羅武雷舞〜音ノ鬼坂番長伝説〜   作:1UEさん

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ようやっと追いついたので次の投稿日は金曜日です。


四撃目

 

屋上。

三年生の志賀と焔也達三人が屋上に置かれたボロボロのソファに向かい合って座る。

志賀はここに来た時の三人の状況を聞いて、簡潔にまとめた。

 

「なるほど、俺に用事があったから屋上に来たものの、俺はその時いなかった」

「はい……」

「で、俺をここで待とうとしたらウチのヤツらがお前らに喧嘩を吹っかけてきた」

「そうです……」

「喧嘩に勝ったはいいが予想以上にヒートアップしてしまい最終的に三人であんな事してた……ってとこか?」

「ま、そんなとこっすねー」

「焔也!」

「焔也くん!」

 

ソファにふんぞり返って適当に対応する焔也に海斗とことりが苦言を呈する。

 

「人の溜まり場で暴れ回っておいてその態度は何だ!」

「そうだよ!反省しなきゃ!」

「いや、一番暴れてたのお前らだから。止めようとしてたのが俺だから」

「「うっ」」

 

珍しくぐぅの音も出ない海斗とことりであった。

 

「あっはっは!相変わらずお前らは面白いな!」

 

そう言って笑う志賀。

時代錯誤と言われてもおかしくない黒の長ランとドカン。

わざとらしいくらいのつばが割れた学生帽。

如何にも「番長」といった感じの風貌だ。

そして、その外見に恥じない程の腕っ節とカリスマも持ち合わせており、現在音ノ鬼坂の頂点に最も近い男と言われているのだ。

 

「それにな……俺らが態度を改める必要はねぇよ。」

「……なに?」

 

癪に障った、と言うよりは単純に疑問を抱いたような声で、志賀が焔也に問うた。

 

「おい高坂、どういう事だ?」

「要するに俺が言いたいのは「俺達は志賀先輩の兵隊に喧嘩を売られた側」って事です。先に仕掛けてきたのがそっちなら、俺らが謝る義理はねえ…………違いますか?」

 

焔也は先程までのだらしない格好を正し、真っ直ぐ志賀の目を見つめる。

彼の目には反省も後悔もない。

そこにあったのは、自分達は間違っていないという固い意志だけだった。

 

「……ふっ、流石だな」

「?」

 

怒るでもなく、脅すでもなく。

志賀の口から出てきたのは、賞賛の言葉だった。

 

「俺に向かってここまで啖呵を切る度胸。絶対に折れねえ固い意志。そして、複数の三年を相手に大立ち回り出来る程の腕っ節…………全く、一匹狼なのが惜しいくらいだぜ」

「はい?」

 

てっきり厳しい言葉が帰ってくるものだと覚悟していた焔也だが、自分が賞賛されている事に戸惑いを隠せないでいる。

 

「なぁ、お前らよ。今からでも遅くねえ、俺に付かないか?お前らがいればオトノキのテッペンをとれる気がするんだ」

「なぁ海斗?俺らこの人の兵隊ぶっ飛ばしたんだよな?なのに怒られるどころか新しく兵隊にスカウトされてるんだけどどういう事なの?」

「俺が知るか」

「あははは……」

 

ついに困惑のあまり海斗に聞いてしまう焔也。

それでさらに困惑する海斗。

苦笑いで誤魔化すことり。

 

「で、どうだ?」

「気持ちはありがたいっすけど……俺らそういうの興味無くて」

「うーん、そうかぁ……ホントに勿体ないな…………」

 

本気で残念そうにする志賀。

おそらく彼は、本気で焔也達を自分の勢力に取り込もうとしているのだろう。

 

「ま、仕方ねえ。それはまたの機会にしておいて……」

「(諦めてねーのかよ……)」

「それはそうと、お前ら。俺に用事があってここに来たんだろ?」

「あ、そうだった!」

 

予想外の喧嘩に巻き込まれてすっかり忘れてしまっていたが、もともと彼らは志賀に用事があってここに来たのだ。

そして、その用事とは

 

