Fragment of the planet   作:えっこ

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はじまりの呼吸

里の噴水広場に見かけない少女がいたのが事の発端だ。体は小さくて、幼い

 

プラチナブロンドの髪の毛を風に遊ばれながら物憂いそうに里の者を、アカデミーの生徒らが友人と遊んでいるのをじっとながめていた。

 

ご老人がベンチに腰掛け談笑しているのを、傍で見て何もせず時折笑顔を見せながらただ見ているだけの少女。

微動だにせずここ数日あの場にずっといる。

 

 

薄汚れた質素な服で身を包み、顔色から伺えるように衰退していた。

俺は幾つかの仮定を考え捨て子だろうと今の時点での結論を出したかった。

 

だが、捨て子にしておいてもこんな街の真ん中であんな子がいたら誰かが恐らく声をかけるだろう。

 

最悪でも奴隷、人さらい。それらを目的とする者が声をかけていたっておかしくない。

 

 

しかし彼女はベンチで楽しそうに談笑するご老輩たちをすぐ真横で見ているのに、ご老人たちは気にも留めない。

 

 

火影様にその少女の話をすると、敵意を向けたり、怪しい様子があったらすぐに報告し始末しろと仰せつかった。

 

だがここ数日見る限り害はなさそうだ

 

 

そしてここ数日俺は監視をしているが、ただ本当に眺めているに近い状態だった。

本来監視とは監視する者がどの状況に置いても動けるようにしなくてはならないのだが。

 

その対象の彼女が何日もずっとそこから動かない。動いたとしても、この噴水広場を離れようとはしなかった。

 

 

本当に彼女を見つめているだけの仕事になっていた。

 

 

いたって変わらない状況を火影様にどう報告するかなと思想を巡らした。

なんて言うべきか、あの変わった少女を。

 

頭を悩ませていると、じっと動かなかった少女は立ち上がった。

 

 

さほど動かなかった少女が動きを見せた事により報告の事を思案するのを止め様子を見る。

彼女は意を決した瞳をして、握りこぶしをつくり競歩とはいえない早足で俺に近づいてきた。

…流石に何日もここから見ていたからな。

気づいていたか。俺に近づくのか。

 

 

無防備な姿に武器を取るまでには至らないが初めての行動に身を構える。

敵とは言い難いその少女にどう行動を取るか思案する。

一歩一歩と彼女は徐々に近づいてきた

 

 

俺の目の前までやってきた彼女は、ちいさな握りこぶしを握っておそるおそる口をした

 

 

「なにか、わたしに御用でしょうか」

 

声は震え、おびえていた。瞳は紅く、その中に俺が移っている

怯えつつも、その小さきながらも紅く強く光る瞳に俺は瞠目し声を失った。

 

自分の生徒と重なって見えたのだ。

その、怯えつつも揺らがないつよい瞳に、小さな握り拳は幼い一人の少年を思い出した。

 

気がつくと、口から笑い声が漏れていた。自分の意思とは違う行動に俺も驚いている

 

俺の様子に彼女は驚いて身を固くし戸惑っていた。

 

笑われるとは思っていなかったのだろう。戸惑う彼女をゆっくり見据え怯え背丈に合わせ腰を下ろす。

昔のナルトを思い出す背丈だった。

 

歳も恐らく昔のナルトたちとそう変わらないか、それよりも下だろう。懐かしい気持ちで彼女に話しかけた。

 

「何をしているか見ていたんだ。」

彼女の問いに、ありのまま伝えた。

俺は生徒たちに見せる笑顔で彼女の緊張を解こうと試みる。が。

 

「...ストーカーさんでしょうか」

彼女は怪訝そうに眉を顰めて普通に疑われてしまった。

改めて考えると不思議な図だ。

思わず懐かしい気持ちを優先して話しかけてしまい少し軽率だったと反省する。

 

 

「そうじゃなくて、里を守る者だよ」

 

忍というか迷った挙げ句、有耶無耶に答えた。「まも、る。」曖昧な言葉を彼女は目を見開いて俺を見つめ返した

 

ヒーローを想像したのだろうか、目がどんどん輝いていく。幼い綺麗な心に思わず笑んだ。

 

だがしばらくして、キラキラとした瞳が輝きを失っていき目をぱちくりとさせる。

 

「わ、私、脅かしたりしません」

里を守る者が自分を見ていることに、疑われたと確信して最初の怯えきった表情に戻る。

幼い顔をしながらも頭はいい子らしい。

うーん、忍と言わない事が逆効果だったみたいだな

 

「取って食おうとは思ってないよ」

 

