。そして目の前に佇む一組の男女にナルトは気付く。

 

「ナルト……」

「ようやく会えたね」

 

 二人はナルトに向けて優しく微笑みかけた。そこにあった感情は愛、その一言に尽きるだろう。

 自身に向けて微笑み掛けてくる初対面の二人にナルトは戸惑うが、男の方はどこかで見た事があると既視感を感じ、そして思い出した。

 

「んっと……ああーー! 四代目の顔岩の人!」

「はは……そこは普通に四代目でいいよナルト……」

 

 そう、男の方は四代目火影の顔岩とそっくりの顔をしているのだ。というか、本人である。正確には本人を模した存在なのだが。

 

「ナルトって……オレの名前……どうして……?」

 

 目の前の人物が四代目火影だとして、なぜ自分の名前を知っているのか。現状が理解出来ずに混乱するナルトは、次のミナトの答えを聞いて更に混乱する。

 

「そりゃ、お前の名前はオレが名付けたんだから。せがれなんだし」

「せがれ? じゃあオレってば――」

 

 せがれ。つまりは息子。それが正しいならば自分は四代目火影の息子だという事になる。

 そのいきなりの事実にナルトが驚愕している中、ミナトの隣にいた女性が突如としてミナトの後頭部を殴り付けた。

 

「いたっ! 何すんのさクシナ!?」

「なーに言ってるってばね! 何が、お前の名前はオレが名付けたんだから、よ! ナルトの名前は自来也様から頂いたものだってばね!」

「そ、それは、そうだけどさ。それを決定したのはオレだろ? 成長した息子との初対面なんだから少しはかっこつけさせてよ……」

 

 突如として始まった寸劇にナルトは戸惑う。四代目火影に対してこうも気安く話す女性は一体何者なのか。

 疑問に思った事は色々と考える前に知っている人に聞くのが早い。そう結論したナルトは素直にミナトに疑問をぶつけた。

 

「な、なあ……もしかして、四代目火影がオレの父ちゃんなのか? それと、そっちの女の人は一体誰なんだってばよ!?」

「“てばよ”……私の口癖って遺伝みたいだってばね……」

「ふふ、そうかもしれないね」

 

 ナルトの疑問に対し、ミナトも女性も答えを返してはいなかった。

 それは仕方ない事だろう。二人はけしてナルトを蔑ろにして答えなかったのではなく、最愛の息子とようやくの再会に気持ちが先走っていたのだから。

 

「“てばね”って……も、もしかして……」

 

 自分と同じ様な口癖。そして父だろうミナトと仲睦まじい女性。

 ナルトはその答えに辿り着き、そして最後の確認をするかのように二人に期待を籠めた視線を送る。

 その視線を受けて、二人はより一層の愛を籠めてナルトに名乗りを上げた。

 

「さっきの質問の答えを言うよ。オレは波風ミナト。君の、父親だよ」

「私はうずまき(・・・・)クシナ。あなたの――」

 

 そこまでで十分だった。答えを最後まで聞く前に、耐え切れなくなったナルトは二人に向かって飛び込み、抱きついた。

 ナルトは震えながらミナトとクシナを、父と母を抱き締める。これが嘘ではないんだと言わんばかりに震えながらだ。

 それを受け止めた二人は優しく抱き締め返した。

 

「ずっと……ずっと会いたかったってばよ……父ちゃん……! 母ちゃん……!」

「うん……私も……」

「オレもだよ……ナルト」

 

 十六年ぶりに再会を果たした親子は、その時間を埋めるかの如く抱きしめあった。

 だが、ゆっくりとしていられる状況ではない。まずはその時間を作る為に、クシナは残されたチャクラで九尾の動きを縛り付ける。

 

「ちょっと待っててねナルト。まずは九尾を大人しくさせるから」

 

 うずまき一族は封印術に長けており、クシナもそれに漏れず強力な封印術を会得している。その封印術は凄まじく、強大凶悪なチャクラの持ち主である九尾をすら封印出来る程だ。

 うずまき一族の生命力と封印術。この二つを有しているからこそ、クシナは九尾の人柱力として選ばれたのだ。

 そうして九尾を一時的に封じた後に、ナルト達は様々な会話を行った。

 

