Fragment of the planet   作:えっこ

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ノックした灯火の先に

 

 

 

夕日が射すいつもの帰り道、涼しくなったなと思いながら荷物を持ち直した。また、たくさん買ってしまった。幾分昼より涼しいのはせめてもの救いだった。

人の影が私に落ちてかぶりを上げる。時々ここで私のご飯が食べたいと待ち伏せをする少年かと思ったがそこには思いもしなかった方達が立っていて驚き身を堅くした。

 

「買い物は俺がするって言ったでショ」

「一人で出歩いちゃダメですよ」

 

「…カカシさん、…テンゾウさん」

 

2人に怒られてしまい私は眉を少し落とす。二人に見つかるとは思いもしなかった。彼らはこの時間はだいたい任務中で帰ってくる事などないのに。

この前の一件があってから彼らは人一倍に私を心配してくれている。買い物はなるべく俺がいくからいちかは外に出ちゃダメ。と必ず任務いく前に私にカカシさんは言ったり。ここにいれば先輩の結界があるから大丈夫ですよ。なんて言ってよくうちに茶を飲みにテンゾウさんが来たり。凄く心配されているのがわかる。

しかし私だって危険なのを承知で出て来ていた。自分のかぶっている帽子を深く被る。

 

「変装しているので大丈夫です」

 

あの男は私の髪色と眼で私と判断していた。つまりこの髪と瞳をうまく隠せば大丈夫だろうと胸を張って外に出た。髪色を隠す為に帽子の中に髪を全て入れて隠し、カモフラージュの為に大きなサングラスをかけてきた。それをかけなおして私は二人にどんなもんだと胸を張った。

 

カカシさんとテンゾウさんは困ったように眉を下げた。この完璧な変装は気に食わなかったらしい。

カカシさんにサングラスを簡単に奪われ帽子をテンゾウさんに取りあげれてしまう。隠れていた髪がぱらぱらと落ちて私の背中に落ちる。

 

髪色はそう珍しいとはいわないけれどこの瞳の色は目立つ。私は奪われたサングラスに手を伸ばしたが高く上げられてしまって奪い返せない。小さな身長に長身のカカシさんよりも高く上げられたものなんて手が届く筈がない。私は口を真一文字にしてサングラスを見つめた。

 

「相手は忍だからね。こんなことしたって無駄だよ」

 

瞠目して、彼の言葉を聞く。変装しても見破れるなんて忍というものは凄いものなんだと感嘆の息を漏らす。って、感心してる場合ではなかった。そのような事は全く知らなかったのでのこのこと外に出て来た私は相当危なかった。自分の浅はかな行動に反省をする。

 

「ご心配おかけしました」

「無事で何よりだよ」

 

二人は前を歩き振り返って私を待つ。その手には一つずつ荷物を持ってくれている。私は彼らの間に駆け寄り二人を見上げる。なんだか親に見守られている気分になった。良い歳をして恥ずかしい事を思ったと視線を下げる。

 

母親はどっちのつもりで私はそんな事を思ったのだ。彼らをお父さんと思うのは仕方ないとしてもお母さんだなんて、!自分の考えに反省しながら口を強く閉じる。

カカシさんは前を見据えながら口を開いた。

 

「この前の事を火影様に報告し、俺はいちかの護衛に回る事になった」

「ご、えい…」

 

監視から護衛にまわる事に驚いた。里を脅かすであろう対象物として最初彼に監視されていた身が護衛される身に変わるなんて思いもしなかった。そこまでして貰う必要はあったのかと眉を寄せてしまう。カカシさんもテンゾウさんも毎日遅くまで働いて忙しい中私に時間を割いてくれる必要はあったのかと。私の眉間の皺に気づいたカカシさんが軽く小突く。小突かれたおでこに手をあてて、彼を見上げた

 

「犯人はこの木の葉隠れの忍だ。お前だけの問題じゃなくなってきてる」

 

カカシさん達と全く同じ忍服を着ていた事を頭の隅の方で思い出す。この里を守る存在である筈が民を脅かしている。それが一人の少女と猫であろうと大きな問題なのだろう。

 

「野放しにはしておけない。いちかさんはそんなに気にしないで平気ですよ」

私の気持ちを察したテンゾウさんに私は大人しく頷いた。私が解決できる範囲を超えている出来事だと重々承知することにした。

 

「それに火影様はいちかに借りがあると言ったしね」

 

この前の幽霊騒動だろう。あの一件を担って良かったと安堵する。彼女の為にも担ってよかった事だと思う。寂しさに耐えきれず人にたくさんの悪戯をしていた彼女はようやく空の上で解放されたのだろう。今度はたくさんの人に囲まれた幸せな人生を送って欲しい。

