羅武雷舞〜音ノ鬼坂番長伝説〜   作:1UEさん

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すいません、遅れた上に早足で書いたのでいつもより短めです。


六撃目

タバコを買った焔也達が去った後。

屋上のドアを、一人の男子生徒が開けた。

 

「まいど〜」

「ん?おいおい……誰かと思いきやアンタか」

「そんな言い方せんでもええやん」

 

入ってきたのは、紫色の天然パーマに身長は190cmに近い程の巨漢。

生徒会副会長の東條望だ。

 

「仕方ないだろう、立場上俺はアンタを警戒しなきゃならんのでな」

「そんな悲しい事言わんといてーな。ワシら同じガッコにおる仲間やろ?」

 

厳しい表情を崩さない志賀に対し、望も笑みを崩さない。

 

「さて、確認だ……何しに来た?」

「あーもうめんどくさいなぁ

……ほな単刀直入に言うで?」

 

望は頭をポリポリかきながらソファに腰掛けた。

志賀の前に座る形になった望は、

 

「ワシはここにタバコを買いに来たんや。ワシにも噂のオトノキ価格で譲ってーな?」

 

ニカッと笑ってそう言ってのけた。

 

「……生徒会副会長の発言とは思えねえな」

「ええやん、ワシは英ちゃんとは違うて禁煙とかしてへんし」

 

予め用意していたのか。

望はポケットから小銭を取り出して机の上に置く。

 

「今日はメビウスの気分や。取り扱っとるか?」

「……良いだろう」

 

志賀も腹を決めたのか、ボストンバッグから望の求める品を取り出す。

 

「ほれ、オトノキ価格で三十円引きだ」

「よっしゃ!ほな遠慮なくいただくでー」

 

望はメビウスの箱を受け取ると何の躊躇いもなく箱から一本取り出して、慣れた手つきで火を付けた。

 

「んー、やっぱウマいなぁ……」

「どうやら、ホントに他意は無いみたいだな」

「せやからさっきからそう言うてるやん。悲しいくらい警戒されとるなぁ……」

「文句ならお前がつるんでるマブダチに言え」

「うん、否定はせえへんわ」

 

生徒会副会長、東條望。

色々と有名な生徒会長の綾瀬英吉とは一年の頃からのマブダチである。

そんな彼がこのような所に来れば生徒会の差し金と疑ってしまうのは無理もないことだった。

 

「もしもこれから生徒会としてここに来るような事があれば……ワシは腕に「生徒会」の腕章を付けてくるさかい、それを目印にしてーな」

「なるほど、それなら分かりやすいな」

 

納得した志賀は望に対する警戒を解いた。

その証拠に、自分もポケットの中に隠したタバコを取り出して今日二本目を吸い出した。

 

「しっかしこないな商売しとるなんて知らんかったわ」

「そう安易に知られても困るからな。特にお前や綾瀬みたいな奴には絶対に知られちゃいけない。」

「ま、そらそうか」

 

綾瀬英吉が堅物の生徒会長と化した事で、志賀もこの商売も表立ってやる事が難しくなった。

全く厄介な存在である。

 

「今更だが、この事を綾瀬にはーーー」

「言わへんよ、約束する。それに今、ワシも志賀はんからタバコを買うてしもうたんや。こりゃ、ワシが共犯やって事がバレへんように英ちゃんにも隠した通さなあかんなぁ?」

 

あくどい顔をして言う望に、志賀は思わず笑みを零した。

今まであまり会話した事は無かったが、話が分かるばかりか中々に面白い奴だ。

 

「フッ……なるほど。綾瀬が今のままでこの学校で振舞っていられるのはアンタがいるからなんだな」

「ま、そんな所や。英ちゃんは昔からホンマにわがままで敵わんわ。ワシの苦労なんか知る由もあらへん」

 

冗談めかして言う望の表情からは、綾瀬に対する不満は感じられない。

しかし、その苦労は相当のものだろう。

現在、綾瀬英吉に対する不良達の不満は溜まっていくばかりだ。

それが爆発しないように上手く誤魔化しているのだ。苦労しない方がおかしい。

 

