どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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ダイの大冒険 第七話

 天に届かんばかりの鬼岩城が崩れ落ちる。その様を見てベンガーナ中が沸き立っていた。

 自国を襲い命を脅かす恐ろしい巨人が倒れたのだ。喜ばない者などいないだろう。民も、兵士も、王も、老若男女隔てなく喜びの声を上げる。

 そんな中、たった一人だけ鬼岩城が砕け散った事に慄いている者がいた。

 

「なんと……なんという失態を……!」

 

 それこそが鬼岩城を操作していた男。最後に残された六大軍団長にして大魔王直属の側近、魔影参謀ミストバーンである。

 ミストバーンは砕け散った鬼岩城から無傷のままに現れ、そして空中から鬼岩城を見下ろして怒りと後悔に苛まれていた。

 大魔王バーンは言った。鬼岩城を失っても構わない、と。だが、それでもミストバーンは鬼岩城を失うつもりはなかった。主の夢の形である鬼岩城を失いたくなかったのだ。

 だと言うのにだ。鬼岩城は無残にも打ち砕かれ、しかも敵は健在という状況だ。これで敵の1人とでも道連れにしていれば、僅かばかり溜飲も下がっただろうが、これでは無駄に鬼岩城を失っただけである。

 

「私の……私のせいだあああっ!! うおおおおおおおーーっ!!」

 

 ミストバーンの悲痛な叫びが響き渡る。そして、当然その叫びを聞いたアバン一行はミストバーンの下に集結した。

 

「あれがあの巨人を操っていた奴か」

「じゃ、あいつを倒して終わりだな。そらよ! ベギラマ!」

 

 ポップが両の手からそれぞれベギラマを放つ。数ある呪文の中でも高威力を誇るベギラマの同時攻撃だ。極大呪文のベギラゴンとまではいかないが、並の魔族なら一瞬で焼け焦げるだろう。

 そのベギラマを、ミストバーンは避ける素振りすら見せず、むしろその身で受け止めた。そして、増幅して跳ね返した。

 

「なっ!?」

 

 自分の放った呪文が返って来るとは思ってもいなかったポップは驚愕し、増幅された事でベギラゴンに匹敵する威力となった閃熱呪文を避ける事が出来なかった。

 このままでは確実に死ぬ。ポップがそう感じた瞬間、ポップの前にバランが立っていた。

 

「むん!」

 

 バランは真魔剛竜剣で閃熱呪文を受け止め、そしてそのまま虚空に向けて弾いた。そして無人の大地に閃熱呪文が直撃する。それと同時に凄まじい破壊音が響き渡った。

 

「た、助かったぜバランさん……」

「気にするな。しかし、今のは……」

 

 ポップの礼を受け取りつつ、バランは先の一撃に疑問を抱く。それはバランだけでなく、この場にいる全ての者が感じていた疑問だ。

 

「明らかに呪文の威力が増幅されていた。奴はいったい……」

「分かりません。ですが、彼から感じる圧力は高まり続けている……今までの敵の様にはいきませんよこれは!」

 

 ミストバーンの底知れぬ力に誰もが気付き出していた。今までの六団長や魔軍司令とは一線を画す強者。それがミストバーンだと理解したのだ。

 誰もがミストバーンへの認識を改めたと同時。ミストバーンはアバン達に向けてその怒りの全てをぶつけようとしていた。

 

「もはやこれまで……! こうなれば我が闇の衣を脱ぎ払い、お前たちを消すのみよ! 六大軍団などとは比べ物にならぬ恐怖を知るがいい!」

 

 そう言いながらミストバーンが自身の全貌を覆っている衣に手を掛ける。その瞬間、アバン達はミストバーンの威圧感が更に高まるのを感じた。

 

「うおお!?」

「これは!!」

 

 鬼岩城などとは比べ物にならない圧力を放つミストバーンに誰もが驚愕する。

 そして、誰もが今までとは比べ物にならない激戦の予感を感じた瞬間――

 

「はいスト~~ップ。そこまでにしておきたまえミスト」

「キ……キル……!」

 

 ――ミストバーンの首筋に大鎌の刃が当てられていた。

 キルと呼ばれる男によって、ミストバーンは最後の一線を越える前に踏みとどまっていた。

 

「何だあいつ!?」

「道化? それとも死神か?」

 

 ヒュンケルが新たに現れた男の見た目や衣装からそう言うが、それはどちらも正解と言えた。

 この男こそ、ミストバーンに並ぶ大魔王バーンの側近の1人、死神キルバーンである。その役割は失態を犯した軍団長の始末だ。もっとも、その軍団長は今やミストバーンのみなのだが……。敢えて言うならクロコダインが対象だろうか。

 

「い~けないんだいけないんだ~。バーン様におこられるぅ~っ!」

 

 キルバーンの肩からヒョコリと小さな魔族が現れる。キルバーンに仕える使い魔と周囲には認識されている小悪魔だ。

 

「キミの本当の姿はいつ如何なる場合においても、バーン様のお許しがなくては見せちゃいけないんじゃなかったっけ?」

「そ……そうであった……」

 

 キルバーンのその言葉にミストバーンは冷静になり、そして、普段の無口なミストバーンへと戻っていく。

 こうなれば当分はだんまりか。そう思いながら、キルバーンはアバン一行に視線を向ける。

 

「やあ。初めまして勇者諸君。ボクの名前はキルバーン。隣のミストバーン共々、大魔王バーン様の側近をさせてもらっている者だ」

「キルバーン……!」

「ミストバーン……!」

「こいつらが、大魔王バーンの側近……!」

 