 

「えと、よろしくお願いします」

私は深々とカカシさんに頭を下げた。沢山のご迷惑を彼にかけているのは承知だけども、これ以上は私ができる事は限られている。自分のできる範囲をし、彼に助けてもらう。その事に卑下したりする事を彼らは望んでいない。差し伸べてくれる手をそっと取るのが私の今できる事だった。

カカシさんは目を細め、頷いた。

 

「でも今日は祭りの見張り頼まれちゃってね」

「お祭り、?」

オマツリ。その響きに私の胸が高鳴るのがわかる。そういえば商店街で何枚ものポスターを見た気がする。お祭り。その響きに沢山の声と、光と笑い声を想像する。どこかにあった記憶なのか、想像したものなのかわからない光景に私は胸がどんどん高鳴る。

 

「行きたいんデショ?」

浮かれていた私はすぐに顔を引き締め直す。危険な身としては彼の結界を張った家にいるのが一番の安全なのだろう。彼がお祭りの見張りに行くという事は私の護衛ができないことを示唆している。つまり、私は大人しくお留守番をしていなきゃならないということだ。しかし、私が行きたいのはバレバレな様子だった。

 

私は小さく唸って自分を押さえ込む。でも脳裏に淡く輝く明るい光に私は冷や汗を垂らす。い、いきたい。でも自分の身勝手な行動で仕事をしなきゃならない人たちが出る事に行く事を躊躇う。

私はなんとか行きたい気持ちを我慢しようすると両方から笑い声が漏れる。その気の抜けた音に思わず頭を上げた。

 

 

「そんなに我慢しなくても大丈夫ですよ、行きましょうよ」

そんなに可笑しかったのか涙を溜めながら私を振り返るテンゾウさん。何をそこまで笑わなくてもと思いながら彼の涙を見つめる。

 

「代わりに今日はテンゾウがいちかを護衛する事になってるから行っておいで」

どうやら最初から私がお祭りに行きたい事は予想済みだった様子だった。行きたいとわかっていたからテンゾウさんを手配してくれたその気遣いに感謝しなければならないのだけども。

 

「なんか、すなおに喜べません」

わざわざ私を悩ますような事を言って反応を見て楽しんでいたと思うとなんだか腑に落ちなかった。

二人はふくれた私に謝罪しながら笑っていて。その楽しそうな顔にやっぱりなんだか素直に喜べなかった

 

 

 

荷物を家まで彼らに運んでもらい、家に帰ると抱き枕を抱えてうたた寝をしていたしらたまが慌てて駆け寄ってくる。

「姉御!なんで一人で行っちゃうんすか!心配しやしたよ!」

「ごめんね、はいおやつ買って来たから許して」

 

猫は小さく唸り、シッポを揺らした。私がおやつを取り出してやると不服そうにシッポを揺らしてお利口に座って待っていた。不機嫌そうにしているわりにはしっかりおやつを貰おうとしている姿に笑みがこぼれる。

 

いつも通り遊びに来た猫はお腹を空かしていた。家には食材が尽きていて私は最悪食べなくても大丈夫だったのだけど、あまりにもお腹を空かした猫が不憫で猫の目を盗んで買い出しに出たのだった。

 

しらたまは私より奴に狙われているような気がした。2人で外に出た方が危険は何倍にも膨れ上がる予感がしていた。変装をして猫を置いていけば目くらましになるかと思っていたけれど浅はかな試みだったと先ほど見事に打ち砕かれていた。

 

ちなみに、猫の目を盗む為に代わりに置いていったのはまたたび枕というものだった。それをあげると目を輝かせて無我夢中になっていた。その隙に出て来たのだった。

 

「姉御も狙われてるでやんすから気をつけてくださいにゃ」

「にゃって言ったにゃ」

「真剣に聞いてるんでやんすか!」

 

私は猫の言葉をまねすると凄く怒られてしまった。しらたまを心配する気持ちはきっとこの猫の私を心配する気持ちと一緒。

「…ごめんなさい」私が素直に謝ると猫はわかればいでやんす!と機嫌を良くして食事を再開させた。その様子が可笑しくて頭を撫ぜてやる

 

「今日はお祭りなんだって」

「にゃんですと!」

目を輝かせた猫に私は苦笑いを零す。私もこんな反応だったのかな、と客観的に判断しては悲しくなっていく。猫のように愛らしい姿だといいのだけれど。私は溜め息を吐いた。

しらたまも含めて護衛だそうだ。猫も連れて行く事になった。

 

