どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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ダイの大冒険 最終話

 バーンの天地魔闘の構えに対して、メタルンの取る選択肢は一つしかなかった。この体で最も適した攻撃方法である体当たり。それ以外の選択肢はメタルンには思い浮かばなかった。

 待つという手もあるだろう。それが天地魔闘の構えを破る最適解だ。こちらから攻めなければ、天地魔闘の構えは機能しない。通常の戦闘ならば先の戦いを見て分かる通り、圧倒的にメタルンが有利である。待つという選択肢を選ぶのが最も賢いだろう。

 だがメタルンはそれを選ばなかった。思い付きすらしなかった。メタルンはバーンが全身全霊を掛けた攻撃をすると理解していた。大魔王の誇りを。矜持を。野望を。全てを懸けた攻撃だ。ならば、それを迎え撃たないメタルンではなかった。

 

 バーンが天地魔闘の構えを取ってからどれ程の時が流れたか。いや、実際には十秒も経ってはいないのだが、この戦いを見守るアバン達はその十秒が数十分にも感じていた。

 それほどの緊張感がこの場を支配しているのだ。渦中の存在である両者の受けるプレッシャーはどれ程のものか。最早見当もつかないだろう。

 そうして、実時間としてはほんの僅か。体感として数十分もの時が流れた時――メタルンがバーンに体当たりを放った。

 

 メタルンは天地魔闘の構えを破る為の攻撃を完全に身に付けている。バーンが先ほどと同じ様に天地魔闘の構えを放ったとしても、メタルンならば確実に破る事が出来るだろう。

 だが、バーンがただの天地魔闘の構えを放つとはメタルンには思えなかった。バーンから感じる気迫。執念。意地。その全てがメタルンの警戒心を大きく刺激していた。

 それでもなおメタルンはバーンへと体当たりを敢行する。真正面からバーンの全てを打ち破る。そうする事で初めて大魔王バーンに打ち勝ったと言えると、メタルンは確信していた。

 

 そうして刹那にも満たぬ速度にてメタルンはバーンに接近する。当然バーンもその動きに反応し、迎撃しようとする。

 地に下げられたバーンの右腕が動き出し、メタルンに迫る。ここまでは今までと同じ流れだ。ここから防御技であるフェニックスウイングが発動――

 

 ――カラミティエンド!!――

 

 ――することなく、バーンは全てを籠めた全身全霊のカラミティエンドを放った。

 

 バーンは理解していた。天地魔闘の構えではメタルンを倒す事は出来ないと。己が絶対の自信を持っていた奥義は、メタルンの前では必殺に至らないのだと。

 ならばどうする? どうすればメタルンを倒す事が出来る? その答えをバーンはメタルンの天地魔闘破りから得た。

 

 メタルンは天地魔闘の構えを破る際、バーンの三つの必殺技を相殺できるだけの威力を籠めた体当たりを放っていた。

 動かずに力を溜めているバーンに対し、動きながらに同等の威力を放ち、なおかつ四撃目を放つ事が出来るメタルンはまさに化け物の名が相応しい存在だろう。

 だが、逆に言えばメタルンの攻撃は天地魔闘の構えに対抗する為に、全力の威力が籠められていないということだ。四連撃を重視するあまり、一つ一つの威力は落ちているのだ。

 

 だからこそ一撃だ。一撃に全てを懸ける。天地魔闘の構えを放つ為のエネルギーを、カラミティエンドただ一つに集中させる。動かずに力を溜めなければ放てない。放った後に硬直するほどの反動を受ける。それ程の力をカラミティエンドのみに注ぎ込む。

 しかもフェニックスウイングと見せかけて、振り下ろしではなく下からの斬り上げのカラミティエンドだ。防御技であるフェニックスウイングと攻撃技であるカラミティエンドでは、当然だがカラミティエンドの方が攻撃力は上だ。

 つまり、天地魔闘の構えの初動であるフェニックスウイングを相殺する為のメタルンの体当たりは、二手目であるカラミティエンドを防ぐ為の体当たりよりも威力は低いという事である。

 そこを狙い、初手にてカラミティエンドを放つ。そこまでして初めてメタルンの攻撃と防御を上回る事が出来るとバーンは考えていた。そこまでしなければ勝ち目がないと理解していたのだ。

 

 そして、メタルンの神速の体当たりに対し、バーンの全霊のカラミティエンドが触れた瞬間――

 ――轟音が鳴り響いた。

 

『!?』

 

 両者の全力にして最大の激突。その結果を誰も理解出来なかった。

 どうしてこうなったのか。バランとダイの目を以ってしても把握する事が出来なかったからだ。

 一体何故、どうして、カウンターを放ったはずのバーンがこの場から消え去り、メタルンだけが残っているのか、理解出来なかったのだ。

 

「ば、バーンはどこに消えたんだ……!?」

「わ、分からん……! 私の目でも見切れなかった……!」

 

 両者の動きを唯一見切る事が出来ていたダイとバランが驚愕を顕わにする。

 残りの者達も当然周囲を見渡す。だが、どこにもバーンの姿は映らない。一体どこに? そう思っていた時、アバンがある事に気付いた。

 

「あ、あれは……ま、まさか!」

 

 この一室に小さな破片が降り注いでいた。それに気付いたアバンは天井を見やる。

 

「み、皆さん上です! 上を見てください!!」

 

 アバンの言葉に全員が天井を見つめる。だが、そこに天井はなかった。元々なかったわけではない。バーンの宮殿には立派な天井がしっかりとあった。

 だが、今はない。いや、見る影もないと言った方が正確か。そう、豪奢で細かな装飾が施されていた天井は、木っ端微塵に砕け散っていたのだ。

 轟音と共にバーンが消え去り、そして先ほどまであった天井が砕け散っている。つまり、答えは一つだ。そして誰かが答えを口にする前に、天からバーンが墜落してきた。

 

「ば、バーン!?」

「これは……!!」

 

 天から墜落してきたバーンは見るも無残な姿となっていた。体の大半がなくなっており、胸から上だけが残るという、誰が見ても死んでいるとしか思えない姿だ。

 そんなバーンに対し、メタルンが口を開いた。

 

「……ピギィ。ピギギィ……。ピギィ」

「あ、えっと……」

 

