Fragment of the planet   作:えっこ

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まばたき星に踊り明かせ

窓を大きく開けて、夜の風を少しでも浴びようと身を乗り出した。じっとりと纏わり付くような暑さに呼吸をするのも困難な気がして。着ていた半袖を脱いでもう一度風に当たろうと手をのばす。

 

 

「あ、つ、い...なあ」

 

そう言葉にする事さえ暑い。

私は薄着になっても、まだ満足するような涼しさはやってこなくて、手で仰ぐ。

風。風が欲しい。

近くにあった団扇でようやくうまく息ができるようになって。わたしはだらしなく床に倒れた。肩を出した服でも、こんなに足を出した服を着てても、暑い。

あつい。

 

 

麦茶でも飲もうか、今日4本目のアイスを食べようか。朦朧とする頭で考えていると、ちょうど彼が玄関の扉を開いた。

 

「おかえり、なさい」

私は団扇で自分に風を当てて首だけを上に動かして、彼を出迎える。

逆さまになって見えた彼は、固まって声を失っていた。

 

私の寝転んで出迎える姿を初めて見たことに驚いて心配そうな顔をしたあとに何か発しようとした。

直後、顔を歪ませた。

 

 

「何この部屋、アツ!!!!」

 

彼は一枚脱いで、服にすこしでも風を入れようとぱたぱたさせる。かえってきた彼に安堵し、私は団扇を仰ぎながら彼を下から見上げ、どうにかして。と懇願する目を送った。

 

「何これ暑すぎでしょ」彼は私の傍に寄って屈んだ。ふと、落ちる影に視線を伏せる。

 

「クーラーのリモコンどこやったんですかカカシサマ」もう一歩も動きたくない私はこの部屋の主サマが帰ってきても立ち上がろうとはしなかった。

 

「…」彼はうっすらと頬を染め、私に釘付けになっていたのを私は気づかなかった。彼は暑そうにしているにも関わらず私をじっと見て動かないので伏せていた目を彼に向け下から彼をにらむ。

 

「りも、こん、どこですか」

言葉を発するのさえ惜しくて目力で訴えると彼はにっこり笑って数秒何かを考えたあとに「ハイハイ」

 

確かこの辺に、とベッドと壁の間を探すと直に出てきて軽快な音を出して動き始めた。

 

その音に心底安堵し、力なく手を放り投げた。暫くすると冷たい風が自分の肌を撫で全身の力が抜けていく。

すずしい、寒い程に涼しい。

感激のあまり涙を流したくなるほどの快適さだった。

 

「クーラーは偉大です、すばらしいです」私はようやく放り投げた手足に力を入れて上半身を立てて寝そべった。

 

着替えたカカシサマは、冷蔵庫から麦茶を取り出し軽快な音で注いでく。気持ち良さそうに飲み干して、私の傍に座った。

 

「私も一杯頂いていいですか?」全身だるくて動けなかったところにお茶が歩いてきたようなものだった。

 

にこにこと笑って肩に首をすぼめお茶を待つ。カカシサマは私をなめるように見て無言でお茶を注ぎ私に差し出した。

 

 

 

「涼しくなったら服着なさいよ」

 

そういって私の肩から落ちた服の紐を肩にかけ直した。

私はお茶を受け取って、彼に僅かに触れられた自分の肩を見た。

暑くて薄着になって、そのままだった

私は気づかないうちに薄着の肩ひもが落ちていたらしく、それを直された。

 

私は首だけを動かして床から上半身を立てている腕を見た。胸元を見た。

みえていた。

 

 

直ちに起き上がり暑くて脱いだばかりの汗びっしょりの服をもう一度着た。立ち上がったときに自分の隠れていない足下を見て少し折り曲げていた短パンを少しでも反対に折り返し長さを戻した。

 

