どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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NARUTO 第三十九話

 千手柱間。言わずと知れた初代火影であり、初代三忍の内の一人。そんな伝説の人物が突如として戦場に現れた。

 そして、この衝撃的な事実に忍連合軍が気付く前に、次々と新たな援軍がやって来る。

 

「兄者め。慣れ親しい友と再び共闘出来るからと逸り過ぎだろう」

 

 優れた瞬身の術の使い手である扉間が到着。次にクシナを抱えたミナトと、そして大蛇丸も戦場に到着する。

 クシナという人一人を抱えてこの速度。瞬身使いとしては自身以上かと、扉間はミナトを称賛する。

 

「遅れたかな、ナルト」

「私達が来たからにはもう大丈夫だってばね!」

「父ちゃん、母ちゃん!」

 

 ナルトは九尾モードのチャクラ感知にて二人の存在には気付いていた。だが、それでも実際に再会した時の喜びは想像以上だった。

 ミナト達も最愛の息子とこうして現実世界で対面出来た事を喜ぶ。しかし今は戦争中、それも最終局面だ。感動の再会に浸るのは後にして、今は前方にいる恐るべき敵に集中すべきだと気持ちを切り替える。

 

 

 

 別の場所では援軍に現れた大蛇丸に、自来也と綱手が驚愕していた。

 

「大蛇丸!」

「お前! いつイザナミから抜け出したのだ!」

 

 まさかの大蛇丸の登場に、綱手と自来也は目を見開いた。

 そんな旧友に対し、大蛇丸は相変わらずな二人だと思い、そして変わりすぎたのは自分かと自嘲する。

 

「久しぶりねぇ二人とも。まあ、今はそんな事よりもあっちを優先すべきじゃない?」

 

 そう言って大蛇丸は前方を指差す。そこには猛り叫ぶ十尾の姿があった。まるで自分の攻撃が意味を成さなかった事に怒り狂っているかの様だ。

 確かに、今は大蛇丸の事情や真意を問いただしている暇はない。自来也はそう考え、そして大蛇丸の目を見て確認する。

 

「……信じていいんだな」

「それはあなた達が決めなさい」

 

 それ以上、大蛇丸は何も言わなかった。ほんの僅かな間が空き、そして自来也は不敵に笑う。

 

「鈍っておらんだろうな! 遅れたら置いていくぞ!」

「私達の中で一番みそっかすだったあなたにそんな事を言われるなんてねぇ。初代様達も見ている事だし、三忍の面汚しにはならないでよ?」

『お前が言うなお前が!』

 

 自来也と綱手の息のあった熟年突っ込みであった。だが、残念でもなく当然の突っ込みである。

 そして三人は共に僅かな笑みを浮かべ、一瞬にしてかつての空気を取り戻す。そう、二代目三忍と称された時の空気を。

 

 

 

 一方、柱間は懐かしき友との再会を喜び楽しく会話を繰り広げていた。

 

「ガハハハハハ! オレはお前を信じていたぞマダラ!」

「いたっ、……すまんな柱間。迷惑をっいっ、迷惑っ――」

 

 嬉しそうに笑い、ばしばしとマダラの肩を叩き続ける柱間。よほどマダラが裏切っていないという事実と、マダラと友として再会出来た事が嬉しかったのだろう。

 

「めいわっ……いてーだろうが! いつまでも叩いてんじゃねぇこの馬鹿が!」

「ぐはっ! ガハハハハ!」

 

 かつて友に掛けてしまった多大な失態について謝罪しようとするマダラだが、柱間が肩を叩く力があまりに強かった為に、思わず反撃をしてしまった。

 だがそれでも柱間はめげずに大声で笑い続ける。そこにはただ嬉しいだけでなく、マダラに対して気にするな、という思いが籠められていた。

 それはマダラも気付いていた。だからこそ、マダラは柱間の想いを汲んで、いつも通りに柱間と接する事にした。

 

「何やってんですか二人とも……。まあ、間に合った様で何よりですよ柱間」

「おう、ヒヨリ! おぬしならばとっとと終わらせかねなかったからな、出来るだけ急いだぞ! ……それにしても」

 

 柱間はアカネの身体をじろじろと眺め回す。そして一言。

 

「あらためて見るとなんとまあ、ピチピチに戻ったものよ! 以前よりも胸は大きいのでは――」

『ふん!』

 

 完全なるセクハラ発言に、アカネとマダラのツープラトンが炸裂する。哀れ、柱間は参戦直後に再起不能のダメージを受けた。

 まあ、穢土転生なので何の問題もないのだが。ついでに言うと哀れでもなく当然の結果でもある。

 

 

 

 そんな風に旧友達がその親交を深めたり、親子が真の再会を喜んでいる中、イズナがその口を開いた。

 

「で? だからどうした?」

 

 イズナの言葉に誰もが視線をそちらに向ける。もっとも、再会を喜んでいた者達も、意識はちゃんとイズナと十尾に向けていたのだが。

 イズナのその言葉の意味を理解出来た者は少ない。それは初代三忍達だけであった。その言葉の意味は――イズナがそのまま口にした。

 

「初代三忍が揃った所で、それで勝てると思っているのか?」

 

 その言葉にあるのは純然なる自信。例え初代三忍が全員揃った所で負ける要素は欠片もないという、圧倒的なまでの自信だ。

 そんなイズナに対し、アカネもまた自信をもって返した。

 

「先ほども言ったが……あまり三忍を舐めない方がいいぞイズナ」

「お前達三人の強さは良く知って――」

「違うな」

 

 イズナの言葉を遮ったのはマダラだ。その言葉に、一つ間違いがある事を指摘したのだ。

 その間違いとは――

 

「イズナよ。三忍の称号は……既にオレ達だけのものではない」

 

 初代三忍、千手柱間・うちはマダラ・日向ヒヨリ。

 二代目三忍、自来也・大蛇丸・綱手。

 そして、初代に三代目として認められた新たな三忍、うずまきナルト・うちはサスケ・春野サクラ。

 