 この場で唯一メタルンの言葉を通訳する事が出来るダイだったが、あまりの惨状に言葉を失っており、通訳が僅かに遅れてしまった。

 ダイはどうにかして気持ちを切り替え、再びメタルンの通訳に臨む。

 

「……素晴らしい一撃だった。合気の真髄を用いたのはどれ程ぶりか……。礼を言うぞバーン。と言っているよ」

 

 そうして通訳をしたダイだったが、果たして意味はあったのだろうかと首を傾げる。今のバーンが生きているとは思えなかったからだ。

 だが、次の瞬間にダイは驚愕することになる。死んだと思っていたバーンが口を開いたからだ。

 

「……今の一撃でさえ……届かぬとは、な……」

『!?』

 

 まだ生きているというのか。バーンの恐ろしい生命力に誰もが驚かされる。だが、それだけだ。それ以上に驚愕する事も、バーンが生きている事に不安を感じる者もいなかった。

 生きていても死に体である事に変わりはないと、メタルンに勝つ事は出来ないと、全員(・・)が理解しているからだ。

 

 そう、全員だ。全員が理解していた。それはバーンも例外ではなかった。

 あの瞬間。メタルンに全力の一撃を放ち、それを返された(・・・・)瞬間に理解した。今の自分では何をどうしてもこのメタルキングに勝つ事は出来ない、と。

 

 バーンのカラミティエンドは確かにメタルンの体に触れた。その威力は絶大であり、膨大な闘気で強化されたメタルボディですら切り裂いただろう。

 だが、そうはならなかった。カラミティエンドがメタルンの体に触れた瞬間、まるで己の力がそのまま返ってきたような感覚をバーンは味わった。そしてその感覚は間違ってはいなかった。

 メタルンは己の体にカラミティエンドが触れた瞬間、カラミティエンドと同じ速度で高速で回転し、その力を受け流しつつ、己の力を加えてバーンに叩きつけたのだ。

 

 それがメタルンの修めている武術の真骨頂にして真髄だった。相手の力をそのままに、己の力を加えて返す。完全なる護身術にして究極の武だ。まあ、確実に発動する事が出来ればの話だが。

 だが、それを行えるだけの技量をメタルンは有していた。人間の体で研鑽した技術だが、人外に生まれ変わるのは初めてではない。メタルキングという特殊な生命体に転生したとはいえ、十数年もの年月があれば肉体に合わせて技術を最適化する事は可能であった。

 

 そうしてバーンは己が放った最大最強の一撃にメタルンの力が加わった攻撃をまともに受けた為、上半身の一部のみが残るという多大なダメージを負ってしまったのだ。

 

 メタルンの合気の真髄に触れたバーンは理解した。勝ち目は欠片もないと。

 実はバーンにはまだ奥の手があった。バーンの額に存在する、鬼眼と呼ばれる第三の瞳。それはバーンの超魔力の源だ。

 この鬼眼から発せられる力により、ハドラーは“瞳”へと変えられていた。もっとも、メタルンとの戦闘が激化していく最中で、バーンが瞳に送る魔力の全てを戦闘に集中させていた為に、とっくにハドラーは“瞳”から解放されていたが。

 

 鬼眼にはある特殊な力があった。それが生命の進化だ。鬼眼の力を生命に与える事で、強大な力を与える事が出来るのだ。

 小さな魔物すら怪物に進化させる事が出来る鬼眼の力。それを己に用いればどうなるか……答えは、全てを超越する破壊の魔獣の誕生だ。

 その姿は鬼岩城に近しいものになるだろう。元々鬼岩城とはバーンが己に鬼眼の力を加えた場合の姿を想定して造られた城なのだ。

 

 鬼眼の力を解放すれば完全に敵はいなくなる。だが、バーンはそうしなかった。他人に用いるならばともかく、魔力の源たる自身に用いれば、二度と元に戻る事は出来ないと知っていたからだ。鬼岩城とはバーンの果たせぬ夢を具現化した玩具でもあったのだ。

 だが、メタルンとの死闘で敗北寸前まで追い詰められた時、バーンは全てを捨ててでも勝つ為に、鬼眼の力を解放する覚悟を決めていた。

 それも合気の真髄に触れたが為に無駄と悟ったが。

 

 バーンは数万年もの時を生きている。その膨大な時の中で得た経験もまた、膨大だ。だからこそ、あの一撃で理解したのだ。

 例えこの身を魔獣と変えたところで、勝つ事など出来ない……と。

 

 鬼眼の力を解放したバーンは確かに強い。今以上の力を、速度を、そして巨体を得るだろう。

 だが、それだけだ。魔力は失い、技術もまた今と変わらぬか、姿を変えた為に落ちる可能性すらある。

 それでは駄目なのだ。今以上の力を得たとしても、メタルンが最後に放った技を破る事は出来ないのだ。経験豊富なバーンだからこそ、それを理解してしまった。

 もし、合気の真髄を破る事が出来るとしたら、バーンの進化すら遥かに上回る力を得るか、メタルンを上回る技術を身に付ける他ないだろう。そして、それらを今すぐに得る方法をバーンは知らなかった。

 

 そこまで考えてバーンは思った。このメタルキングは、いったいどうやってここまで強くなったのかと。

 数万年も生きた己を遥かに上回る力を、技術を、強さをどうやって得たのかと。死ぬ前にそれだけは知りたいと、バーンはメタルンに問うた。

 

「き、聞かせてくれメタルン……どうやって、これほどまでの力を得た……?」

 

 その問いに他意はないとメタルンも気付いていた。ただ純粋な疑問を晴らしたかっただけだろうと。

 だからこそ、メタルンは素直に己の強さの秘密を公開した。

 

「ピギィ」

「なに、千年以上も修行し続ければ誰だって強くなれるだろうさ。と言って……千年!?」

『千年!?』

 

 ダイの通訳を聞き、全員がダイと同じ叫びを放つ。メタルンが千年以上もの時を生きているなどと、一体誰が思えると言うのか。

 

「め、メタルキングの寿命は人間よりも遥かに長いが、千年を超える時を生きたメタルキングは余も初めて見たぞ……」

 

 そう言ってバーンも驚きを顕わにするが、その言葉を聞いたメタルンはバーンの言葉に訂正を加えた。

 