少し安心したのか肩の力が抜けたのがわかった。

だが状況を把握していない以上安心はできない様で。

 

「どう、なさるのですか?」

食われなければ殺されるのだろうか。そんな瞳をしていた。

その瞳が俺を写っているのをぼんやり見ながらどうするか思案した。

 

 

他里からのスパイ、にしては感情が表に出過ぎている。それに話しかけるのに数日かかったこの度胸の無さは忍ではないだろうと仮定をする。

 

演技だったら脱帽ものだこれは。

 

 

「キミを火影サマに会わせようかな」

 

彼女は俺の言葉に更に身を固くし、怯えるような瞳で俺を見上げ声を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、害はない子だと判断し報告しにきました」

「連れてこいとは言って無いがな。」

「ハハッ、いやーすみません」

 

彼女は身を小さくし5代目火影様を見上げている。

怯えながらも逃げることはなく、ただ火影様を見上げ興味津々に見ていた。

 

怯えながらも、俺についてきたのは驚いた。

 

あの火影様に会うと言っても、怯えた表情は変わらなかったが微動だにしなかった。

 

「ついておいで」俺の言葉に従い全く動かなかった彼女はここまで何も言わずついてきたのだ。

 

警戒心が無い訳ではない。けれど、この怯えようにしては素直すぎる。

頼るところもなく、自分に力も無く、従うしかないと判断したのだろうか。

非力な者の懸命な判断だと俺は思う。

 

 

「さて、どうしたものか」

火影様は思案するように頬杖をして彼女がいる辺りを見た。

 

捨て子や、他の里から来た家族を失った者の行く末は同じような境遇の者達が沢山いる施設に送られアカデミーに通わせ最終的に暗部になるものが多い

 

小さな頃に深い傷を負った者は脆く壊れやすい為、最初が肝心だ。

だからこそ施設に送り同じ境遇の者と過ごし共感を得る事で人間を取り戻し、そしてその傷を糧に強くなり、無情になれる者が多いのだ。

 

この子も恐らくその施設にやり忍びとして育てられるのだろう。

 

「…」

この里を守る者として。それは正しい選択だ。

 

暫く口を開けなかった火影様は「こういう類は、初めてだからな」大きくため息を吐いて俺を見た。

 

顔色から察するにお疲れのご様子なのは一目瞭然だが日々の疲れというよりは思い悩んで疲れたような顔をしていた。

 

...初めて、?

 

 

「カカシ、お前が面倒を見ろ」

「はい?」

 

 

俺は素っ頓狂な声をあげ、冷や汗が垂れた。

子供の世話を見ろだなんて、冗談じゃないそれにもう手いっぱいだ。

あの面倒のかかる3人を思い出して頭痛がした

 

「俺じゃない適任がいるのでは?」

親を無くした同じくらいの歳の子、売られて戻ってきた子、境遇が難しい者同士のほうが心を開くだろう。

 

それに歳が近い方が更に心が開きやすいだろう。俺は自分が適任ではないとはっきり確信していた。

 

 

火影様は難しい表情をして彼女を見たが、一方彼女は寂しそうにその瞳を火影様に返した。

 

 

「流石里の長様...ご理解が早いです。」

 

 

少女は弱々しく小さく零した。

火影様は不適な笑みを浮かべ、冷や汗を垂らした。火影様の少女に対する笑みが不自然で違和感を覚えた。

 

敵意も殺気も感じられない様子なのに、火影様の様子がおかしい。

 

 

紅い瞳が俺を見つめて、ぎくりとして少女相手に思わず身を固くした。

少女の放つ異様な空気が俺をもさえ身を固くさせた。

 

「よろしくお願いします」

 

少女は礼儀正しくぺこりと腰を折り曲げた。

異様な空気に似つかない礼儀正しさに「...は?」またもや素っ頓狂な声をあげた。

 

「その子は、お前を気に入ったのか?それともわかっているのか?」

火影様が何故か状況を把握していない様子に思わず狼狽えた。

 

「...何を、おっしゃっているのですか火影様」

俺の戸惑った声に火影様は大きくため息を吐いて、俺を見つめた

 

 

 

「お前は、視えているのだろう?」

 

 

はっきり告げられた言葉に息を呑んだ

火影様が少女の、辺り、を見る理由。

少女が悲しそうに火影様を見返す理由

 

里の者が気づかない理由。

それらが繋がった。

 

彼女は、人ではない

 

 

少女は悲しそうに視線を下げ、火影様の言葉を耳に届けた。

俺がこの子を火影様に報告した理由の1つは、敵意も殺気もないのに異様な雰囲気だったからだ。

 