 キルバーンのその言葉は、先のミストバーンが放った威圧感を思えば疑いようがなかった。

 驚愕するアバン達に、キルバーンは更に言葉を続ける。

 

「キミたちの快進撃は大したものだよ。この短期間で六大軍団は壊滅。ボクのお仕事も上がったり。参ったもんさ」

「何が言いたいんでぇ! 無駄口叩くだけならさっさと掛かって来いよ!?」

 

 軽口を叩くキルバーンにポップが激情するが、キルバーンは意に介さずに話を続けた。

 

「そうしたいのは山々なんだけどね。戦うのはここじゃあないんだ。実は大魔王バーン様からお言葉を預かっていてね。静聴してくれると嬉しいよ」

『!?』

 

 大魔王バーンの言葉を預かっている。その発言に誰もが驚愕し、キルバーンの次の言葉を待つ。

 敵を前にして攻撃に移る者は誰もいなかった。それはバランでさえもだ。ミストバーンの威圧感。キルバーンの存在感。そして大魔王バーンの言葉という気になるワード。これらが重なった為、バランですら状況を見極める(けん)に回ったのだ。

 

「よくぞ我が軍を打ち崩した。褒美に余と戦う栄誉を与えよう。死の大地にて待つ。……以上がバーン様のお言葉さ。確かに伝えたよ、じゃあね勇者諸君。死の大地で会おう」

「……」

 

 キルバーンが言い残し、ミストバーンは無言のままに、その場から消え去った。ルーラの応用であるリリルーラを使用したのだろうとアバンは察する。

 大魔王バーンの言葉は簡潔でありながら誰もに衝撃を与えていた。六大軍団と軍団長の撃破。鬼岩城の破壊。アバン達の快進撃は大魔王バーンも理解しているはずだ。

 だというのに、そんな勇者達に向けて堂々と本拠地を教え、自らを倒しに来いというのだ。まるで自分が負けるとは思ってもいない傲慢さと豪胆さを感じ取り、その強大さを言葉だけで理解するアバン達。

 だが、1人だけそんな感情とは無縁の者がいた。

 

「六大軍団を倒し、後は大魔王と先の側近共を倒せばいいだけ。本拠地が知れたのは好都合というものよ」

 

 まるで恐れを知らぬバランの言葉に呆気に取られるアバン達だったが、その自信と頼れる戦闘力に誰もが安堵を得ていた。

 一方バランはこちらに向かって来る2人の息子を確認し、負けるはずがないと確信していた。2人の竜の騎士と頼れる息子。そして肩を並べるに相応しい地上の勇者達。

 これだけのメンバーが集まるなど、史上でも類を見ないだろう。いくら大魔王相手と言えども負けるはずがない。いざとなれば息子たちの前で竜魔人になってでも勝利を得る。その気概がバランにはあった。

 

 

 

 

 

 

 大魔王バーンが待つ魔王軍の総本山、死の大地。それは北の国オーザム王国のあるマルノーラ大陸の北西にある大きな島だ。岩山ばかりでほとんど生物がいないため、死の大地と呼ばれている。まさに大魔王の本拠地に相応しい場所だろう。

 死の大地が魔王軍の本拠地と知れ渡ってから数日後。各国は死の大地に向けて進軍する準備を進めていた。軍の力で大魔王を倒す為ではない。勇者一行の露払いをする為だ。

 ベンガーナ王国を襲った鬼岩城が良い指標となった。すなわち、圧倒的な力の前に、並の軍など役に立たないと理解出来たのだ。だからこそ、軍の力を勇者のサポートとして利用する事がサミットにて決定されたのだ。

 その発言がベンガーナ王から出た事も決め手の一つだろう。魔王軍の恐ろしさを目の当たりにしての発言だ。傲慢だったベンガーナ王から出た言葉だからこそより説得力があった。

 

 そうして各国は死の大地に程近い港街であるサババにて大型船を建造している最中だ。各国の強者達や選び抜かれた兵士達が乗り込む船だけにかなり巨大であり、そして数も揃えるとあって完成には多少の時間が掛かるだろう。

 その間ダイ達は修行をしたり、故郷に顔を出したり、骨休めをしたりと、各々が自由に過ごしていた。なお、バラン親子も一度ソアラの顔を見にデルムリン島に帰っていたが、特に昼ドラ的なハプニングが起こったりはなかった。どうやら魔王は間男に進化していなかったようだ。

 その際にダイがマァム専用のメタルキング装備一式をメタルンから頂戴してたりもする。これで勇者一行は全員がメタルキング装備を手にした事になる。本来なら有りえない装備群だが、まあ今更だろう。

 

 

 

 各国の準備は順調に整いつつあった。だが、人間のその動きに対し、大魔王は嘲笑うかの様に応えた。

 死の大地が突如として隆起し始めたのだ。激しく揺れ動く死の大地。岩山は隆起し砕けて落ち、見る見る内に姿を変えていく。

 そして、死の大地を観測していた者は信じがたい物を目にした。死の大地が宙に浮き上がったのだ。あれだけの質量が空に浮くなどどうして思えようか。

 死の大地の変化はそれだけに留まらなかった。宙に浮きながら砕けていた岩山が、一気に砕け散ったのだ。そして、その内側からある物が現れた。

 

 荘厳という言葉が相応しい城がそこにはあった。宙に浮かぶ巨大な城。これこそが大魔王バーンの居城・大魔宮(バーンパレス)である。

 

