そして前回冒頭だけだったあのキャラ視点が今回結構出ます。
それではどうぞ♪
??side
幼馴染が働いているお店を離れて学校に向かう中、私の心の中にはここ最近の悩みの大元の、不安という名の感情が渦巻いていた。
原因は分かっている。
それは今日から始まる学校に対する不安。
その事を口に出すと今はいない心配性の幼馴染が心配してしまうから言えなかったけど、心の中位なら言わせてほしい。
私のこの想いを。
――にゅうがく3――
私の家は正直言ってあまり裕福な家庭ではなく、お父さんとお母さんは出稼ぎに出ていて、一緒には暮らしてない。
私自身もそんな両親の負担を少しでも減らそうと、幾つかバイトを掛け持ちしているし、これから通う高校も勉強を頑張ったおかげで、学費のかからない特待生として入学する事が出来た。
……お金持ちの家の女の子がたくさんいる、いわゆるお嬢様学校に。
そう、よりにもよって私が今日から通うのは、私と住む世界が違い過ぎる人がたくさんいる学校で、そんな所に行ってちゃんと馴染めるか。
その不安がここ数日の私の悩みの種だった。
そんな思いを抱えながらこの前買ったばかりのローファーを鳴らして歩いていると、徐々に私と同じ制服を着た女の子が増えていく。
その女の子達はいかにもお嬢様といった雰囲気を持つ女の子達で、そしてその人数が10を超えた頃、見上げた先には立派な門のある綺麗な校舎が見えていた。
「大きい……。」
漸く辿り着いた学校の外観は、お嬢様学校と言われるだけあって広くて綺麗で、校門の方を見ると次々と生徒が校門をくぐっているのが見える。
そんな彼女達の後を追うように私も校門を通り抜け、昇降口で靴を履き替え、クラスに向かう。
私のクラスは1-A。
場所はこの校舎4階の1番奥の教室で、経路は先に廊下を突っ切って向こう側の階段を上がるか、先にこっち側の階段を使って4階まで行ってから廊下を突っ切るかの2つがある事は事前に貰った配布物で確認してあるから迷う事もない。
(……ん?)
なんとなく先に廊下を突っ切る事にした私は、その途中で中庭を挟んだ向こうの校舎で困った顔をして右往左往している1人の女の子を見つけた。
(どうしたのだろう、あの子……。
……迷子かな?)
他校の制服を着て、不慣れな様子で右往左往するその女の子の事が気になった私は、渡り廊下を渡って向こうの校舎に入り、女の子に近付いていく。
女の子に声をかけるために。
(……あれ?)
でもその途中でふと、ある事に気付いて足を止める。
(……なんであの子、男性用の制服着ているのかしら?)
私の視線の先にあるのは、女の子が履いている紫色のズボン。
それはどう見ても男性用のものだ。
(え!? もしかしてあの子、男の子!?
他校の男の子がどうしてこの学校に!? も、もしかして不審者!?
……ってそんなわけないわよね。)
女子高であるのこの学校に男子生徒がいるのは不自然だったから、不審者なんてそんな考えに至っちゃったけど、その考えは女の子の顔を見た瞬間に消しとんだ。
だって、こんな女の子みたいな顔立ちの男の子なんている筈ないから……。
(きっと、姉妹か誰かの忘れ物を届けに来たのね。)
……そう結論付けた私は、
「あ、あのっ!」
緊張して戸惑いながらも彼女に声をかけた。
「ふぇっ!?」
突然声をかけて驚かせてしまったらしく、その女の子は可愛い声を出して、ビックリした表情をして私の方を見る。
でも、すぐに自分がした返事を思い出して恥ずかしくなったからか、カーと顔を赤くして俯いてしまった。
「……大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です/// ……それで僕に何か用ですか?」
顔を上げた女の子の頬はまだ恥ずかしさが残っていた為赤かったけど、その瞳は不思議そうに私を捉えていた。
「えっと、なんか困っているみたいだから声かけたのだけど……もしかして迷子なの?」
「!」
“ギクリ”という音が聞こえて来そうな程、明らかに動揺したその女の子はパッと顔を下げる。
その反応を見るにどうやら迷子というのは本当だったみたいで、俯いて半分隠れた女の子の顔はみるみる内に再び赤くなって、暫くした後に「……はい。入学手続きの書類を出しに職員室に行きたいのですが、場所が分からなくて……。」と小さく答えたその声は恥ずかしそうな雰囲気を纏っていた。
(良かった。どうやら新入生みたいね。)
不審者ではなかった事に安堵してホッと一息吐く。
「そう。じゃあ職員室に案内してあげるから私に着いて来て。……っとその前にまずはあそこに行かなきゃならないわね。」
「?」
最後の言葉の意味は分からなかったみたいで彼女はコテンと首を傾げた。
冬華side
ついさっき初めて会った女の子に「職員室に案内するから着いて来て。」と言われて着いて行くと、到着したのは保健室だった。
