いつもより長いですがお付き合い下さい。
冬華 side
「そういえば、トウカとユキはいつ家に来るんだ?」
しばらくおしゃべりをして、お互いがお互いを気軽に名前で呼べる位に仲良くなった頃、リゼが僕とユキにそう質問してきた。
「うーん、僕的には一緒に行きたいですね。でもリゼのバイトって……」
僕は少し期待を込めた瞳でリゼを見上げるが、リゼの「あぁ、まだ暫くかかるな。」という返答を聞いて「そっか……。」と顔を下ろした。
僕とユキはリゼの家が描かれた地図を持っているし、ユキは地理に強いので迷う事はないのだが、始めて訪れる街でやはり不安もある為、リゼに付いてきて欲しかったのだ。
ちなみにさっきからリゼを呼びすてで呼んでいる理由は、リゼが自分の事は呼びすてで呼ぶようにと言ったからである。
「それでどうする? 私と一緒に行くのならもう少し待ってもらう事になるけど。」
リゼの提案に僕は「……んー」と少し悩んだ後、
「やっぱり先に行きます。
リゼに付いてきて貰うのは心強いけど、そのせいでリゼのお父さんを待たせるわけにはいきませんし、ここで待たせて貰うのもお店に失礼ですし。……えっと、勝手に決めちゃったけど、ユキもそれで良い?」
「うん、大丈夫だよ。チノちゃん、コーヒーとケーキ、ごちそうさまでした♪」
自分の不安よりも待っている
そしてそれと同時にカウンター横の扉から、1人のバーテンダーの服を着た男性が現れた。
ーー第11話 かんげい2ーー
カウンター横の扉から出てきた男性はチノちゃんのお父さん、香風タカヒロさんだった。
そして彼は僕とユキに「ラビットハウスで働いてみないか?」と提案してきた。
その突然の提案に驚いたけど、ユキが「やってみたい」と言ったので僕も働く事にしたのだ。
僕らが働く事になったので、僕とユキは今、ココアちゃんの案内で更衣室に向かっていた。
その間にチノちゃんは僕らの制服を取りに、リゼは店番を、タカヒロさんは理座さんに僕とユキが遅れる事と、リゼと一緒に行く事を電話で伝えてもらっている。
本当は僕が電話しなきゃいけないのだが、タカヒロさんは理座さんとも知り合いで、他にも用があると言っていたのでお願いして貰った。
「それにしても春樹おじさんとチノちゃんのお父さんとリゼちゃんのお父さんが知り合いだったなんて驚きだね。」
2階へと続く階段を上がっていると、後ろを歩いてるユキが僕に声をかけてきた。
そのユキの言葉に僕は「そうだね」と答える。
父さんと旧知の仲であるタカヒロさんは、僕の事も知っていた。
何故かと聞くと、彼は笑って「君のお父さんは俺によく『俺の息子は働き者で人に優しい良い子だ。』と電話でよく話していたよ」と答える。
それを聞いて、恥ずかしくてつい赤くなってしまったのはユキには内緒だ。
「ここが更衣室だよ。」
ココアちゃんの声で我に返った僕が顔を上げるといつの間にか2階に来ていて、ココアちゃんが2階にあるいくつもあるドアの中の1つを開けた所だった。
ココアちゃんの元に行ってその部屋を覗くと部屋の中にはクローゼットがズラリと並んであるのが見える。
部屋の雰囲気からしてどうやらここが女子更衣室らしい。
「わぁ! クローゼットがたくさんだ。」
更衣室の中に入ったユキがそんな感想を漏らした。
(さて、女子更衣室の案内が終わったし、次は男子更衣室の案内かな。)
そう思ってココアちゃんの方を向くが、いつまで経ってもココアちゃんは男子更衣室の案内を始めず、
「じゃあ、ユキちゃんが使うクローゼット選ぼっか。」
と、更衣室に入って行こうとしていた。
「ね、ねぇココアちゃん。僕はどこで着替えれば良いの?」
「?」
慌てて部屋に入るココアちゃんを呼び止め、そう質問すると彼女は頭に?マークを浮かべる。
……その表情を見て、僕は何か嫌な予感を察知した。
「あ、あのココアちゃん、」
「トウカさん、ユキさん、制服持って来ました。」
その嫌な予感を確かめようとしたが、タイミング悪くチノちゃんがやってきて、廊下にいる僕と更衣室の中にいるユキに透明な袋に入ったラビットハウスの制服を渡した。
そして肝心のココアちゃんもユキに呼ばれ、更衣室の中に入ってしまった。