彼女に身にまとうその空気に違和感を覚えたが多分、これは、人間ではない証なのだろう。

 

 

「俺は幽霊とか見えないタイプなんだけどね」

 

少女が数日俺が見ていると気づきつつも様子を伺っていたのは恐らく真偽を確かめていたのだろう。

 

俺が視えているのか視えていないのか

 

暫く様子を見てから肯定と断定し、そして意を決し俺に話しかけたと。

度胸が無い訳ではなく、俺の事を様子見て話しかけるのが遅くなったのか。賢い子だ

 

話しかけた事により会話の疎通がとれた事に驚きつつも、話ができる俺の指示に従ったという訳か。そして此処までついてきたと。

 

流石三忍のうちの一人の火影様だ。

視えはしないが彼女の気配だけは気づいているのだろう。どうやら視えはしていなさそうだ。

 

「お前が視える理由、何かしら意味があるのだろう。引き続きお前をその子の監視役とする。」

 

俺は困り果て少女を見つめる。厄介なものを拾い、押し付けられてしまったものだ

俺の視線に気がついた少女は困ったように苦笑いを返した。

 

その表情は今日一番安心した表情だった。

 

 

カカシと呼ばれていた彼の部屋は、思ったより小さくて一人分としては住みやすそうな部屋だった。

小さな机に、窓、ベッド、本棚。最低限の家具がぽつぽつと置かれていた。

生活感はあるものの里を守る方がこんな小さな家にすむのだろうか。

 

 

「とりあえず座りなよ」

彼は机の反対側に私を促す。

それを二つ返事で返し大人しく従う。座った座布団がへたっていて床に座ってる感覚とそう変わらないように思えた。

お客様が来てもあまり気にしないで渡すのか、それともあまり人の出入りはないので使い古したものなのか。

 

私がみえる初めての人。その方の部屋にあれやこれやと思慮を巡らした。

 

 

「んで、どうしよっかね」

 

あまりにも緩んだ空気に思わず苦笑いをこぼした。

正直私を視てくれた方はこの方だけで、どう接したらいいかわからない。

わたしもこれといって目的があるわけではない。どうするかなんてまだ決まってないし考えたことが無かった

 

ただひとつはっきりしている事を、このひとにだけはお話しておこうとまだ緊張で解けない手のひらを強く握った

 

「自己紹介が遅れました、わわたくし、いちかともももうします。」

 

頭を下げ、まるで命乞いをするような気持ちで名を名乗りあげた。

緊張で口が回らず名を名乗った後から恥ずかしさがこみ上げていく。噛んでしまった事に羞恥心を覚えながら頭をしっかりと下げた。

恐る恐る頭を上げると彼は優しい瞳で見つめ、「うん、よろしく」優しい言葉をかけてくださった。

思わず声を失ってしまった。

 

私の驚いている様子に彼は不思議そうにしたのに気がついて「い、いえ 何でもありま、ございません!」誤魔化した。

慌てて口調を改めて、机をまた見つめた。

うまく、会話ができているだろうか。そんな思いで拳を強く握った。

緊張しきった私の様子に彼は溜め息を大きく吐き少し身構える。

呆れられただろうか、失言してしまっただろうか。いろんな不安を心の中で唱え戸惑っていた。

 

コツコツ

彼の指が机をたたいた音に自然と視線がそちらに向かい、彼の瞳とぶつかった

顔を隠して、素顔がよくわからない人。不思議な方だとはずっと思っていたけど、たったひとつだけみえる瞳の色は深く綺麗だった

 

「そんな緊張しないでいいから」

目尻を下げて笑う彼に私はいままで感じた事の無い感情がわきだつ。

思わず視線を逸らし絞り出す声でふたつ返事をした。感じた事のない優しさが、私の胸を包んだ

 

「お茶でも入れようかね」

そう言って彼は腰をあげ、キッチンの方に向かう彼をおとなしく座って眺めていた。

お茶を入れてくださるなんて。なんとも言い切れない気持ちだった。誰かが私にお茶を入れてくださることも初体験だ。

緊張に胸を高鳴らせ、辺りを見渡す。

 

本当に小さな部屋で数歩歩けばキッチンに迎える。生活しづらくはないのだろうか

失礼な事を考えていると「あつ!」彼の慌てた声に驚いて身を固くした。

彼を見ると不器用な動作で悪戦苦闘をしていた。あまり...お茶を入れる習慣が無いのかな?辿たどしい動作に苦笑いを零した。

 

「わたし、入れましょうか」

火傷を軽くしてしまったのか水で手を冷やしていた。一つだけ見えている瞳を涙目にしつつ、頼むよと情けない声を出した。

大の大人の情けない声に思わず笑ってしまった

 