「ピギギィ。ピギギーギギィ」

「いや、メタルキングとして転生してからは十数年ほどしか生きてないよ。私は何度も何度も転生を繰り返していてな。数十回もの転生の果てに、こうしてここにいるのさ。と言っているよ……何だかオレ頭が痛くなってきた……」

 

 あまりの事実にダイの脳が沸騰していた。どうやら許容範囲を超えてしまったようだ。

 

「て、転生を繰り返す……その度にお前は強くなっていたのか……」

「ピギィ。ピギィピギィ」

「修行ありきだけどね。転生は強さと記憶を引き継ぐ要素に過ぎない。強くなるには修行、それ以外はないな。と言っているよ」

 

 転生を繰り返して千年以上。修行を絶やした生はなかった。人に生まれ変わった時も、人外に生まれ変わった時も、例えおぞましい何かに生まれ変わった時も、変わらず修行に生を費やした。こいつ本当に絶対遵守(ギアス)解けているのかと疑いたくなるほどに、メタルンは修行厨――修行中毒?――だった。

 そんなメタルンの言葉を聞いて、そのあまりの内容に放心しているバーンに対し、メタルンは語り掛ける。

 

「ピギィ」

「バーン。お前は途方もなく長い年月を生きているのだろう。先の発言を聞けば予想出来るが、少なくとも千年以上は生きているはずだ。と言っているよ」

「……ああ。数万年は生きているな……」

 

 数万年。文字にすれば僅か数文字だが、その内容はまさに人間の想像もつかない程に膨大だ。

 

「ピギィ。ピギギィ?」

「数万年か。私の十倍以上だな。それ程の時を生きているお前が私に敗れる……この理由が分かるか? と言っているよ」

 

 そう言われてバーンは僅かに目を瞑り、そして答えた。

 

「ふ、ふふふ……そう言えば、修行などこの数千年はした覚えがないな……」

 

 バーンは最強だった。魔界では敵無しであった。天界の神々とも、相手が複数でなければ勝つ自信があった。

 そんな強さに辿り着いたバーンが行った事は更なる強さを求める修行ではなく、永遠に生き続ける為の不老の術だった。それが凍れる時間の秘法を利用した不老の術だ。

 凍れる時間の秘法にて永遠の生を得たバーンは、己の強さを磨く事はなかった。もちろん実力を落とすようなことはしない。それどころか知識を高め、魔力を高め、装備を高めるという方向では、強くなろうとしていたと言えるだろう。

 だが、それだけだ。更なる技術を会得しようと努力はしなかった。肉体の強さを高める事もしなかった。そうするには元の肉体に戻らなければならない。そうしてしまえば、寿命が数百年は短くなってしまう。長い時を掛けて神々との戦いの準備をしているバーンにとって、そして神々を倒した後に世界を支配し続ける予定のバーンにとって、それは致命的だったからだ。

 様々な理由があるが、結局はバーンは満足してしまったのだろう。全盛期の肉体ならば敵はいないと、満足してしまったのだ。

 

「ピギィギィ。ピギィ。ピィギギィ」

「転生を繰り返すという反則技を用いている私が言うのは卑怯かもしれない。それでも敢えて言おう。私は修行を欠かさなかった。例え敵がいなくとも、一生の殆どを修行に費やした。だからこそ、数千年しか生きていない私は数万年生きたお前よりも強い。と言っているよ」

 

 数千年しか生きていない。その言葉だけでもはやスケールが違うとアバン達は思った。そう思わないのはこの場ではバーンだけだろう。

 

「そうか……」

 

 メタルンの言葉を聞き、バーンは静かに頷き納得した。例え己の十分の一しか生きてなくとも、その生は己の数百倍も密度が高かったのだ。それでは勝てるわけがなかった。

 バーンは己を恥じた。己が最強だと思い込み、大魔王として君臨し侵略するだけで、更なる強さを得ようとしなかった己を恥じた。

 だが全ては後の祭りだ。バーンに起死回生の手段はない。このダメージを癒す事は出来ない。それはバーンの魔力が尽きているというわけではなく、己の力とメタルンの力が合わさった一撃を受けた結果、ダメージの回復が一時的に不可能になったからだ。これは暗黒闘気や、竜闘気(ドラゴニックオーラ)によるダメージが回復しにくくなるのと同じ理由だろう。

 時間を掛ければそれも収まり、砕け散った肉体も再生可能だ。三つある心臓全てが失われるか、脳が失われでもしない限り再生は可能なのは流石大魔王と言うべきか。

 だが、再生が可能となるまでに要する時間は長く、そしてメタルンがバーンを殺すのに要する時間はほんの僅かだ。故に、バーンの逆転は不可能だった。

 

「余に止めをさせメタルン……それが勝者たるお前の権利だ」

 

 これほどの強者に敗れるならば悔いはあれど納得も出来た。そう思ったバーンは完全なる決着をつけるべくそう言った。

 バーンが素直に敗北を認め、止めを要求するという発言にアバン達もざわめく。そして潔く敗北を認めるバーンに多くの者が敬意を抱いた。

 これで地上に平和は戻るだろう。バーンは倒れ、魔王軍は壊滅状態だ。地上を破壊しようとする強者は最早いない。地上の危機は去ったのだ。

 

「ピギィ」

「やだ。と言っているよ。……うん?」

『はぁっ!?』

 

 メタルンの返答にバーン含む全員が驚愕の声を上げた。

 やだ。それはつまり、バーンに止めを刺す事を拒否しているということだ。それは一体どういうことなのか。

 

「ふざけるなよメタルン!! 貴様どういうつもりだ!? まさかバーンに情が湧いたとでも言うんじゃないだろうな!?」

「ピ? ピギィギィ」

「お? いつの間にか解放されたハドラー君じゃないか。瞳の中は居心地良かった? と言っているよ」

「きさまぁぁぁぁ!!!」

「ピギィ!」

「お、落ち着いてくださいハドラー様! とアルビナスが言っているよ」

「ピギィ!」

「お袋もハドラー様を挑発しないでくれよ! とヒムが言っているよ」

「ピギィ……」

「ハドラー様をからかって楽しむのは出来ればご勘弁を母上……。とシグマが言っているよ」

「ピギィ」

「それが母者なりのハドラー様への信頼なのだろう。とフェンブレンが言っているよ」

「ピギィ」

「ブローム。とブロックが言っているよ。……ふぅ」

 