しかもココアちゃんは更衣室に入る時にドアを閉めた為、廊下に1人残された僕は疎外感が半端ない。
「自分で確かめるしかないのか……。」
僕は渡された制服を袋の上からしばらく眺め、ため息を吐いた後、恐る恐る袋から中身を取り出していく。
袋から出てきたのは、若草色のベスト、白色の長袖のシャツ、襟に付けると思われる緑色のリボン、そして……、
「……!」
……何故なら今僕が袋から取り出したのは黒色の
チノちゃん達が履いているものと全く同じタイプのものだった……。
「……。」
僕は取り出した制服を綺麗に畳んで袋に戻していく。
「? どうしたんですか? トウカさん」
その時更衣室のドアが開き、中から出てきたチノちゃんが不思議そうな顔をして僕の元にやってきた。
「……チノちゃん、僕、こういう者なんだ。」
出した制服をシワなく袋の中にしまった後、財布から中学校の時の学生証を取り出してチノちゃんに渡す。
「学生証ですか? どうして今更自己紹介など。」
相変わらず不思議そうな顔をしたチノちゃんは、そう言って僕の学生証を受け取ると、無言でそこに書かれてる内容を眺め始めた。
「……!!」
そして少しした後、僕の学生証のある一点を見つめ固まってしまった。
……どうやら見つけてしまったらしい。
「チノちゃん、どうしたの?」
ドアの開閉音と共に、更衣室の中にいたココアちゃんも廊下に出てきた。
「学生証? あっトウカ
チノちゃんの手に持つ僕の学生証を覗いたココアちゃんが、そこに書かれてる事を読み上げていく。
「巡ヶ丘市の巡ヶ丘学院中学校か……。聞いた事もない所だね。えっと、年齢は……わぁ、私と一緒! …………あれっ?」
ココアちゃんもチノちゃん同様に僕の学生証のある一点を見つめ動きを止めた。
そして、しばらくした後、
「「……男、の子?」」
と、呟いて僕を見上げる2人の瞳は、信じられないものを見る色をしていて僕がコクンと頷くと、ラビットハウスの2階にココアちゃんの驚いた声が響き渡った。
そしてその声で下からリゼとタカヒロさんがやってきたので、放心するココアちゃんとチノちゃんに代わって僕が2人に事情を説明する羽目となる。
不幸中の幸いかリゼとタカヒロさんは僕の性別が男だと知っていた為、説明したらすぐに分かってくれた。
ーーーー
そんな軽い騒動の後ラビットハウスの2階、更衣室とは別の部屋で、僕はタカヒロさんが用意してくれたバーテンダーの服に袖を通す。
気がかりだったサイズもぴったりで、そのままボタンを閉めズボンを履き、襟元に蝶ネクタイを付ける。
「……。うん、オッケー。」
近くにあった姿見でおかしな所がないのを確認した後、更衣室から出て階段を降りていく。
「ふぅ……。よし。」
1階のホールに続く扉の前に辿りついた僕は、その前で軽く深呼吸した後、扉を開けた。
「お、来た来た。うん、トウカよく似合ってるな。」
「だね。トウカ君格好良いよ。」
「サイズもぴったりですね、良かったです。トウカさんよく似合ってますよ。」
「トー君かっこいい。」
扉を開けると、その音に気が付いたのか、4人が僕の方を振り向き褒めてくれた。
嬉しい反面恥ずかしいな。
「みんなありがとう// ユキもその制服似合ってるよ。」
「ありがとう、トー君。」
ユキの服装がここに来た時の服からチノちゃん達が着ているラビットハウスの制服に変わっている事に気付いた僕はユキを褒める。
ユキに渡された制服の色はオレンジ色で、活発でいつも元気なユキによく似合っている色だった。
8/15(月)にお気に入り登録数50人、8/16(火)に通算UA数5000 を共に突破いたしました!
いつも読んで頂きありがとうございます。
そして、お気に入り登録して頂いた多くの方々、この小説を気に入って頂きありがとうございます。
この小説を読んだ皆様が、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
今回の最後で由紀が着ていたラビットハウスの橙(オレンジ)色の制服は、原作では登場しない色ですが、ユキの制服として登場させてみました♪
さて、いよいよ次のかんげい2でトウカとユキのラビットハウスでのアルバイトが始まります。
お楽しみに。