どうしてこうなった? 異伝編   作:とんぱ
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BLEACH 第八話

 藍染と死神達の戦いは藍染優位に動いていた。仮面の軍勢(ヴァイザード)のリーダー格である平子真二が斬魄刀の力を解放して戦うが、それすら一蹴する程の実力差を藍染は見せつけた。だがそれ以外、市丸ギンと東仙要は芳しくない戦況だった。

 

 ギンからはあまりやる気を感じられず、戦闘開始時に仮面の軍勢(ヴァイザード)を一人瀕死に追いやってからは積極的に戦闘には参加せず、藍染の戦いを見学しているくらいだった。

 東仙に至っては隊長格に敗れた程だ。虚化した上に、仮面の軍勢(ヴァイザード)の誰もが出来ない虚化した死神による帰刃(レスレクシオン)をも成した東仙だったが、その帰刃(レスレクシオン)が切っ掛けとなって敗北してしまった。

 

 東仙要は生来の盲目だ。それでも彼は隊長の座に就く事が出来る程の実力者だった。視覚に頼らずとも、残る五感の全てと霊圧の察知などにより、目が見える者よりもよほど世界を見通す事が出来ていた。

 だが、帰刃(レスレクシオン)した事により東仙の目が初めて開いたのだ。初めて視界に映る世界。それは東仙にとって衝撃的で感動的だった。それが東仙に隙を作り出した。目が見える事により、目が見えなかった時よりも隙が大きくなってしまったのだ。

 帰刃(レスレクシオン)した事により確かに強くなり、かつては親友だった七番隊隊長狛村左陣をその力で圧倒し、敗北寸前まで追い込んだ。だが、目が見える事によって目の前の世界にしか集中出来なくなった東仙は、かつての部下である檜佐木修兵による背後からの奇襲を察知する事が出来ず、致命傷を負い敗北した。

 

 首筋から喉を貫く一撃を受けた東仙。本来なら確実に死は免れないだろう。だが、帰刃(レスレクシオン)化の影響か東仙の生命力や回復力は底上げされており、治療すれば死ぬ事はないだろう。

 東仙は死神を、死神が所属する組織を憎んでいた。東仙は慕っていた女性が死神を目指しながらも、夫である死神に殺されたという過去を持つ。しかもその男の過失だというのに、判決は死刑にならなかった。それが東仙には納得出来なかった。

 東仙は復讐の為に死神の組織である護廷十三隊に入った。その内心は仮初の仲間達には明かさず、内に秘め続けていた。そして己の信じる正義の為に藍染の部下となり彼に心酔し、こうして反旗を翻したのだ。

 狛村とは真央霊術院――死神を育成する機関――で共に研鑽した仲であり、その頃から正義を誓いあった親友だ。だが、それすらも東仙にとっては仮初のものだった。いずれは狛村とも刃を交える事になるだろうと理解していた。

 

 狛村もまた東仙と同じことを考えていた。狛村は知っていた。東仙が世界を憎んでいるのだと。東仙と語らう時に理解していたのだ。

 だからこそ狛村は東仙と友になった。愛する者を理不尽に奪われたのに、それでも世界を愛せるなどと聖者のような事を口走らない男でなくて良かったと思ったのだ。

 東仙に悲しみがあれば受け取り、自分に喜びがあれば分け与え、道誤まれば叱り、過ち犯せば許し、立つ瀬無き時は寄り所となろう。世界を愛せなくなった東仙が、再び世界を愛せるようにと。それほどの想いを狛村は東仙に抱いていた。

 そうして狛村は敗れた東仙に語りかける。

 

「今までの我々の関係は仮初だった。我々はいずれ刃を交え、こうして心から解り合う運命だったのだ」

 

 狛村のその言葉に東仙は目を見開く。この男は、まだこんな自分に手を差し伸べようとしているのだと理解したのだ。

 組織を裏切り、死神を捨て、自らの意思で虚化し、敵対して罵倒までした自分に、まだ手を差し伸べているのだ。

 

「憎むなとは言わん。恨むなとも言わん。ただ、己を捨てた復讐などするな。貴公が失った友に対してそうであったように、貴公を失えば、儂の心には穴があくのだ」

 

 狛村のその言葉に東仙は涙を流す。東仙は盲目故に他人の感情の機微に聡い。狛村の言葉が本心からのものだと理解出来たのだ。

 そもそも狛村自身が嘘や騙り等とは縁遠い男だ。勝者と敗者がはっきりと分かれているこの状況で語る言葉に嘘はないだろう。

 

「……ありがとう……狛村」

 

 東仙は狛村の言葉を受け入れた。世界を憎んだ男の為に尽くしてくれる狛村を受け入れたのだ。

 こうして東仙は敗北し、その敗北を受け入れる事でその戦いを終えた。

 

 

 

 東仙が敗れた事は藍染も察知していた。敗北し、死神と和解する。最早東仙は藍染にとって用済みと言えた。使える駒だったが、既に東仙がいなくとも支障ない段階まで計画は進んでいた。

