ご注文はうさぎですか? 下宿人は男の娘!?   作:ミツフミ

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

最近更新速度が遅くてすみません。


にゅうがく8

 厨房の机の上に腕枕をしてスヤスヤと寝息を立てる幼馴染のユキ。

 

 さっきまで一生懸命パン生地をこねて疲れて寝ちゃった幼馴染を起こさないようにその身体にそっと毛布をかけると、穏やかな寝顔がより強くなったような気がした。

 

 

 ……それにしても、

 

みんな(・・・)ぐっすり寝ちゃってますね。」

 

 ユキの頭を撫でながら僕は後ろにいつもより小さい声で声をかけると、後ろから「あぁ、そうだね。」と優しい声色を含んだダンディーな声が帰って来る。

 振り向くとチノちゃんに毛布をかけたタカヒロさんが彼女を撫でていた。

 

 

 

 ココアちゃん指導のパン作りは今、パン生地を数時間寝かせ、生地中部にある攻歩菌……ではなく酵母菌を発酵させる段階まで来ているんだけど、さっきまでパン生地をこねていてやっぱり多少なりとも疲れたのか、それとも春の陽気にあてられたからなのか、僕以外の6人はみんな眠ってしまっていた。

 

 パン生地を一生懸命こねていたからみんな多少なりとも汗をかいてるはずで、最近暖かい日が続いているとは言ってもさすがにまだ何もかけずに寝るのは肌寒い。

 身体を冷やすと体調を崩す恐れだってある。

 

 だから香風家の居住部にいたタカヒロから毛布を借りてそれをタカヒロさんと一緒にみんなにかけていったのだ。

 

 

 

 

「そういえばタカヒロさん、どうして先程冷蔵庫の前で固まったんですか?」

 

 さっき毛布を借りる時にタカヒロさんは僕を気遣って冷蔵庫からジュースを取り出してご馳走してくれたんだけど、その途中、冷蔵庫を開けた際に数秒ほど固まってしまったのだ。

 

 あまり聞くべきではないと分かっているけど聞いてみた僕の質問。

 その質問にタカヒロさんは「今日の晩にと用意しておいた食材が消えていた。」と苦笑いで教えてくれた。

 

 その犯人は今もタカヒロさんに頭を撫でられてあどけない寝顔を浮かべていて、そんな彼女をタカヒロさんは優しい笑みで見つめていた。

 

 

 

「さてまだ時間もあるし、店の方に行ってのんびりしようか。」

 

 タイマーの時間を確認して立ち上がったタカヒロさん。

 その彼の提案に僕は「はい。」と答えて2人で厨房から出る。

 

 タカヒロさんがカウンターに立つと僕は向かいの席に座り、ほどなくしてタカヒロさんが淹れた2人分のコーヒーが僕らの前に置かれる。

 

 そのコーヒーを飲みながら話した内容は主に僕の両親の事だった。

 父さんと母さんが昔ここで働いていた当時の事をタカヒロさんから聞いて、僕も今の2人の事を話した。

 色んな事を聞いたし、色んな事を語った。

 

 

 ……本当に色んな事を。

 

 

 

 ーー第21話 にゆうがく8ーー

 

 

ユキside

 

ピピッ、ピピピッ

 

 

(……?)

 

 まどろみの意識の中、聞こえて来たのはいつもと違う目覚ましの音。

 その音の違いに疑問を感じ、閉じていた目を開けると目の前の机の上には音を出しながら軽く振動している台の上に乗ったウサギの置物が視界に入った。

 

「……?」

 

(あれ、こんな置物私、持ってたっけ?)