 ダイの仕事は早く、正確で、そして多量だった。彼がいなければ色々な面で破綻していただろう。影の功労者である。竜の騎士なのに。

 

 ――ブロックの通訳はいいんじゃねぇかな……――

 

 そうポップが思ったが、それは口には出さなかった。出してしまえばブロックを差別するなと他の親衛騎団から怒鳴られると理解していたからだ。成長する大魔導士ポップであった。

 

「ピギィ。ピギギィ」

「まあハドラーをからかうのはこれくらいにしとこう。あと、母親じゃないから。と言っているよ」

 

 メタルンの言葉を聞いたハドラーが更に憤慨していたが、それはさて置いてバーンはメタルンに疑問をぶつける。

 

「どういうつもりだ……敗者である余に憐れみをかけるつもりか!?」

 

 血反吐を吐きながらバーンは叫んだ。勝者から憐れみを受ける。それは敗者にとって何よりの屈辱だと、バーンは思っていた。

 だが、そんなバーンに対してメタルンは毅然とした態度で言い放った。

 

「ピギィ。ピギィ。ピギギギィ?」

「力が全てだと言ったな。力が正義だと言ったな。ならば、勝者である私に敗者であるお前が従うのはお前の理では当然の事だろう。違うかバーン? と言っているよ」

 

 その言葉を聞いて、バーンは黙り込んだ。反論の余地がなかったからだ。

 そう、バーンはその強大な力で多くの魔族や魔物を降し、そして配下に加えてきた。それと同じ事をやられただけだ。

 無論バーンに敗れても死を選ぶ強者達は多くいた。そんな強者達を惜しみつつも、バーンは彼らを滅ぼしてきた。敬意を抱いた強者の意思を尊重したのだ。

 だが、それは敗者が敗者自身の理に従った結果だ。バーンの理では、強者は絶対。強者が正義だ。つまり、メタルンの言葉に従う以外にバーンの選択肢はなかった。

 これが竜の騎士や人間の発言ならば認めなかったかもしれないが、相手はバーン寄りの存在とも言えるモンスターだ。しかも、一度も綺麗事な正義などを主張していない。だからか、意外にもバーンの中に拒否感は少なかった。

 

「く、くっくっく……。敗者を従える……確かにそれも勝者の権利よな。……良かろう。敗者は余だ。甘んじて受け入れよう。だが、何故余を生かす? その理由だけは教えてもらうぞ」

「……ピギィ」

「……理由は幾つかある。一つは魔界の統治だ。と言っているよ」

 

 大魔王バーンという絶対の支配者がいなくなった魔界は荒れるだろう。野心ある者や強者が魔界を己の物にせんと激しく動き出し、戦乱の世となるだろう。

 そんな連中が地上を滅ぼさんと動き出す可能性もある。バーンに忠誠を誓う者がいれば復讐の為に動き出す可能性もある。それを抑える為に、バーンに魔界を統治してもらう予定だった。

 それだけではない。バーンの目的を聞き、メタルンも魔界の惨状に想う所があった。元々は故郷だ。人間はおらず、気性の荒いモンスターや魔族が多く、荒んだ大地に嫌気がさして岩盤を突き破って地上にやって来たメタルンだったが、故郷を想う気持ちは僅かばかりあった。なお、突き破った穴は一応塞いではある。

 それ故にバーンと共にどうにかして魔界に光を灯せないかと模索するつもりだった。もちろん地上の破壊などという物騒な手段は無しでだ。

 

 そこまでの理由を語ったところで、バーンは一応の納得をした。

 

「……いいだろう。お前の命に従おう。だが覚えておれ! 余は更に強くなる! そしてお前よりも強くなった時、その時こそお前の最後だ!」

 

 そんなバーンの言葉に多くの者が不安に駆られる。ここでバーンを逃してもいいのだろうかと。

 ここから先バーンは今以上に強くなるだろう。そうなった時、果たしてメタルンでも止める事が出来るのだろうか。

 そんな皆の不安を他所に、メタルンはバーンの宣言に対して不敵なスライムスマイルを浮かべて言葉を放った。

 

「ピギィ。ピギィ?」

「私が寿命で弱まる前には後始末つけるよ。だから、少しだけ我侭を聞いてくれないか?」

 

 それはアバン達に放った懇願だ。それと同時にバーンに対する警告でもあった。

 タイムリミットは私が加齢による戦闘能力の低下が起こるまで。それまでに私を倒す事が出来なかったら、きっちりとお前を殺す。そうバーンに対して告げているのだ。

 それはバーンも理解出来たのか、メタルンの言葉を聞いたバーンは不敵な笑みをメタルンに対して向けていた。必ずや期限内に倒してみせるという意気込みの顕れだろう。

 

「……仕方あるまい。バーンを倒したのはメタルンだ。そのメタルンがそう言うのならば、私に異論はない」

「で、でもよバランさん! このままバーンを放置ってわけには――」

 

 渋々だがメタルンの我侭を肯定するバランに対し、ポップが流石に反論する。このままバーンを見過ごしていいとはポップには思えなかったのだ。

 相手は大魔王、つまり、悪の魔王軍の総大将だ。そんな輩が素直にメタルンに従うとは到底思えなかったのだ。

 だが、そんなポップの反論はバランによって最後まで口にする事が出来ずに遮られた。

 

「ならばお前がバーンに止めを刺すといい。今ならこの場の誰だろうとバーンを倒す事が出来るだろう。ただし、メタルンを掻い潜れたらの話だがな」

「う……」

 

 そう言われてメタルンをちらりと見るポップ。そこにはスライムスマイルを浮かべたメタルンがバーンを庇うように高速で反復横飛びしていた。やれるもんならやってみな、と言わんばかりである。

 

「ピギィ?」

「やれるもんならやってみな? と言っているよ」

 

 言った。

 

「い、いや、オレは遠慮しとくわ……」

 

 ポップはすごすごと下がって行った。誰が好き好んで大魔王すら圧倒する化け物中の化け物と敵対しなくてはならないのか。ポップは自殺願望などないのだ。大魔道士はクールに下がるぜ。

 

「ピギィ。ピギギィ。ピギギィー」

「安心しろポップ。バーンは己の信条を破るような奴じゃないさ。大魔王の矜持に懸けて、私に勝つまでは地上侵略や破壊はしないだろう。と言っているよ」

 