 なのでこのまま殺しても良かったのだが、一応放置しておいた。死神や仮面の軍勢(ヴァイザード)に殺されるならまだしも、藍染自らが殺してはスターク達を生かしておいた意味がない。クアルソがここに来た時に面倒な事になるのは出来るだけ避けるべきだと藍染は判断し、東仙を放置した。それ程までに、今の状態でクアルソと敵対する事を藍染は避けていた。

 

「ギン、下がっていろ。後は私がやろう」

「ええんですか? 楽させてもらっても?」

「ああ……この程度ならどうという事はない」

 

 そう言って、藍染はほぼ見学モードだったギンを完全に下がらせる。これで戦場で戦っている藍染側の戦力は藍染とワンダーワイス・マルジェラという破面(アランカル)くらいだ。

 ワンダーワイスは藍染が特別に造り出した改造破面(アランカル)だ。その為、藍染の手によって感情や言葉を削られている。余計な機能を省き、ある一点の機能に特化した造りになっているのだ。

 それ故か、ワンダーワイスは自由に動く。子どものように自由にだ。故に、藍染はワンダーワイスに関しては本人の気の向くままに行動させていた。生きていさえいれば問題なく、死ぬような事がないよう注意はしていたが。

 

 そうしてワンダーワイスと戦っている者と山本総隊長を除き、残る全ての隊長格と仮面の軍勢(ヴァイザード)が藍染と相対する。

 それが、死神達にとっての絶望の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 偽空座(からくら)町で決戦が行われている中、虚夜宮(ラス・ノーチェス)の死闘も加速していた。

 

「おおお!!」

 

 剣八が力の限りの斬撃を放つ。その速度は十刃(エスパーダ)最速の響転(ソニード)を誇っていた第7十刃(エスパーダ)ゾマリ・ルルーを容易く捉え、その威力は虚夜宮(ラス・ノーチェス)で剣八が戦った強敵、歴代最高硬度の鋼皮(イエロ)を有する第5十刃(エスパーダ)ノイトラ・ジルガを容易く斬り裂けるだろう。

 その斬撃の全てをクアルソは力で捻じ伏せた。両腕に膨大な霊圧を纏わせ、剣八の斬撃を技術ではなく力で弾いたのだ。もちろん技術で切り抜けなかった理由はある。その方が剣八の力の解放が早いと判断したからだ。

 

 剣八は解り易いくらい力尽くを好む。その戦いにまともな斬術は殆ど見られず、生まれ持った戦闘センスのみで戦っている。敵を攻撃したいが為に敵の攻撃を回避しない事すらある。ある意味それが剣八流の戦闘技術と言えた。

 そんな剣八の力を引き出すのに合気の技術を用いるのは効率的ではなかった。解り易い力で叩き伏せる。それが剣八の力を引き出す最高の方法だった。

 

「がふぁっ!」

 

 クアルソの拳が剣八の顔面に突き刺さる。そして剣八がその威力で仰け反った処に更に踏み込み、鳩尾に肘を叩き込む。

 その肘打ちの反動で仰け反っていた剣八の身体が前に倒れ込もうとする処に、更に膝を衝き上げる。

 

「ごふっ! お、らぁぁぁ!!」

 

 幾度もの攻撃で剣八の身体はボロボロだ。クアルソが斬魄刀を使わずに無手にて攻撃している為、致命傷となる傷はない。だが、その分内臓や骨に多大なダメージを負っていた。

 それでもなお剣八は反撃を止めない。ここまでダメージを負うと普通なら動く事も出来ないだろう。だが、この程度では更木剣八は止まらない。

 

「甘い!」

 

 それでも剣八の攻撃はクアルソには届かなかった。確かに剣八は強くなり続けている。その力を全盛期のそれに戻しつつある。

 だが相手はクアルソ・ソーンブラ。数千年の時を強さの会得に費やした存在だ。霊圧で劣り、身体能力で劣り、技術で劣る。剣八の戦闘センスは高いが、まともに斬術を学んだ事は一日しかない。そんな力任せに振るう剣などクアルソに通じる訳が無かった。

 クアルソに勝つ。それはクアルソのどれかを上回らなければ不可能だ。霊圧、身体能力、技術。それらの内どれか一つでも圧倒していない限り、クアルソに勝つ事は不可能だろう。

 もしくはクアルソにも通じる特殊な力があればいいのだが、その類の能力はクアルソの持つ【ボス属性】によって大体が無効化される。そもそも剣八の戦闘スタイル的にそういった類の能力を会得するのはまず無理だろう。

 だから剣八がクアルソに勝つにはクアルソの予想を上回る程の成長を得なければならない。だが――

 

「ぐ、ぶ……!」

 

 クアルソの回し蹴りが剣八の側頭部に叩き込まれる。その一撃で、剣八は初めて膝をついた。

 

「はぁっ……! はぁっ……!」

 