 ここに、三代に渡る全ての三忍が揃った。

 

 

 

 イズナは思う。なるほど。確かに戦力は増した。三忍が全て揃い、その上二代目火影や四代目火影にその妻までいる。

 それでもイズナは揺るがない。例え敵の戦力がどれほど増大しようとも、最早イズナに止まる術もなければ、そのつもりもないのだから。

 最早言葉は無意味。ならば力で以って示すのみ。イズナがその判断に至った瞬間、扉間が動き出した。

 

「猿! ダンゾウ!」

『はっ!』

 

 扉間がそう叫ぶと、ヒルゼンとダンゾウは一瞬にして扉間の前に移動し跪いていた。

 

「四赤陽陣をする! 手伝え!」

『ははぁ!』

 

 四赤陽陣。それは火影級の忍が四人で協力して初めて出来るという、強力な結界だ。その強さはかつてヒルゼンを閉じ込めた四紫炎陣の数十倍も強いという。

 その術の使い手として、扉間はヒルゼンとダンゾウを選んだ。残る二人は当然火影である扉間と、そしてミナトである。

 柱間が選ばれていない理由は、柱間がこの戦場に到着するまでに、自分も思う存分アカネ達と暴れたいと我侭を言ったからである。

 兄が一度言い出したら聞かない事を理解している扉間は、仕方なくそれを承諾し、そして最後の一人にダンゾウを選んだ。

 

 その理由を扉間はダンゾウに説明せず、ただ一言、四赤陽陣をする、と命令だけを下す。

 それにダンゾウは応えた。出来るか、等とは扉間は言わない。出来る事しか扉間は言わないからだ。つまり、自分ならば火影と変わらぬ働きをすると信じられているのだ。

 それに応えずして何が忍か。ダンゾウは何の反論や疑問も抱かずに、扉間やヒルゼンと共に前に立つ。

 

「二代目、三代目、ダンゾウ様、私の前へ」

 

 四赤陽陣の為の前準備は既にミナトが終わらせていた。四人で対象の四方を囲む必要があるのだが、ミナトの飛雷神の術があればそれも容易い事だった。

 ミナトは飛雷神のマーキングがついた特別製の苦無を十尾の後方と左右に投げていたのだ。その早業に扉間も火影の名は伊達ではないかと笑みを浮かべる。

 そしてミナト自身も全力で戦う為にその力を発揮する。その力とは、ナルトと同じく九尾チャクラモードであった。

 

 ナルトの中に封印されている九喇嘛は陽のチャクラの塊であり、残る陰のチャクラはミナトの中に封印されていた。

 ミナトはその陰の九尾チャクラをコントロールし、九尾チャクラモードへと至ったのだ。恐るべきはそのセンスだろう。ナルトが苦労した九尾のコントロールを、ここまで完璧にこなしているのだから。

 ……もしかしたらだが、死神の腹の中で延々と陰の九尾と共に苦しんでいた事により、陰の九尾と何らかの友情みたいなものが芽生えたのかもしれない。

 

 ともかく、九尾チャクラモードになったミナトは、扉間達三人をそれぞれの配置へと飛雷神の術にて飛ばす。

 ちなみにミナトの配置は真正面であった。これはミナトが勝手に選んだ配置だ。理由は、最愛の妻から離れたくないというものと、最愛の息子の活躍を正面から見たい、という二つの個人的理由からである。

 

「行くぞ!」

 

――忍法・四赤陽陣!――

 

 扉間の掛け声と共に四赤陽陣が発動し、十尾の四方に巨大な結界が張られた。

 そしてそれだけではない。ミナトはクシナに向けて視線にて合図を送る。

 

「もういっちょ! 喰らうってばね!!」

 

 クシナが気合を入れた瞬間に、クシナの身体から無数の鎖状のチャクラが溢れ出した。かつては九尾を完全に押さえ込んだという、うずまき一族の強力無比な封印術だ。

 流石にこの封印術を以ってしても十尾を封印する事は叶わないが、それでも動きを封じるくらいならば可能であった。

 

「よし……! これで十尾の動きは封じたわ……! でも長くは持たないわよ!」

「大丈夫だよクシナ。その前に十尾を――来る!」

 

 動きを封じられた十尾は、その怒りを力に変えて放った。

 巨大な尾獣玉が十尾の口から放たれる。その破壊力は先に見た通りだ。だが、四赤陽陣は結界術の最高峰であった。

 放たれた尾獣玉が四赤陽陣にぶつかる。その威力に四赤陽陣は大きく歪み膨らむが、結界は砕かれる事はなくその威力に耐え、そして尾獣玉の爆発は開いている上空に向けて上昇していった。

 

「危ないからお口も閉じときなさい!」

 

 クシナの封印術が更に十尾を縛り、その口元を塞ぐ。これで簡単に尾獣玉は放てなくなるだろう。

 

「す、すげぇ!」

 

 ナルトは火影や母の力に興奮していた。特に火影の力を目の当たりにした事は、火影を目指すナルトとしては興奮するのは当然であった。

 そして柱間が木分身にて結界の四面それぞれに出入り口を作り出す。これで忍達は四赤陽陣に入り、十尾に挑む事が出来る様になった。

 

 それだけではない。九喇嘛の協力もあり、ナルトは影分身を駆使して忍達全員に九尾のチャクラを受け渡していた。

 これにより忍達は今までの数倍のチャクラを得て、大幅にパワーアップする事になる。当然ナルトの中の九尾チャクラは減るが、九喇嘛が瞑想してチャクラを溜める事で再び回復は可能だ。

 このチャクラの受け渡しは九喇嘛のチャクラを忍一人一人のチャクラ性質に合わせて器用に変化させなければ不可能だ。それが出来る様になるほど、ナルトが成長したという事である。

 