 メタルンは自信を持ってそう言う事が出来た。己の言葉を容易く曲げるような男ではないと、戦いを通じて理解出来たのだ。

 そこまで言われてはアバン達もメタルンの我侭を聞くしかないと折れたようだ。

 

「……やれやれ。こんな結果になるとは私も想定外でしたよ。ですがまあ、最大の功労者であるメタルンがそう言うならば、聞く他ありませんね」

 

 メタルンがいなければ地上や人間はどれだけの被害を被っていたか。計算高く冷静なアバンはこの場の誰よりもそれを理解していた。

 そんなメタルンがバーンを見逃すと言うのだ。見逃した場合の危険性は確かにあるが、少なくともメタルンが倒されない限りバーンが地上を侵略しないだろうとは、バーンの性格に触れたアバンも信じる事が出来た。

 

 アバンとバランというパーティーの二大リーダーがメタルンを肯定した事で、完全には納得出来ないまでもバーンは見逃される事になった。

 

「……余はこれより魔界へと戻る。この傷が癒え、そして更なる力を手に入れた時。余はお前を倒しに再び地上に戻ってくるだろう」

「ピギィ」

「その時は私だけを狙って来いよ。他の人達や地上を傷つける事は許さないぞ。と言っているよ」

「ふん。分かっておるわ。命令には従う。今の余はお前を倒すまではお前の部下だからな……。く、くっくっく。メタルキングに従えられる大魔王など、例え何万年経とうとも余以外にはおらんだろうな」

 

 自嘲しながらもどこか楽しげにバーンは笑う。そして僅かにメタルンと視線を交わし……呪文の力で魔界へと戻って行った。

 

「……行っちまったな」

「……うん」

 

 バーンが消えた後の空間を見て、ポップがそう呟き、ダイが頷く。賽は投げられた。バーンが生き延びた事による結果がどうなるかは最早誰にも分からないだろう。

 だが、それも仕方のないことだ。メタルンの行動を止める権利はこの場の誰にもなかった。強いて言えばハドラーとその親衛騎団。そしてクロコダインくらいだろう。何故なら――

 

「……オレ達、何もしてなかったな」

「……うん」

 

 そう、バーンパレスに攻め込んだ勇者パーティーは、何もしてないからだ。

 (キング)・マキシマム率いるオリハルコン軍団は親衛騎団が、無数の魔界の精鋭モンスター達はクロコダインが倒した。

 ミストバーンと激闘を繰り広げたのはハドラーであり、そのミストに止めを刺した――後にメタルンから聞いた――のはメタルンだ。

 そして大魔王バーンを倒したのもメタルンとなれば……結果的にだが、アバン達はバーンパレスに見学に来ただけとなっていた。そんな彼らがメタルンに何かを言う事は憚られたのだ。

 

「……どうしてこうなったんだろうなぁ」

 

 メドローアを習得し、コンプレックスを乗り越え、己を受け入れて勇気を得て、新たな力を手に入れた。

 その全ては、発揮するまでもなく終わってしまった。どうしてこうなったのか。大体メタルンのせいだと理解していても、ポップはそう言わずにはいられなかった。

 

「どうしてこうなったんだろうね……」

 

 ダイもまたポップの呟きに同調する。新たな武器を手にし、次こそは大魔王を倒すと意気込んでいた。全ては地上の人々や家族、そして淡い恋心を抱いているレオナの為に。

 だが、その意気込みが発揮される場面はなかった。ダイの役目は通訳という、ある意味何よりも重要な役目のみだった。ロン・ベルクが打ち直した事で魂が宿ったダイの剣も、どこか悲しそうに宝玉を輝かせていた。

 

 こうして、勇者達と魔王軍との戦いは幕を閉じたのであった。勇者達は戦ってすらいなかったが……。

 

 

 

 

 

 

 魔王軍を壊滅させたアバン達はバーンパレスから地上へと戻って来た。

 地上に戻って来たアバン達を誰もが歓迎する。メタルンとバーンの戦いの波動は地上の全てに届いていた。当然、バーンパレスの直下にいた者達にも凄まじい衝撃が届いていた。

 その衝撃が収まったと思えば、しばらくしてアバン達が戻って来たのだ。つまり、大魔王に勝ったという事だと誰もが悟ったのだ。

 恐ろしい存在である大魔王バーンに勝利したと思った彼らは歓喜したが、アバンの説明を聞いて僅かに意気消沈する。

 

 大魔王バーンの存命。それは各国の指導者達に苦い顔をさせるには十分な情報だった。

 もっとも、アバンはバーンパレスで起こった出来事の全てを説明はしなかった。全員が口裏を合わせ、大魔王バーンは倒す事は出来たが、殺す事は出来ずに魔界に逃げ帰ったという事にしたのだ。

 その際に竜の騎士の力で封印を施す事が出来たので、封印が解けるまで地上に戻ってくる事はないとも伝えている。そんな力は竜の騎士にはないのだが、神々が生み出した戦闘生命体という触れ込みが信憑性を生み、それぞれの国の指導者達はそれを信じた。

 

「ピギィ」

 

 ――竜の騎士様々だね――

 

「あはは……」

 

 メタルンの言葉をダイは通訳せず、苦笑いする事で流した。どう答えたらいいかダイも分からなかったのだ。

 ともかく、大魔王に逃げられたとはいえ勇者達が勝利した事に変わりはない。一時的かもしれないが、地上の危機は去ったのだ。それに喜ばないものはいなかった。

 そうして歓声を上げる彼らに対し、ある存在も祝辞を述べた。

 

「おめでとう。ボクからも祝福の言葉を送らせていただくよ」

『!?』

 

 その言葉を放ったのは誰あろう、メタルンの闘気砲によって死んだはずのキルバーンであった。

 確かにキルバーンは死んだはずだった。だが、現にこうしてこの場に立って、言葉を口にしている。一体どういう事なのか。

 

「ピギィ……ピィギギィ」

「ふむ……なるほど。初めから生きていなかったか。道理でな。と言っているよ」

 

 キルバーンを観察したメタルンが納得がいったと何度か頷く。

 

「お、おいメタルン! お前だけ納得してないでどういうことか説明しろよ! こいつはお前が倒したはずだろ!?」

 

