羅武雷舞〜音ノ鬼坂番長伝説〜   作:1UEさん

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お久しぶりです。
リアルが一段落したので投稿します。


七撃目

「A-RISE」とは、秋覇原一帯で最近話題になっているチームの事である。

圧倒的強さとカリスマを持つ「綺羅ツバサ

」なる人物を筆頭に急激にその勢力を拡大しているのだ。

今や数多くの不良達がそのA-RISEの傘下に取り込まれつつあると言う。

 

「まさかとは思うがこの学校の生徒達から減っているのも?」

「それだけやない」

 

渋い顔をする望から、とんでもない言葉が放たれる。

 

「青蘭、千登世橋、藤王と言った他校は、既にA-RISEの傘下に入る事を表明しとる」

「何!?」

 

青蘭高校、千登世橋高校、そして藤王学園。

いずれも、この辺りでは名の通った不良高校だ。

過去に音ノ鬼坂と衝突したのも、一度や二度ではない。

 

「そうなれば、A-RISEの戦力は……」

「……少なくとも今のオトノキの三倍は下らん。内部でまとまり付かない今攻め込まれたら、オトノキはしまいや」

「なんて事だ……!!」

 

由々しき事態に焦りを隠せない志賀は、まるでそれをごまかすかのようにタバコを灰皿に押し付けた。

 

「志賀はん。ワシは今ワシの知る範囲でA-RISEに気をつけるよう呼び掛けとる。せやから志賀はんにも自分の所の兵隊にはもちろんのこと、ここにタバコを買いに来る奴らにも言うといて欲しいんや。くれぐれもA-RISEの奴らと揉め事を起こさんようにな」

「あぁ、わかった。これもオトノキの為だ、尽力しよう」

「おおきに。ホンマ助かるわ」

 

A-RISEと言う未知の脅威に対し、事を荒立てないように尽力しようとする志賀と望。

だが、彼らは知らない。

 

 

 

 

既にA-RISEを名乗る連中に、喰ってかかってしまった男がいる事を。

 

 

 

 

「へっ、ザコが……」

 

高坂焔也の前では、雪穂達に絡んでいたタチの悪い不良達が倒れていた。

圧勝である。

 

「雪穂、ケガ無いか?」

「うん、大丈夫だよ」

 

その言葉に安堵する焔也の耳に、背後から聞こえた声が滑り込んで来た。

 

「タダじゃすまねえぞ……」

 

声の主は、焔也がぶちのめした不良の一人だった。

振り返った焔也に対して、彼は言葉を紡ごうとする。

 

「俺らA-RISEに手ェ出した事、後悔させーーー」

 

だが、最後まで言う事は叶わなかった。

 

「うるせぇんだよ!」

 

負けてもなおグチグチ言う不良に苛立った焔也が、ソイツの顔面を蹴り抜いたからだ。

今度こそ完全にのびてしまった不良に対し、焔也はーーー

 

「テメェに息をする資格はねぇ、一生そこで寝てろ」

 

そう言い残してその場を去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……今日はホントにありがとうございます」

「ん?」

 

雪穂の友達ーーー亜里沙という女の子にお礼を言われた焔也は、一瞬だが首をかしげた。

 

「助けてもらっただけじゃなく、こうして送ってまで貰っちゃって、申し訳無いです」

 

亜里沙は今日、雪穂に家に招待されていた。

しかし、あんな事があった後では危険だという雪穂の判断で、焔也が安全な所まで見送る事になったのだ。

 

「あぁ、イイってイイって。雪穂のダチに、何かあったら大変だからな」

「優しいんですね」

「そうか?別にふつーだろ」

 

そんなことよりも、焔也には気になる事があった。

 

「って言うか、そっちこそ大丈夫なのかよ?」

「?何がですか?」

「だって俺……目の前でめっちゃ暴れてたし、その……怖くねえのかな、って」

 

焔也も、自分が不良と言うレッテルを貼られているのは知っている。

そして、不良が忌み嫌われる事も。

彼は、妹の雪穂の前ならともかく雪穂の友達の女の子の前で喧嘩して、怖い思いをさせてしまって無いかどうか、そちらの方が不安だったのだ。

 

「いえ、大丈夫です。確かにちょっと怖かったかもしれないけど、私と雪穂を守る為に闘ってくれた事は分かってますから」

「……そっか」

 

その言葉に安堵する焔也。

やはり覚悟している事でも、怖がられてしまう事には辛いものがある。

 

「それにお兄ちゃん……私の兄も不良だったんです」

「そうなのか……ん?だった?」

「はい、今は不良じゃありません。更生して真面目に頑張ってます」

 

ほえー、と関心する焔也。

自分なら絶対更生なんかしないだろうと言う言葉を思わず飲み込む。

 

「まぁ……兄がそうなってしまったのは、私のせいなんですけどね……」

 

そこで少し悲しいような、寂しいような表情を浮かべる亜里沙。

何故だろう?

普通なら、不良だった身内が更生したら喜ぶべきなのでは無いだろうか?