 そうして九尾のチャクラを得た忍に対し、イズナは身動きが取れない十尾の代わりに、十尾の肉体から小さな分裂体を無数に生み出して対抗する。

 小さな、と言ってもそれは十尾と比べての話だ。分裂体の大きさはバラバラだが、最も小さい者でも人間大。大きな者は10mを超える者までいる。

 そんな化け物達に対し、忍達も怯まずに立ち向かう。忍連合軍と十尾の死闘が、開始された。

 

 

 

 

 

 

「しゃーんなろー!!」

 

 独特の掛け声とともに、三代目三忍とも称される程に成長したサクラが分裂体の群れを突破する。

 サクラの額には綱手と同じく白豪の印が浮かんでいた。三年間チャクラを一定に溜め続けるという、緻密なチャクラコントロールがあって初めて会得出来る白豪の印。

 溜め込んだチャクラを用い、師匠である綱手譲りの剛力にてサクラは分裂体を粉砕していく。

 更に、アカネによって鍛えられた技術も同時に発揮していた。この世界で極少数しか会得していない技術、合気である。

 

 分裂体の動きを鍛えられた観察力で見抜き、力の流れと重心のバランスを見切り、分裂体の攻撃に合わせて柔を仕掛ける。

 そうしてバランスを崩した所に、全力の一撃を放つ。その一撃によって分裂体は他の分裂体を巻き込みつつ、数百メートルも吹き飛ばされて行った。

 

「……サクラちゃんを怒らせるのは止めておこう」

「……こればかりは同意する」

 

 自分が分裂体だったら。そんな恐ろしい想像をしたナルトとサスケは、サクラを本気で切れさせる事はしないと誓った。

 

「さて、サクラちゃんに負けてられないってばよ!」

「どっちが多く倒せるか、勝負するか?」

「上等だ! 吠え面かかせてやるぜ!」

 

 サクラばかりに活躍させるつもりもなく、ナルトとサスケは競い合いながら分裂体へと向かっていく。

 九尾チャクラモードのナルトは圧倒的な速度にて数十もの分裂体を一瞬で吹き飛ばし、サスケも雷遁の鎧による高速移動と攻撃力で、ナルトに負けじと分裂体を切り裂いていく。

 

「まだまだぁ!」

「おおおおぉ!」

 

 そして、ナルトはナルトでサスケに負けじと更なる力を発揮し、サスケもまた同じ様に力を振るう。

 

――風遁・超大玉螺旋手裏剣!!――

――炎遁・須佐能乎加具土命!!――

 

 そして、九喇嘛のチャクラにて超巨大化させた螺旋手裏剣をナルトが放ち、サスケは須佐能乎の弓矢に加具土命の力を混ぜ合わせた一撃を放つ。

 その強大な一撃は、それぞれが数百もの分裂体を消滅させる。それを見たナルトとサスケが叫ぶ。

 

『よし。オレの勝ちだな。……』

 

 互いに異口同音し、そして睨み合う二人。負けず嫌いであり、あいつだけには負けたくないと互いに思っている二人は、次の瞬間には新たな獲物を求めて同時に動き出していた。

 

 

 

 本人達が知らぬ内に三代目三忍の名を襲名されたナルト達が奮闘している中、二代目三忍達もまたその猛威を振るっていた。

 

「さて、久しぶりにやりましょうかねぇ」

「まさか再びお前と力を合わせる時が来るなんてな」

「人生とは分からぬものよのゥ。だからこそ面白い!」

 

 再び集結した二代目三忍。この三人の誰一人として、こうなる未来を予想した者はいなかった。

 だからこそ、大蛇丸も綱手も自来也の言葉に同意する。未来は未知だからこそ面白いのだ、と。

 

「さあ! 大舞台ゆえに張り切って行こうかのゥ!! 遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ!! 怒りに溢れた血の涙ァ! 三忍語りて仙人に! 妙木山の蝦蟇妖怪!! 自来也様たァ――」

「先に行くわよ!」

「置いて行くぞ自来也!」

「あ、ちょっ! 待たんかお前ら! 少しは空気を読まんか!」

 

 せっかくの見栄切りをまたも邪魔され、自来也は怒り心頭になる。だが、大蛇丸と綱手から言わせると空気が読めてないのは自来也であった。

 

「ええぃ! もういいわい! 合わせろよ大蛇丸!」

 

――火遁・大炎弾!――

 

「仕方ないわねぇ」

 

――風遁・大突破!――

 

 自来也と大蛇丸が同時に放った火遁と風遁が互いに合わさり、その威力を増幅していく。

 巨大な壁となった炎はそのまま直進し、無数の分裂体を飲み込んでいく。

 

「はあぁ!!」

 

 そしてその壁を突き破り、綱手が生き残った分裂体に直進してそのまま殴り付ける。

 流石はというべきか。弟子であるサクラに劣らぬ怪力にて、分裂体は吹き飛んで行った。

 

「さて、細かいのは他の忍でも相手に出来るでしょう。私達は大物を仕留めましょうかね」

 

 そう言って大蛇丸は分裂体の中でも大型の物に標的を絞り、複数の大型分裂体に向けて術を放った。

 

――口寄せ・三重羅生門!――

 

 羅生門とは攻撃の為の術ではなく、本来は防御の為の術だ。だが、大蛇丸はそれを敵の動きを封じる為に使用した。

 大型分裂体の周囲を囲むように三つの巨大な羅生門が口寄せされる。それにより逃げ場を失った大型分裂体達は、次の一撃を無防備に受けてしまう。

 

「次はあなたが合わせなさい!」

「全力でやるからのぅ! それでワシの方が強すぎたら謝るとしよう!」

 

 自来也は、自分の全力についてこれなかったら謝ってやろうと、励ましと挑発を混ぜた発言をし、加減なしに術を放つ準備をする。そう、仙人モードである。

 当然それを見た大蛇丸も負けじと仙人モードへと至る。互いに仙人になった二人は不敵に笑い合い、そして全力の術を放った。

 

――仙法・火遁大紅蓮弾!――

――仙法・風遁大嵐烈風!――

 