そしてそこで僕は女の子からある物を手渡される。
(……あぁ、久しぶり……でもないかこのデジャブは。前にも、それもここ最近同じような事がラビットハウスの2階であったしなぁ……。)
「どうしたの?」
既に懐かしいと思えるほど感じた既視感に襲われながら、(そういえばまだ言ってなかったなぁ。)と佇んでいると、キョトンとした顔で女の子が聞いてくる。
「えっと、実は僕、こういう者なんだ。」
そんなキョトンとしている彼女に僕はいつも通り一枚のカードを差し出す。
「? これ、この学校の生徒カードよね?」
僕がこの学校の生徒だと記したそのカードを戸惑いながらも受け取った女の子はそこに書かれた内容に目を通していく。
そして数秒後、
「え!? ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」
例外もなく彼女も驚愕の声を上げたのだった。
シャロside
迷子になっていた女の子……でなく男の子の上白 冬華君を無事に職員室に送り届けた私は、朝礼のチャイムが鳴る間近のタイミングで教室に辿り着いて、自分の席でグダーとする。
思い出すのは上白君の事。
さっきの事は今でも信じれない。
(まさか、男の子だったなんて……。)
生活の為に色んなバイトをしてきて色んな人を見て来たから、人を見る目には多少の自信があった。
けど、それでも分からない位、上白君は女の子っぽかった。
登校時に見かけたお嬢様オーラを纏った女の子達に全く顕色もない程に……。
そんな風に考え事をしていると、ふと教室の色んな所から黄色い声が聞こえてくるのに気付いた。
(ん? ……なんだろう?)
「あの、何かあったんですか?」
気になったので、たまたま近くにいた人に聞いてみると、その子は、
「この学校に男の子が来るみたいなんでの! 同じ学年にならないかしら。」
と興奮した様子で話してきた。
周りを見渡すと同じような話題が所々で上がっている。
話題の男の子とは十中八九、今朝たまたま会った上白君の事だろう。
朝だけの短い時間だったとしても、違う学校の、それも男性用の制服を着ていた上白君の姿は多くの人に見られていたみたいで、もうこんなに話題になっているなんて、やっぱり女子校に男の子が来るなんてスゴイ事なんだ……。
(……同じクラスだったら良いな。)
ふと思った瞬間、チャイムの音がなってそれと同時に担任の先生と思われる少しボーイッシュな女の先生が教室に入ってきた。
それを見て、立っていた生徒はみんな自分の席に座る。
……私の前の席以外は。
……ん?
「みなさん始めまして。このクラスの担任となりました、
先生の明るい声が教室の中に響く。
「気付いた人はいると思いますが、このクラスには1つ空いている席がありますね」
その言葉に教室中がざわつき、みんなの視線が私の前の席に向けられた。
「その席に座る生徒を紹介する前に、この学校は今年から共学化へ向けて色々と準備を行っています。
その試みの1つの男子生徒の試験入学ですが・・・、みなさんもう気付いていますね、そうです。そこに座る生徒こそが、その男子生徒です」
『キャーーー!!』
ざわめきだった声は歓声に変わった。
「ハイハイ、静かにしないと進められないよ。……よし、静かになったね。じゃあそろそろ良いかな? 上白君、入って来て」
静寂が包む教室に1人の男子生徒が入って来て黒板の前に立つ。
その男子生徒こそ、朝迷子になっていた上白君だった。
こんな物語みたいな偶然があるのだろうか。
教室を見渡した上白君は私を見つけると軽く手を振ってきた。
途端に周囲がざわつく。私は赤くなりながらも手を振り返した。
「ん? 桐間さん、彼と知り合い?」
「は、はい。今朝偶然一緒になって」
「なら良かった。彼の席は君の前だし、色々フォローしてあげてね。じゃあ上白君、自己紹介お願い。」
「はい」
上白君は返事をして黒板に自分の名を書くとお辞儀をしてから自己紹介を始めた。
「巡ヶ丘という街から来ました、上白 冬華です。今回、共学化の試験という事でこのクラスでみなさんと共に学ぶ事になりました。
色々と至らない事もあると思うので何かあったら遠慮なく言って下さい。
後、遠慮せずに気軽に話しかけて来てくれたら嬉しいです。これから同じクラスメイトとして宜しくお願いします。」
自己紹介を終えた上白君が再びお辞儀をすると一斉に拍手が起こった。
「上白君ありがとうね。君の席はさっきも言った通り桐間さんの前だよ。桐間さん、席前後だし知り合いみたいだから上白君の事色々とフォローお願いね」
「はい、分かりました」
「シャロさん、これからよろしくお願いします」
前の席に座った上白君が右手を差し出してきた。
「うん、こちらこそよろしくね」
私もそう言って右手を差し出し彼と握手を交わす。
朝、感じていた不安はいつの間にか消えていた。