腰をあげてお茶をつくる様子に彼は嬉しそうにした。私もお茶を入れられるか不安だったが問題ないらしい。頭で考えるよりも手が先に動いていた

緑茶のにおいがかすかに鼻をくすぐり始めた頃にわたしは、口を開いた。

 

「先ほど長様が言われた通りあなた様以外私を見た事はありません。」

急須にお湯が入れ蓋をし湯のみ二つ手に取り、置いた。

 

 

自分は人に確認されずにあそこに囚われたかのように動けない事気がつき幽霊だと自覚したのは先日だ。

どれくらいあの場にいたかは覚えていない。

気がついたらあそこにいた。

 

「多分、私は未練がありここに留まっているのでしょう。」

確信は無いが、一つの目的がいつも視線を追いいつもとらえる。それが私の求める答えだとは知っている

「未練かぁ」彼は天井を仰ぎ目を閉じた。その瞳の裏に何を映しているか私にはわからない。

 

 

 

 

「恐らく、楽しくなりたいんだと思います。」

広場に行き交う人を絶え間なく見つめて笑顔になるのをじっと数日見つめ続けていた。

温かい気持ちになりながらも、心の違和感を感じていた。

「...確証はありませんが」

その違和感を未練なのかはまだ確信は無かったので、弱々しく言葉を付け足した

 

急須から色が出たお茶を注ぎ彼の前に出す。ありがとう。そういわれるのがくすぐったくて二つ返事をしてもう一度腰を下ろす。

彼が一口飲んだのを見てからわたしも口をつけた。温かい湯気が自分の頬を湿らせていく。暖かいお茶にすこし心が軽くなるのを感じた

「それで、」言葉を吐いてから言うことを躊躇い口を閉ざした。

彼が射抜くような視線を私へと向ける

 

 

「記憶がない、?」

 

確信を得た言葉に息をのんだ。

まさか彼から告げられるとは思っていなく驚きながらおそるおそる首を縦に振った。

そうか、と彼はベッドを背にして仰いだ。

...そう、私は今の状態から前の記憶が無く、気がついたらあの場にいた。

なにをするわけでもなくただ楽しそうな人たちの顔を見て毎日過ごしていた。

 

「どうして、気がついたのですか?」

まさか出会って間もない彼に見破られるとは思っていなかった。

彼はベッドから背を離して、一つの目で私を見つめた。鋭く光る瞳に思わず息を呑む

 

「火影様を長様と呼んだよね」

先程会ったばかりの、お若い長様を思い出して慎重にうなずいた。

あんなにお若いのに、しっかりしたお方だった。

 

「この辺りの里ではキミの言う長様の事を火影様と呼ぶんだ」

先程あの屋敷でこの方が何度も火影様と呼んでいたのを思い出す。お名前かと思っていたのだけど、違ったのか。

「決まりというか、うん、常識だね」

 

彼の言いたいことがわかった。

常識を知らない私をまず他国の者と仮定したが、他国の者でも知っている常識をも知らない子は中々いない。

結論的に常識を知らない捨て子、と断定したらしい。

「キミはまだ幼いし、何も知らされず捨てられたと考えるのが一番すんなりといく」

 

しかし彼の推測は人間とした場合のものだ。思いもよらない人間ではない幽霊なのは予想外だっただろう。

幽霊ならば、記憶がない。そう結論を出したそうだ。

なるほど、さすが里を守る人。観察眼が長けていた

 

「そして、里を守る俺たちの事を忍というんだ」

「忍…」

 

記憶が無いわたしにとっては、馴染みの無い言葉だった。それを察して今教えてくれたのだろう

 

たしかに人間だった場合、私の事を捨て子と考えるのは理にかなっている。

私を幽霊と知って、記憶が無いという推測にいきついたのは大した洞察力だとも思う。

 

「ですがカカシ様、ひとつ盲点がございます」

「カカシ サマ ?!」

大きな声で驚かれる彼に驚いて「お、お気に召しませんでしたか?」弱々しく言葉を吐いた

彼は苦く笑いながら「いや、普通に呼んでくれて構わないよ」そうと言葉を吐いた。

 

「カカシさま」

彼は何か躊躇ってあちらこちらと視線を彷徨わせた後に諦めて大きく息を吐いた。

「……んで、盲点って?」

 

少し前のめりで私のはなしに興味ありげになっている彼の姿に僅かに緊張する。

私の記憶がないことを直ぐに察したこの方にすごい話ができるのではないかという自信にすこし胸が高揚する。

 