 一匹だけで納得するメタルンにポップが疑問をぶつけるが、その疑問に応えたのはメタルンではなかった。

 

「ははは。流石は大魔王バーンを倒すほどのメタルキングだ。ボクの秘密に気付くとはねぇ」

 

 その言葉を発したのはキルバーンではなかった。キルバーンの使い魔であるピロロ。彼が発したのだ。

 そうしてピロロは未だ驚愕止まぬアバン達に対し、楽しそうに種明かしを始めた。

 

「そこのメタルキングが言った通り、こいつは生きていない。機械仕掛けの人形……ボクの操り人形なのさ」

『!?』

 

 ピロロがキルバーンの肩に乗って、キルバーンを機械仕掛けの人形と言い放つ。今まで戦って来た道化師は実は生物ではなかった。いや、キルバーンですらない。真のキルバーンは道化師を裏から操っていた――

 

「そう、ボクが本当のキルバーンだ……!」

 

 ピロロ。彼こそが真のキルバーンだったのだ。

 表で戦っているのはキルバーンが操る人形だ。例え人形が攻撃されても本体である真のキルバーンは痛くも痒くもない。

 そして道化師が壊れても本体が修理すれば問題ない。メタルンの闘気砲で行動不能になってもこうして稼動しているのはそういう事だった。

 

「まあ厳密に言うと倒す方法はあるんだよ。顔面を叩き割ればいいんだ」

 

 キルバーンは次々に己の隠していた情報を暴露する。それは勇者達の強さに恐れを無し、降伏するつもりだから……ではなかった。

 キルバーンは道化師の仮面を外し、その中身をこの場の全員に見せつける。そして、アバン達の多くが驚愕に慄いた。

 

「く、黒の核晶……!!」

「アッハッハ! その通り!! もし顔面を砕いていれば大惨事だったねぇ! いや良かった良かった!!」

 

 アバン達の驚愕に慄く顔を見られて機嫌が良くなったのか、楽しそうにキルバーンは言葉を紡ぎ続ける。

 

「ボクの本当の主は魔界にいる冥竜王ヴェルザー様でね。ボクはヴェルザー様の命令で大魔王の側についた……表向きは協力者だが、機を見て大魔王が倒せるようならばこの人形の核晶を使って彼を倒せと仰せつかっていた。ヴェルザーさまは大魔王と違って地上も欲しいんだ」

 

 欲深いだろ? まるで人間みたいだ。そう言いながら、キルバーンは黒の核晶を起動させる。

 

「ああそうそう。良い事を教えてあげよう。実は大魔王も黒の核晶を用意していたんだ。バーンパレスには未使用の黒の核晶が五つもあるのさ。しかも地上にも一つ落ちていてね。その全てはこの人形の核晶よりも大きくてねぇ……。この核晶の爆発で誘爆するかもしれないけど……まあ、バーンパレスにある核晶はともかく、地上にある核晶に誘爆したとしても地上を木っ端微塵にする恐れはないだろう。精々地上が平らになるくらいさ」

 

 良い事とはけっして地上の人間にとってではなく、キルバーンにとっての良い事であった。その証拠に、そんな恐ろしい情報を知って絶望に歪む者達の反応を見たキルバーンはとても愉しそうだった。

 そしてキルバーンは更なる絶望の情報を人間達に教えてあげた。

 

「ああ、ヒャド系呪文でこの核晶を止める事は出来ないよ。この人形のエネルギー源である魔界のマグマ成分の高熱が――」

「ピギィ」

 

 ――話なげーよ――

 

 メタルンのこうげき!

 メタルンは闘気砲をはなった!

 キルバーン(真)に651のダメージ! キルバーン(真)をたおした!

 

『……』

 

 キルバーンは原型すら留めずに消滅した。若干憐れに思うアバン達だったが、今はそれどころではないと気持ちを切り替える。

 

「黒の核晶は!?」

「起動したままだ! このままではあと十秒もしないうちに爆発するぞ!!」

 

 そう、例えキルバーンが死んだとしても、黒の核晶は残っているのだ。キルバーンなどよりもこちらの方がよほど大事(おおごと)だろう。

 爆発まであと十秒足らず。そして、どうにかして黒の核晶の被害を防ごうと飛び出した者達がいた。

 ぶっちぎりでメタルンが人形ごと黒の核晶を咥えて空の彼方へ飛んで行ったが。

 

「メタルン!!」

 

 ダイが叫び声を上げるが、瞬く間にメタルンの姿は小さくなっていき、そして――空の彼方で巨大な爆発が起こった。

 

「め、メタルーン!!!」

 

 ダイの悲痛な声が辺りに響く。そしてダイの親友であるポップはダイを慰めようとダイに近寄る……事無く、咄嗟に振り返って背後を確認した。

 

「そこだ!!」

「ピ、ピギィ!?」

 

 ――な、なんだと!?――

 

 やはりと言うべきか、当然と言うべきか。そこには無傷なメタルンの姿があった。

 黒の核晶の爆発を見るのはこれで二度目のメタルンだ。一度目と違って爆発の瞬間にその範囲内から無傷で切り抜けるのは不可能ではなかったようだ。バグルキングに改名すべきだと誰かが思った。

 

「やっぱり無事だったか! お前があの程度で死ぬなんて今更思えねーんだよ!!」

 

 然り然りとアバン達の大半が首肯する。メタルンを心配していたのはダイと、メタルンの異常性を詳しく知らない各国の指導者含む地上の面々くらいだった。

 ともかく、こうして本当に魔王軍の脅威は地上から去ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バラン

 

 地上に平和が戻った後、デルムリン島に戻って再び家族と幸せな生活を送る。

 メタルンとの想像以上の実力差を悟り、今まで以上に修行に励む。バーンがメタルンを倒しに来た時は、自分の手で倒すと意気込みを入れていた。

 

 

 

 ソアラ

 

 戦いから帰って来た家族を優しく迎え入れ、その暖かな心で癒してあげる。

 その後は家族仲睦まじくデルムリン島で暮らす。時折家族でパプニカ王国へ旅行に出かける事も。

 

 

 

 ラーハルト

 

