ご注文はうさぎですか? 下宿人は男の娘!?   作:ミツフミ

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11月に入り日に日に寒さが厳しくなってきました。
こんな時は風邪などで体調を崩しやすいのでみなさんも体調には十分に気を付けてください。

さて、今回は久しぶりのユキside。
時系列はにゅうがく2のトウカ達と別れた後の事です。
ちょっと長くて申し訳ないです。
それではどうぞ♪



にゅうがく4

 

 

 トー君とリゼちゃんを「いってらっしゃい」と見送った後、私はとりあえず当初の目的である高校の場所を知る為に、地図を見ながら分岐路の右の道へと歩き始めた。

 

 

「ん~、なんか静かだなぁ……。」

 

 歩きながら呟くけど、その言葉に返す人は誰もいない。

(それもそっか。今ここには私1人しかいないんだもんね。)

 

 

 

「……1人か。」

 

 

 

 そう呟いて私はある事に気付いて足を止める。

 

 

(……そういえば1人で歩くのって結構久しぶりかな。)

 

 

 この街に来てからはもちろん、前に住んでた街でもいつも隣にはトー君がいた。

 トー君の部活(料理部の活動)がある日みたいに、用事がある時は仕方ないけどそれ以外だったらいつも隣にトー君がいてくれたし、途中で別れるなんてこともなかった。

 けど、明日から学校が始まれば、こうして途中から私1人だけで学校に行く事になる。

 

 

(また(・・)、だ……。)

 

 トー君が『転校する』と言ったあの日から、寂しい気持ちになると湧いてくるこの気持ち。

 その正体が何なのか分からないけど、心がもやもやして、ざわざわして、周りの景色が色あせて見える。

 綺麗な街の景色でさえも……。

 

 

(最近はなかったんだけどな……。)

 

 つい最近までこのもやもやした気持ちは何かの度に頻繁に起こってた。

 この気持ちのせいで元気のない日もあった。

 

 でもある日、トー君が『ユキ()の好きなお菓子(ケーキ)を作る』と言ってくれた。

 トー君が誰かのリクエストしたお菓子を作ることは、誕生日みたいな特別の日じゃないとしないから「私まだ誕生日来てないよ?」と聞くと、トー君は優しい笑顔で「今回は特別だよ。」と微笑んだのを見て、私を元気づけてくれている事に気付いて、心がぽぁっとあったかくなったのを覚えてる。

 

 

 それから全然もやもやした気持ちは起こらなかったのにまた起こった。

 

 

 

(……やっぱりトー君と離れたから、かな?)

 

 自分が思っていたより寂しい気持ちを抱いていた事に気付いて目をぎゅっとつむる。

 綺麗な筈の街の景色が色あせている所を見たくないから。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 しばらくそうして目をつむっていると前の方からガサガサと草が揺れる音が聞こえる。

 その音が気になって目を開けた私の視線の先には、

 

 

 

 

 1羽の白兎がちょこんと立っていた。

 

 

 

 ――第17話 にゅうがく4――

 

 

 

「おはよ~。君も1人なのかな?」

 

 しゃがんで近付いて来たそのウサギを抱えて膝の上に乗せる。

 抱える際に少し暴れたけど、頭を撫でたら大人しくなって気持ち良さそうに目を細めていくそのウサギを見て、その柔らかな毛に触れて、さっきまで沈んでいた気持ちが少し軽くなったのを感じた。

 

 

 

ーーーー

 

 

「まてー♪」

 

 

「ん?」

 

 どの位時間が経ったか分かんないけどウサギを撫でて和んでいると、後ろの方から聞き覚えのある女の子の声が聞こえてくる。

 

 

「あっ。」

 

 そしてそっちに意識が向いた瞬間、膝の上に乗っていた兎がピョンと飛び降りてどこかへ駆けていき、その後ろを別の白ウサギが追いかけていった。

 

 

「あぅ、逃げられちゃった……。」

 

 まだちょっと物足りなかったから、ムスゥという気持ちが湧いてくる。

 

 

「あれ、ユキちゃん?」

 

 そんな気持ちを抱えていると、後ろから私を呼ぶ声。

 その声に反応して振り返ると、

 

 

「……ココアちゃん?」

 

 そこにはどこかで見覚えのある制服を着たココアちゃんが立っていた。

 

 

 

「やっぱりユキちゃんだ。おっはよ~。」

 私の声に反応したココアちゃん元気よく挨拶して来る。

 

「おはよ~、ココアちゃん。ココアちゃんはこれから学校?」

「うん、今日からなんだ♪」

「そうなんだ。」

 

(あれっ今日、入学式の学校ってトー君達の学校以外にあったっけ?)