 剣八は息を大きく荒げ、斬魄刀を頼りにようやく立ち上がる。流石の剣八も限界のようだ。

 闘志はある。戦う意思は微塵も欠けていない。己の力が加速的に高まっていく事が愉しく、眼前の強敵をいつか斬れると思うと愉しくてたまらなかった。

 だが、その闘志に肉体が付いて来なかった。幾度もクアルソの攻撃を受けた剣八の身体は無残なものだった。骨は幾つも折れ、内臓の幾つかは潰れている。脳にもダメージが溜まっているだろう。普通の死神なら何百回と死んでいる攻撃を受け続けた結果だ。

 

 ――手加減されてこれか――

 

 剣八はクアルソが手加減していると気付いていた。強烈な攻撃だったが、急所らしい急所は狙っていなかった。そもそも刀を使っていれば容易く殺す事が出来ただろうに、素手で戦っているのだ。それが手加減でなくて何だというのか。まあ、クアルソは武器を使うよりも無手での戦闘の方が得意なのだが、そこまでは剣八にも解らない。

 そもそも刀剣解放すらしていないのだ。破面(アランカル)本来の力を抑えているのに圧倒されている。完全に己が格下であった。

 

「これで終わりだ」

 

 クアルソがそう呟き、剣八に向けて右手を衝き出す。虚閃(セロ)を放とうとしているのだろう。それも全力の虚閃(セロ)をだ。手加減されていない全力の虚閃(セロ)を受ければ、今の剣八では耐え切れず、この戦いは終わってしまうだろう。いや、戦いではない。一方的な蹂躙だった。

 強い相手と戦いたい。対等の敵とギリギリの殺し合いをしたいのだ。戦いが好きで好きで堪らなかった。自分じゃどうしようもない程にだ。

 ようやく敵に逢えた。全力を出してもいい敵に出会えたのだ。これで終わりになんかしたくなかった。一撃一撃放つ度に、一撃一撃避けられる度に、一撃一撃喰らう度に、自分が強くなっていくのを感じた。

 今までの自分は眠っていたのだと剣八は理解した。今までの戦いは戦いではなく、ただかつての死闘を夢見ていただけに過ぎないのだと理解したのだ。こうして自分が全力で戦っても、それでも倒す処か傷を付ける事すら出来るか分からない相手を前にして、ようやく目が覚めようとしているのだ。

 

 クアルソから強烈な殺意が放たれる。これで終わらそうとする意思を叩き付けられているかのようだ。

 終わりたくない。死にたくない。死が怖い訳ではない。この強敵を前にして、何も出来ずに終わるのが怖かった。この戦いが戦いになる前に終わるのが嫌だった。戦いを本当に愉しむ前に終わるのが認められなかった。

 

 力が欲しい。もっと強い力をだ。そうすればもっと戦いを愉しめる。クアルソは強い。自分が全力を出しても絶対に壊れないと確信出来るくらいに強い。

 だから、もっと力を――

 

 ――私の名は――

 

「呑め! 野晒!!」

 

 剣八の解号と同時、剣八の持つ斬魄刀が変化する。

 剣八の斬魄刀に名前はない。正確には、今まで剣八が斬魄刀の声を聞く事が出来ず、名前を知る事が出来なかったのだ。

 今まではそれで良かった。斬魄刀の名を知る必要もなく、知ろうとも思わなかった。だが、黒崎一護に敗北した事を切っ掛けに、斬魄刀の名を知ろうと初めて思った。

 それでも斬魄刀の声は剣八には届かなかった。当たり前だと剣八は思う。今の今まで斬魄刀をただ敵を斬る為の道具扱いしておきながら、今更名前を知ろうとした処で答えてくれるはずがないと。

 だが違った。剣八のその考えは間違っていた。剣八の斬魄刀はずっと剣八に語りかけていたのだ。それが届かなかったのは斬魄刀ではなく、剣八に問題があっただけだ。無意識下に於ける枷が、斬魄刀の声を阻害していたのだ。

 そしてその枷が外れた時、斬魄刀の声はようやく剣八に届いた。

 

「これは……!」

「ほう……」

 

 剣八の斬魄刀の変化に白哉が驚愕し、マユリが興味深そうに感嘆する。今まで剣八の斬魄刀は常時解放型だと尸魂界(ソウル・ソサエティ)では思われていた。始解した状態が基本の斬魄刀だと思われていたのだ。黒崎一護の斬魄刀も常時解放型に該当する。

 だがそうではなかった。剣八の斬魄刀は始解すらしていない、本当にただの斬魄刀だったのだ。一般隊員が持つ浅打と呼ばれる何の変哲もない刀と同じだ。ただ見た目は剣八のあまりにもの霊圧に耐え切れず、刃がボロボロになっていたが。その斬魄刀が剣八が名を知った事により変化した。卍解はおろか始解すらせずに隊長の座に就いた剣八の斬魄刀が始解したのだ。それに衝撃を受けない者は尸魂界(ソウル・ソサエティ)にはいないだろう。

 

「……」

 

 どうやら上手くいったようだと、クアルソは剣八の斬魄刀を見て笑みを浮かべる。いつの間にか、クアルソから殺気は消え失せていた。先程の殺気は剣八を追い詰める為の荒療治だったのだ。