私は何も口から発する事なく冷凍庫からアイスを引っぱりだしてきて、くわえた。

カカシサマは私の真っ赤な耳を見て、やれやれと自分の顔を隠した。

 

 

自分のだらしなさを反省しこれからは露出しない服を彼がいない時でもきる事を決めて。

 

すこし、落ち着きを取り戻してからご飯を作ろうと思い冷蔵庫を開けると「あ!」予想を反した冷蔵庫のスカスカさに驚いた。

 

おそるおそるカカシサマを振り返り、どうしたのかとこちらの様子を見ていた彼と目が合う。

 

「きょうの、ごはんです」

私の両手の間にはりんごひとつ。

あらら。彼は困ってみせた。

 

時刻は10時過ぎ。今から買い物に行って帰り、その後作るとどうしても夜遅くなってしまう。私は手のひらにあるりんごを見つめ、意を決する。

間に合わないので、りんごだけにしよう。

 

リンゴを洗い、せめてかわいくうさぎさんのように切ってお皿に並べた。カカシサマはうしろからひょいとうさぎさんを取って、シャリシャリと口の中で鳴らす。

 

ひょいひょいとあっという間になくなりりんごはあっけなくなくなり、食事が終了した。

あっけない夜ご飯だった。

 

彼は食べ終わると玄関に向かい、こちらを向く。

 

「んじゃ、行きますか。」

私は、後片付けを始めようとした手を止めて、慌ててタオルで手を拭う「ど、どこにですか?」私の問いかけに少し苦笑いをした

 

「夜ご飯を食べにだよ」

 

 

毎日暑く、涼しくなった夕刻に買い物に出て寄り道をせずに帰り、夜帰ってくる彼の為にご飯を作るので。

夜の里に繰り出した事はなく、オレンジの光の中密やかに賑わう店に心を踊らせた。

 

夜出かけるなんて「ふふ」なんだか悪い事をしている気分になった。

 

「たのしい?」優しく笑んだ瞳に私は少し恥ずかしくなり、「はい」そっと呟いた。私の素直さに驚いたのか、少し瞠目したあとに嬉しそうに笑った。

 

 

店が連なって並んでいる中、道ばたにひとつの光。ラーメン屋。

 

「ちゅ、うかめん、はじ、めました」その小さな暖簾を読み上げると隣を並んでいたカカシサマがあごにてを置いて何か考えたそぶりをした後に「いいね、サッパリサッパリ」そちらに向かって歩き出した。

 

暖簾をくぐると、先約が一人。

この暑い中ラーメンを啜ってる。

 

「あーー!!カカシ先生だってばよーー!」

「…あらま。」

 

そこには大事に飾られた写真に写っていた彼がいた。

私はカカシサマのうしろからまじまじと見つめ、彼とカカシサマを交互に見やる。

 

せ、せんせい?

 

 

カカシサマは軽く溜め息を吐いて、店主サマに中華麺を2つと言った。

カカシサマは彼の隣に座り、私はカカシサマの隣に座った。

 

カカシ先生と呼んだ彼は、2つ頼む師を不思議に思い長い麺を啜りながら首をかしげた。

「先生二杯も食うのか?」麺を咥えて間抜け面で聞いてきたので思わず笑ってしまった。間抜けとはとても失礼な言い方だとは思うけれどその顔は、間抜け面というのがはっきり正しかったと思った。

 

「ん~まあね」カカシサマは適当に誤摩化したので思わず苦笑いをしてしまった。あまりにも雑なごまかし方に笑ってしまったのだ。

 

彼はますますわかららしく、カウンターの奥を覗き込み、わたしを見た。視線が絡む事に、私は思わず身を固くした。

 

 

「あれ?このねーちゃんだれ?」

 

私は思わず息を呑み、確かに目が合っている彼に瞠目した。また、視えてる?私を振り返るカカシサマも驚いているようでその視線と絡む。

私たちの様子を彼は首をかしげた。わたしたちが何も言わない様子に彼はカカシサマと私を見比べて「ん~~」腕を組んで悩んでみせた。

 

