「···············」
日が登りかけているのがわかる。明らかに夕日では無いことから、今は朝なんだろう。昨日は確か··········
「あぁ、そうか」
昨日は里から初めて出たこともあってか、上がりまくってたテンションのまま走り続けたのだ。そりゃあ、疲れてぶっ倒れもするだろう。体にまとわりついた草や土が汗でぐちゃぐちゃになっていて非常に気持ち悪い。
「う〜ん、これは良くない。川でも探して、水でも浴びるか」
現在地点は里から少し離れた山を軽く登った場所だ。今いる山から周りを見渡せば、小さくなった人里を確認できた。というか昨日の俺は一体どこに向かおうとしていたんだろう·····
恐らくこのまま進んだら妖怪の山と呼ばれる、慧音さんいわく恐ろしい山に一直線なはずだが、どうやら俺には周りが全く見えていなかったらしい。
そしてもう一つすっかり忘れていた。失踪事件の話だ。慧音さんが恐ろしいという程だ。関係があるのかもしれない。何が恐ろしいのかは分からないが、今いる場所からは一番近いし行ってみようと思う。
「それにしても、里の外に出ても妖怪なんて1匹も見てないな·····」
慧音さんや里の連中も言っていたことだが、里の外には妖怪が沢山いるのだそうだ。それも人間なんてすぐに食われてしまうらしい。今の所、俺の目の前でそんな物騒なことは起きていない。そもそも里の外や里の中を自分から歩きまわっていない俺からすると、妖怪に近い存在は慧音さんしか知らないわけで恐ろしい存在だとはとても思えなかった。
俺が倒れていた山を越えて、歩き続けること数時間。かすかに漂ってくる川の音と臭い。そろそろ限界だった俺は、思わずその方向に向かって走り出していた。
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サラサラと流れている川の中心に1人の少女が浸かっていた。浸かる、と言っても溺れるほどの深さもないこの川は、少女が座り込んでもお腹まで濡れるかどうかの深さである。
「はぁ〜っ、今日もキュウリが美味しいなっ!」
私、『河城にとり』は今日も同じようにこの場所に来ていた。今の幻想郷は少し蒸し暑い。夏のように干からびてしまうよりは幾分ましだけど、こんな時はこの川に来るのが日課となっている。水温もちょうどいいし、何よりここで食べるキュウリは美味しい。
キュウリが美味しいというのは、私が河童であるからで特に変な理由はない。河童がキュウリ好きなのは当然のことなのだ。そして河童は人間とも交流が深い。もともとの理由はよくわからないが、私達は彼らの事を『盟友』と呼んでいる。
たまに人間が私たちの住んでいる沢に来ることがある。来たばかりで右も左もわからない外来人や、人里から河童を頼りに来る人間などだ。前者は私たちのことをそこら辺にいる悪い妖怪と一緒にすることがないので、とても気軽に話しかけることが出来る。後者はいくら盟友と言えど少しばかり警戒してしまう。術を持って退治しにかかる人間もいるからだ。しかし、どちらとも共通することといえば1度話してしまえば楽しいということだ。
彼らは私達の作る道具に興味を持ってくれるし、私達も彼らとの話で物作りのヒントを得ることが出来る。基本的に幻想郷の河童は、機械いじりや何かを作ることが好きな子が多い。人間との接触は私達の生活の一部とも言える。
故に、『盟友』なのかは分からないが。
私は持ってきているキュウリを全てたいらげると、そこへひとつの気配が近付いてくるのがわかった。
「··········この感じは··········人、かな·····?」
妖力が薄い気配から妖怪ではないことが分かった。かわりにどこか懐かしい雰囲気を、私は感じた。
にとり可愛いですよね!