 最初はナルトが不満をぶつけた。何故自分の子どもに、オレに九尾を封印したのか。

 九尾の入れ物となったせいでナルトは辛い思いを何度もしてきたのだ。それがなければどれだけ違った人生を歩めていたか。

 両親に出会えた嬉しさはあれど、それと同時に今まで思っていた事をぶつけたいという気持ちも絡み合っていたのだ。

 

 そんなナルトに対し、ミナトとクシナは謝る事しか出来なかった。事情はあったとはいえ、それは火影としての事情、世界の平和の為の事情。非常に重要な事だが、犠牲となったナルトには関係ない話でもある。

 だが、ナルトはそんな二人を許した。確かに辛かった。苦しかった。だが、それでも自分は四代目火影の息子なのだ。ならばこれくらい耐える事は出来る。

 そう言い放つナルトを二人は誇りに思う。自分達が育てずとも立派になってくれた事に感謝する。そして、自分達の手で育てられなかった事を悔い、悲しむ。

 だが悲しんでばかりはいられない。こうしてチャクラを以ってして意思を具現化するには制限があるのだ。チャクラが無くなってしまえば消滅してしまう。その前に二人はナルトと様々な会話をした。

 

 会話と言っても重要な事は僅かだ。十六年前に九尾復活を企んだ男の正体はすでに知れている。その事はミナトとクシナもナルトの中で見ていたので当然知っていた。

 むしろ、ミナトとクシナが驚愕したのは仮面の男の正体ではなく、日向ヒヨリが転生し、自分の息子を鍛えている事だったりする。

 ナルトの中にチャクラと意思のみで存在していた二人は、ナルトが見聞きした事柄を感じ取れていた。その中でアカネの正体がヒヨリであると察したのである。

 四代目火影とその妻であり九尾の人柱力であったクシナだ。当然木ノ葉隠れ最大の顔役であったヒヨリとは幾度と無く面識があり、ミナトに至っては螺旋丸を開発してヒヨリに見せたら、ヒヨリが昔から使っていた技術の一つであったと判明した苦い過去もあるくらいだ。

 そんな二人がアカネのチャクラを感じてその正体が日向ヒヨリであると察するのは容易く、その強さを見て正体を確信するのに時間は掛からなかった。

 

「しかし……ヒヨリ様が転生するなんてね……」

「ぴっちぴちに若返っていたってばね……羨ましい……」

「……ヒヨリ様? それって誰?」

 

 会話の中でミナトからふと漏れたその名前にナルトは聞き覚えがなかった。二人がこうして話題に出したという事は、自分に関わりがある事のはず。だが聞き覚えは無い。

 そうして疑問に思っているナルトを見て、ミナトとクシナの方が残念そうな表情をしていた。

 

「ナルト……修行もいいけどもう少し勉強もしようね。火影になると書類仕事が結構あるからね?」

「う……お、おっす!」

 

 元火影だけに実感の籠もった言葉である。ナルトもそれをしみじみと理解し、火影を目指す身として渋々だが了承した。

 

「ヒヨリ様はかつて初代火影様やうちはマダラ様と一緒に木ノ葉隠れを築き上げたお方よ。初代三忍って言えば分かるかしら?」

「三忍って……! エロ仙人が二代目三忍って奴だろ!? じゃあ初代三忍のヒヨリ様ってすげーんだな! ……ん? でも、何でそのヒヨリ様って奴が話に出てくるんだってばよ?」

 

 初代火影と言えばかなり昔の人物であり、当然本人は死亡している。ならそのヒヨリという輩も同様のはずだ。

 そう考えるナルトだが、ミナトはアカネがまだナルトに話していない事を鑑みて、ここでは黙っておく事にする。

 

「まあ、その内分かる事だよ。今は別の話をしよう」

「うーん……ま、いっか」

 

 ミナトの言い分が少々気になったナルトであるが、それよりもせっかく出会えた両親と会話する方が重要だと考えてヒヨリの事は忘れる事にした。

 3人は残された時間を使って会話を続ける。そして二人は、ナルトに向けて自らの想いを託した。

 

 ナルトならば、忍の世に蔓延る憎しみを終わらせる答えを見つけ出せると。どこまでいっても子どもを信じるのが親だからとミナトは言う。

 

「ナルト。オレはお前を信じてる」

 