私を送ってくれた2人は床に座って珈琲をすすっていた。珈琲を用意したテンゾウさんの慣れた手つきにやはりこの家を頻繁に出入りしていた仲であることを確信する。私がこの家に初めてお邪魔したときに四苦八苦お茶を入れようとしていたカカシ様を思い出す。きっと彼は珈琲派でお茶を飲む機会が少ないのだろうと今更ながら理解する。

 

「しらたまは、あの男の事を知ってる?」

 

珈琲を優雅に飲みながらも射抜く視線を感じて、これは職人技さえとも思う眼球の鋭さに口を結ぶ。任務に関しての熱意を肌で感じながら頬を掻いた。一言も逃しさえさせないような鋭さに私は居心地悪くなる。

 

しらたまは深く唸ってから耳をはたはたと動かして目を見開いた。何か思い出したらしい。

 

「アイツ昔おいらを虐めていた奴でやんす!」

「虐めていた?」

 

それはなんと子供じみた心の器だと思った。自分より小さな存在を虐め楽しんでいるだなんて悪趣味だ。私は眉を顰めた。

「その時も姉御が助けてくれたっす。」

可愛らしい肉球を見せながら猫はそうであったでやんすと何回も頷く。私の記憶はその出来事を思い出させるつもりはないらしい。さっぱり思い出せない。私はうねったり頭を抱えても、何も思い出せなかった。私の様子に猫は困った顔をして駆け寄ってくる。

 

「随分昔でやんす。姉さんは随分幼かったっす」

「幼かっ、た?」

 

私は眉を顰め猫の言葉を聞いた。猫は元気よくそうでやんすよ!と相変わらず可愛らしい肉球を見せながら問いに応えた。この前成仏した私の旧友の幼い姿を思い返す。そう、あの笑顔はあまりにも大人びいていて。身体と精神が釣り合っていないように見えた。

身体は成長しながらも、子供っぽさと大人っぽさを持ち合わせていた彼女を思い出しながらふとひとつの仮説を思った。

 

幽霊は身体を成長させず時を過ごしていく。

 

自分の手を見つめながら思考する。歳のわりに小さい身長に妙に納得した気がした。恐らく私の身長は150センチ満たないほどだ。一般的な12歳くらいの少女に匹敵する程の身長だ。人の身長は人の個人差に寄るものなので12歳とはっきり言葉にするのは難しい。しかしあどけなさが残る顔に16歳以下と仮定をした。

私は考えた。

 

猫がいう私の幼さとはなんなのか。

 

私と猫との付き合いはあの少女から言うように恐らく20年ほど経っている筈。そして猫は私を死んでからの友だという。

死んで20年この猫との仲だと言うが、私は幽霊として過ごしていたなら身体は成長していない筈だ。

しかし4歳から身体が変わらないとしたら私の身長に齟齬が生まれる。4歳にしてはこの身長は大きすぎる。

 

ふと、私を特別といった彼女の言葉を思い出す。沢山の仮説が生まれ頭を抱えた。記憶が無いというものはなんと不便なものか。大きく溜め息を吐いて見せた。

現時点でもやはりわからない事ばかりで眉を顰めるしか他なかった。

猫は黙りこくった私を黄金の瞳で見つめていた。

 

 

「奴も小さいガキでしたよ」

あの男の幼少期の話だったのか。しらたまがすぐに思い出せなかったのにも無理はなかった。子供だった男が成人として存在している事に私は本当に24歳だったのかと思う。ちゃんと私も20年ちゃんと過ごしていたのかと思い出したくもないあの男で実感させられる。

つまり、男が幼い頃にしらたまを虐めていたところを当時の私が助けたと。

 

「私はどうやってしらたまを助けたの?」

「庇った姉さんが怪我をして奴はびびって逃げたでやんす」

 

随分今とは違う男の様子に拍子抜けする。私は昔から何の術も無くしらたまを守ろうとしたのだな、と呆れてしまいそうだった。

 

「それからは会ってないでやんすよ、おいらも姉御も」

私は何か違和感を感じる。たったそれだけの出来事に男はあんな殺気で私に立ち向かってくるだろうか。殺気を思い出しそうになり頭を振った。

 

 

「んで、お前はなんであの日追いかけられてたんだ?」

 

カカシさんは私にお茶を手渡しながら隣に座ってしらたまに声をかけた。しらたまは少し不機嫌そうに鳴いてから少し黙った。本当に、カカシさん嫌いなのね。あまりの嫌悪感を露にする姿に眉を八の字にさせる。面白くなさそうにカカシさんを見つめて、口を開く。