混乱した頭をどうにか動かして「は、はじめましていちかともうします。」震えた声で名を名乗った。私は長い髪を揺らし、お辞儀をした。

 

視えるタイミングがわからないのだ。視える人もわからない。

あの長様、火影様でさえ視なかったのにこの子には視える。まだ、わたしにはわからなかった。

 

 

「おう!」彼はにっこり笑ってみせて少し安堵する。ちらりと目配せをしてくるカカシサマと目を合わせて、どうしたものかと視線を送る。私たちの関係をなんと名乗るか思案し合っていた

 

わたしたちが黙っていると、彼はラーメンを啜りながら大きく目を開き ぽんっ、と手をたたいた。

 

「ねーちゃんカカシ先生の、コレかあっ?!」

 

彼は小指を立ててわたしたちに差し出してきた。彼は、私たちがなんと名乗るか思案し合っている様子を見つめ合っている様子だと勘違いをしたらしい。

 

カカシサマは呆れて「なんか自来也様に似てきたな…」と溜め息を吐いていた。「なあなあ、そうなんだろッ?!」嬉しそうにラーメンをまた啜り始める彼にカカシサマは

「そうそう、そのとおりだよ」と適当に返した。

…ん?

 

「なななな何を言ってるんですか!」

「ん?何が?」

「ま、ままた年下苛めですね、私に限らず他の方達もそのような対応をしているとは思いませんでした!この年下いびり野郎!です!」

「ちょっとちょっとキミ興奮するとひどいこというよね」

 

わたしたちのやり取りを聞いておらず。彼は嬉しそうにラーメンを啜っていた。ラーメン、おいしそうに食べるな。彼は勢いよく口に付けた皿をひっくり返して、満足そうに息を吐ききった。

 

「うまかったー!」

彼はにこにこと笑ってそのまま走り出し「ごちそーさまセンセー!」そういって逃げ出した。「あ」カカシサマは駆けていく彼のうしろ姿を呆然と見つめていた。

お勘定、自然に押し付けて駆けていったわ。

 

「あの方は誰なんです?」

彼のうしろに視線を送っていたカカシサマはこちらをむいて ああ。そうか。 そういって机に立ててある割り箸を二つ取った。すると、冷やし中華がわたしたちの前に現れた。

 

 

「俺の生徒だよ」

割り箸を私に渡し、自分の分を割った。生徒。それは多分カカシサマが忍といっていた例のものだろう。私は静かに割り箸を割って、中華麺を啜る。麺がラーメンのものらしくてとても美味しい。

 

 

「大事な生徒さんなんですよ、ね」

部屋に置いてあった写真立てを思い出しながら言った。大事そうに、飾ってあった写真立てだ。「まったく世話が焼けるよ」否定しない彼に思わず微笑んだ。

 

「あの子は、キミと一緒で寂しくてね」思わず頭を上げカカシサマを見る。「認められたくて、強くなろうとしてるすごいやつだよ」優しい瞳に私は何も言えず中華麺を啜った。

 

ああ、あの子が私に似てると言った子なのか。思わず振り返って闇の中駆けていった彼の背中を思い出して言葉を失う。

 

先生とあの方にできた絆のようなものが見えてすごく綺麗だと思い、そして、うらやましいとも思った。

「ま、バカだけどね」心から笑ってないカカシサマを見やって、なんだかんだできっと想っている姿を見て思わず笑った。

 

ごちそうさま。そう店主サマに言って3人分のお代を払い彼は帰りますかと夜道を歩いた。

 

「彼はとっても不思議な人でしたね」先ほどの金髪の彼を思い出し、ふと口にした。カカシサマは私の言葉を視線だけ送り次の言葉をまっている。

 

