冬華『ーーーー。』
あー、放課後に受けた告白話(1話の内容)を由紀と一姫に説明中でした……。
待っとくのもあれなので、話が終わった時間まで進めますね。
《早送り中》
……よし、話が終わってる。
それでは3話をどうぞ♪
冬華は夕食の支度をしながら、一姫と由紀に今日、男子生徒から受けた告白の話を説明し終えた。
「スポーツ推薦貰った野球部のエースねぇ……。先週は2年の陸上部新キャプテン、その前はサッカー部の期待の1年生部員……。見事に1.2.3と、並んでるわね。」
「……このまま行ったらトー君、来週位には運動部のOBから告白されそうだね。」
「いや、おかしいでしょ!」
冬華は居間のテーブルで寛いでいる由紀と一姫にツッコむが、
「……でも否定は出来ないわよね?」
と、返して来た一姫の言葉に何も答える事が出来なかった。
実際これまでも数回、OBからも告白された事があったからだ。
ーー第3話 ひみつーー
「それにしてもトウカってなんで運動部員、それも屋外競技の部員からモテるのかしらねぇ。」
「そんなの僕が一番知りたいよ」
ふと呟いた一姫の疑問に冬華は不満気に答える。
いつもはひと月に2.3回程度なのに、今月は卒業式が近いせいか毎週のように同性から告白されている冬華にとって、いい加減うんざりしていて、来たる高校生活の平穏の為に早い所終止符を打ちたい問題だからだ。
「……やっぱり料理部部長だからかな?」
「あー、」
数秒の静寂の後、冬華の代わりに答えた由紀の言葉に一姫は納得した声を出し、由紀と共にキッチンの方を見る。
そこにはエプロンを身に付けた冬華が、早いながらも丁寧で、かつ見事な手際でミンチ肉を下ごしらえしている姿があった。
その姿は、冬華自身が女の子みたいな顔をしている事もあって、見てて甲斐甲斐しく、見方によってはまるで仕事から帰ってくる夫の為に料理する新妻のようにも見え、とてももうすぐ高校生になる男の子には見えなかった。
「なるほど、胃袋掴まえちゃったのかぁ。流石部長ね♪」
イタズラっぽく微笑む一姫とは対照的に、冬華の表情は不満気だった。
引き継ぎも済み、既に名前だけなのだが、冬華は料理部の部長を務めている。
その料理部は1年生から3年まで各学年4人ずつの計12人程の部活で、男女や先輩後輩の壁も少なく、部員同士の仲も良いのが特徴だ。
そんな料理部は週に数回、活動場所である校舎1階の家庭科室で、調理師免許を持つ顧問の指導の元、料理実習をしている。
実習は料理好きの部員にとっても楽しく、充実しているものであり、その1人である冬華も実習のあった日にはいつもその様子を楽しそうに一姫と由紀に話している。
そんな一見問題のなさそうな料理部だが、去年の夏まである1つ問題を抱えていた。
それは料理から実食、そして片付けまでを下校時間までに終わらせなければならない為、料理をたくさん作ってもそれを食べ切る事が出来ない為、どうしても作る量を減らさないといけない事だった。
その為、部員達の料理の腕がなかなか上がらない事が危惧されていた。
それを解決したのが、校庭や体育館等にいる運動部達だ。
運動して空腹の育ち盛りで食力旺盛な彼らに作った料理を食べて貰う事で、たくさんの料理を作れ、料理部の腕も上がるし、運動部の彼らの空腹をなくす事が出来、まさにwin-winの関係となったのだが、そこに冬華が告白される理由が潜んでいた。
料理部の部室である家庭科室は校舎の1階にあり、運動部のいる校庭からもよく見える位置にある事もあって、料理している姿は校庭にいる運動部に見られる事になる。
そこで自分達の為に甲斐甲斐しく料理を作ってくれる冬華の姿を見て、そして出来た料理はとても美味しいとあれば、運動部員達が冬華に惚れるのも必然だった。
例えそれが男であっても、女の子顔負けのきれいな顔立ちをしている冬華なら尚更である。
そうして、その後も冬華を構いながら暫くそんな話をしている内に、夕食が完成する。
今日の夕食はハンバーグと、トマトやコーンやキャベツで綺麗に彩られたポテトサラダ、豆腐とワカメと油揚げの味噌汁に白米と言ったメニューだった。
「それじゃあ」
「「「いただきます」」」
それを一姫の号令で合掌し、3人で食べ始める。
冬華の作った夕食はどれも美味しく、瞬く間に食べ終わった。
その後、一姫と由紀が入浴している間に冬華は使った食器を洗い、2人があがった後、冬華も入浴する。
その後、冬華の部屋に布団を3つ敷いて小の字になる。
眠りに就くまでに話した内容は他愛もない事ばかりだったが、それを話す3人はまるで本当の兄弟のようだった。
ーーーー
所変わってここは巡ヶ丘市の中心街。
そこに立ち並ぶオフィスビルは深夜だと言うのにどこもポツポツと灯りが点いていて、静かな賑わいを見せていた。
その灯りが点いている窓の1つ。
そこは会議室の窓で、部屋の中には窓に手を突いて外の景色を眺める1人の男性と、彼とテーブルを2つ挟んだ向こう側の席に座っている1人の女性がいた。
2人に共通するのは、どちらも白衣姿で、胸には同じバッチを付け、首からは紐に通した研究証がぶら下がっていた。
そしてこの2人が夫婦である証が、2人の左手の薬指に、同じ指輪という形ではまってあった。
「参ったな……。」
男性は深刻な顔で呟く。
その彼の手には1枚の異動辞令の書類が握られていた。
「そう……ね。あの子の事、どうしよう。」
男性の後ろにいる女性も呟く。
彼女の表情も男性と同じく深刻なものだった。
「……とりあえず、あいつの所にかけてみるよ」
しばらくしてから男性はそう言ってスマホを取り出し、どこかへ電話をかけた。
『もしもし、天々座だ。』
数回のコールの後、電話に出た相手は男性の古い知り合いだった。
「久しぶりだな
『なんだ?』
「……息子の冬華をしばらくお前の家に下宿させてやってくれないか?」
この電話によって冬華の人生が大きく変わる事になるのだが、その事をまだ冬華は知らず、自分の部屋で姉の一姫と幼馴染みの由紀に挟まれ眠っているその顔は無邪気なものだった。
3話終了です。
最後に出てきた男女2人は一姫と冬華の両親です。
以降から彼らの人物紹介。
一姫と冬華の父。
年齢は44歳
真面目で温厚な性格。
一姫と冬華の母。
年齢は38歳
明るい性格。
2人は同じ職場で働いていて、研究系の仕事をしています。
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次回、冬華の健全な男の子っぷりが全く発揮されません! お楽しみに!