 

「おいらを見るなり突然襲ってきたでやんす。」

二つのしっぽが互い違いに動いている。その蛇のような動きに私は目を奪われていた。しらたまは初めてあったとき珍しくないと言ったけれども里どこを探してもしらたまと同じしっぽを持つ猫を見た事が無い。

 

しらたまの答えにカカシさんは黙って何かを考えている様子だった。私も黙ってあの日の事を思い出す。ナルト君と帰っていたときに必死に走る猫とそれを追う忍服の男の姿を思い出す。その時の事はその記憶しかない。どんなに何度も思い出してもそこから読み取れる事は無かった。

それでも感じる違和感がある。

 

「なんでその猫を追っかけたんですかね」

 

テンゾウさんの投げかけた問いに私もカカシさんも黙り込む。思いもよらない過去の繋がりを猫から聞いてもこの前の事件と繋がりそうには無かった。私は頭を使いすぎて何か音がしそうだった。飲み干したお茶が入っていたグラスを机に置いて、時間を見る。お祭りの時間までまだ時間がありそうだった。

さて、と。カカシさんは腰を上げて玄関に向かう。その姿を見て、うしろを追いかけた。

 

「ご出発ですか?」

「うん、準備もあるからそろそろ行かないとね」

 

飲んでいた珈琲のコップを受け取り、お見送りをしようと玄関の前についていく。忍者というものを少し理解してからお見送りをする事が特別な事だと思うようになった。普段と変わらぬ事を努めて見送るけれどもいつも心配になる。

しかし、今日はお祭りの見張りと言っていたのでそこまで危険を伴わないものだと思っている。いつもよりは気がラクだった。

 

「これで美味しいもの食べなさいね」

 

渡されたお金を私は申し訳なさに震えながら目を輝かせる。いつもお買い物をする際にお金は頂いている。

 

申し訳なさに最初は貰うのを憚れ、こっそり自分の食べる量を減らして彼の食費にまわしていた。人のお金でご飯を食べる事に申し訳なさを覚えやってしまった行為だったけれども。いとも簡単に見抜かれ怒られてしまった。俺はなんとも思わないからちゃんと食べなさいと。

実は幽霊は食べなくても大丈夫だったりする。流石に何ヶ月か食べないとまずい様だったけれども。寝るのと一緒で普通の人間に必要とするものを多少取らなくてはならない、という程だった。

 

だけど、私にちゃんと食べなさいと言う彼はまるで父親のようで。私はあまりにも可笑しくて笑ってしまった。申し訳ないと思うのなら、しっかり記憶を探すように。そう言った彼は全て私のための事で。師のような、親のような愛情を貰い私はくすぐったさに笑ったのを覚えている。

 

だから、今頂いたお金をありがたく頂いてあの男から私は情報を取る事を心に決めていた。

 

「足りなかったらテンゾウにおごってもらいなさいな」

「た、足りない程食べません。」

 

私は食べるもの予想して口々に並べていく。焼きそばに、かき氷に、綿菓子。私は手でおおよその値段を想像しながら指を折っていく。

金魚すくいに輪投げ。そう言って予算が貰ったお金よりもオーバーしていく。…輪投げも金魚すくいもやめて、やっぱりたこ焼きを食べて,りんご飴を食べて…結局また予算がオーバーしてしまい私は考え耽る。

 

自分がいま一番食べたいものを厳選する必要がありそうだった。難しく黙り込んだ私を見てカカシさんは思いっきり噴き出した。

 

肩を揺らす彼を見てまた自分の恥ずかしい失態を見せてしまった事を理解する。猫の件以来だ。

 

「いっぱい食べて、楽しんでおいで」そう微笑む彼はどう見てもお父さんみたいな顔だった。私は自分の服の裾を握って恥ずかしさに耐えた。

カカシさんはテンゾウさんに目配せをする。その視線にテンゾウさんは慎重に頷いた。頼んだからね。そう目で伝えている事を私は露知らず自分の失態を恥ずかしんでいた。

 

「わ、あ」

溢れる光と人のにぎやかさに驚いて言葉を漏らした。沢山の屋台が並んで、小さな子供が私の隣を駆け抜けていく。初めて見るような、なんだか懐かしいような。曖昧に思いながらも目の前に広がる光景に目を光らせていた。

 

私が入り口の真ん中で突っ立て居たので、沢山の人と肩をぶつける。邪魔そうに睨まれて自分の失態に気づく。

大きな掌が私の腕を力強く引かれ、その手に誘導されるまま引っ張られる。少し歩き辛い。

 