 剣八の斬魄刀は巨大な斧のような形に変化していた。それはまさに力の塊だった。触れる物全てを斬り裂き砕くという意思が籠められているかのようだった。

 

「待たせたな」

 

 剣八がクアルソを見やりながらそう言う。クアルソが剣八の力が高まるのを待っているのを理解したのだ。先程の殺気もわざとだとも。

 

「そうでもない」

 

 そう、これくらいの時間など待った内にはならない。今までの人生でクアルソは多くの弟子を育てた。彼らが自分と戦える領域まで育つのにどれだけの時間を要したか。それに比べれば剣八の成長は瞬きよりも速い程だ。

 

「それよりも、その力をオレに見せてくれ……! 虚閃(セロ)!!」

 

 クアルソが期待を籠めた虚閃(セロ)を放つ。構えと溜めと言霊を籠めた全力の虚閃(セロ)だ。

 その威力は通常状態にして帰刃(レスレクシオン)したヤミーの黒虚閃(セロ・オスキュラス)をも上回っていた。

 凄まじい勢いで剣八目掛けて直進する虚閃(セロ)。直撃すれば骨すら残らないのではないかと思う程だ。その虚閃(セロ)に対し、剣八は己の斬魄刀、野晒を両手で握り締め全力で叩きつけた。

 

『!!』

 

 虚閃(セロ)が二つに分かれた。野晒の一撃によって切り裂かれたのだ。始解の状態でこれだけの破壊力を示した剣八に、遠くから戦いを眺めていた死神達は幾度目かの驚愕を憶えた。

 剣八の一撃は虚閃(セロ)を斬り裂いただけに留まらず、その衝撃はクアルソにまで達した。そして――

 

「はっ! やっと斬れたか……! これで斬り合いを愉しめるってもんだ!!」

 

 クアルソの腕に一筋の斬り傷が付いていた。衝撃を腕でガードしたが、威力を防ぎ切れずに鋼皮(イエロ)を超えてダメージを受けたのだ。今までとは違う結果に、剣八は歓喜する。これでようやく戦いになると。

 

「行くぞクアルソ!」

「来い!」

 

 始解前とは比べ物にならない速度で剣八が斬り掛かる。そこにやはり技術と呼べるものはない。だが、それ故に力強い一撃だった。

 その一撃をクアルソは素手――ではなく、自身の斬魄刀にて受け止める。そして巨大な質量を持つ野晒をそのまま弾いた。

 

「やっと抜きやがったか!!」

「素手では止められそうにないからな!」

 

 流石のクアルソも先ほどまでのように霊圧を纏わせた腕で今の剣八の斬撃をまともに受けると、そのまま斬り裂かれるだろう。合気の技術を用いれば受け流す事は出来るが、この戦いでそれはしないとクアルソは決めていた。力と力のぶつかり合いをしたくなったのだ。剣八の戦闘狂に感化されたのだろう。

 

「シィッ!」

「おおお!」

 

 剣八が一撃放つ間にクアルソがその数倍の斬撃を放つ。その全てが剣八の身体を斬り裂いていく。

 だが止まらない。幾太刀の斬撃をその身で受けようとも絶対に倒れない。だからこそ、剣八は【剣八】の称号を得ているのだ。

 そして、幾太刀もの斬撃を受ける剣八が更に強くなっていく。剣八の強さは始解を得た事で底が見えた訳ではない。むしろここから更に強くなっていくのだ。ようやく剣八の枷はなくなったのだから。

 

「剣の扱いも上手(うめ)ぇじゃねぇか!」

「それなりにな!」

 

 クアルソの修行人生は長い。その中で武器を学んだ事も当然ある。基本は無手だが、武器が使えない訳ではないのだ。

 

「はははははは! 最高だ!! 愉しいなクアルソ! 全力で戦っても戦いが終わらない! これだ! これこそが戦いだ!!」

 

 ようやく形になって来た斬り合いに剣八が歓喜する。敵が弱すぎて斬り合いにならなかった事は腐る程あったが、自分が弱くてそうなるとは剣八も心にも思っていなかった事だ。

 そんな風に歓喜の声を上げる剣八を見て、剣八の副隊長である草鹿やちるもまた嬉しそうな声をあげた。

 

「剣ちゃん楽しそう……!」

 

 これほど高揚している剣八を見るのは剣八と長い付き合いであるやちるも久しぶりの事だ。その事実に、やちるはクアルソに対して感謝する。

 一方、性的対象外の少女から感謝の念を向けられている事を知らないクアルソは、歓喜する剣八を見て不服そうに叫ぶ。

 

「愉しそうで何よりだ! だが……まだ足りないな!!」

 

 まだクアルソが愉しむには足りない。剣八の実力はまだ不足していた。

 凄まじい勢いで強くなる剣八だったが、それでもクアルソが上だ。そして、どうしようもない技術差は剣八が強くなっても埋めようがなかった。

 確かにクアルソは自分が修めた合気の技術は使っていない。だが、数え切れない程の戦いの経験を捨てる事は出来ない。どれだけ手加減しようとも、剣八の攻撃を先読みし、先手を打ててしまうのだ。