「今日はタバコを買いに来たんもそうなんけど、確認したい事があったんや」

「確認したい事って、俺にか?」

「せや。今のオトノキにおいて最も不良達から人望を集めている志賀はんにしか聞けへん事や」

「別に人望ってわけじゃ……まぁ、いいか。それで?俺に確認したいことってのは?」

 

急に真剣な顔になった望に、志賀は思わず姿勢を正す。

一転して重々しい空気の中、望は言葉を発した。

 

 

 

 

「志賀はん……A-RISEって知っとるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな二人共」

「あぁ」

「また明日ね」

 

帰り道に海斗とことりの二人と別れた焔也は、そのまま普通に帰路に着く。

志賀から購入したタバコに火を付け、名残惜しそうに吸う。

父親が厳格なせいで自宅ではなかなか吸えないからだ。

家の言いつけにはなんやかんや言いつつ従うあたり、彼もまた根っこは実に純粋である。

 

「ん?」

 

ふと、商店街の裏路地に目がいった。

二人組の女の子が数人の男たちに絡まれていたのだ。

それだけでも不穏な予感がするのに、二人組の女の子は背丈や制服を見る限り、地元の中学生だ。

 

「(アイツら……)」

 

放っておくわけにも行かないので、焔也は吸いかけのタバコを捨てると、現場へと近づいて行く。

 

「あ、あの……私達もう行かなきゃなんで……」

「いいじゃんいいじゃん別にさぁ、帰りは送ってくから」

「そうそう、ちょっと俺らとカラオケ付き合って欲しいだけなのよ」

「悪いようにはしないからさァ、ね?」

 

三下の模範解答のようなセリフに思わず反吐が出そうになる。

焔也が少し歩くスピードを早めようとした時に、気づいた。

絡まれてる女の子の一人、あの茶髪には見覚えがあった。

 

「おい雪穂!」

「あ、お兄ちゃん!」

 

茶髪の女の子ーーー焔也の妹である高坂雪穂は助かったとばかりに声を上げる。

それに気付いた男たちが一斉に焔也へと振り向いた。

 

「あぁ?お兄ちゃんだ?」

「おい、コイツの学ラン……音ノ鬼坂じゃね?」

「マジだ、この辺で学ランつったらあそこしかねぇな」

 

流石は地元でも有名な悪名高い音ノ鬼坂高校。

目の前の男たちも焔也の通う学校を知っているようだ。

 

「お前ら……俺の妹に何してんだ?あぁ?」

 

明らかな敵意をぶつける焔也。

大事な妹を現在進行形で困らせてる輩が目の前にいるのだ。

妹の手前、暴れるのを控えたい焔也に残された手段は脅しのみだ。

 

「おい、どうするよ?」

「まさかオトノキに兄貴がいるとは……めんどくせーな」

「でもケッコー上物だしなぁ……」

 

隠す気もない言葉の数々に短気な焔也の堪忍袋は限界に差し掛かっていた。

 

「雪穂達が嫌がってんだろうが……ぶっ潰されたくねぇならとっとと失せろ!」

「「「……」」」

 

その言葉が癪に触ったのだろうか、男の内の一人が前に出てくる。

 

「おいおいお兄ちゃんよ……あんま調子乗らねえ方がいいぜ?」

「あぁ?」

「俺は今「A-RISE」ってチームに居てね。いくらアンタがオトノキつってもたった一人だ。その気になればーーー」

 

それより先を聞く気はサラサラ無かった。

焔也は男の顔面に拳を抉り込んだ。

大きく仰け反った男が仰向けに倒れる。

 

「て、テメェ!」

「野郎、やりやがった!」

 

男の仲間達が焔也に叫ぶ。

しかし、焔也はそれ以上の怒気を孕ませた目で睨みつけていた。

 

「いいぜ、バックだろうが何だろうが連れて来いよ。ただ、その前に俺がテメーを潰す方が早えけどなぁ!!」

 

言うが早いか。

焔也は次の標的めがけて拳を振り下ろすのだった。




やっぱ就活中は時間が無いなぁ
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