「ま、まさか……城が空を飛ぶとは……!」

「これが大魔王の力なのか……!」

 

 各国の指導者達はバーンパレスの姿に恐れを抱く。天高く飛ぶ城というありえない光景から、大魔王の力の一端を感じ取ったのだろう。

 そして同時に、死の大地に向けての準備全てが無駄になったと理解した。船でどうやってあの城まで行けと言うのか。

 気球などの空を飛ぶ乗り物はあるが、気球では空中で迎撃された場合の対処が困難だ。下手すれば乗り込む前に全滅するだろう。

 空に雄大に浮かぶ城からは、相応しい者の侵入しか許さないという大魔王の意思が見て取れた。勇者一行以外は眼中にないという事だろう。それは、勇者一行を排除すれば後はどうとでもなるという意味でもあった。

 

 バーンパレスの登場に各国の準備は意味を失った。サババから最も近い国、カール王国では各国の指導者とアバンを交えた緊急会議が開かれ、そして結論が出た。

 それは、アバン一行のみでの大魔王討伐であった。空中に浮かぶバーンの居城への移動手段は、迎撃の不安を考えるとトベルーラが一番だろう。そして、トベルーラが使える者がバーンの居城に到達後、ルーラで残りの者を連れてくる。

 この手順ならばトベルーラが使えない者でもバーンパレスに攻め込む事が出来るだろう。だが、バーンパレスに攻め込む者はアバン一行のみだ。

 

 その理由は犠牲者が増える事を防ぐ為だった。バーンの力は底知れない。何せ死の大地の下に埋まっていた巨大な城を空に浮かべる程だ。実際にはバーンパレスを構成する材質そのものが宙に浮く素材なのだが、それでもバーンの魔力で制御されている事に違いはない。

 そんな恐ろしい力の持ち主がアバン一行のみを歓迎しているのだ。他の者が同行したとして、どのような意趣返しがあるか分かったものではない。恐らくだが、無駄死にする可能性が高いと言えた。下手すれば足手まといになるやもしれなかった。それ程にアバン一行と各国の強者達の間では実力差があるのだ。

 そして、もしも敗北してしまった場合、大魔王バーンから逃げ出すにも相応の実力がいるだろう。勝つ可能性を上げるためにも、生き残る可能性を上げるためにも、少数精鋭で挑んだ方が良いとアバンは判断したのだ。

 

 

 

 バーンパレスへの進撃。それはバランから行われた。もっとも戦闘力が高く、そしてルーラもトベルーラも使えるバランは先の侵入方法を取るに当たって最適の人材だろう。

 そうしてバランはトベルーラにてバーンパレスへと移動する。空中での移動中、懸念された魔王軍の迎撃もなく、バランは問題なくバーンパレスの先端の一つへと到着した。

 そして作戦通りにバランはルーラにてアバン達の元に戻り、次に全員を連れてルーラで先程到着した場所まで移動する。何も問題なく、不気味なほど順調にアバン一行はバーンパレスへと到着した。

 

「こ、ここが大魔王の本拠地か……! もっとおどろおどろした場所をイメージしてたのによ……!」

 

 ポップの呟きに誰もが同意する。ここはまさに天空の城。荘厳な白亜の宮殿。大魔王というよりも、神々の居城と言われた方が納得するくらいだ。

 そんなポップの呟きに応えた者がいた。だが、それはアバン一行から発せられた声ではなかった。

 

「それは褒め言葉と受け取ろう」

『!?』

 

 突如として空間が歪み、そこから三体の人影が現れた。

 1人は闇の衣に身を包む未知なる存在ミストバーン。1人は不気味な仮面をつけた死神キルバーン。そして、ポップの呟きに応えた者こそが――

 

「あ、ああ……!」

「ようこそ勇者諸君。お初にお目にかかる。余が、大魔王バーンだ」

 

 そう、大魔王バーンである。

 

「は、ははは……よぼよぼの爺さんが出てきちゃったぜ……! ひょ、拍子抜けしちゃったよなぁ皆……!」

 

 大魔王バーン。魔界の神とまで称されており、かの冥竜王ヴェルザーと魔界を二分する程の実力者。

 見た目は老人そのもの。だが、そこから発せられる威圧感はとても見た目通りとは言えず、アバン一行の誰もポップの軽口に応える事は出来なかった。

 当然ポップも見た目通りの存在だなどと欠片も思ってはいない。だが、あまりにも大魔王の存在が凄まじかった為に、軽口を叩いて場の空気を変化させようと思ったのだ。

 まあ、その思惑すら上回る大魔王のプレッシャーに誰もが圧倒されたのだが。何せバランですらバーンの実力を感じ取り、全力で相手をして勝てるかどうかと驚愕していたほどなのだから、他の者達のプレッシャーは相当だろう。

 

「まずは褒めておこう。お前達の快進撃は見事だった。余が作り上げた軍団をああも容易く壊滅させ、地上を守ったその実力はまさに勇者と呼ぶに相応しいものだ」

 

 バーンはここまで来たアバン達を褒め称えた。その言葉に嘘はない。バーンは強者を好む。そこに種族の差などなく、バーンは一定以上の強者にはそれなりの敬意を抱いていた。

 その裏には、己の強さに対する絶対的な自信があった。たかだか人間が、たかだかモンスターが、たかだかそこらの魔族が、自分には及ばないまでもここまで鍛え抜いたのは見事だという、圧倒的強者からの思考だ。

 だが、それは驕りではない。天地を震わす魔力を超える者は1人としておらず、神すら上回る力を有している。それが大魔王バーンだ。

 