 その先読みを超える動きを今の剣八が取る事は出来なかった。始解のその先、更なる力を得なければまだ届かないだろう。

 

「ここまでだ」

「ッ!?」

 

 クアルソが剣八の野晒を斬り上げ、上方に弾く。そして大きく開いた剣八の懐に飛び込み、その身体に掌底を放った。それと同時に大量の虚弾(バラ)を叩き込む。

 

「がっ……!!」

 

 身体の内部まで浸透する無数の衝撃に剣八が大量に吐血する。そして後方に倒れようとするのをどうにか支えようとして――

 

「沈め!」

 

 その頭部に踵落としを喰らい、耐え切れずにとうとう地に伏した。

 

「ぐ……う……」

 

 ――身体が……うごかねぇ……――

 

 流石の剣八も限界だった。これまでどれだけのダメージが蓄積した事か。始解により膨れ上がった霊圧によりどうにか保たせていたが、先程の虚弾(バラ)により蓄積したダメージが一気に噴き出したのだ。

 

 ――くそが……! ようやく、ようやく愉しくなってきたってのによォ……――

 

 これで終わりか。そう思うと寂しくて堪らなかった。死ねばもう戦えない。この最高の敵と二度と戦えなくなるのだ。

 だが、それも仕方ない事だ。敗者の生死の決定は勝者にのみに許された特権だ。今までにも剣八は戦って来た敵に止めを刺さずに去った事が何度かある。殺すつもりの攻撃の結果、相手が運よく生き延びたから放置しただけであり、何か特別な思いがあった訳ではなかったが。

 だからクアルソがどういう判断を下そうとも、敗者として受け入れるしかなかった。

 

()()はこれで終わりだな」

 

 そして、クアルソから出た言葉はそんなものだった。生死を懸けた戦いを、何でもないように流す。実際何でもなかったのだろう。生死が懸かっていたのは剣八だけであり、クアルソにとっては命を脅かす程の戦いではなかったという事だ。

 それは悔しいが、だが嬉しい言葉が聞けた。()()は、と言ったのだ。つまり、また別の日にこの男と戦う事が出来るという事だ。それを考えただけで剣八は嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「名乗って、なかったな……更木、剣八だ……また、やろうぜ……!」

「ああ。……まだまだお前は強くなる。お前の蓋は開いたばかりだ。その底はお前自身も理解出来ない程深い。だから……もっと強くなってからまたやろう、剣八」

 

 まだ強くなれる。またクアルソと戦える。それだけ聞ければ剣八は満足だった。そして消耗し切った身体を癒す為、そのまま眠りについた。

 

「まるで獣だな……」

 

 疲れたからそれを癒す為に眠る。理屈は間違っていないが、それをこの状況で実践するなどどれ程図太い神経をしているのか。クアルソは呆れと感心を含めた溜め息を吐く。そんなクアルソにやちるが近付き、礼を述べた。

 

「クッソーありがとね! 剣ちゃんとっても楽しそうだった!」

「え? ああどういたしまして……待って。クッソーって何? もしかしてオレのあだ名なのそれ!?」

「そうだよ」

 

 他人を勝手に付けたあだ名で呼ぶのがやちるの癖だ。やちるが感じとった相手の外見の特徴をそのままに付けるあだ名が多いが、名前を適当に縮めたりしてあだ名を付ける場合もある。

 今回の場合は後者だ。クアルソの外見に特徴らしい特徴もないため、名前を縮めた結果だ。ちなみに名前に関するあだ名の例を挙げると一護はいっちー、白哉はびゃっくんである。外見的特長にはぷるるん、モリリン、ゴリー、エンピツ、ヒゲチョロ、つるりん等、様々なあだ名を付けられた者達がいるが、詳細は彼らの名誉の為に省く。

 

「そうだよじゃないよ!? その縮め方はもうイジメだろ!?」

「えー。でも他に良いのが浮かばないし……やっぱりクッソーで!」

「マジか!?」

 

 なお、やちるは興味のない存在へのあだ名はコロコロ変わる事がある。が、クアルソに対しては剣八を悦ばせてくれた特別な存在としてやちるの記憶にしっかりと残るだろう。

 外見と年齢が一致しないほど長生きな死神――と見られている――故に、やちるも相当な年月を生きているが、外見は子どもそのものだ。故に、クアルソもそこまで強く出る事が出来ず、あだ名に関しての話題を変更する事にした。

 

 元々は暴れているヤミーを止め、死神達に敵対の意思がない事を伝える為にここまで来たのだ。剣八と戦った為に回り道をしたが、早くその旨を伝えた方がいいだろう。

 なにせ仲間である剣八をぼっこぼこにしてしまったのだ。下手すれば話も聞かずに攻撃される可能性もあった。……クアルソに不名誉なあだ名を付けた少女は何故か喜んでいたが。

 