 

 ふと湧いた疑問はココアちゃんの「ユキちゃん聞いて聞いて。」という声に遮られる。

 

「どうしたの? ココアちゃん。」

「さっきリゼちゃんとトウカ君に会ったの!」

「え! トー君達に?」

「うん。しかも何回(・・)も会ったんだ。すごい偶然だよね!」

 

 

 嬉しそうにそう話すココアちゃん。

 ……でも1つ気になる事があった。

 

「……何回も?」

「うん、何回も! 不思議な事もあるんだね。」

 

「ん~、それはココアちゃんが迷子になったからじゃないかな……。」

「ん?」

 

 ココアちゃんはキョトンとした顔で首を傾げる。

 どうやら迷子だったって自覚はないみたい……。

 

 

 

 

 それからココアちゃんとおしゃべりしながら暫く歩いていると、自然いっぱいの公園に辿り着いた。

 そこは数日前にトーくんとリゼちゃんと一緒に来た公園で、リゼちゃんいわくウサギがよく来る公園らしい。

 

「わぁ、ウサギだぁ!」

「沢山いるね!」

 今日も公園のいたる所には黒や白、茶色や灰色など色んな色のウサギがいて、特に噴水の周りに多く集まっていた。

 

 

「……あれ?」

「ユキちゃんどうしたの?」

「あそこ、女の子がいる。」

 私が指差す先、噴水のすぐ傍に緑色の和服を着た女の子がしゃがんで周りにいるウサギに何かをあげようとしていた。

 

「ホントだ。それになにかウサギにあげてるね、棒アイスかな?」

「ん~、なんだろ……。」

 

 女の子の手に持つ、黒色の棒アイスみたいなものが気になった私たちは、少しずつ女の子に近付いて行く。

 

 そして、

 

「おいで~、おいで~。……羊羹、食べないわね。うちの子は食べるのに。

 

 ……ん? あら?」

 

 

 手に持つ羊羹に1羽もウサギが食べなかった事に少ししょんぼりした女の子が私達に気付いて顔を上げて静かにその羊羹を差しだしてきた。

 

 

 

――――

 

「千夜ちゃんっていうんだ。深みを感じる良い名前だね。」

「ありがとう。ココアちゃんもユキちゃんも良い名前ね。」

 緑色の和服を着た女の子、宇治松 千夜ちゃんが差しだしてきた羊羹を受け取って、近くのベンチに千夜ちゃんを挟む形で座った私たちは互いに自己紹介をする。

 

「それにしてもこの羊羹すっごくおいしいね。」

「だね! それにこの黄色いのって栗だったんだね。」

 

 そう言いながら再び1口、栗羊羹を食べる。

 程よいあんこの甘さと柔らかい栗の食感が口に広がって、とても美味しかった。

 

「気に入ってくれた? それ私の自信作なの。」

「え、これ千夜ちゃんが作ったの!? すごい!」

 

「えぇ。幾千の夜を行く月、名付けて“千夜月”! 栗を月に見立てた栗羊羹よ!」

 

「すごい、」「かっこいい、」

「「意味わかんないけど!」」

 ババン! とそんな音が聞こえて来そうな雰囲気でその栗羊羹を掲げる千夜ちゃんに、最後の部分を被りながら答えると、千夜ちゃんは私たちの手を握る。

 

「私達気が合いそう。それにココアちゃんとは同じ学校みたいね。」

「あっ」

 

 千夜ちゃんのこの言葉で気付いた。

 上に着た桜色のカーディガンのせいでさっきは分からなかったけど、ココアちゃんが今着ているのは、明日から私が通う学校の制服。

 入学式は明日の筈なのに、既に今日制服を着ているココアちゃんにその事を聞こうと声をかけようとココアちゃんの方を向いた瞬間、

 