 親が子を愛するのは当たり前。その当たり前を生まれてから一度も受け取れなかったナルトに対し、クシナは愛を籠めて言う。

 

「ナルト。あなたを愛してる」

 

 二人の言葉を受け取ったナルトは心の底から充足していった。二人の言葉は心の隅まで染み渡り、絶大な安心感をナルトに与える。

 先ほどまで九尾の憎しみに捉われていたのが嘘の様に、ナルトは一気に九尾の憎しみを追いやった。

 

 そして再びナルトと九尾の戦いが始まる。

 両親によって憎しみを追いやる事が出来たナルトは、今までとは比べ物にならない攻撃を九尾に加える。

 ミナトの援護とクシナの封印術も相まって、九尾は手も足も出せずにいい様にやられ、そのチャクラの多くをナルトに吸収された。

 それでもなお九尾の力は凄まじかった。膨大なチャクラを籠められた巨大な黒い球を作り出し、尾獣玉と呼ばれるそれをナルトに向けて放とうとする。

 だが、そこまでだった。ナルトが腹部の封印式を操作し、一瞬で九尾を元の封印牢へと封じ込めた。

 

 怨嗟の声が九尾から漏れ出る。それをナルトは受け止め、そして憎しみ以外の感情で返した。

 

――ごめんな九尾……でも、おめーを悪ぃようにはしねーから……少しの間、待っててくれ――

 

 両親との邂逅と語らいは、ナルトから九尾の憎しみすら乗り越える力を与えていた。

 今はまだ無理だ。だが、必ず九尾を受け入れる。九尾を疎ましくすら思っていたナルトが、九尾を真に認めた瞬間であった。

 

 ……そして、別れの時がやってきた。

 ミナトとクシナがこうしてナルトの精神世界で対面出来たのは、二人が死ぬ前に自らのチャクラをナルトに封じ込めた為だ。

 ナルトが九尾を暴走させそうになった時や、九尾の人柱力として力をコントロールしようとした時に助ける事が出来るようにとの想いによって、二人はナルトにチャクラを封じた。

 だが、封じられたチャクラの量は定められており、そして回復する事はない。こうして意思を具現化するだけでチャクラは消費され続け、その上九尾との戦闘でナルトを援護した事でチャクラは更に消費された。

 もう、二人に残された時間は殆ど無かったのだ。

 

 二人は最後に十六年前の事件、九尾復活の真相についてナルトに語る。そして、事情があったとはいえナルトに重荷を背負わせた事を再び謝った。

 そしてナルトもまたそんな二人を再び許した。いや、そもそも恨んですらいないと伝えたのだ。確かに九尾を封印された事に憤りを感じた事はある。だが、それで親を恨んだ事はなかった。

 親の愛情というものを理解していなかったナルト。だが、今ならそれが理解出来た。自分の命を子どもの為に与えてくれた両親。そこに籠められた物は一つ、そう、愛情だ。

 自分の器には九尾よりも先に愛情が入っている。それが分かっただけでナルトは十分であり、幸せだった。

 

 父と母の子で良かった。ナルトの想いの全てを聞いたミナトとクシナは、ナルトに礼を言いながら消えていく。

 

――私達の元に生まれてきてくれて……本当にありがとう――

 

 消えていった父と母。だが、その想いはナルトの中に残っていた。

 そしてナルトはここに誓った。火影になる事を。どの先代すら超えた火影になる事を。そして父よりも格好良い男に、母よりも強い忍になる事を。

 

 こうして、ナルトは現実世界へと意識を帰還させる。

 生まれた時から籠められた愛によって、九尾の憎しみを克服したナルト。だが、真に九尾と分かりあえた訳ではない。

 未だ完全なる人柱力とは言えず、新たに得た力もまだ未熟。なので、ナルトは先達であるビーと共に新たな力を自在に操る修行を行うのであった。

 

 




 尾獣の憎しみ云々の考察はオリジナルです。九尾の憎しみがナルトに流れた時、無数の人間の憎しみが流れた様な描写が見えたのでこのように考察しました。

 ミナト「九尾が本格的に暴走しそうになった時にナルトを助けようとスタンバってたけど、結局暴走しなかった件について。大体ヒヨリ様のせい(おかげ)」







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