「えーと、改めて……クアルソ・ソーンブラです。出来れば穏便に話を聞いてほしいんですけど……」

 

 クアルソは離れて観戦していた白哉達に恐る恐る語り掛ける。どうか話を聞いてくれる冷静な人達でありますようにと願いながら。

 

「……破面(アランカル)が何用だ」

「面白い話なら聞こうじゃないかネ」

 

 どうやら剣八と違ってまともに会話が出来る冷静さと知性を持ち併せているようだ。まあ、剣八が死神の中でも例外中の例外なのだが。

 クアルソは剣八を痛めつけた事で敵対視される事を危惧していたが、剣八が戦闘狂である事は死神の中でも周知の事実だ。実際に今回の戦いの発端は剣八が問答無用でクアルソに斬り掛かった事だ。その事実を無視するような白哉ではない。マユリはクアルソに興味が湧いたから話を聞くのだが。

 

「おお、会話が通じる嬉しさ……。むっ!」

 

 クアルソが白哉達の冷静さに感動する。そして落ち着いて死神達を見た時、一人の女性に目が向いた。

 

 ――な! 黒髪巨乳美人! 何故彼女を見逃していたんだオレは!!――

 

 クアルソの瞳に一人の女性死神が映った。彼女の名前は涅ネム。名前の通り涅マユリの関係者であり、十二番隊副隊長でもある死神だ。そしてクアルソが注目した通り、かなりの美女でもある。

 お近づきになりたい。そう思ったクアルソは衝動のままにネムに近付こうとして――その動きを止めた。

 

 ――な、なんだこれは……!――

 

 何故か身体が動かない。何かの能力で支配されているとか、動きを封じられているとかそんな事はない。ただ、自分の中の何かが彼女を警戒して身体を止めていたのだ。

 彼女に手を出すと致命的な何かが起こる気がする。そんな予感めいたものを感じ取り、クアルソはネムに近付く事に二の足を踏んでいた。

 

「……どうしたのかネ? 私の時間は非常に貴重で有限なんだヨ。早く話をしたまえ」

「あ、はい。すみませんでした。オレはですね――」

 

 マユリに急かされたクアルソはネムに感じた不穏な何かを振り払い、取り敢えず自分が死神達に敵対する意思はない事と、ここに来たのはヤミーを止める為であり、これから藍染も止めに行く事を伝えた。

 

「何だ下らない」

「えー……」

 

 普通の死神なら破面(アランカル)が藍染に反旗を翻すのは一大事だが、マユリにとってはどうでもいい事であった。それよりも虚圏(ウェコムンド)に来て手に入れた興味深い多くの研究材料に関して思考した方がまだ有意義というものだ。

 

「その程度の事で私の時間を奪ったのかネ? 赦し難い罪だヨ。実験の一つや二つ、いや五つくらいは受けて貰わないと割りに合わないヨ」

「何でやねん。こっちが割りに合わんわ!」

 

 どうやらマユリもザエルアポロに匹敵、あるいは凌駕するマッドサイエンティストだとクアルソは把握する。この手の類は本当に手に負えないのだ。出来るだけ近付かない方がいいだろうとクアルソは心掛けた。

 

(けい)の言いたい事は分かった。だが解せぬ事がある。藍染を止めたいと言うならば止めに行けば良いだけの事。我等に説明する必要などあるまい」

 

 そう、元々(ホロウ)である破面(アランカル)は死神と違い黒腔(ガルガンダ)を自在に操り、現世に移動する事が出来る。いちいち白哉達に説明せずとも勝手に行けばいいだけの話だ。

 ヤミーを止めるのも、藍染を止めるのも、全てはクアルソの勝手だ。別に死神達と敵対したくないからといって、死神達にわざわざ説明せずともいいだろう。そもそも、説明した所で信用されると思っているのだろうかと白哉は訝しんだ。

 

「ん、まあ、信用されたいなら誠意を見せるべきでしょ?」

「……」

 

 破面(アランカル)が死神に信用されたい等と、異な事を言うものだと白哉がクアルソを見て思う。

 だが、少なくとも敵対する意思がない事は白哉にも解っている。騙すなり、裏を掻こうとするなりだろうと、こんな回りくどいやり方をする必要はないだろう。敵対するつもりならヤミーと協力して死神を倒せばいいだけだ。

 そもそも、クアルソの力ならば騙し討ちなどしなくても瀞霊廷の戦力の大半を殲滅する事が出来るだろうと白哉は危惧した。有り得ない速度で強くなる剣八を、有り得ない強さで一蹴したのだ。死神として、誇りある護廷十三隊の隊長として、戦って負けるつもりはなかったが、傲岸不遜な白哉にして勝てるとも言えない程にクアルソは強かった。

 

「あと、貴方達の前にこうして出向いたのにはもう一つ理由がありまして」

「理由?」

「ええ。これからオレは藍染様を止めに現世の偽空座(からくら)町という場所に行くつもりです。その間、虚夜宮(ラス・ノーチェス)でこれ以上破面(アランカル)を傷つけないでほしいんですよ。血の気が多い連中ですけど、一応は同胞なんで死なせるのも忍びないですし」