 獄炎と大嵐。二つが混ざりあい、羅生門の内側に地獄が現出した。大型分裂体達は一瞬にして焼滅し、強靭な耐久力を誇る羅生門すら内側から溶けつつあった。

 

「過剰火力だろうが! もっと大勢の敵を巻き込んでやれ!」

 

 それを見た綱手はもっともな意見を放ち、敵側に向けて羅生門を全力で殴り付ける。

 綱手の怪力によって羅生門は吹き飛ばされ、その勢いに押されて地獄の炎も無数の敵に向けて吹き飛んでいく。哀れ、直線上にあった分裂体は溶解しかけた羅生門に押し潰されたり、地獄の炎に巻き込まれて焼滅していった。

 

 そうして多くの分裂体を倒した二代目三忍だが、その手を休める事なく更なる力を戦場で発揮する。

 

――口寄せの術!――

 

 自来也の口寄せ、巨大ガマのガマブン太。

 大蛇丸の口寄せ、巨大ヘビのマンダ。

 綱手の口寄せ、巨大ナメクジのカツユ。

 口寄せ三竦みと恐れられた二代目三忍の口寄せ動物が再び集い、戦場で暴れるのであった。

 

 

 

 二代目三忍と三代目三忍の活躍ぶりを見て、初代三忍達はその力を称賛していた。

 

「ほほぅ! あれがお前達の言う二代目と三代目か! なるほどなるほど。里の力は無事に育っているようだな。安心したぞ!」

 

 アカネとマダラに二代目三忍と新たな三代目三忍の話を聞かされた柱間は、後任達の活躍を見てご満悦だった。

 自分がいなくなった後も、里は立派に成長をしている。それを目の当たりに出来て嬉しかった様だ。

 

「うーん、まあ、強さは十分なんですが……。一人は少々……いえ、かなり危うかったんですよねぇ」

 

 アカネは三忍達の中で一人だけ大罪を犯している人物を思い浮かべ、人間変わりもするものだとしみじみと感じていた。

 誰よりも人生経験が豊富なアカネであったが、あそこまで歪んでいた人物がこうも良い方向に変化したのを見るのは早々ない経験であった。

 恐るべきはイザナミと言うべきか。うちはの力は大概だなぁ。と、自分の力は棚に上げて感心するアカネであった。

 

「大蛇丸は確かに過ちを犯したが、結果的に見れば意外と助けになっていたりする……本当に意外だがな」

「そうなのか?」

 

 そう、アカネは知らぬ事だが、マダラが言う様に大蛇丸が木ノ葉隠れから抜け出さなければ現状は更に窮していた事になる。

 大蛇丸はビーをわざと逃がしたり、イズナに柱間と扉間の穢土転生を利用されないように封印したり、イズナから屍鬼封尽について聞き出してミナトの魂を救い出したりしているのだ。

 どれもこれも自分の利とする為にしてきた事ではある。ビーを逃がしたのも柱間達を封印したのも、大蛇丸が暁にこれ以上力を与えない様にする為であり、屍鬼封尽については自分の知識欲の為だ。

 それがどこをどう転がったのか、忍連合軍の為に上手く働いていた。だからといって大蛇丸がしてきた事は到底許される事ではないのだが。

 

「罪は罪であり、罪には罰が必要だ。だが、罪とはけして拭えぬものではない。大蛇丸とやらが改心したのならば、それを受け入れるまでぞ」

「……そうだな。では、オレも罪を拭う為に働くとしよう」

「お前の場合は仕方なかっただろうと言ってるのに……」

 

 柱間の言葉にマダラが同意し、償いの為に力を振るおうとする。

 アカネや柱間としてはマダラは操られていただけなのだが、マダラは割り切れてはいない様だ。

 

「まあ、それも後の話よ! 今は戦場に気を入れるべきぞ!」

「そうだな。このままだと後輩達に全ての見せ場を取られてしまいそうだ」

「それは困りますね。後輩達が調子に乗って増長しないよう、まだまだ修行が足らない事を教えてあげなくては」

 

 二代目三忍や三代目三忍達、そして多くの忍連合軍が戦っているのを見て、彼らに忍の最高峰を見せてやろうと初代三忍がその力を発揮する。

 

「では行くぞ!」

『おう!』

 

 柱間の掛け声と共に、三人が同時に仙人モードとなる。その所要時間、僅か一秒足らず。

 目のふちに僅かに隈取りが出来るだけの完全な仙人モードに至り、そして初代三忍が伝説の力を見せ付けた。

 

 

 

――仙法・木遁木人の術!――

 

 柱間が木遁忍術にて木製の巨人を作り出す。だが、木製と侮るなかれ。その力は尾獣玉すら相殺する事が出来る恐るべき巨人なのだ。

 その木人の上に立ち、柱間はそのまま木人を自在に操作する。前方の味方達を飛び越え、敵陣中央にて縦横無尽に暴れ出したのだ。

 近寄る分裂体など物ともせず、腕を一振りしただけで無数の分裂体を吹き飛ばし、足を振り上げるだけで無数の分裂体を文字通り蹴散らす。

 

――仙法・木遁挿し木の術!――

 

 更に木人の全身から四方八方に万を超える木の槍を飛ばし、一瞬にして周囲に群がる分裂体達を串刺しにしていく。

 

「まだまだ! 友との久しい共闘ぞ。存分に力を振るわせてもらうぞ!」

 

――仙法・木遁真数千手!――

 

 柱間が印を組んだ瞬間に生み出された物。それは木の巨人を遥かに上回る、無数の腕を持つ巨大な仏像であった。

 

――頂上化仏!!――

 

 真数千手の名の通り、数千もの腕から繰り出される連打が分裂体に向けて振り下ろされる。

 圧倒的質量から繰り出されるその連打の威力は、まさに質量以上に圧倒的であった。一撃一撃が分裂体を容易く屠る威力を持っており、それが数千数万と放たれるのだ。その威力の程は想像もつかないだろう。

 

「戦争は好かんが、敵が人ではないのがまだマシか。おかげで加減をする必要がないぞ!」

 