 

 腕を伸ばしてその置物を手に取る。

 近くで見てもやっぱり見覚えのないそれは台の部分に目盛りが付いていて、よく見るとキッチンタイマーだというのが分かった。

 

(なんでこんなものがあるんだろう。

 ……あれ? そういえばここ、トー君のお部屋じゃない……。)

 

 周り見渡すと、この街(木組みの街)に来てから私がいつも寝起きしてるリゼちゃん家のトー君の部屋……ではなくどこかで見た事のある厨房。

 

 ……すぐにそこがラビットハウスの厨房だという事に気付いて、周りで毛布をかけて寝ちゃってるリゼちゃん達と机の真ん中にラップで蓋をしたボウルを見つけて、今日ここでみんなと一緒にココアちゃんからパンの作り方を習っている事を思いだした。

 

 

 

「目がさめた?」

 

 

 そしてそれを同時に不意に後ろから優しい声がかけられる。

 声のした方向に顔を向けると、すぐそばの流し台に寄りかかって私に優しい笑顔を向けたトー君がコーヒーカップを手に持って立っていた。

 

 

「おはよー、トー君。」

 

 そんなトー君に寝起きでまだ少しボーっとしながらも私は挨拶を返すと、

 

「おはよう、ユキ。」

 

 とトー君も笑顔で挨拶を返してくれた。

 

「……?」

 

 

 でも気のせいかその表情に少し寂しさが浮かんでいた様な気がした。

 

 

 ――――

 

トウカside

 

「トウカ君、ずっと起きてたの?」

 

 目が覚めたみんなに寝起きに良いシュガー入りのホットミルクを渡してみんなでホーッと一息ついていると、一番遅くに起きたココアちゃんからそんな質問が。

 その質問に「いいや、タカヒロさんとお喋りしてたよ。」と答えると何故かユキが僕の顔をじーと見つめていた。

 

 

「! さ、さて、パン生地どうなったかな。」

「?」

 

 視線に気付いてユキの方を見ると、慌てて視線をそらしたユキが立ち上がって机の中心に置いてあるボウルの中を覗いた。

 

(……?)

 

 そんないつもと違うユキの様子に疑問を覚えていると、ユキにつられてボウルの中を見たみんなから「「「「「お、お~~!」」」」」と歓声が上がる。

 

 何だろうと思って僕もボウルの中を覗くと1時間前(みんなが寝ちゃう前)よりも1回りも2回りも大きくなったパン生地がボウルのそこに鎮座していてラップを取って触ってみると、ふっくらとした手触りが指から伝わって来た。

 

 その大きくなった生地をココアちゃんが7等分にしてみんなに配って、みんなそれぞれ思い思いに形を作っていく。

 

 楕円形にしてるココアちゃん、生地に丸や星の型枠を次々押しているユキ、そして人の顔の形を作ってるチノちゃん。

 

「……。」

 

 

 他のみんなも色々な形を作っていて、そんな個性豊かな形の生地を鉄板の上に乗せて、それをオーブンの中へ入れていくのたけど、その間にココアちゃんはリゼに小声で何かを話をし、2人して厨房から出ていった。

 

 

「ねーね、チノちゃん、チノちゃんはどんな形にしたの?」

 

 2人を視界の端に捉えながら聞こえてきた会話に視線を向けるとオーブンの前でユキがチノちゃんに作ったパンの形を聞いている所だった。

 

「おじいちゃんです。小さい頃から遊んでもらっていたので。」

「へー、チノちゃん、おじいちゃんっ子だったんだね。」

「はい、コーヒーを淹れる姿はとても尊敬してました。」

 

 視線をチノちゃんの頭の上に移動させると、案の定ティッピーが顔を赤くして照れていた。

 僕と目が合うと慌てて何でもないように取り繕うとするけど、ティッピー(おじいさん)、赤いほっぺが隠し切れてないですよ。

 

 まあ面白いから言わないけど。

 

 

「チノちゃん、オーブンの設定出来た?」

「はい。

 ……それではこれからおじいちゃんを、

 

 

 

 

 

 

 

 焼きます。」

 

 

 

「ふぇっ!?」「チノちゃん、それ誤解産む!」「ノ〜〜!」

 

 

 まるでお爺さんを火葬するような事を言うチノちゃんに思わずツッコみを入れる僕の隣でユキもチノちゃんの言葉に驚いていた。

 後おじいさん、出てる! 声、出てる!!

 みんなにバレるよ!

 

 

 

「千夜ちゃんシャロちゃん、ちょっと良い?」

 

 

 そんな僕の心配は丁度タイミング良く戻ってきたリゼとココアちゃんによって杞憂に終わった。

 そういえば2人ともどこかに行ってたんだろう?