「同じ学校……。あ~~~っ! 大変、もう始業式が始まっちゃう! 千夜ちゃん、急いで!!」

 当のココアちゃんは、いきなり大声を出して千夜ちゃんの手を取って駆け出してしまった。

 

 

「え……。いっちゃった……。

 どうしようトー君、ココアちゃんきっと日にち間違えてる。」

 慌ててトー君に何かアドバイスを貰おうと振り向くけど、そこにはトー君はいない。

 

(そ、そうだよ、今はトー君と一緒じゃないんだ! ん~どうしよ。)

 いつも隣にトー君がいるから、ついいつもの癖でトー君に話しかけたけど、今はいない事に気付いて更に慌てる。

 

 ……そんな私の元に、

 

 

「あれれ~、戻って来ちゃった!」

 

 さっき駆け出して行ったココアちゃんと千夜ちゃんが帰って来た。

 

「良かった、戻って来た。って千夜ちゃん大丈夫!?」

「あ、ありがとう、ユキちゃん。……あのね、ココアちゃん、うちの学校、入学式、明日なの。」

 

 辛そうに呼吸する千夜ちゃんの背中をさすると、千夜ちゃんは息も絶え絶えさせながらココアちゃんに入学式が明日だという事を告げる。

 

「え?」

「だから入学式は明日で、今日はまだ春休みだよ。」

 

 キョトンと首を傾げたココアちゃんに今度は私が入学式が明日だという事を告げて、背負っている白い羽の付いたピンクのバックから入学案内の紙を取り出してココアちゃんに見せる。

「……。」

「……。」

「……。」

 

「うわ~~~っ! 恥ずかしい~~///」

 

 数秒の沈黙の後、ココアちゃんが手で顔を隠してその場に座り込む。

 手の間から見えるココアちゃんの顔はまるでリンゴみたいに真っ赤だった。

 

「ふふふ、面白い子ね。それにその入学案内の紙、ユキちゃんも同じ学校だったのね。」

「うん。学校の場所がちょっとあいまいだから確認したくって。」

「そうなの。それなら2人が明日から迷わないようにみんなで一緒に下見に行きましょう。私、ずっとこの街に住んでるから学校の場所、知ってるの♪」

「「め、女神さま!」」

 学校の場所を案内するそう言って微笑む千夜ちゃんの後ろには私とココアちゃんにだけ見える後光が輝いていた。

 

――――

 

「そういえばユキちゃん、トウカ君達は学校着いたかな?」

 3人で学校へ向けて歩いているとココアちゃんが聞いてきた。

 

「そうだねぇ〜。そろそろ着く頃じゃないかな。」

「とうか、くん……?」

「うん、私の幼馴染で同い年の男の子。この春から私と一緒にこの街に越してきて、今日から学校なの。」

「今日からって事はその人、あのお嬢様学校に通うの?」

「そうだよ!千夜ちゃんよく知ってるね!」

「ふふふ。私の幼馴染も今年からそこに通うの。

 ……でもあの学校って確か女子校よね? トウカ君、その……捕まったりしない?」

「大丈夫だよ。今年から出来た“だんしせいとにゅうがくせいど”?ってのを使って入るから。」

「でもトウカ君なら女の子の制服着たらバレそうにないよね。」

「そんなに女の子みたいな人なのね。それなら、女の子に間違えられて女の子の制服を着させられそうになったりしてそうね。」

「そんなのあるわけ……ない、とも言えないね。」

「……うん。十分ありえそうだから心配。」

 

 

 そんな会話をしながら千夜ちゃんに案内されて辿り着いたのは、千夜ちゃんが3月まで通っていたと言う中学校。

 地図を持っていたから私はすぐに中学校だと気付いたけど、気付かないココアちゃんは上機嫌で明日から始まる学校生活の希望を語っていた。

 そして暫くした後に中学校だと教えると、恥ずかしさから再び顔を真っ赤にしてしまったのは別の話かな。

 






10/29(土)
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10/24(月)
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