 そう言って、人間相手ではない事に安堵しつつ、柱間は分裂体に猛威を振るう。

 

 

 

 柱間とは別の戦場にてマダラは戦っていた。初代三忍の力は強すぎる為に、狭い戦場に集まって力を振るうと逆に効率が悪くなってしまう事もあるのだ。

 強力な個に対してならばともかく、無数の群に対してならばばらけた方が効率的なのだった。

 

「さて、柱間やヒヨリに負ける訳にはいかんな」

 

――完成体須佐能乎!!――

 

 山を断ち、地を砕く神話の力。完成体須佐能乎が戦場に顕現する。先程までとは違い、忍連合軍の味方としてだ。

 その力の程は既にこの場の誰もが知っているだろう。マダラは須佐能乎を存分に操り、忍達が期待した通りの働きを見せる。

 

「はっ!」

 

 一振り。ただそれだけで、大小様々な分裂体が大きさなど関係ないとばかりに一緒くたに切り裂かれていく。

 他の術など児戯。誰もにそう思わせる程に、マダラは須佐能乎の力にて戦場で蹂躙を開始した。

 そしてそれだけではない。マダラは忍連合軍の想像以上の力まで発揮したのだ。

 

――仙術須佐能乎!!――

 

 完成体須佐能乎に自然エネルギーを加えるという、生前のマダラの最強の力だ。この力にてマダラは柱間と互角以上に渡りあったのだ。

 心技体。全てが揃った今のマダラだからこその力だ。操られている時には発揮出来なかったマダラの全力が、分裂体目掛けて振り下ろされる。

 その一撃により、大地に巨大で深い峡谷が出来上がった。星が長い年月を掛けて作り上げる大自然を、土遁などの術の作用ではなく、ただの一撃の威力にて作り出してしまったのだ。

 それだけではない。その威力は分裂体や大地を切り裂くだけに留まらず、そのまま直進を続けて四赤陽陣にまで到達し、結界の一面を大きく歪めてしまう。

 

「む、いかんな。加減をせんと扉間に怒鳴られてしまうな……」

 

 マダラの心配は当たっていた。先の一撃が命中した結界の一面は扉間の担当する一面であり、先の一撃で無駄に結界に負担が掛かった事に怒りを顕わにしていたりする。

 

 

 

 アカネもまた二人とは違う場所を己の戦場としていた。

 アカネは火遁を除く四つの性質変化を駆使して雑魚狩りに励む中、同じくその力にて分裂体を狩っている柱間とマダラを見る。

 

「……」

 

 そこにあった感情は、懐かしの友とまた一緒に戦える嬉しさ――ではなく、あいつらなんかずるくない? というものであった。

 こっちが普通――アカネにとってはだが――に五大性質変化の術でそこらの忍と同じ様――アカネにとってはだが――に戦っているというのに、柱間達は木遁やら須佐能乎やらの特殊な力を振るっているのだ。絶対にずるい。

 アカネとしては何だか仲間外れにされた様な気になるのだ。アカネがそう思うのは仕方ない事と言えよう。けっして私もあんな風に巨大兵器みたいなのを操って戦いたい、と思っている訳ではないのである。

 

「……やってみよう」

 

 思い立ったが吉日。鉄は熱い内に打て。先人達は素晴らしい言葉を残してくれている。ならばそれに倣うのみだ。

 アカネはチャクラを練り上げ、その身に集中させていく。そしてそのチャクラを操作して造形を作っていき、須佐能乎の様にチャクラの巨人を作り上げ身に纏う事に成功した。

 

「出来た!」

『阿保かお前はぁぁ!!』

「おおぅ?!」

 

 いつの間にか、近くに柱間とマダラがいた。アカネが、「なあ、十尾って二体いるんだっけ?」、と忍連合軍に思わせる程に馬鹿げたチャクラを放ち、そのチャクラで巨人の衣を作り上げていたのだ。

 当然柱間とマダラがそれに気付かぬ訳がなく、恐ろしく無駄にチャクラを消耗する無駄のない超高度な技術を用いた無駄な術を作り出したアカネに耐え切れず、自分の戦場を離れて突っ込みに来てしまったのだ。

 

「な、なんですかいきなり!?」

「なんですか? じゃあるか! なんぞそのチャクラの巨人は!? どんだけぞおぬし!?」

「無駄にも程があるだろうが! そんなにチャクラを籠めて無駄な巨人作るくらいなら、同じチャクラで術を放った方がよっぽど効率的だろうが!!」

 

 柱間とマダラの指摘は非常に正しい。アカネの今の術は言うなれば須佐能乎の模倣みたいなものだが、須佐能乎とアカネの作り出した術には大きな違いがあった。

 須佐能乎のチャクラの鎧はあくまで須佐能乎という術の効果によるものだ。忍術の仕組みについて説明すれば分かるだろうか。例えば水遁・水龍弾の術という術がある。これは文字通り水の龍を敵にぶつけるという術だ。

 この術が龍の形をしているのは、術者が龍の形に形態変化させているからではない。術を発動する印にてそういう形になる様に設定されてあるからだ。なので、水龍弾の術は性質変化の術であり、形態変化の術ではない。

 須佐能乎もそれに近い。両目の万華鏡を開眼した者だけに使用できる術だが、須佐能乎の形は使用者によって千差万別あれど、わざわざああいう形に形態変化させているのではなく、あくまで術者固有の形としてあらかじめ決まっているのだ。多少ならば形態変化をさせる事も可能だが。

 

 だが、アカネが作り出したチャクラの巨人は違う。無駄にチャクラを練り上げ、それを巨人の形に形態変化させて身に纏う。確かに可能だ。圧倒的なチャクラ量と、圧倒的な技術があれば、だが。

 幸か不幸か、アカネはその両方を有していた。それこそ柱間やマダラですら足元にも及ばぬ程にだ。だからこそチャクラの巨人を作り出せたのだが、この場合は無駄に過ぎるというものだろう。マダラが言う様に、同じチャクラで普通の術を放った方が何倍も効率的だ。わざわざ巨人の形に形態変化させる意味がどこにあるというのか。それならそういう印を作り出した方が遥かにマシであった。