「なにか、こう不思議な感覚でした。」言葉に言い表せるのが歯がゆくて。説明がうまくできない自分が歯がゆい。彼は何も言わず暗闇へと足を進める。

 

 

「それと、前にも見た気がします。」わたしは無い記憶をさかのぼるものも、無いものは無い。

「俺の部屋の写真じゃないの?」カカシサマはそういうけれど、「もっと懐かしいものを感じた気がしたんですけど。」私の生きていた頃はあの彼に関わった事があるのだろうか。それともカカシサマの言う通り記憶違いなのか。それとも、また違うものなのか。私にはまだわからなかった

 

 

「きゃ!」

足下に何かすり寄ってきて思わず声を上げた。私の小さな悲鳴にカカシサマは足を止めた。

 

暗闇にとけ込んでいる「、猫?」黒猫が私の足下にすり寄ってきた。思いも寄らぬ毛並みの感覚に心臓が飛び出た。びっくりした。私は屈んで目線を合わせる。黄金色の瞳の黒猫。

 

なんだかこの子も見覚えがある。わたしは疲れているのだろうかあれもこれもそれも見覚えのある物に見えてきて。まあ、猫くらいはこの姿になって何度か見かけたものだからその中に似ていたものはいたとしてもおかしいはなしではない。

 

カカシサマも隣に屈み黒猫を見やる。すごく綺麗な猫だった。私はそっと頭を撫でてやると猫は嬉しそうに身を委ねた

 

 

「やっぱりいちかの姉御でしたか~」

 

突然名前を呼ばれて思わず手を止めて回りを見やる。誰かの気配はなく、しんと静まり返っていた。カカシサマも、周りを警戒していた。猫はぺろぺろと自分の手をなめていた。

その猫はわたしの足下に寄り添い、顔を上げた。

 

「お久しぶりでやんす!いちかの姉御」

 

猫はそう、軽々しい口調で私を呼んだ。私は思わず身を固くし、猫を見やった。…しゃべった、!私は信じられない気持ちでその猫を見やる。黄金の瞳は私をうつし、綺麗な毛並みを持っている正真正銘の猫なのに。

 

口元がにやっと笑い「探しましたよ、お元気でしたか?」言葉を綴った。私は、出る言葉も無く身体が動かなくなった。猫は私の様子に、焦り何度か声をかけてくる。

その声を聞くたびに身体が動かない。

ねこが、しゃべってる、!

 

「めずらしい猫だね」カカシサマはさして動揺もせず黒猫をまじまじと見た。

彼の声を引き金に私は戻ってきて「ね、ねこがしゃべってる!」脳内で何度も呟いた言葉をようやく口に出した。

 

私たちの相対する反応に、黒猫ちゃんは難しい表情をしてどう反応するか考えているようだった。

 

 

「姉御、おいらの事わすれてるんですか?」

 

突然の言葉に今度は私が難しい表情をして黒猫ちゃんを見る。しゃべる猫なんて生まれて初めて見る。忘れてるもなにも、私たちは初対面だ。そういってしまいたかったけれどなくなった記憶の事をこの猫は知っているようだ。

 

すこし、期待の瞳で猫を見やった。私の様子にハテナを浮かべて足下をぐるりと周り鼻をならしながら一周二周とした。

 

「くんくん、あらまこりゃあ…」猫は次第に険しい表情をした。私がまた猫のまねをするように首をかしげた。まるで風穴ができるほどカカシサマは隣でずっと猫の様子を見ていた。その視線に今更猫は気がつき、それから空気が気まずくなる。

 

「今日は遅いでやんすね、また今度ゆっくりお茶でもしましょう」

 

まるで人間のように挨拶をして、暗闇に溶けていった。

なにか、しっている。そう思いつつも口からは

「猫が、しゃべってた」

 

先ほどから口にしている何の変哲も無い感想しか出てこなかった。カカシサマは暗闇に消えた猫を横目でじっと見ていた。

 

 

 

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