あのときわたしが幽霊とわかっていなかった時点のお話でしたよね。

人間と仮定したときのお話でしたが、私を捨てられた子を考える材料にしては歳がそうもいきません。

稚児ならば自分で食べていく術を持たないので捨て子と判断するのはわかりますが、わたくしもいい大人ですので捨てられていたとしても流石に何か生きながらえる術を持っていると思います。

ですので、私の歳に矛盾が生じて捨て子であそこに生きていく事はかないません。

人間ならば、の話ですがね。幽霊なので、食べなくても大丈夫です。

 

得意気になって話した私に「ん?」彼の上づいた声が耳に届き条件反射で私も「え?」聞き返した。

少し我に返って自信ありげに話していた自分に恥ずかしさを覚え、何か間違った事を言ったか自分の言った事を反芻させる。彼は震えながら、瞠目しわたしをおそるおそる指差した。

 

「キミ、いくつなの?」

自分の記憶をたどり、全く思い出という記憶は無かったが覚えている事はある。

 

「24だった筈です」

 

カカシさんは声を失い、私を指差していた手を下げてからしばらく口を閉じた後にから笑いをした。

私は名と性と歳の3つだけ確実に覚えていた。ソレ以外の事は全く覚えていない。

お茶を入れることだって、ここが何処だって事も全く覚えていない。

 

「最初名乗りましたしね」

「ていうか性は流石にみればわかるっしょ」

「それにしたって…」

彼の視線が私の身体を見つめる。

一点だけ執拗に見つめたのを見て思わず眉を顰めて睨んだ

「今あなた様が何を考えたか手に取るようにわかりました」

「冗談だよ」

人のいい笑顔を浮かべたのを見て更に眉を顰めた。

これが冗談なのか本気なのか判断するには彼を知らなすぎた。

 

彼は少し姿勢を正しわたしと会話をする姿勢になる。

かれのまっすぐな瞳に射止められ私も身を正す。

こういう目にはなれていなかった。

 

 

「キミが成仏したいというなら、俺は協力するつもりだけど」

 

彼は真剣な瞳でいうものだから驚いた。

手助けをする、そう言った事に私は驚きを隠せない。

私はまたも足音のように鳴る心臓を落ち着かせる為に冷めたお茶を手に取る。やはり、暖かい方が幾分心が休まる。

 

「なぜ、ですか?」

会って間もない女にここまでするだろうか。

「火影様に命じられたものだからね」そう彼はなんでもないように言った。

命令ならば仕方ないと思ったが、私はひとつ思い出して息を呑んだ。

 

違う、火影様に命じられたのは監視役だ。監視役ならば、あの広場で私をじっとこの人が私を見ていただけの仕事。

面倒を見ろとは言われていたけど、家にあげて世話をしろとまでは言われてない。

彼があの広場に私を返そうと思えば返せる筈であり、そこで監視をすればいいだけの筈。

 

 

「私が…頼りないから手を出したくなる、ということでしょうかね」

推測を何個かあげつつも、それらしい答えが見つからなく苦笑いをしてごまかした。

彼は思案してかそれも一理あるかもねなんてはぐらかし自分の湯のみを手に取りキッチンに足を向けた。

 

自分で言った言葉だが少し心がいたい。その気持ちを隠しつつ私も慌てて湯のみをもち彼の傍に立つ。

彼は優しい音でお茶を注ぎながら自分の分を注いだ後に私の分も注いでくれた。

お茶がコップに入りきると、彼は口をやわく開いた

 

 

「キミが、俺の知っている子に似ているからかな」

 

彼は悲しそうに笑うものだから、すこし息をつまらせた。先ほどの取り繕う笑顔ではなく、寂しそうにわらったのだ。

「その方は、どのような、?」

彼は憂帯びた睫毛を僅かに震わせた。その何か後悔したような瞳に疑問を抱く

 

「キミみたいな瞳をしていてね」

「め?」

 

私は思わず瞳に手をやる。あの広場にある噴水に映った自分の紅い瞳を思い出した。まるで血のような瞳に寒気をひとりしたの覚えている。

 

「放っておけないのさ」

 

そう言った彼が悲しそうなので、思わず何も言えず視線を下げた。

わたしはどのような目をしているのか、その彼がいうその子の瞳はどんなものをしているのかすごく気になった。

 

理由ははっきりわかったわけではなかったがよりあえず心優しいこの方に感謝せざるを得なかった。

誰も見てくれないこの世界は、あまりにも寂しくて。息が詰まっていた。

 