 バーンはアバン達の偉業を称えた後、更に言葉を続ける。

 

「このバーンパレスが大空を駆ける時……それは全ての敵を片付けた暁のはずであった。だが、お前達の思わぬ実力に、こうして早々と姿を現す事となった。余の想像を遥かに上回る実力……ここで朽ちさせるにはちと惜しい」

 

 バーンがそこまで口にした所で、勘の良い者は気付いた。大魔王バーンが何を考えているのかが。だからこそ、恐ろしいと感じた。この状況でその言葉を口にするという事実に……。

 

「余の部下となれ。お前達の様な強者が地上の人間共に飼いならされるなど、宝の持ち腐れというものよ」

 

 そう、バーンはアバン達に自身に降れと言ったのだ。自身を倒しに来た者達にその言葉を告げる。それはつまり、勝ち目がないから降参しろ、と言っているに等しかった。

 圧倒的な実力で魔王軍を打ち倒してきた勇者達に、戦うまでもなくそんな台詞を吐く。自分達が負ける訳がないと信じ切っているからこその言葉だろう。

 

「ふざけるな! 皆を苦しめるような奴の言いなりになんかなるもんか!」

「ふむ……。息子はこう言っているが、お前も同じ答えかな? 真の竜の騎士バランよ」

 

 ダイの啖呵に対し、バーンはバランへと言葉を向ける。

 

「お前も人間という下らない存在の為に、余に立ち向かう気か?」

 

 バーンのその問いに対し、バランは切り捨てるように返す。

 

「先の勧誘もその問いも、私達を黒の核晶で消し飛ばそうとした輩が放つ言葉ではないな」

 

 そう、バーンは黒の核晶でアバン一行でマァムを除く全員を殺そうした事がある。戦いもせずに安全な場所から爆弾で敵を排除する。その様な外道の言いなりになる気など、バランには更々なかった。

 バランの言葉にアバン達も気を入れ直す。どれだけ強大だろうと、どれだけ甘言を並べようと、相手は倒すべき悪だ。倒すべき悪を前に圧倒されていてどうするというのか。

 そんなアバン達の反応を見て、バーンは懐柔の余地無しと判断した。

 

「良かろう。ならば、ここで散るがいい。地上の勇者達よ!」

 

 バーンの言葉に場の緊張が更に高まる。そしてバーンが空間を歪ませ、そこに手を入れて一本の杖を取り出す。その一挙手一投足に全員が神経を集中させていた。

 

「余はお前達を侮らん。侮ったが故に、魔王軍は壊滅したのだからな」

 

 そう言った瞬間、バーンの右手に持った杖の先から触手が伸び、バーンの右手に絡みつく。

 この武器こそが大魔王バーン最強の武器、光魔の杖である。装備した者の魔法力を吸収し攻撃力に変換するという武器だ。そして、その変換率に上限はない。使用者の魔法力が高ければ高いほど攻撃力が増すという、大魔王バーンが持って初めて最強になる武器だ。

 それだけではない。バーンが宣言した通り、バーンはアバン一行を侮ってはいない。特に竜の騎士であるバランとその一子ダイ。2人の竜の騎士を相手にして余裕があるとはバーンをして口には出来なかった。

 しかもアバン一行の実力も然るものだ。これだけの人数を相手に、真の力を発揮せずに勝てるかどうかはバーンも予想出来ない事だ。

 だが、それはバーン1人で戦う場合の話。相手は複数、ならばこちらも人数を揃えたとして可笑しくはないだろう。

 

「ミスト、キル。全力で戦うがよい。相手は滅多にお目に掛かれぬ上物だぞ」

「はっ!」

「フフフ、久しぶりに張り切っちゃいましょうかね」

 

 ミストバーンとキルバーン。バーンの名を冠する2人の最高幹部。そんな2人が大魔王バーンと共に勇者達に立ち塞がる。そして、激戦が開始された。

 

 

 

「まずは小手調べだ」

 

 先手を取ったのはバーン。その手に魔法力を集中させ、分子エネルギーをプラスに働かせる事で火炎呪文を作り出す。これは通常の火炎呪文の発動と同じ流れだ。大魔王と言えど、呪文の発動方法は他の魔法使いと変わらない様だ。

 違う点は二つ。火炎呪文に費やされた魔法力と、その発動速度だ。並の魔法使いが火炎呪文を作り出すのに必要な魔法力の数十倍以上の魔法力が籠められており、その上発動速度すら倍以上という、まさに大魔王の名に相応しい力と言えよう。

 そして、バーンの右手に作り出された火炎を見て、アバン達の中で最も呪文に長けたポップが驚愕の声を上げた。

 

「う、嘘だろ!? それがメラゾーマなのかよ!!」

 

 そう、バーンが作り出した火炎呪文はメラゾーマ。メラ系最高位の呪文だ。と言っても、メラ系とヒャド系の呪文は会得難度が低く、それなりの素養があれば一定レベルの魔法使いでも覚える事が可能だ。

 ベギラゴンやイオナズンと言った、両手を使って放つ事が出来る極大呪文と比べると威力は遥かに劣るだろう。

 だが、それは一般的な魔法使いでの話だ。大魔王バーンほどの魔法力を持つ者がメラゾーマを唱えるとどうなるか。それが、先のポップの驚愕の答えだ。

 

「これが余のメラゾーマだ。その想像を絶する威力と優雅なる姿から、太古より魔界ではこう呼ぶ……カイザーフェニックス!!」

 