 

 何故か2人とも両手を後ろに隠してるし。

 

「どうしたの? ココアちゃん。」「ん?」

 だから千夜さんもシャロも頭に?を浮かべていた。

 

 

「じゃじゃ~ん。2人におもてなしのラテアートだよ」

「さっきこっそり作ってきたんだ。」

 

 その2人の前でココアちゃんとリゼちゃんは隠していた手を前に出す。

 その手に持っていたカップにはコーヒーが入っていて、そこにミルクによってそれぞれウサギと戦車の絵が描かれていた。

 

 

「わぁ~、かわいい♪」

「す、すごいです。」

 

 ちょっといびつなウサギのを見て驚きながらも嬉しそうにする千夜さんと戦車のリアルな絵に戸惑いながらも目を輝かせているシャロ。

 

 さっきココアちゃんがリゼに内緒で何かを話していたのはこの事だったんだ。と理解していると、千夜さんが「でも」と呟く。

 

 

「私は嬉しいけど、シャロちゃんはちょっとコーヒーは……。」

 

 言いにくそうにそう呟く千夜さんはシャロを心配そうに見つめる。

 

 

「も、もしかしてシャロ、コーヒー苦手だった……のか?」

 

 それを聞いたリゼがシュンした顔をする。

 いつもはキリっとしたリゼだからその表情は珍しく、そんな普段と異なるリゼの顔を見たシャロは、

 

「い、いえ、大丈夫です! いただきます!」

 

 何故か顔を赤くして掛け声と共にカップを一気に傾けた。

 

 隣の千夜ちゃんが「あっ」と言う間に。

 

 

「……。」

 

 

 コーヒーを飲みきったシャロはカップを静かにテーブルに置く。

 その顔は俯いたままで僕の位置からはシャロの表情を見る事が出来ない。

 

「しゃ、シャロ……?」

 

 動かない彼女に声をかける。

 するとゆっくりとシャロは顔を上げた。

 

 

「ふわぁ~、りぜしぇ()んぱいのコーヒー、おいしいです。」

 

 赤い顔で舌っ足らずな喋り方で……。

 

「「「「「へっ?」」」」」

 

「トーウーカー!」

 

 いつもと違うシャロと千夜さん以外の僕らは素っ頓狂な声をあげると、シャロが文字通り飛びついてきた。

 

 

「おっと。」

「ふにゃ〜。」

 

 まるでユキや姉さんのように飛びついてきたシャロを受け止めて、つい2人にするように頭を撫でるとシャロは気持ち良さそうな声をあげる。

 

 

「千夜ちゃんどういう事? シャロちゃんどうしちゃったの?」

「実はシャロちゃん、カフェインを取り過ぎると異常にテンションが上がっちゃう体質なの。」

 まるで猫みたいにゴロゴロとノドを鳴らすシャロ。

 そんなシャロを見たココアちゃんが千夜さんに質問する。

 

「……つまりカフェイン酔いって事か?」

「えぇ、そうなの。しかもその時の状態も本人は覚えてないみたいで。」

 

「そんなのあり得るんですか?」

「チノちゃん、今のシャロちゃんを見てもそんな事言える?」

「い、今のシャロさんの状況ですか?」

 

 みんなの視線がシャロに向く。

 今のシャロの状態は、

 

 ①陽気になる→普段の彼女では考えられない位にすごく陽気です。

 ②皮膚が赤くなる→真っ赤です。頬なんて特に。

 ③判断力が低下する→(異性)に抱き着いている時点でお察しを。

 

「あ、スリーアウト。

 これ完全に酔ってる人(爽快期)の症状だ。」

 

 僕が呟いたその言葉と共にオーブンがパンの焼けたのを知らせる音がラビットハウスのホールに虚しく響いた。

 




次回予告という名のトークコーナー
(がっこうぐらし第2話風、次回予告!)


由紀「リゼちゃんってかっこいいよね。そうだ! トー君もモデルガン持ったら?」
冬華「えっ! 僕!?」
由紀「持ったらモデルガントー君だよ! 超強そう!」
冬華「そのネーミングはどうだろう……。」

「「次回、下宿人は男の娘!? 第22話、“おもいで”。」」



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