あのとき、勇気を出して声をかけてよかったと心底思う。

あの時なかなか話しかけられなかったのはまた聞こえてもらえないかもしれないと思うと動けずにいた。

ただ監視役を全うしていた彼はそんな筈ないのだけど彼はずっと待っていてくれたように思えた。

浅はかな自己解釈だと嗤ってしまうが。

 

「ありがとうございます」

それでもよかったと後悔はしていない。私は最初会った時と同じように腰を折り曲げた。

カカシ様の協力を受け入れたことに彼は満足そうにうなずいてくれた。

私は視てくださる上に協力してくれるひとがいるだなんて、とても幸せだと感じた。

 

 

「でも、俺は協力するけど、手助けはしないからね」

にっこりと笑った彼の意図を読めず私は眉を寄せた。その回りくどい言い方に頭を抱えたくなりながら悩む。

協力と手助けの違いがわからず、抱えるかわりに頭を捻らせて傾げた。

 

「キミに頼まれた事をするよ、橋渡しという感じかな。キミ自身の事だから、積極的に色々試して欲しいんだ」

他人任せではなく、自分でやれよという話だと理解して、うなずいた。手は出しすぎずうまく距離を取ろうとしているのだろう。

幽霊相手に上手な付き合い方だと思い大人しくもう一回頷いた。

 

「僕も忙しい身だからね、あまり主軸に考えない方が君の為になると思ってね」

距離を取るためではなく私の為だったと思い驚きを隠せない。心優しい方だとやはり思って笑んだ

 

「お気遣い感謝致します。ご不便かけぬよう励みます」

 

誰かに確認をしてもらい、会話をし、表情をつくる。これだけが彼と私という小さな世界で起きた大きな幸せだと、思った。

 

「あの…」

 

湯のみを洗っている彼におすおずと声をかけた。彼はわざわざ水を止めて、私に振り返る。

 

「何かお手伝いありますか」

できれば重労働でなければ助かると心中で思う。命の恩人に(死んでるけども)ご恩を返したい。

 

カカシ様は嬉しそうに笑ってくださり、助かるよ!と濡れた手を拭いた。

喜んでくれたようなので安心をし、拳を作り意気込みをする。

 

 

「ご主人様とお呼びした方がいいですか?」

「ブッ!!!!」

 

彼は咳き込み、地面に伏した。あまりの出来事に彼に駆け寄り彼の背中をさする。

 

間違ったのだろうか。私は慌てて自分の言動挙動に問題が無いか反芻させる。

 

「そういうの、いいから」

「お気に召されませんでした?」

「俺、ご主人じゃないからキミの、」

 

あの噴水広場で以前楽しそうにしていたやり取りを間違えていた事に気がつき、落ち込む。

彼は視線を逸らしほおをうっすら染めていた事には気がつかなかった。

 

「では、この家の主サマ?」

「だからやめてってば」

 

 

 

彼は腰を上げて「さて、と。」何処かでかける準備をした。私はそれを見上げ、目で追う。

ぼんやりした私を覗き込んだ。

「ほら、なにしてるの。」

彼の言葉で私は驚き身を正す。

「出かけるよ」そういってかれは部屋から出ようとしていて。思わず小走りになりつつ後を追った。

 

 

彼の家から出て直にたくさんの人とすれ違う。すれ違うが、誰ともめが合わない。

でも人間の彼とも他の人たちとは目が合わない。生きていてもすれ違う者たちは必ずしも目を合わせる訳ではないことに安心し、少し、地面から浮いている足をそっと下ろして地面に足をつける。

 

実は、この体は浮くのだ。

浮くのだけども、歩いてるとなんだか私も彼の隣を歩いている錯覚に陥った。満足して彼の隣を歩いてみた。

誰かの隣を歩くのは初めて。

なんだか嬉しくなってほおが熱くなる

 

「どこに行くのですか?カカシサマ」

「ちょっと買い物だよ。キミも手伝って欲しくてね」

 

手伝う。その意図を理解し、重たいものでも持ってみせると意気込み腕をまくった。

意気込む私が荷物を持つ だけ というその様子にやれやれと彼は溜め息を吐いた。

 

「キミはこれから家事掃除担当ね」

 

...家事、掃除?