 バーンの右手からフェニックスの形をしたメラゾーマが放たれる。その威力は並のメラゾーマの数十倍はあろうか。まともに受ければ灰すら残らない威力が秘められた、恐るべき呪文だ。

 だが、どれだけ威力が高かろうとも呪文は呪文。バランはカイザーフェニックスを一目見た瞬間、その対処法を思いついていた。すなわち――

 

「むん!」

 

 ――竜闘気(ドラゴニックオーラ)を籠めた真魔剛竜剣にて切り裂く。それがバランの出した答えだ。

 バランが剣を一閃した瞬間、カイザーフェニックスは真っ二つに切り裂かれた。

 

「ほう……」

 

 竜闘気(ドラゴニックオーラ)には呪文を弾く特性がある。それを利用し、バランは剣に竜闘気(ドラゴニックオーラ)を集中させる事でカイザーフェニックスを切り裂いたのだ。一瞬で剣に竜闘気(ドラゴニックオーラ)を集中させる技量、カイザーフェニックスを一目見た瞬間に対処法を思いつく判断力。バランのその実力にバーンも感嘆の息が漏れた程だ。

 バランのこの判断力。それはバランの経験によるものだけではない。正統な竜の騎士であるバランの竜の紋章には、代々の竜の騎士の経験が残されているのだ。バランは竜の紋章に残された経験から、カイザーフェニックスへの最適な対処法を瞬時に選び抜いたのだ。

 

 

「ならば次はどうする?」

 

 だが、バランがカイザーフェニックスを破ったのも束の間。安堵する間もなくバーンは再度カイザーフェニックスを放った。

 

 ――早すぎる!――

 

 それが、バーンの攻撃に対してアバン達が同時に感じた事だ。大魔王バーンの呪文には溜めがない。魔法使いが呪文を使用する際に魔法力を増幅するが、バーンにはそれが必要ない。そのため、攻撃と攻撃の繋ぎがほとんどないのだ。

 だが、バーンの追加攻撃にすらバランは反応した。しかし、後ろから迫る存在に気付き、バランは新たなカイザーフェニックスに対して何の対応もしなかった。

 剣を止めたバランを訝しむバーン。だが、すぐにその理由に気付いた。バランの後ろからダイがアバンストラッシュでカイザーフェニックスを迎撃したのだ。

 

 ダイは正統な竜の騎士ではない。竜の騎士と人間の間に生まれた混血だ。故に、ダイは竜の紋章は有していても、その中に代々の竜の騎士の経験は受け継がれていない。未知に対する判断力、対応力はバランと比べると劣るだろう。

 だが、その成長速度は並の竜の騎士を凌駕するポテンシャルを秘めていた。そして、子とは親の背中を見て育つものだ。バランのカイザーフェニックスへの対応を見たダイが、二撃目のカイザーフェニックスに反応出来たのは何ら不思議ではなかった。

 

「アバンストラッシュ!」

「むぅっ!」

 

 ダイのアバンストラッシュはカイザーフェニックスを切り裂き、そしてその衝撃はバーンの頬を僅かにだが切り裂いた。

 本当に僅かだ。だが、確かにダメージを与えた。先手を取ったのはバーンだったが、ダメージを与えたのはアバン達が先だった。

 

「皆さん! バランとダイ君の援護を! ミストバーンとキルバーンを抑えるのです!」

 

 この結果を見てアバンは残る全員に指示を下した。バランとダイをバーンに集中させ、残りの全員はミストバーンとキルバーンを抑える。

 バランとダイならばバーンを相手に互角以上に戦えると判断したのだ。ミストバーンとキルバーンを抑えさえすれば、2人がバーンを倒してくれる。そう信じたのだ。

 

 アバンの言葉に全員が反応し動いた。それはラーハルトやポップ達だけではなく、ミストバーンとキルバーンも同様だ。

 

「ビュートデストリンガー!」

「遅い!」

 

 ミストバーンの爪が高速で伸び、ラーハルトを貫こうとする。だが、パーティー最速のラーハルトに命中させるにはまだ速度が足りないようだ。

 残像が残る程の速度でビュートデストリンガーを躱したラーハルトは、その勢いのままにミストバーンを攻撃する。

 一瞬で四度も槍を振るい、その全てがミストバーンに命中した。だが、ミストバーンは一切堪えた様子もなく、接近して来たラーハルトに反撃を行った。

 

「なに!?」

「闘魔傀儡掌!」

 

 暗黒闘気の糸により、対象を傀儡のように操るミストバーンの得意技だ。ミストバーンはラーハルトの攻撃を敢えて受け、攻撃が終わった隙を狙って傀儡掌を放ったのだ。

 必殺を確信した攻撃を受けてなお、反撃を行うミストバーンに驚愕するラーハルト。だが、次の瞬間にはミストバーンが驚愕する事となった。

 

「なっ!」

 

 隙を狙ったカウンターだというのに、それすらもラーハルトは避けてみせたのだ。一瞬の内に上空に跳ね上がり、ラーハルトは傀儡掌から逃れていた。

 そして上空から得意技であるハーケンディストールを放つ。

 

「これならどうだ!」

 

 神速で振るわれた槍から衝撃破が発生し、全てを切り裂くようにミストバーンに迫る。その一撃は確実にミストバーンに直撃した。

 だが――

 

「こいつ……不死身か?」

 

 ハーケンディストールによって出来た裂け目から無傷のミストバーンが浮かび上がってくる。その身を覆う衣は僅かに傷ついていたようだが、それもすぐに修復された。

 ラーハルトがミストバーンの不死身を疑う中、攻撃を途切れさせまいとヒュンケルがミストバーンに肉薄する。

 