 

「いいんですよ! 私はチャクラの回復量も桁違いなんですから! この程度の消耗ならほんの一分足らずで回復するよ!」

 

 そう、チャクラ量が多いからこそその回復量もまた桁違いだ。消費した量は凄まじくとも、アカネからすれば全体の数パーセントだ。仙人モードのアカネならばすぐに回復する量しか消費していない。

 だから問題ない、というには明らかにやりすぎだったりするのだが。

 

「だってお前らばっかずるいじゃないですか!!」

『子どもか!』

「十七歳ですし! お前らと違って若いんだよこっちは!」

 

 だが、中身は千年を越える時を生きている。転生する故に連続して生き続けている訳ではなく、精神も年相応に合わせて多少は変化するが、それでもこれはない。

 

「ええい! ならばこっちもあれをやるぞマダラ!」

「む……やるのかあれを……」

 

 何やらアカネに対抗意識を燃やしたのか、柱間が何か不穏な事を言い出した。

 

「……あれ(・・)?」

 

 柱間の言うあれ(・・)とは一体何なのか? 自分の知らぬ二人の術などそう多くはない。というか、殆どないはずだ。

 そう疑問に思うアカネを他所に、二人はかつてヒヨリに隠れて作り上げた術を披露する。

 

――仙法・木遁木人の術!――

――仙術須佐能乎!――

 

 二人が繰り出したのは、先程戦場で二人が振るっていた術と同じものだ。

 それをどうしようというのか。そう思っていたアカネの前で、二人はその力を――融合させた。

 

――威装・須佐能乎!――

 

 対象に須佐能乎を纏わせる、威装・須佐能乎と呼ばれる技術だ。対象と言っても須佐能乎と同じ大きさを持たなければ使用出来ないが、木人はちょうど須佐能乎と同じくらいの大きさだ。

 その木人に須佐能乎を纏わせる。木人須佐能乎とでも言うべきか。二人の力が合わさった事により、その力・耐久力は大幅に上昇している。

 

「見たか! これぞ対ヒヨリ用に二人で開発した合体忍術ぞ!」

「なんで二人がかりで対私用の忍術作ってんだよ!」

『んなもんお前が強すぎるからだろうが!』

 

 異口同音に叫ぶ柱間とマダラであった。なお、そんな風に馬鹿な話をしながらも、この三人はそこらの雑魚を蹴散らしている。忍連合軍が死力を尽くして戦っている相手に酷い仕打ちである。

 

「真面目に戦わんかぁぁぁあぁぁ!!!」

『す、すいませんでした!!』

 

 馬鹿三忍――誤字にあらず――に対して扉間がとうとう激怒した。まさに怒髪天をつく怒りである。

 二代目と三代目が激闘を繰り広げている中で、初代のみが馬鹿をしていればこうもなろう。久しぶりの集合だからと少々羽目を外しすぎである。

 一応初代三忍達が倒した分裂体の数は誰よりも多いという事は、彼らの名誉の為に記しておこう。

 

「マダラ! おぬしがその馬鹿どもと一緒に馬鹿をしてどうする! ちゃんと馬鹿二人の手綱を握らんか!!」

「す、すまん扉間」

 

 扉間の剣幕に流石にマダラも謝罪する。扉間としては馬鹿三忍の中で一番ましなマダラにストッパーとなってほしいのだ。

 それがこの有様では、生前と同じく胃薬を処方して貰わなければならなくなるだろう。穢土転生でも痛みは感じるのだ。胃の辺りが特に。

 

 そんな扉間の胃の痛みを救ってくれたのは、他でもない十尾であった。

 十尾はふざけている――当人達は至って真剣なのだが――初代三忍達が苛立ったのか、それとも初代三忍が放つ力に脅威を抱いたのか、その身体を更に変化させて力を振るい易くする。

 クシナが封印術にて封じているが、十尾がその力を更に強大にした為にわずかに封印が緩んでしまい、一部が自由になったのだ。

 その一部とは――最も自由にしてはならない、尾獣玉を放つ十尾の頭部であった。

 

 十尾がその形を徐々に変化させていく。より強くなる為に進化している――のではなく、元に戻っていくと言った方が正確である。

 完全体として復活出来なかった十尾は、徐々に力を溜めて元の姿に戻ろうとしているのだ。それはつまり、更に強くなるという事である。

 十尾はより強大となった力を初代三忍に向けて振るう。脅威となる者を排除する。その判断は非常に正しい。だが、正しければ必ず結果が伴う訳ではなかった。

 

「マダラ!」

「ああ!」

 

 十尾から放たれる巨大な尾獣玉。このまま着弾すれば柱間達はおろか、結界内の忍全員が全滅するだろう。それはイズナも同じだというのに、イズナは十尾に自由に力を振るわせていた。

 イズナにどんな企みがあるかは知らないが、そんな事は柱間達には関係ない。やるべき事は一つ。この尾獣玉を防ぐ事だけだ。

 

『はぁぁ!』

 

 柱間とマダラの合体忍術である木人須佐能乎。須佐能乎を得た木人は十尾の尾獣玉を受け止め、そしてそのまま後退しながらもどうにか尾獣玉を天高く放り投げる。

 

「よっ!」

 

 更にアカネが螺旋丸を投げつけて、その威力にて尾獣玉を結界の外へと追いやった。

 

「まったく……」

 

 十尾の本格的な活動に対して、ようやく馬鹿を止めた三人を見て扉間が息を吐く。

 別に馬鹿をしつつも無駄な動きはしていないという、極めて有能な馬鹿なのだが、それでも最年長者として恥ずかしくない姿を見せてほしいと思うのは、けして扉間の我侭ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 イズナは三忍達の力を見て思う。確かに脅威だ、と。

 二代目や三代目も三忍の名に恥じぬ力を見せ、初代達は更に別格の力を振るう。十尾の尾獣玉をああまで容易く防ぐとは、流石のイズナも想像していなかった。

 