言われた事が理解できなくて思想を巡らす。会ったばかりだが彼の言葉は先を行き過ぎて把握できない。

 

家事掃除をするということに買い物がつながら…一つの仮定に気がつき私は瞠目した。そんな私の目と合わせた彼はにっこり笑った。

 

「お金は渡すから私生活で問題ないものを今日のうちにそろえよう。」

 

一緒に住むから、いろいろそろえよう。

そう言っている事に気がつき私は思わず宙に足が浮く

 

「だだだだめです!そんな!」宙に浮いて彼との距離を取り、彼からの誘いを断った。

カカシサマは、不思議そうな顔をして、どうして。と言った。どどどどどど、どうしてだなんて!私も慌てて反論しようと思い口を開く

 

「私は幽霊でも女ですよ!男と女が一つの家にすすすす住むだなんて!そそそれにこれ以上厄介になるだなんてごご恐縮です!」

「ハイハイ、落ち着いて」

 

私は慌てすぎて周りも見えず、すごく小さいカカシさんの声が足下からした。慌てすぎて上に昇っていったらしい。

取り乱したことに気がついて恥ずかしくなる。少し冷静になってから下に降り、地面に足をつける。

そして彼を見た。

彼はいい笑顔で私を見つめ返す

 

俺はキミを監視するように言われているんだよね、一緒に生活している方が何かと不便も無く効率も良くてね。

 

俺も忙しいからね、キミを目に届くところにおいておきたい。それにキミはあの広場にいるより暖かい布団で暖かい家にいる方がずっといいと思うけど。

 

 

ぐうの音も出ないとはこの事だ。

反論しようかと思うが、こうも言われてしまったら断る理由が見当たらない

 

で、でも厄介になるわけにはいきません。ごにょごにょと、やっと出てきた弱々しい反論を口にした。

 

いい笑顔で

「キミ俺のお手伝いしたいんでショ?」と言うので、もう何も言う事ができませんでした。

 

 

「キミが俺の家にいたら、監視もできるし俺の家でご飯つくって待ってくれていたら同時に仕事2つも3つもこなせて助かるんだけどナ~」

「~~、」

 

この方は、口がひとつもふたつもとっても上手だということがはっきりわかりました。私は煮え切らない気持ちで恐縮になりながらも小さな声で「よろしくお願いします」つぶやいた。

 

お小遣いを渡され、私はなんだか小さな子供になったようなきもちでそれを握った。

私は他の人たちに姿は見えないので、欲しいものがあったら俺に言う事。

そういってなぜかお金を握らせてくれたのだ。

まるで、人間。

顔を綻ばせた。

 

カカシサマがちょっと本屋に寄るから何か見ておいでと仰せつかったので、商店街を歩いた。

行き交う人たちが忙しそうに視線をさまよわせて目的の物がないか探している。

 

お店の方はいろんな方に声をかけて、この魚がいい。このお肉がいい。と威勢のいい声を響かせている。その活気たる雰囲気に思わず頬を染めて見つめる。

 

わたしも、人の流れに逆らい、飲まれながら商店街を歩いた。「すごい、ひと。」その活気に、人ごみに気負いし町外れにたどり着いた。

 

 

 

私は乱れた息を少し整え、目の前にたどり着いた店の看板を読む「駄菓子、屋」小さな男の子たちが店の前で遊んでいるのを横目に中をのぞいて色鮮やかなお菓子たちを見つめた。

 

なんだか、懐かしい雰囲気のする場所だった。少し、カビ臭くて暗い。

 

「ばーちゃーん、もういっこちょーだい」私の傍をすり抜け奥にいる誰かに男の子が大声を上げる。

 

重たい腰をゆっくりと上げ顔を出してきたおばあさんは優しそうな笑みを零しハイハイ。と笑う

 

お金を受け取り子供に優しい笑みを返す。その男の子は笑顔で外に駆け出し、友達と楽しそうな声をあげていた。

 

私の傍にあった出口を、あの子の後ろ姿を見ておばあさんはとても優しく笑っていた。

その様子を遠巻きに見て、私は笑んだ。あの噴水広場でしていた事となにも変わりなかったのだけれども。

 

なんだか心が暖かくなる光景に後ろ足引かれながらもそこを後にした。

 

 

 

本屋の前まで戻ると、カカシサマは買ったばかりと思われる本を道ばたでよんでいた。私に気がつくと、本を閉じ「どうだった」そう聞いた。彼の言葉に私はうしろを振り返り笑んだ。

 

「やっぱり、私、人間が好き」

 

心からの思いだった。あの噴水広場で楽しそうにしている人間を見ている時からずっと思っていた。

そして、あの噴水広場から動けない私の前ですれ違う人々は変わらず笑んでいる事になんだか自分がばかばかしくなりつられて笑ってしまった事を思い出した。

 

私の満足そうな顔を見、そして口調が変わった本音を聞いたカカシサマは優しい瞳をしてうなずいた。

 

 

「んで、欲しいものは見つかった?」

「あ!忘れていました!」

 

 

仕切り直して、お買い物の続き。

 