 

 それがクアルソの気がかりだった。感じとる霊圧から解ったが、ここにいる死神達は誰も彼も強い。特に隊長格は十刃(エスパーダ)に匹敵する強さを持つだろう。事実、ここに彼らが無事にいるという事は、虚夜宮(ラス・ノーチェス)に残っていた十刃(エスパーダ)の何体かは敗れたという事だ。

 それは残念だが、致し方ない事だとクアルソも割り切っている。死神が攻め込んで来た理由が理由だ。そもそも、クアルソの性格的に(ホロウ)破面(アランカル)が死神に斬られても仕方ないわな、と常々思っていた程だ。

 それはそれとして、クアルソも(ホロウ)破面(アランカル)と同じ存在になったのだから、簡単に切り捨てるつもりにもなれなかった。出来る限りは穏便に事が進むよう、こうして死神達にお願いしている訳だ。

 

「そうは言ってもネ。襲い掛かられたら対処する他ないヨ? そこのデカブツとかネ」

 

 マユリの意見も尤もだ。凡百の破面(アランカル)十刃(エスパーダ)を倒した隊長格に喧嘩を挑もう等とはしないだろう。だが、そこで気絶しているヤミーは別だ。

 今は気絶している為問題ないが、一度気絶から覚めると確実に白哉達に攻撃を仕掛けるだろう。その時にヤミーを殺さずに止める事が出来るクアルソがいない場合、ヤミーと死神達による殺し合いが始まるのは確実だ。当然死神達も無抵抗でいられるはずもないだろう。

 マユリとしてはその方が好都合だ。何せ研究材料――破面(アランカル)――は多ければ多い程いい。それが十刃(エスパーダ)ともなれば尚更だ。

 

「大丈夫。そんな時の為に――」

 

 マユリの言葉の節々からそうなってほしいという願望が籠められている事を察しつつ、クアルソは懐を探ってある物を取り出した。

 

反膜の匪(カハ・ネガシオン)~~!」

 

 クアルソはどこぞの青狸のような口調で道具を紹介する。

 

「ホウ!? 一体どういう代物なんだネ、クアルソえもん」

「ウーフーフーフー。これはね! 藍染様が十刃(エスパーダ)に渡した部下の処罰用のアイテムだよ! これを破面(アランカル)の孔に当てると~~」

 

 クアルソのノリに乗ったマユリに、反膜の匪(カハ・ネガシオン)の効果を見せる。その為にクアルソは気絶しているヤミーの身体にある孔に反膜の匪(カハ・ネガシオン)を近付けた。

 すると――

 

「ほらこの通り! 対象を永久に閉次元に閉じ込めちゃうのさ! これで悪い事をした破面(アランカル)にお仕置きが出来るよ!」

「なるほど……興味深いネ……!」

 

 反膜の匪(カハ・ネガシオン)がヤミーの孔に触れた瞬間、ヤミーの巨体が一瞬で消滅した。死んだのではなく、クアルソの言う通り閉次元という場所に隔離されたのだろう。

 その効果を見てマユリは興味深そうに笑みを浮かべる。虚夜宮(ラス・ノーチェス)はまさに宝の山そのものだ。ここに来て正解だったとマユリは心底思った。

 

「これでヤミーに関してはある程度は問題ない。しかもこの反膜の匪(カハ・ネガシオン)十刃(エスパーダ)用に誂えられた特別製! ヤミーといえどもしばらくは出て来られないだろうな」

 

 元々反膜の匪(カハ・ネガシオン)十刃(エスパーダ)に逆らった部下の処罰用に作られたものだ。故に、十刃(エスパーダ)やそれクラスの霊圧の持ち主に使用した所で、数時間程度の足止めが限度だろう。

 だが、藍染がクアルソに渡した反膜の匪(カハ・ネガシオン)は特別製だった。クアルソは多くの十刃(エスパーダ)に疎まれていたので、やっかみを受けた時に面倒事が起こる可能性を危惧した藍染が、特別な反膜の匪(カハ・ネガシオン)を用意してクアルソに渡したのだ。

 クアルソにちょっかいを掛けてきた十刃(エスパーダ)がいたら、特別製の反膜の匪(カハ・ネガシオン)で処罰するように言い渡す事で、無駄な被害の拡大を防いだという訳だ。それほど藍染がクアルソを警戒し慎重になっている証だろう。

 

「なるほどなるほど……。先程の提案だが、その反膜の匪(カハ・ネガシオン)とやらを一つ寄越せば聞き入れてやろうじゃないかネ。破面(アランカル)相手に交渉してやるんだ。破格の待遇だヨ?」

「いいよ。はい」

「話が早くていいネ」

 

 あっという間にクアルソとマユリの間で交渉が始まり、そして終わった。白哉は置いてけぼりだ。

 クアルソとしては別に反膜の匪(カハ・ネガシオン)を必要としておらず、マユリに渡した処で特に問題はない。マユリとしてはクアルソを無闇に刺激せず、貴重な研究材料を入手出来てハッピーという訳である。