「いちかさん、はぐれないようにしてくださいね」

人ごみに焦りながら彼は私の腕をやわく強く引いてくれる。人ごみをかき分けて進む彼に目を奪われる。誰かの背中というものはこんなにも頼もしいものなのか。私ははぐれないようにと手を彷徨わせてから彼の腕の服をそっと掴む。僅かに引かれた衣服にテンゾウさんが口を真一文字に閉めて言葉を失っていた事など私は露知らず。彼の背中についていくのに必死だった。

 

入り口を過ぎれば人はまばらに散開していき、歩くのが大分楽になる。誰かと肩をぶつけることなく、歩けるスペースができて私はほっと安堵の溜め息を吐いた。

 

周りを見渡し、お目当ての食べたいものを見つけて掴んだままの服を引っ張って「テンゾウさん、焼きそば!」見つけた事に興奮して口を開くと彼は眉を落として優しく笑っていた。

 

自分がまるで幼い子供のようにはしゃいでいることに気づいて、私は頬を染めた。私は照れくささに彼の裾を離し、ゆっくりと歩いてお目当ての屋台に向かう。

 

中にいたおじさまに2つ頼むとすぐに渡される。その焼きそばを持って来た袋の中に入れて肩にかけた。「準備がいいんですね」そう言って2人分のお代を払おうとするテンゾウさんに驚く。「わ、私今日お小遣い頂いたので!」慌てて出そうとするけどそっと返された。

 

「まあ、ここはおごられて下さい」

人の良さそうな笑顔を浮かべて私は声を失う。スマートにお金を払われた。できる男性を感じて私は空を切ってしまった腕をそっとポケットに入れてお金をしまった。おつりを彼は受け取って彼は優しい笑みをして次はどこに行きます?と優しく聞いてくれた。その言葉に私は頬を染めてしまう

 

「なんか、私子供みたいにはしゃいじゃってお恥ずかしい」

照れくささを苦笑いする。初めてのお祭りに子供のようにはしゃいだ自分が情けなく恥ずかしい。そう思いながら次は何を食べようかちゃっかり考えている自分に苦笑いせざるを得ない。

 

「そんなことないですよ」

彼は私にゆっくりと手を差し伸べてくる。その手の意味がわからなく小さく首を傾げた。ポケットに入っていたお金の事を頭でよぎって、あ、お代の事かななんて勘違いをする。

 

そっと私の手の前まで差し出してきた手に息をのんだ。ようやく意味がわかって少し頬が熱くなるのを感じた。てをつなぎましょうと言われているのか。私は少し考えた後に、きっと迷子にならないように気にかけてくれる証拠だ。他意は無いと心の中で誤摩化しおずおずと手を差し伸べる。

そして、気を利かせて私に言ってくれた言葉だ。手を掴み私は礼を述べようとする。

 

 

「可愛らしいですよ」

 

その言葉に開いた口は声を失った。温かな大きなその手に私は眉を顰めて頬を熱くするしかない。これでは、他意があったようにしか思えない。でも、きっとテンゾウさんは優しいから私に気を遣っているだけで。そっと彼を盗み見すると紅い耳に私は声を失ったままつられて紅くなった。

 

ど、どうしようこの状況。私は視線を彷徨わせて食べたかった綿飴を探し、屋台に並び商品を受け取り手を離す。私だけしか買わなかったので頂いたお金で払い、右手に綿飴を手にしてほっと安堵の溜め息を吐く。熱を離した掌に安堵した。あのぬくもりは心臓に悪い。綿飴を口にすると、今度は左手が暖かくなる。離さない、とでもいうようなやわい強引さに私は目眩がした。

 

口を開く事さえ憚れるような心臓の音に私は眉を顰めた。なんとなく気まずくなってしまい、私は頭を振った。せっかく時間を割いて私に使ってくれる時間をこんなものにしては申し訳ない。彼は任務対象の私に気を遣ってくれただけだ。私は一人で小さく頷く。

 

「テンゾウさん、他に何食べたいですか?沢山買って後で座って食べましょう」

つないだ手をそっと引いて、彼を見る。彼は優しく笑んだ。

 

「やっぱりたこ焼きですかね」

「ああ、いいですね食べたいです」

「くるみって売ってないのかな」

「あまり見た事無いですね…くるみってソースとかに入ってますよね」

 

「え、たこやきソース?」

「キャラメルソースとかです…」

 

 

 

 

 

(150904)

 

 

 

 

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