「止まるなラーハルト! 例え効かないにしても、オレ達がこいつを押し留めていればそれだけダイ達が有利になる!」

「百も承知!」

 

 ラーハルトとヒュンケル。純粋な戦士として地上はおろか魔界でも右に並ぶ者が少ない二人が、力を合わせてミストバーンを抑え付ける。

 

「ぐっ!」

 

 ヒュンケルの重たい一撃がミストバーンの防御を掻い潜り命中する。すると、ラーハルトの攻撃では聞く事が出来なかった苦痛の声がミストバーンの口から漏れ出た。

 

「む!?」

 

 その後もヒュンケルとラーハルトは協力してミストバーンに攻撃を仕掛ける。ラーハルトの攻撃は今までと変わらずダメージを与えられていないようだが、ヒュンケルの攻撃は僅かに、だが確実にミストバーンを傷つけていた。

 

「これは……」

「……ふ、そういうことか」

 

 ミストバーンのカラクリの一部にヒュンケルが気付いた。ヒュンケルはダメージを与えられ、ラーハルトはダメージを与えられない。

 2人の差。それは光の闘気だった。ラーハルトは速度を活かした戦法の戦士であり、闘気を活用するタイプではない。対してヒュンケルは光の闘気によるグランドクルスという大技を見て分かる通り、闘気の扱いにも精通したバランス型の戦士だ。

 つまりミストバーンは――

 

「貴様の弱点は光の闘気か!」

「……」

 

 ヒュンケルの指摘に無言を貫くミストバーンだが、明らかに傷ついたままの衣を見れば一目瞭然だろう。

 そうと分かれば話は早い。ヒュンケルは今までは抑えていた光の闘気を解放し、剣に纏わせた。これで先ほどとは比べ物にならないダメージを与える事が出来るだろう。

 

「ラーハルト!」

「任せろ!」

 

 ラーハルトがその神速の槍にてミストバーンの動きを封じ、そこをヒュンケルが攻撃する。互いの利点を利用し、二対一という数の有利を最大限に活かした戦法だ。

 数に任せての戦法は好まない二人だが、好まないからと言ってしない訳ではない。状況が状況なのだ。ここで戦闘の嗜好など出してくる程二人は甘くはなかった。

 こうしてヒュンケル・ラーハルトのコンビは確実にミストバーンを追い詰めていった。

 

 

 

 

 

 

「さて、お仕事を頑張るとしようかな。ウフフッ」

 

 キルバーンと相対しているのはアバン、ポップ、マァムの3人だ。その3人をどう料理しようかと考えながら、キルバーンは手に持つ鎌を回転させていた。

 

「キミたちも愚かだねぇ。最後の望みを自ら捨てるなんてさ。バーン様の下に降れば、死ぬまで楽しく生きられたのにね。短い人生を棒に振るなんて、人間の考えは理解できないよ」

 

 軽口を叩きながらも、キルバーンは鎌を回し続ける。回転する鎌からは甲高い風を切るような音が鳴り響く。

 

「今からでも遅くはないよ? 何ならボクがバーン様に口添えを――」

「アバンストラッシュ!」

「っ!?」

 

 キルバーンの声を遮り、アバンは自身の代名詞とも言える必殺技を放つ。

 その一撃はキルバーンに命中こそしなかったものの、キルバーンが持っていた鎌に皹を入れる結果となった。

 

「ま、まさか……気付いていたのかい!?」

「戦闘が始まってからの無駄なお喋りと鎌から発せられる奇妙な音……時間稼ぎをしようとしていたのは明白でしたよ」

 

 そう、キルバーンは既にアバン達に攻撃を仕掛けていた。キルバーンが持つ鎌は死神の笛と呼ばれ、鎌でありながら笛でもある武器だ。

 死神の笛には回転させる事で対象に催眠効果のある音を聞かせ、対象の感覚を奪う能力があった。そうして相手を無力化した所で、その鎌で首を落とすのがキルバーンの常套手段の一つだ。

 だが、それはアバンによって早々に見抜かれていた。大魔王バーンすら警戒した地上一の切れ者は伊達ではなかった。

 

「よっしゃ! オレ達もいくぜマァム!」

「ええ!」

 

 アバンの攻撃を機に、ポップとマァムもキルバーンへと攻撃を仕掛ける。

 武道家のマァムが素早い動きでキルバーンに接近戦を仕掛け、それをポップが魔法で援護する。更にアバンが近・中距離にて剣と魔法を使い分けながら2人をサポートする。

 この連携にはキルバーンも堪ったものではなかった。一人一人が軍団長に匹敵、いや、それ以上の実力を有しながら、それでいて抜群のチームワークで攻め込むアバン達に、キルバーンも苦戦する。

 

「くっ!」

 

 元々キルバーンの戦闘能力は高くない。いや、低い訳ではないのだが、キルバーンの真骨頂は暗殺にある。その方法は主に罠に嵌める事で対象を無力化し、止めを刺すというものだ。

 総合力で言えばミストバーンに負けじと高いのだが、罠を封じられた場合の戦闘力は劣るだろう。早々に死神の笛を封じられたのは痛手と言えた。

 

 ――なるほど。バーン様が警戒するだけの事はある――

 

