トウカside
自己紹介をした次の休憩時間、
(どうしてこうなったのかなぁ……。)
自分の席に座っている僕は目の前の光景にただ、何も出来ず困惑していた。
とりあえず落ち着くのと、状況を確認する為、周りをぐるりと見渡す。
そこには空いている隙間なんてない位にどこを見てもクラスメイトの女の子が立ち塞がっていて、この状況を簡単に言うと僕は今、クラスメイトによって包囲されていた。
「ねぇ、上白君の好きな食べ物って何ですの?」
「ご趣味は?」
「巡ヶ丘ってどこにあるの? 私、行ってみたいな。」
「髪綺麗ですね。どこの商品を使っているの?」
「そもそも女の子にしか見えないけど上白君って本当に男の子なの?」
聞こえて来るのはあちらこちらから上がる僕への質問の声。
それは聖徳太子でもいっぺんに聞き分けれない程多く、時間が経つごとに比例して収まるどころか包囲の輪と共に増えていっている。
さっき周りを見渡した時に確認したけど、包囲の輪の中にはさっき自己紹介をした時にはいなかった女の子も多数いるし、人数的にも考えて他のクラスから来ている人もいるのだろう。
さっきから次々前と後ろのドアから他のクラスと思える女の子が教室の中に入ってくるのがその証拠だ。
まだ朝礼が終わって数分も経っていないのにこの状況である。
(いったい、いつになったら終わるの……?)
そんな不安を覚えながら僕はただただ女の子たちの勢いに圧倒されていた。
結局、
――第18話 にゅうがく5――
チノside
学校が終わり、家に帰った私はラビットハウスの制服に着替えていつも通りカウンターの上で転がっている
カランカラーン
来客のベルの音と共に、トウカさんがお店に入って来るのが見えました。
「おかえりなさい、トウカさん。」
「ただいまチノちゃん。学校どうだった?」
「はい、楽しかったです。友達とも同じクラスになれましたし。」
いつも学校の行きと帰りを一緒歩くメグさんとマヤさんと同じクラスになった事をトウカさんに話す。
中学校1年生だった去年、クラスに馴染めなかった私に声をかけて来てくれたのをきっかけで友達になった2人は私の大切な人です。
つい1年前にあった大切な記憶を思い出していると、トウカさんの「そっか。」と呟く声と共に頭に何かが置かれる感覚が。
見上げるとトウカさんが優しい笑顔を浮かべて私の頭を撫でていました。
「!///」
最近トウカさんによく頭を撫でられます。
出会った日やティッピーの中におじいちゃんがいるのがばれてしまった時以外にも、バイトの時や一緒に買い出しに行った時などに……。
別にトウカさんに頭を撫でられるのは嫌ではないです。
……嫌ではないのですが私は家族以外の、それも歳の近い年上の男の人に頭を撫でられる経験があまりない為、こうして頭を撫でられるとどうすれば良いか分からなくなります。
だからでしょうか?
トウカさんに頭を撫でられる度に私は顔がかーっと暑くなるのを感じます。
(……。)
トウカさんは優しい人です。
トウカさん以外のラビットハウスで働いている人達はみなさんどこか騒がしい人ばかりなのですが、トウカさんはそんな事はなく私のペースを合わせてくれます。
私はひとりっ子なので分かりませんが、お兄ちゃんがいたらこんな感じなのでしょうか?