 好敵手であるヒュンケルと幾度となく戦い、互いに切磋琢磨する。もっとも、最終的な目標は打倒メタルンだが……。

 人間に対する嫌悪感は完全にはなくなっていないが、それでもソアラとダイ、そしてアバン達との邂逅で薄れている。

 その証拠か、人間の女性との間に一子を儲けた。寿命の関係で女性とは死に別れたが、それでも互いに後悔はなかったようだ。

 

 

 

 アバン

 

 チート。

 大魔王との戦いが終わったため、年貢の納め時となる。互いに好き合っていたカール王国の女王・フローラとついに結婚を果たす。

 そしてその知識を世界の為に役立て続けた。大体アバンのおかげ。

 

 

 

 ヒュンケル

 

 バーンとの決戦で何も出来なかった事を恥じ、戦いが終わってからも強さを求め、アバンから離れて独り旅を続ける。そして時折ラーハルトと戦いにデルムリン島に赴き、互いに強さを確かめ合っていた。

 孤高の戦士として勇者パーティーの中で女性人気トップクラスとなり、後の世では劇などにも多く登場する人物となる。

 

 

 

 ダイ

 

 戦いが終わってからはしばらくデルムリン島で暮らす。そしてポップと共に世界中を飛び回ったり、レオナ姫に会いに良くパプニカ王国へ出向いて楽しく青春を謳歌する。

 紆余曲折を経てレオナと結婚を果たす。竜の騎士にして一国の王という、文献を紐解いても拝めないような立場になる。もっとも、政治は全てレオナ任せだったが。

 レオナとの間に四子を儲ける。人の血が混ざっているせいか、出生率はバランよりも高いようだ。

 有事の際は戦えるよう修行は欠かしていなかった。メタルンの修行中毒に侵された者がここにまた一人……。

 

 

 

 ブラス

 

 ダイの子ども、つまりは孫にあたる人物をその手に抱く事が出来て感無量となる。

 そしてデルムリン島でいつまでもダイやその子ども達が帰って来られる場所を守り続けた。

 

 

 

 ゴメちゃん

 

 伝説のアイテムにして神々の遺産。だが、その真価を一度も発揮する事なく、ダイの親友として常にダイの傍らにあった。

 あと、メタルンの王冠はゴメちゃんの指定席である。

 

 

 

 元偽勇者一行

 

 大魔王討伐が終わってからしばらくの間はメタルンの修行を受ける。そして地獄の修行が終わったあと、真の勇者となるべく世界を旅する。

 もっとも、すでに邪悪な魔物や魔族は地上に存在していなかったため、彼らの強さが生かされる事は殆どなかったが。

 それでも人の役に立てる事に生き甲斐を感じるように成長――矯正――した彼らはそれを嘆かずに、平和な世界を楽しく旅して仲良く過ごした。時折デルムリン島へ寄っていたようだ。

 

 

 

 バロン

 

 獄中。慈悲はない。

 

 

 

 ポップ

 

 マトリフの衰えと本人の成長もあり、名実共に世界最強の大魔道士となる。

 戦いの後は勇気を振り絞ってマァムに告白。しばらくは返事を待たされたが、どうにかしてマァムとの結婚が叶った。

 最後の戦いで役に立たなかった事が微妙に気になっており、結婚後も修行は欠かさなかった。

 ダイとの仲は良く、共に馬鹿をしたり世界を旅して楽しく遊んでいた。

 

 

 

 ハドラー

 

 崩壊した魔王軍を集結させ統率し、再び魔王として君臨する。

 地上を攻めるつもりはハドラーになく、その目的の大半は打倒メタルンと化していた。もっとも、それが叶う事はなかったが。

 大魔王との決戦から二十余年ほどして、パプニカの第二王女と結婚する。その王女はソアラの面影がある天真爛漫な少女だったという。なお、王女の父親や祖父と死闘を繰り広げた末、ようやく認められたとか何とか。

 

 

 

 クロコダイン

 

 ハドラーの右腕として魔王国の将軍の座に就く。その力にて多くの魔物を率い、人々に仇なすはぐれ魔物をこらしめた。

 高速で動く高機動重装甲メタリックピンクワニの伝説は各地に残っている。

 

 

 

 クルテマッカⅦ世

 

 魔王軍との戦争終結後も、自国繁栄の為に戦力を増強する。だが、同時に各国に軍事技術の提携を行い、未だ魔界にて虎視眈々と地上を狙う大魔王に備える。傲慢な一面もあるが、優秀な国王として名を残した。

 

 

 

 マァム

 

 ポップの告白を受けたマァムだったが、ヒュンケルへの淡い恋心もあって返答をしばらく延ばした。

 だが、けっしてポップに対しての好感度が低かったわけでもなく、ヒュンケルが孤高を貫き独りで旅に出た事もあり、ストレートに好意をぶつけてくるポップへと傾いていく。

 ポップと同じく最終決戦で何も出来なかった事を気にし、互いに修行に励んだ。

 

 

 

 ロン・ベルク

 

 自分の武器が最終決戦で使われなかった事が鍛冶屋の矜持を傷つけた。メタルンが弟子になると、数年間の酒びたりとやる気のなさが嘘のように武具を作り続けた。

 そして自身が求めていた最強の武器が完成する。それと同時に魔界最強の剣士も復活する事となった。メタルンにはフルボッコされたが。以来、剣士としての腕も更に磨くようになった。

 

 

 

 マキシマム

 バーンが敗れた事でお咎めはなくなり魔界に帰るが、バーンが生きていると知って地上に逃げてきた。そうして地上を放浪している最中、いつの間にかデルムリン島に住みついた。

 今ではキングの称号を捨てのんびり暮らしている。周囲が化け物だらけなのでのんびり暮らさざるをえないとも言う。

 

 

 

 ハドラー親衛騎団。

 

 ハドラーの元でその力を発揮する。優秀な戦士としてハドラーの命令を次々とこなしていった。

 とある時期にアルビナスはしばらく自棄酒に逃げていたが。

 

 

 

 バーン

 

 魔界に戻った後、傷を癒してメタルンを超える為に修行に励む。それと同時にヴェルザーの配下も含めて魔界を完全に統一する事に成功した。封印されたままのヴェルザーは大層悔しがっていたようだ。

 そしてメタルンと協力し魔界の一部にだが光を与える事に成功する。死の大地直下の地面を消し飛ばすというものすごい力技だったが。その穴はギアガの大穴と地上では言われ、魔界に通じていると恐れられるようになった。大体御伽噺だと思われているが。