 それはアバンに対するキルバーンの評価だ。死神の笛の効果を暴きそれを封じ、今も弟子2人の動きをサポートしている。本人の戦闘力もけして低くはない。

 戦って勝てない戦闘力ではないが、敵に回せば厄介極まりない存在。それがアバンという人物だった。そしてアバンによってその弟子達は著しく成長していく。

 ここでアバンを倒さなければ、いや、アバン一行を倒さなければ更に面倒な事になるやもしれない。そう思い至ったキルバーンは、自身が追い詰められているのもあって遊びを止める事にした。

 

「イオラ!」

「うっ!」

「やあっ!」

 

 ポップのイオラによりキルバーンの手から死神の鎌が離れる。その隙を狙い、マァムが攻撃を仕掛ける。

 だが、キルバーンはその攻撃を大きく後方へ跳ぶ事で回避する。そしてそのまま死神の鎌を取りに動いた。

 

「させないわ!」

 

 そのキルバーンの行動を阻止すべく、マァムが素早く接近してキルバーンを追撃した。だが、それは悪手だった。それを証明するかのように、アバンがマァムに制止の声を掛ける。

 

「いけませんマァム! それは誘いです!」

 

 アバンの制止の言葉は僅かに遅かった。アバンの言葉通り、キルバーンが武器を取りに動いたのはマァムを誘い込む罠だ。

 そして、すでにマァムはキルバーンの狙い通りの場所へと移動していた。後は更なる罠を起動させるだけ。そして、その起動は手を動かして魔力を送り込むだけで済む。必要な時間は一瞬だ。

 

「もう遅い!」

 

 キルバーンが罠を起動させる。その瞬間、マァムの足元から黒い影の様な何かが広がり、それが無数の触手の形となってマァムを拘束した。

 

「きゃあっ!?」

 

 黒い触手によって拘束されたマァム。だが、キルバーンの罠が動きを拘束するだけに終わるわけがなかった。

 

「うああっ!」

「マァム!?」

 

 マァムから苦痛の声が漏れ出る。マァムを心配するポップはその原因を特定しようとくまなくマァムの身体を確認する。あくまでこれはマァムを苦しめる原因を特定する為の行為だ。やましい思いは欠片足りとも存在しない。

 そしてポップはその原因を理解した。マァムに接している黒い触手から煙が生じているのだ。黒い触手は拘束と同時に対象にダメージを与える仕組みとなっていたのだ。

 

「そのままじわじわと仲間が溶かされる様を眺めているといいよ。ウフフフフッ!」

 

 罠に掛かった者が苦しみもがく様をつぶさに観察するのがキルバーンは大好きだ。その上、罠に掛かった仲間を助ける事も出来ずに己の無力に嘆く者達の様は、更なる愉悦をキルバーンに与えてくれる。

 己の非力と仲間の死に行く様は絶望に染まった顔を生み出してくれる。さあ、アバンはどんな表情をしているか。そう思ってアバンを見るキルバーンだったが、キルバーンが望んでいた光景はその場には現れなかった。

 

 アバンはマァムがトラップに捕らえられた時、即座に行動を開始していた。

 特殊な羽をマァムとトラップゾーンの周囲に五つ投げ放ち、破邪の力を籠める事で聖なる五芒星を描き出す。そしてアバンは魔法のバリアーやトラップを無力化する呪文、トラマナを唱えた。

 

「トラマナ!」

「ハハハッ! トラマナ如きでボクのトラップが――」

 

 確かにトラマナには魔法の罠を無力化する力がある。だが、あらゆる魔法の罠を解除出来るかと言えば、答えは否だ。その罠の力がトラマナよりも圧倒的に上ならば、無力化は不可能だろう。

 そして、キルバーンのトラップは全てにおいて一級品。トラマナでは無力化する事はおろか、気休めにすらならない……はずだった。

 

「無力化出来るわけが……わ、わけが……」

 

 キルバーンの言葉が徐々に尻すぼみになっていく。その意味は、当然キルバーンの態度が示している通りだ。

 

「マァム!」

「良かった。無事の様ですねマァム」

「は、はい。ありがとうございましたアバン先生!」

 

 そう、マァムはキルバーンのトラップから解放されたのだ。

 ありえない。キルバーンはそう驚愕する。ただのトラマナでどうしてあのトラップが無力化出来るというのか。

 その答えは単純明快だ。アバンが唱えたトラマナはただのトラマナだが、キルバーンのトラップを無力化出来るほどに強大だっただけの話だ。

 

 アバンが放った特殊な羽はゴールドフェザーと言い、輝石と呼ばれる特殊な石で作られた魔法の威力を増幅させるアイテムだ。

 これはアバンが(きた)る魔王軍襲来に備えて修行していた時、破邪の洞窟と呼ばれるダンジョンで作り出したアイテムである。

 このゴールドフェザーにより、アバンは破邪の秘法とも呼べる破邪呪文を極限まで増幅する技術を身に付けたのだ。

 

「傷の方はどうですマァム?」

「大丈夫です。この防具のおかげか露出した部分以外は大してダメージは受けてませんし、回復呪文でほとんど治っています」

「それは結構。なら、このままキルバーンを倒しますよ。トラップは私が無力化しますから、気にせずどんどん攻めなさい」

『はい!』

 

 こうしてアバン達によるキルバーンへの攻撃は再開された。

 

「くっ!」

 

 どのようなトラップも、魔法のトラップである限りアバンによって無力化される。

 そして、ポップやマァムの戦闘力はキルバーンと互角かそれ以上。経験の差やトリッキーな動きでどうにか凌いでいたキルバーンだったが、数の有利を崩す事は出来ない。

 アバン達は圧倒的優位のままに、キルバーンを追い詰めていった。

 

 

 

 

 