 

「それじゃあ偽の空座(からくら)町とやらに行くけど……その場所の座標って知らない?」

 

 クアルソは破面(アランカル)なので黒腔(ガルガンダ)を開く事は出来る。現世への行き来は自由自在だ。だが、肝心要の空座(からくら)町――この場合は偽だが――の場所をクアルソは知らなかった。知らない場所に行く事は流石のクアルソでも不可能だ。虱潰しに探せば見つかるだろうが、見つかった時には既に遅かったがオチになっても困る。

 

「知っているヨ。今の私は気分がイイ。特別サービスで教えてあげようじゃないか」

「おお、話が分かる死神さんじゃないか!」

「そうだろうそうだろう! 感謝したまえヨ!」

 

 目の前で起きている死神と破面(アランカル)の密会(?)に白哉がどうしたものかと悩むが、悩んだ処で両者を止める術はないと判断し、無視を決め込んだ。それが精神衛生上もっとも正しい判断だろう。

 

「良し。それじゃ行って来るか。くれぐれも虚夜宮(ラス・ノーチェス)で暴れないでくれよ! 正当防衛以外で暴れたのが解ったら、後で怒るからなー!」

「契約は守るヨ」

「やるべき事は終わった」

 

 マユリも白哉も簡潔にクアルソの念押しに応える。二人ともこれ以上虚夜宮(ラス・ノーチェス)でやる事はないので、わざわざクアルソの怒りを買うような真似をする必要はなかった。

 まあ、マユリに関してはもっと多くの研究材料を欲していたが、今回の騒動で手に入れた幾つかの個体で十分と言えば十分だろうと納得する。

 

 そんな二人の答えを訊き、クアルソは黒腔(ガルガンダ)を開いて現世へと赴く。行き先は偽空座(からくら)町。目的は当然藍染を阻止する事。そしてあわよくば死神の中にいるかもしれない女性との接触だ。

 まだ見ぬ美女を求め、クアルソは現世へと移動した。そして黒腔(ガルガンダ)を抜けるとそこは――

 

 ――南米であった。

 

「……え?」

 

 明らかに日本とは違う風景に戸惑うクアルソ。時刻は夜であり、周囲には人気(ひとけ)も少なく静まり返っている。

 時折人間が移動しているのが見られるが、明らかにその人種は日本人ではなかった。完全に黒人である。

 

 座標を間違った? それともマユリが嘘を吐いた?

 色々と浮かぶが、両方ともそれは違うと思い直す。昼間のはずが夜なので日本の正反対――だと思われる――の場所に出るほどの間違いをする筈もなく、マユリが嘘を吐いたにしてもおかしい。訊いた座標は間違いなく日本のものだったからだ。少なくとも外国には出ないだろう。

 つまりこの現象の犯人は――

 

「や、やってくれたな藍染様……!!」

 

 ――という事になる。

 

 藍染はクアルソに搦手の能力が無効化されると予測していた。そしてそれは間違っていない。だが、無効化されるならされるで手段はある。

 今回の一件で藍染が恐れているのはクアルソと敵対する事ではない。藍染が完全に崩玉と馴染む前にクアルソと敵対する事だ。そうなった場合、無事に済む可能性は低い。

 それを防ぐ為に藍染はクアルソを虚夜宮(ラス・ノーチェス)から遠ざけていた。だが、それだけでは事足りない。

 

 確かにクアルソに細工をする事は出来ない。だが、いくらクアルソといえど黒腔(ガルガンダ)を通らずに虚圏(ウェコムンド)から現世に移動する事は出来ない。

 なので藍染は黒腔(ガルガンダ)の出口にある仕掛けを施した。クアルソの霊圧を感知すると、自動的に出口を南米ブラジルに繋げるという仕掛けをだ。これならばクアルソに直接細工を仕掛ける訳ではないので、無効化される事はないだろうとの藍染の読みだ。

 そしてその読みは当たっていた。黒腔(ガルガンダ)の出口が別の場所になった処で、クアルソの【ボス属性】には何ら関係がない。クアルソが何かの能力を掛けられた訳ではないので当然の話だ。黒腔(ガルガンダ)はクアルソの能力という訳ではない。開いたのはクアルソだが、黒腔(ガルガンダ)自体は虚圏(ウェコムンド)と現世の間にある言うなればトンネルのようなものだ。

 トンネルの出口を勝手に別の場所に繋げられたとしても、通るのに何かの能力を受けている訳ではないので【ボス属性】で無効化する事は出来ないのだ。

 

「憶えていろよ藍染様ァァァ!!」

 

 クアルソの叫びが南米に響く。一般人には欠片も聞こえない霊体の叫びだが。

 

 




 剣八、最終章前にパワーアップ。

 星十字騎士団「おいばかやめろ」

 え? 剣ちゃんが始解するとやちるちゃんは消えるって? 知るかそんなこと! せめて卍解使うまでは残してやる!







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