「志賀先輩!いつものようにタバコ、売ってください!」

「「お願いします!」」

「はっはっは!そうだろうと思ったよ!」

 

志賀はそう言うとソファの前にある学校の机(四台をくっつけたもの)の上にドンと、一つのボストンバッグを置いた。

ファスナーを開け、中にある大量のタバコの箱を見せ付けながら一言。

 

「毎度おなじみ志賀タバコ店、出張サービスだ。お客さん、何をお探しかな?」

 

音ノ鬼坂学院三年生、志賀仁志。

実家はタバコ屋を営んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

所変わって体育館。

ここでもまた、一つの戦いが終わっていた。

 

「く、くそ……強ぇな…………」

 

仰向けに倒れるのはオレンジ髪の少年ーーー星空蓮。

 

「はぁ…はぁ…ただのボクシング使いと思って甘く見てたぜ……なかなかのスピードと瞬発力だ」

 

タイマンに勝利した赤髪の少年ーーー西木野真樹が息を整えながら言う。

 

「だが……相性が悪かったな。ボクシングの弱点はリーチが短い事だ。俺みたいに足技を主体とする相手には致命的に弱い」

「ちっ……悔しいけどアンタの言う通りだよ」

 

先ほどまでの喧嘩、頭に血が上った真樹は勿論、頭で考える事を苦手とする蓮共々、完全なる力と技のぶつけ合いだった。

最初こそ圧倒的な機動力で真樹を翻弄する蓮だったが、真樹に動きを見切られてからは防戦一方の戦いを強いられ、最終的に敗北を喫してしまった。

真樹の言う通り、キックボクシングを主体とする彼のファイトスタイルが功を奏した結果の勝利と言えよう。

 

「これで……1年は俺がーーー」

 

シメた、と続けようとした真樹の全身を、かつて無いほどの悪寒が襲った。

それは瞬く間に本能的な危険信号となり、全身を駆け巡る。

真樹はそれに従い咄嗟にその場にしゃがむ。

すると、

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

雄叫びと共に振り抜かれた何者かの豪腕が真樹の頭上を通過した。

振り向きざまに蹴りをその何者かに叩き込む真樹だったが、そいつは蹴りを受けて怯むどころか真樹の足を掴み取ってしまった。

それと同時に、真樹も目の前の敵の姿を視認する。

 

「お前、小泉……!?」

 

乱入してきたのは、真樹が顎へのハイキックで沈めたはずの小泉華だった。

 

「おおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

華は雄叫びを上げながら真樹の足を掴んだまま強引に振り回した。

 

「なっ!?」

「オラァぁぁぁぁあああああああああ!!」

 

そしてその遠心力のまま投げ飛ばす。

ジャイアントスイング、とまでは行かないが真樹の体が宙を舞う。

 

「ぐっ……!」

 

受身こそ取ったものも、新たな脅威の襲来に真樹は焦っていた。

 

「(クソが!顎に蹴りを当ててやったんだぞ!?いくらなんでも復活するのが速すぎるだろうが!)」

 

対する華は真っ直ぐ真樹を見据えて、拳を握りしめている。

その瞳には人間らしい感情が無く、ただ目の前の獲物を狩ろうとする野獣のような眼光でただひたすらに真樹を睨みつけていた。

 

「ぅぅぅぅぅぅぅ……!!」

「おいおい、なんだそりゃ?呻き声なんぞ上げやがって、飢えた肉食獣かっつーの……」

 

茶化してみせる真樹だが、実際の彼はかなり追い詰められている。

 

「(まずいな、さっきの喧嘩でかなりの体力を使っちまった……今ここでアイツと真っ向からやり合うのは流石にヤバい!)」

「ぅ、ぉ、ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

ついに獣のような咆哮を上げて襲い掛かる華。

すかさずファイティングポーズを取る真樹の頬を、一筋の汗が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと……じゃあワカバ」

「俺はセッターをお願いします」

「なら僕は……赤マルで」

「あいよ」

 

三人の注文を受けた志賀がボストンバッグからそれぞれのものを取り出す。

 