「だが……」

 

 だが、問題はなかった。むしろ敵が強ければ強いほど、イズナにとっては好都合であった。

 むしろイズナにとっての脅威は別にある。それに対して、イズナは注意を払っていた。その脅威とは――

 

――神威!――

 

 突如として十尾後方の空間が歪み、そこからカカシが出現する。そして九喇嘛のチャクラにて範囲を拡大させた神威を十尾に放つ。

 これがイズナが警戒していた脅威、神威である。カカシの神威の能力は、二代目土影を穢土転生にて操っている時に確認していた。

 塵遁すら時空間に消し飛ばすその瞳力。イズナをして恐るべきと言えるだろう。発動のタイムラグ故に自身が受ける心配はないが、十尾が狙われてしまえば面倒だ。

 だからこそ、イズナは常にカカシを警戒していた。カカシも出来るだけ不意を突こうと、オビトの協力の元に神威空間からの不意打ちを放ったが、完全に警戒していたイズナには通用しなかった。

 

――神羅天征――

 

「ぐぅ!」

 

 神威が効果を発揮するタイムラグの間に、神羅天征にてカカシを吹き飛ばす。目標がずれた神威はあらぬ空間に発動し、何も飲み込まずに不発に終わった。

 

「中々の瞳力だ……。うちはの血族ではないお前が、そこまでの瞳力に目覚めるとはな……」

「ちっ! 警戒されていたか……」

 

 渾身の一撃が無駄に終わった事にカカシは内心で悪態を吐く。

 神威の発動にはかなりのチャクラを消耗する。いくら九喇嘛のチャクラにて増大していようとも、十尾ほどの巨体を対象にすればチャクラの消費も大幅に増加してしまう。

 それだけならまだいい。問題は視力の低下にある。万華鏡写輪眼の多用は視力を大きく低下させてしまう。うちは一族ではないカカシならばなおさらだ。

 十尾を対象に出来る程の神威となればあと何回放てるか。その少ない回数の内、最大の好機が潰されたのは痛かった。

 

 そんなカカシの心中はともかく、イズナはカカシの存在を疎ましく思う。

 いや、カカシだけならば殺せば終わりで問題ない。だが、カカシは神威が外れた瞬間にオビトによって神威空間へと逃げているのだ。然しものイズナも神威空間へは手出しが出来なかった。

 

 

 先程から圧倒的な力を見せる三忍達や、それに負けじと戦う五影達にそれに追従する力を持つ者達、そして力を合わせて戦う忍連合軍。そんな連中を相手にしつつ、その上で神威の不意打ちに警戒しなければならない。

 流石にこれだけ面倒が集まるとイズナでも手間だった。だからこそ、イズナは切り札の内の一つを切ろうとする。そしてこの切り札が発動した時の、忍達が浮かべるだろう絶望の顔を思い描き、イズナは悦に浸る。

 

 

 

 イズナにとって敵の力が強大であればあるほど好都合だった。それは、集団の連携によって生み出される力ではなく、一人の個としての力に関してである。

 一人の力がどれ程強大でも、イズナには関係がない。何故ならば、イズナにはそれを利用出来る力があるからだ。

 敵が別天神を使うならば、こちらも別天神にて対抗しよう。そう、イズナもまた、別天神の使い手なのだ。その力にてかつてマダラを操ったのだから。

 

 だが、今回の別天神の対象はマダラではなかった。イズナに取っては悔しい事だが、忍界最強の忍はマダラではない。ならば誰か? 答えはそう――日向アカネである。

 日向アカネの圧倒的な強さはイズナも良く理解している。恐らくまだ全力を出し切ってはいないだろう。そんな恐るべき忍である日向アカネを別天神にて支配する。それがイズナが余裕だった理由の一つだ。

 イズナにとって別天神はとっておきの切り札だ。マダラ以外に使用しなかった事からも、イズナが別天神の力を重要視している事が伺える。生半可な相手に使用して、再使用までに長い時間を掛けるという無駄をしたくなかったのだ。

 十数年という別天神のインターバルを縮める方法はイズナにはなかった。本来の別天神ならば、柱間細胞にてそのインターバルを大幅に縮小する事が出来るのだが、イズナの別天神は永遠の万華鏡を得た時に後天的に開眼した為か、柱間細胞の恩恵が得られなかったのだ。

 もっとも、イズナは柱間細胞によって別天神のインターバルが縮小されること自体知らないのだが。自身に発揮されなかった効果ゆえにそれも仕方ないだろう。

 

 ともかく、そのとっておきの別天神を、この世で最も憎む存在に向けて使用する。

 日向アカネが、あの日向ヒヨリがその力を味方に向けて振るうのだ。そう考えただけで胸が空く思いだ。

 そうしてイズナはアカネに対して別天神を使用する為に、そして確実に別天神を発動させる為に、輪廻眼の力を発動させる。

 

 その瞬間、イズナは突如としてアカネの眼前の大地に立っていた。

 

『!?』

 

 アカネも、そして柱間もマダラも、イズナが現れた瞬間を察知出来なかった。

 それもそのはず。イズナは一切のタイムラグもなく、一切の前触れもなく、この場に現れたからだ。そう、戦場に突如として現れた十尾と同じ様に。

 

 輪廻眼には六道の力以外にも、開眼者固有の瞳術も存在していた。イズナにも当然固有の瞳術がある。それが大国主(おおくにぬし)と呼称された瞳術であった。

 大国主は大地を縮める力を有している。自身か、自身が触れた物体が大地に接触している時に発動させると、地続きとなっている大地のどこにでも瞬時に移動する事が出来るのだ。

 これによってイズナはアジトから遠く離れた戦場へと、十尾を連れて移動したのだ。アカネやマダラが気付かなかったのも当然だ。その移動にタイムラグは存在しないのだから。

 