カカシサマの隣で野菜を選んでいた。「このトマトは赤くて他のトマトより重い!これを6つほど頂きましょうか」

カカシサマに告げると彼は八百屋さんに私の指差すトマトを頼んだ。八百屋のおじさんはすごくご機嫌に笑って「それは今日一番いいトマトだよ!にーちゃんついてるね」笑った。

 

「ね、トマトといったら茄子でしょ、茄子も買おうよ」そう言ってなすをカカシさんが指差した。トマトと言えば、茄子?私は指差された場所に視線を向け茄子を見る。色のつやがなくてひげもよれよれと頼りない。

 

「ここの茄子はあまりよくないですね」こんな事をおじさんに聞かれたらおこられてしまいそうだけど、こういうときだけなんだか特権に感じる私の体

 

カカシサマは、そうと頷き声のトーンが僅かに下がった。

…、好きなんだなきっと。

 

「こ、こちらのは多少マシですのでこちらを5つ程頂きましょうか!」表情がみるみる変わって私が言った通りにおじさんに5つと告げた。その様子に思わず吹き出した

 

 

買い物をしてわかったこと。

サンマと茄子がきっと好き。

彼の半分かくれた顔から表情がわかるようになったのは、ご飯の事に関しては多少わかりやすかったから。

それが彼の狙いかはまだ定かではない。

 

 

 

布団まで買っていただき申し訳ない気持ちでいっぱいになって言葉も出ないところになんだかそわそわし始めたカカシサマに気がつき目を合わせる。そしてなにか歯切れ悪そうに視線を泳がせ、「ま、気にしなくていいから」そういって背中を押され、前のめりになりながら足を踏み入れた場所は下着屋さんだった。

 

色鮮やかな店内に驚きつつ、私は思う。

彼どっか行ってしまったけれど買えないのでは、!私は末永く考えた挙げ句、流石にここはお言葉に甘えさせてもらい、書き置きをしてお金を置いて出てきた。

 

顔色変えないがなんだかぎこちなく外で待っていた彼はまるで年頃の娘を持ったお父さんのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

「カカシサマ、」床に座って今日買ってきた本をよんでいた彼は私の呼びかけに答え本を閉じた。

小さな机に久方ぶりであろう誰かに作ってもらう手料理が並べていく様子を見て目を輝かせた

 

「鶏のトマト煮込みです」

私は彼に箸を渡すと彼はきちんと手を合わせいただきます、告げた後に待ちきれんばかりというようにご飯にありついた。

あの、口布は外さないのかな。

 

 

彼は一瞬にして料理を平らげ満足そうにしていた。私はその様子を見てほっと安心して後片付けをする為に腰を上げる。

 

彼は私のうしろ姿に向かって「明日はなすのみそ汁が食べたいナ~」明日の予定を入れてきた。私は苦笑いしながら元気よく振り返った。彼もそんな私の様子を嬉しそうに見ていた

 

 

「なんだかいいね、同棲生活」

「なっ、!ど、同居生活です!というか居候です!」

 

カカシサマが腰を上げて私のやろうとしていた後片付けに手をつける。

「洗っておきますよ」

そういったのに腕まくりをして皿を洗い始めた。

 

本、続き読まないんですか?控えめに聞いた。ここまでしてもらって何か手伝いたい。私の気持ちを悟ったのかかれは口を開く。

 

「君に頼んだのは仕事じゃなくて、お手伝いだからね。俺も手伝うよ」

 

そんなこといわれてしまったらまた、何も言えなかった。

 

 

 

 

「すこし、発見がありました。」

私はカカシサマから洗ったばかりの皿を受け取り皿を拭く。

彼は興味ありげにへえ、どんな。お皿から視線を逸らし私を見た。

次に渡してきたお皿をじっと見つめてからかれの手を触ろうとする。「!」しかし、その手は触れる事なくすり抜けていく。

 

私は彼からお皿をとり、話を続けた。「このようにどうやら人には触れないみたいなんです。」ですが。私は何センチか離していた足を床につけて彼に触った。「!、あらま」私の手は彼の手を取っていた。「足を地面から離さなければとりあえず触れられるようです。」彼の手から手を離しお皿を重ねて教わった場所に戻す。「へえ、なんだか面白いね」彼の言葉に苦笑いを返した。

 

 

「じゃあ、今度から手をつないで歩けるね」

 

彼は満面の笑みでそういうので思わず声が裏返った。

「あ、あのですね、冗談も程々にしてください」唾が変なところに入り咳払いをして調子を戻す。

 

 

「ハイハイ、ゴメンネ」

「まったく。いい歳したおじさんが年下で遊ばないで欲しいですね」

「ちょ、さらりとひどい事行ったよキミ」

 

 

 

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