「ほい、オトノキ生割引で三十円おまけしてやるよ」

「あざーす!」

「こういう時にやはり志賀先輩は頼りになる……いつもありがとうございます」

「そうだよね!いつもお世話になってます」

 

志賀の家はタバコ屋を経営しており、このようにボストンバッグの中に自分の家の商品を入れては、学校内で生徒達に格安提供している。

彼が三年生の最高勢力を持つまでになったのは、彼の人望や腕っ節も勿論だがこの「出張サービス」の影響も大きいと言える。

 

「さーて早速……あ、そうだ海斗。ライター貸して?」

「? 構わんが、お前自分のライターはどうした?」

「家で吸ってたら取り上げられた。クソ、親父の野郎………」

「はぁ、お前なぁ……」

 

焔也の実家は老舗の和菓子屋である。

彼の父の厳格な性格を考えれば当然の結果と言えよう。

 

「お前の家は和菓子を取り扱ってるんだ。タバコの匂いが商品に移ったら大変じゃないか」

「自分の部屋で吸うぐらい良いじゃねーかよ!」

「でも、焔也くんってタバコ吸う時に部屋の窓開けてるよね?タバコ吸ってるのがお客さんに見られるからまずかったんじゃないかな?」

「関係ねーだろ俺がタバコ吸ったって

!煙は上に行くもんなんだから!」

「印象が悪いだろ印象が。少しは考えろ」

「くっそー、納得出来ねえ」

 

たはー、と力の抜けたため息を吐く焔也。

志賀は再び愉快そうに顔を歪めた後に、

 

「まぁまぁ高坂、安モンでいいならおまけしてやるからよ、取っとけや」

 

ボストンバッグからガスライターを取り出して焔也に差し出した。

 

「え?いいんですか!?」

「構わねえよ、数ある内の一つだ」

「あざっす!」

 

両手で丁寧に受け取って大はしゃぎする焔也。

先程までの一歩も引かない姿勢はどこへ行ったのか。

 

「さて、と」

「やるか」

「うん」

 

三人は早速慣れた手付きでタバコに火をつけた。

有害だが、同時に官能的な煙を肺いっぱいに吸い込む。

 

「ふぅー、ひっさびさのタバコだぜ〜」

「やはりセッターだな。この感じが心地いい」

「海斗くん吸い慣れすぎだよ……」

「お前らタバコ吸う時も面白いんだな、ますます惜しいぜ」

 

志賀も懐から愛用のライターを取り出してタバコに火を付ける。

 

「ふぅー……そーいや聞いたぜ?お前、綾瀬と喧嘩しそうになったんだって?」

「綾瀬?」

 

聞きなれない苗字に首を傾げる焔也だが、志賀は愉快そうな顔を崩さないまま言う。

 

「綾瀬英吉……この学校の生徒会長だよ」

「ッ!!」

 

生徒会長と聞いてあの金髪が脳裏を過ぎる焔也。

これには焔也だけでなく、海斗も顔を顰めた。

 

「……その様子だと、散々小馬鹿にされた挙句上手いこといなされたって感じだな」

「流石先輩だ、こっちの事は何でもお見通しですね」

「まぁ、アイツの性格と立場から予想は出来る」

 

やれやれと言った様子で2口目を吸う志賀。

海斗はセッターの煙を吐き出してから問いかけた。

 

「志賀先輩……その綾瀬英吉って野郎、何者なんですか?」

「おいおい、綾瀬がどういう奴かも知らねぇで喧嘩しそうになったのか?」

 

驚きを隠せないといった様子で目を丸くする志賀だったが、すぐに思い直す。

 

「いや、お前ら二年だから知らねぇのも無理はねーか……あいつがああなったのは一年の後半だからな」

 

そして志賀は語り始めた。

この学校の生徒会長ーーー綾瀬英吉の事を。

 

 




未成年の喫煙は法律で禁止されています。絶対にやめましょう。


え?タバコはいくつからって?
さぁ、16くらいからじゃないっすかね(すっとぼけ)


※20歳です
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