 こうして魔界に太陽の光を与えたバーンは偉大なる大魔王として魔界中から更なる支持を得ていたが、魔界を統一して数百年後に忽然と姿を消した。バーンが姿を消したのと同時期に魔界の外れにある無人島が消滅する事件があったが、バーン失踪という大事件によって魔界の住民の記憶には残らなかったという。

 

 

 

 メタルン

 

 バーンを倒した後、偽勇者一行の修行や細々とした案件を終わらせてから念願叶ってロン・ベルクの弟子となる。

 教える立場が多かったため、弟子になるのが結構新鮮だったようで、鍛冶師として日々楽しそうに修行をこなしていた。そしてメタルキングでありながら世界でも最高峰の鍛冶師となった。なお、ロン・ベルクとの会話は用意していたフリップで行っていたようだ。

 ダイ達が寿命でこの世を去ってからも、長い時を生き続ける。どうやらメタルキングの寿命は相当長かったようだ。

 バーンと協力してかつて死の大地だった場所の地面をくり抜き、地上と魔界を直接繋げる。更にロン・ベルクと協力して地上の光を極力そのまま魔界に差し込むよう特殊な加工を施す。これにより一部分だけだが魔界に光が灯る事となった。

 なお、地上に凶暴な魔族やモンスターが乗り込む事を懸念して、神々にお願い(・・・)して光のみを通す結界を張ってもらう。大魔王バーンクラスの実力者じゃないとこの結界を越える事は出来ないだろう。

 そして自らの力が衰えそうな気配を感じた時、魔界に赴いて約束を果たした。その後、メタルンの姿を見た者は誰もいなかったという。

 

 

 

 ???

 

 誰もいなくなったバーンパレスにて、とあるモノを回収し、その場から消え去った。そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、地上の平和は勇者達によって守られた。アバンを筆頭に、勇者パーティーは英雄として語り継がれた。……最後の決戦で何もしていないので、英雄と呼ばれる事を誰もが拒んだが。それを含め、己の功績を誇示しない謙虚な英雄だと敬われたので悪循環でもあった。

 こうなったのもメタルンが己の功績を隠すようにアバン達に頼み込んだのが原因だ。モンスターが世界を守ったという真実よりも、勇者達が力を合わせて世界を守ったという体裁を立てた方が色々と都合が良かったからだ。主に自分の為にだが。

 メタルンは勇者達に改心させられて仲間になった心優しいモンスターという立場に落ち着いていた。気楽な立場を手に入れて本人は満足である。

 

 魔王軍との戦争終結後。平和を取り戻した地上は慌しく動いていた。

 平和を取り戻したとはいえ、戦後処理を含めてやるべき事は多く残っているのだ。

 

 アバンはその知識を用いてバーンパレスに残されていた全ての黒の核晶を解体した。魔界の技術で作り出された禁断の超爆弾だったが、知識と技術のチートアバン先生に掛かれば敵ではなかったようだ。

 さらにアバンは主君であり想い人でもあったカール王国のフローラ女王と結婚。カール王国の王となり、各国の指導者と共に多くの条約を締結させた。

 

 その条約の一つに、新生魔王国との不可侵条約があった。そう、魔王ハドラー率いる魔王軍の残党が集まって生まれた国である。

 ハドラーはバーンが敗れた事で散り散りとなった魔王軍を集結させ、統率したのだ。今更ハドラーに地上を侵略するつもりはなかったが、かつての配下達が無残に散っていくのを見過ごす事も何故か出来ず、配下に乞われて再び魔王として君臨したのだ。

 そうして魔王に戻ったハドラーは、アバンを通じて地上の国と互いに不可侵との条約を結んだのだ。

 

 当然だが、多くの国は新生魔王軍を信用してはいなかった。勇者アバンの説得、そして大魔王バーンとの戦いで力になってくれたという事実から、条約自体は成ったが、魔王を信じるには人々に時間が足りなかった。

 それも十数年もすれば別だったが。ハドラーが魔王国を建国した事により、多くの魔物が住みやすい魔王国へと移動し、そのおかげで各国は魔物からの被害が少なくなった。

 それだけではない。カール王国とパプニカ王国の二国とだけ国交を開いていた魔王国は、魔物の力を利用した様々な商売を提供していた。主にアバンのアイディアだったが。

 その評判もあり、魔王軍が管理する魔物は人を襲わないと多くの者が認識する。そして、魔王国が信用されるようになった極め付けの要因が……魔王ハドラーと人間の女性の結婚だった。

 もちろん魔王と人間の結婚を訝しむ者もいたが、多くの人々は種族を超えた愛という美談として受け取っていた。

 こうして地上は魔物との争いも少なくなり、更なる平和の道を歩むのであった。

 

 人と魔物が笑い合う平和な世界。多くの人々が幸せに暮らす世界。そんな世界を守ったのが、一匹のメタルキングという事実を知っている者は殆どいないのであった。

 

 

 

 

 

 SCENARIO――TONPA

 

 

 

 CHARACTER・SCENARIO原案――ダイの大冒険

 

 

 

 MUSIC COMPOSE――読者の皆様の心の中に

 

 

 

 SPECIAL THANKS――読者の皆様

 

 

 

 

 

 

 ~Fin~

 

 

 

 

 

 




 これにて「どうしてこうなった? 異伝編――ダイの大冒険――」は終わりとなります。読んで頂きありがとうございました。
 色々主人公が原作世界に転生する妄想をしていく中、ダイ大の世界ならどうなるかと妄想した結果、メタルキングに転生しました。おかげで色々とギャグが捗りました。メタルキング様々です。
 ラストに納得が行かない方もいらっしゃると思います。バーンの処遇とかね。殺すのが一番いい安全策ですし。でも、バーンを殺す作品は原作・二次通して見た事はあるけど、バーンに勝った上でバーンを生かした作品は見た事がないので、ちょっと生かしてみました。まあ、バーン様なら己の信条に従ってくれるかなって勝手に信じています。

 とりあえずダイ大は終わりましたが、また筆が乗った時に新しい話を書きたいと思います。それでは皆様、本当にありがとうございました。なお、後日談が投稿されるかは未定です。







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