分かりません。
この気持ちが何なのかも……。
「トウカよ、いつまでそうしているつもりなんじゃ?」
「! そっか、着替えないといつまで経ってもお仕事出来ないですね。じゃあチノちゃん、ちょっと待っててね、すぐ用意してくるから。」
しばらくした後、おじいちゃんに指摘されてハッとなったトウカさんはパタパタと急ぎ足で裏へと消えていきました。
――――
「チノちゃんおまたせ。」
数分後、裏へと繋がるドアが開きバーテンダーの服に着替えたトウカさんがホールにやって来ました。
そしてそれと同時に『カランカラーン』と、お客さんのいない店内に来客を告げるベルの音が鳴り、「いらっしゃいませ」と言おうと振り向いた瞬間、身体が包まれる感覚と共に視界が真っ暗に。
見上げると満面の笑みを浮かべたココアさんが私に「ただいま」と言ってきました。
……ココアさんはよく抱きついてきます。
出会った日から事ある毎に……。
嫌ではないのですが、暑苦しいですし、やめて下さいと言ってもやめてくれないので正直困ってます。
「ユキ、学校の場所ちゃんと分かった?」
そんな時、ふと聞こえてきたトウカさんの声につられて隣を見ると、ココアさんが私に抱きつくようにユキさんがトウカさんに抱きついていました。
「うん、バッチリだよ。
途中で同じ学校に通う女の子に会って案内してもらったんだ。
でね、その子、千夜ちゃんって言うんだけど、千夜ちゃんと友達になって明日の入学式も一緒に行く事になったの♪」
ただ違う点と言えば、私が若干嫌そうな表情でココアさんに抱きつかれているのに対し、トウカさんは優しい笑顔を浮かべて楽しそうに話すユキさんの頭を撫でています。
そしてお2人の会話の内容は今日の学校の事。
「そういえばココアさんは高校、どうでした?」
「! こ、この街って、可愛い建物が多くて素敵だよね!」
そんなお2人に習って今日入学式があったココアさんにも学校の様子を聞くと、何故が別の答えが返ってきました。
……聞こえなかったのでしょうか?
「そうですか。高校はどうでしたか?」
「まるでおとぎ話の中の街みたいだね!」
ならもう1度と、繰り返した同じ質問にまた別の答えが返ってきました。
「あの、高校は……」
「聞かないで!」
「ユキさん、ココアさんが……。」
「あー、えーと実はココアちゃん、私と同じ学校だったの。だから、その……。」
私はココアさんと一緒に帰って来たユキさんに助けを求めると、ユキさんが言いにくそうに答えます。
(ユキさんと同じ学校……。
ユキさんの通う学校は明日が入学式だから……。)
「……つまり入学式の日付を1日間違えた、ということですね?」
「言わないでーー!!」
図星だったようで、ココアさんは顔を真っ赤にして叫びながら膝から崩れ落ちました。
その後ココアさんが復活した頃に珍しく遅れてきたリゼさんも到着し、5人でお店を回していきます。
そしてその日もいつも通りココアさんとユキさんがミスする以外、特に問題もなくお仕事は終わりました。
――――
そして次の日、
「ねぇねぇチノちゃん、このお店に大きいオーブンってないかな?」
その後ろではユキさんがリゼさんとトウカさんに、ココアさんと昨日友達になった“ちやさん”という方と同じクラスになった事を嬉しそうに話しています。
「大きいオーブンですか? それならうちにありますよ。おじいちゃんが
つい、“調子に乗って”の部分を強調して言うと、頭の上に乗っている
「ホント!? じゃあみんなで看板メニュー開発しない? 焼きたてパンおいしいよ!」
しかしそんなティッピーの様子など気付かず、ラビットハウスに大きなオーブンがある事を知ったココアさんが私やトウカさん達にパンを作る事を提案して来ました。
聞く所によるとココアさんの実家はベーカリー屋で、幼い頃からよくパンを作っていたらしいです。
そんなココアさんが今日、ユキさんと“ちやさん”と一緒に学校の帰り道を歩いている時にパン屋を見つけ、そのパンの匂いとショーケースに並んでいるパンを見て、久しぶりに作りたくなったらしいです。
「良いね、いつにする?」
「今週の土曜日はどうかな? チノちゃんどう?」
「えっと、その日は……。大丈夫ですね、特にこれといって予定もありませんし。」
カレンダーでお店に予定がない事を確認すると、丁度その日は予定はありませんでした。
「やったー♪ 今から週末が楽しみだよ」
ユキさんは今からテンションが上がっています。
「話ばっかしないで仕事しろよー」
「「「「!」」」」
リゼさんの指摘によって私達4人はハッとします。
そうでした、今はバイト中。
お客さんがいないからって少し気を抜き過ぎていました。
さて、お仕事しましょうか。
くきゅるるるるる〜
(……今の音って。)
音の鳴った方を見ると赤くなったリゼさんの姿が。
「出来たてのパンってすっごく美味しいんだよ」
「そんな事分かってる!」
くきゅるるるるる〜
ココアさんの言葉にリゼさんが返答すると、再びリゼさんの方から音が鳴り、リゼさんの顔は更に赤くなりました。
……リゼさん、お腹空いてたんですね。
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