 もっともデメリットも存在する。移動した距離が長ければ長い程、インターバルも長くなってしまうのだ。流石にこれだけの距離を移動した事により、相当なインターバルを必要とした。

 だがそのインターバルも既に終わっている。大国主は発動し、日向アカネの虚は突けた。後はアカネを操るのみだ。

 

――無限月読こそが平和へ至る唯一絶対の手段! その為にオレに協力するのがお前の使命!――

 

 その命令がどれほど荒唐無稽だろうと、別天神には関係ない。別天神を受けた者はその命令を当然だと思い込み、自身ですら気付かぬ内に操られるのだ。

 

「イズナ! いつの間に!」

「先程の時と同じ……! しかも飛雷神ではないな!?」

「……ふむ」

 

 突如として現れたイズナに柱間とマダラが驚愕する。そして同じ現象を二度見たマダラは、この現象が飛雷神の術によるものではないと見抜いた。

 飛雷神の術にはマーキングが必要だが、イズナが現れた場所にそのマーキングは刻まれていなかったのだ。

 一度目は十尾の巨体でマーキングが隠されているのかとも考えていたマダラだが、流石にこの距離で、しかもイズナの大きさでマーキングを見落とす程に、マダラの眼は無能ではない。

 

「ふはははは! さあ! 日向ヒヨリよ! その力を忍連合軍に振るえ! 無限月読を完遂する為の一助となれ!!」

「む?」

「まさか!?」

 

 柱間はイズナの発言の意図が理解出来ずに訝しみ、マダラはそれを理解してアカネを見る。

 マダラは当然イズナの別天神を警戒していた。一度受けた、それも人生を狂わされた術だ。二度も受けない様に警戒するのは当然だ。

 当然自分が警戒しているならアカネも警戒しているものとマダラは見ていた。戦いに関してなら、マダラに出来る事は固有の能力以外でほぼ何でも出来ていたのだから、そう考えても仕方あるまい。

 それに別天神自体警戒はしていても、それ程脅威ではないとマダラは考えていた。別天神はその効果を他人によって解除する事が出来るからだ。もちろん相応の実力や技術は必要だが、アカネは言うまでもなくそれらを有していた。

 

 だが、当のアカネが操られてしまえば話は変わる。

 他の誰だろうと、アカネならばその動きを止めて別天神を解除する事が可能だろう。だが、アカネの動きを止めて別天神を解除する。それが誰に出来るというのか。

 柱間とマダラならば対抗はまだ可能だが、その激しい戦闘の中ではアカネに触れる事すら至難の業。他の忍ならなおさら不可能に等しい行為だ。

 

 マダラの反応から柱間も脅威を感じ取り、そして絶望の未来を思い描く。

 そんな二人の反応と、狂った様に笑うイズナを見てアカネはその口を開く。

 

「だが断る」

「ははははは! ……は?」

『……ん?』

 

 だが断る。それがイズナの言葉に対するアカネの返答だ。

 まさか断りの言葉が返って来るとは思ってもいなかったイズナは、その意味を理解するのに時間を要し、そして再びアカネに命令をした。

 

「ふ、ふざけるな! 貴様の使命はなんだ! さっさとその力で無限月読実現の為に働け!」

「私の使命って……まずはあなたを倒して無限月読を止めて、その後修行に励み、弟子を鍛え、美味しい物を食べながら平和を謳歌する事ですかね」

『……』

 

 イズナとマダラと柱間が同時に沈黙する。これは一体どういう事なのか、さっぱり理解が出来ない三人であった。

 そんな三人に対し、アカネはため息を吐きつつ、一族の一部以外には秘密にしていた己の固有能力について説明してあげた。

 

「はあ、仕方ないですね。私に幻術の類は通用しません。全部自動で無効化します。そういう能力を持っていますので。あ、多分無限月読も効きませんね」

「…………ふ」

「ふ?」

「ふざけるなぁぁぁ! 別天神も、無限月読すら効かんだと!? 貴様本当に化け物か!!」

 

 これには柱間とマダラもイズナに同意した。今までにも幻術が効いた憶えは二人にもなかったが、それはあくまでアカネの実力で防いでいるものだと思っていた。

 それが幻術を完全に無効化する能力だったのだ。ただでさえ強い化け物がもっと強い化け物だったという、まさに考えたくもない事実であった。

 なお、幻術は当然として陰陽遁も封印術もその大半を無効化してしまうのだが、流石にそれは言わないでおいたアカネであった。

 

 




 三忍なのに九人とはこれいかに。まあ四天王でも五人以上いる所があるから問題ないね!
 忍連合軍『もうあいつらだけでいいんじゃないかな』
 なお、描写していないだけで五影達や忍連合軍の皆様も頑張っています。

 大紅蓮弾と大嵐烈風はオリジナルの忍術です。

 後天的に開眼した別天神だからか柱間細胞の効果が及ばないという、イズナの別天神連発を防ぐ為のオリジナル設定。
 ボス属性が初めて真っ当な活躍をしたかも。イズナ、切り札を切るも無駄撃ちになる。でも大丈夫。イズナの真価はまだ発揮されていない。まだまだ全力は出しちゃいないんだぜ! だから、慰めないであげてね? 悲しくなっちゃうから(イズナが)。

 なお、イズナの輪廻眼固有瞳力も当然オリジナル。他の輪廻眼の瞳力名が全部天津神から名付けられていたので、輪廻眼に目覚める素質がなかったところを無理矢理開眼させたので、天津神ではなく国津神から名前を引っ張ってきました。

 アカネの能力に関して説明。
 能力名【ボス属性】・アカネがHUNTER×HUNTER世界に生きていた頃に開発した念能力。ざっくばらんに能力を説明すると、念能力による状態異常及び特殊効果を無効化するというもの。ただし、相応のオーラを消費する。これがNARUTO世界に対応して、チャクラによる状態異常や特殊効果を無効化する様になった。ただし、無効化する能力を選ぶ事は出来ない。つまり、アカネにとって有利な効果も無効化してしまう可能性もある。ただし、術者自身の能力は無効化しない。







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