 そしてバランとダイ。2人の竜の騎士もまた、大魔王バーンを追い詰めていた。

 

「はああぁっ!」

 

 バーンが放ったカイザーフェニックスをバランが切り裂く。そして切り裂かれたカイザーフェニックスの間隙を縫って、ダイがバーンに肉薄する。

 

「大地斬!」

「むっ!」

 

 ダイの大地斬とバーンの光魔の杖が生み出した魔刃がぶつかりあう。その威力は完全に拮抗していた。

 

 ――折れぬか――

 

 バーンは光魔の杖の威力に耐えうるダイの剣に感嘆する。バーンの魔力を吸った光魔の杖の威力はオリハルコンの武器すら上回る。

 だが、ダイの剣は折れていない。それは単純にメタルキングの剣がオリハルコンを上回っているという話ではなく、ダイが剣を覆っている竜闘気(ドラゴニックオーラ)の効果による所が大きい。

 ダイの竜闘気(ドラゴニックオーラ)による強化のおかげで、光魔の杖の威力に耐えられているのだ。逆に言えば、ダイの竜闘気(ドラゴニックオーラ)が僅かでも弱まれば、光魔の杖は容易くメタルキングの剣を砕けるという事である。

 

「かぁっ!」

 

 バーンがその魔力を解放し、その勢いだけで肉薄しているダイを吹き飛ばした。それだけに留まらず、解放の勢いにより大地は大きく砕けていく。恐るべきは大魔王の魔力だろう。

 

「カラミティウォール!」

 

 そして光魔の杖を一閃。その一撃で強力な衝撃破の壁を作り出し、そのまま直進させる事でバラン達を攻撃する。そんなバーンの必殺技をバランは一目見て分析した。

 衝撃破の光壁。上方に噴出しながら高速前進。その正体は極めて闘気に近い衝撃エネルギー。それがバランの分析結果だ。

 この必殺技をやり過ごす方法すらバランは瞬時に模索した。その方法はカラミティウォールと同質の竜闘気(ドラゴニックオーラ)を垂直に噴出させ身に纏い、衝撃波の影響を受けずにやり過ごすというもの。

 恐らく、目の前で実戦してみせればダイも可能だとバランは考える。だが、それでは後方で戦っているアバン達がこの衝撃破に巻き込まれる恐れがあった。

 故にやり過ごす方法は却下し、第二案をバランは実行に移す。

 

「合わせろダイ!」

「うん!」

 

 バランが竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全力で解放し、その動きに同調しダイもまた竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全力解放する。そして互いに剣に纏わせた闘気を放ち、カラミティウォールへと叩きつけた。

 これがバランの考えた第二案。力尽くでカラミティウォールを粉砕するという、何とも分かりやすい案だ。そして、2人の放った闘気刃はカラミティウォールを見事に粉砕した。

 

「見事! ならばこれをどうする!」

 

 だが、バーンも負けてはいない。カラミティウォールが粉砕した直後、バーンは無数のイオラをバラン達に向けて放っていた。

 それはイオラの弾幕であった。バーンの呪文速度が圧倒的な速度を誇るのは最早語るまでもない。極大呪文ですら一息に放つ事が出来るバーンが、呪文のランクを落として数で勝負した場合、そこに弾幕が生まれるのも道理だ。

 しかも、バーンのイオラは並のイオナズンに近い威力を誇っている。言うなれば極大呪文が雨あられの如く放たれている訳だ。この攻撃だけで一つの国が滅びても不思議ではないだろう。

 

「くぅっ!」

「ダイ! 竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にしろ!」

「うおおおぉっ!」

 

 イオラの弾幕に押し戻されるダイ。だが、バランの声により竜闘気(ドラゴニックオーラ)を全開にする。

 如何に竜闘気(ドラゴニックオーラ)が呪文を弾く特性を持っていると言えど限界というものがある。恐らくバーンの放つメラゾーマ、カイザーフェニックスを弾く事は出来ないだろう。

 だが、イオナズンクラスに収まっているイオラならば問題はなかった。ダイの身体から竜闘気(ドラゴニックオーラ)が吹き溢れ、その勢いでイオラも弾き飛ばされていく。

 

「むぅっ……!」

 

 弾き飛ばされたイオラは使い手であったバーンをも襲う。それを光魔の杖から発した衝撃破によって防ぎつつ、バーンは左手から圧縮した暗黒闘気をダイに向けて放つ。

 

「させん!」

 

 だが、それすらバランによって切り裂かれた。そしてバランとダイが2人してバーンに肉薄する。

 

 ――今の(・・)余では勝てんか――

 

 バーンは素直に認めた。この2人を同時に相手取っては、今の(・・)自分では勝ち目がないと。

 神々が作り上げた最強の戦士が、親子特有の息の合ったコンビネーションで二人掛りで攻め立てるのだ。この2人に対抗出来ているバーンの強さは恐るべきと称するに相応しいだろう。

 だが、どれだけ強かろうとも負けてしまえばそこに意味はない。バーンは2人の竜の騎士の力を素直に認め、ミストバーンに切り札の使用を許可した。

 

 




 ギャグ? ああ、奴ならもういない。黒の核晶で吹き飛ばされたからな。ダイ大でギャグなんて書ける訳ないじゃないですかやだなー()

 ギャグはちからをためている。

 武道家のマァムよりも早い戦士ラーハルト。ドラクエ3の仕様ならチートである(ドラクエ3は素早さの半分の値が未装備状態の防御力になる)。なお、ダイ大のステータス表記はドラクエ3仕様である。こいつチーターだ!





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