不思議に思った焔也が問いかけようとするが、

 

「あ、もうここで大丈夫です」

 

亜里沙が近場の公園に差し掛かったあたりで声をかけた。

 

「ん?家まで送らなくていいのか?」

「はい、ここの公園でお兄ちゃんと待ち合わせしてるんです」

「そうか……気を付けて帰れよ」

 

更生したという兄貴の妹の側に自分のような不良が居れば、いい気はしないだろう。

会った事も無い亜里沙の兄に気を遣い、焔也はさっさと立ち去る事にした。

 

「雪穂のお兄さん、ありがとうございました!」

 

最後にペコリとお辞儀する亜里沙に、焔也も手を軽く振って返した。

 

「俺は焔也ってんだ。亜里沙ちゃん、これからも雪穂と仲良くしてくれよな」

「はい、もちろんです!」

 

満面の笑みを浮かべる亜里沙に、雪穂はいい友達を持ったなと、勝手に心の中で兄貴風を吹かす焔也であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜里沙が不良に絡まれた。

その事実を知った英吉の胸に、耐え難い怒りと焦りが去来した。

今どこにいる?とLINEを返し、すぐさま外着に着替える英吉だったが、「友達の兄に助けてもらったから今は大丈夫」というメッセージを受け、ひとまずは安堵した。

しかし、そのままにしておくのも危険だ。

英吉は、亜里沙と秋覇原にある公園で待ち合わせ、バイクで迎えに行く事にした。

ライダースジャケットを身に付け、メットを被り、エンジンをかける。

高校入学以来から愛用してきたそのバイクは、かつてと変わらないエンジン音を響かせ、頼もしい速度で英吉を目的の公園へと連れて行く。

幸い目的の公園はそう遠くなく、法定速度ギリギリで飛ばしたバイクにかかればものの数分で到着する距離だった。

 

「亜里沙!」

 

着くやいなやバイクから半ば飛ぶように降り、ブランコに腰掛けた妹の下へと駆け寄る。

 

「お兄ちゃん……」

 

微笑む亜里沙の顔を見て、今度こそ安堵する英吉。

もしも彼女の身に何かあれば“昔の自分”に戻る事も辞さなかったが、その心配もしなくて良さそうだ。

 

「大丈夫か亜里沙?何かひどい事されてないか?」

「うん、大丈夫だよ。言ったでしょ?友達のお兄ちゃんが守ってくれたって」

「そうか……」

 

聞くところによると、その亜里沙の友達の兄は高校二年生で、彼もまた不良だと言う。

不良であっても、今回のように中学生の女の子相手に強引なナンパをするクズもいれば、雪穂の友達の兄のように勇敢で情に厚い者もいる。

英吉にとってその事実はとても喜ばしい事でもあったが、

 

 

 

同時に、妬ましい事でもあった。

 

 

 

「とにかく今日はもう帰るぞ。ほら、これを被るんだ」

「うん」

 

亜里沙にハーフタイプのメットを渡し、頭に被らせる。

バンドでロックできたのを確認し、二人でバイクに跨る。

 

「大丈夫だな?俺から体を離すなよ?」

「うん、大丈夫」

 

安全を確認し、今度は亜里沙を気遣ってゆっくりと発進する。

行きの時のような荒っぽい運転ではなく、まるで桶に入った豆腐を運ぶように、優しく丁寧な運転を心がける。

 

「……」

 

そんな運転の仕方からも伝わってくる英吉の優しさに、亜里沙は一層表情を曇らせた。

 

「とにかく、亜里沙が無事で良かった。相変わらずこの辺りは治安が良くない。お前も気を付けろよ?」

「うん…………ねぇ、お兄ちゃん」

「ん?どうした?」

 

そして亜里沙は、英吉のその優しさに耐えられず、口にしてしまう。

 

「私のせい……なんでしょ?お兄ちゃんがそんな風に変わっちゃったのって」

 

その時、英吉の背中がわずかに強ばるのを亜里沙は実感した。

何せ、バイクで二人乗りをする関係で体を密着させているのだ。

それに亜里沙と英吉は実の兄妹……お互いの事はよく知っている。

 

「お兄ちゃん、絶対無理してる。学校行って、生徒会の仕事して、家に帰って来ても勉強ばかりして……」

「別に無理なんかしてないさ、俺は廃校を阻止するために必要な事をやっているだけだよ」

 

相も変わらず優しげに語りかける英吉。

その優しさが、今の亜里沙にはただ苛立たしかった。

 

「それに、生徒会の仕事ってのはいろいろと勉強になるんだ。とてもやりがいのある仕事で、いつも充実してーーー」

「嘘だよ」

 

亜里沙は英吉の言葉を遮った。

彼の言葉が嘘である事など、妹である彼女にとってはいとも簡単に見抜ける事だ。

 

「だってお兄ちゃん……全然楽しそうじゃないもん」

「……」

「こうして私に話しかける声だって、無理して作ってるようにしか聞こえない……ねぇ、教えてよ。亜里沙がいけないんでしょ?亜里沙があの時、お兄ちゃんにあんな事言わなかったら......!」

 

その時、英吉のバイクに変化があった。

速度を少しずつ落とし、信号の前で止まったのだ。

住宅街から一般道へ出る信号だ。

その信号を待つ間、英吉は亜里沙に言った。

今までの飾りっけのある声ではなく、本来の声と口調で。

 

「亜里沙……俺はな、お前に感謝してるんだよ」

「お兄ちゃん……?」

「確かに俺は無理してるかもしれない。生徒会の仕事は大変だし、学校のヤツらは言う事聞かないし、勉強にもまだ慣れない所がある……でもな」

 

そこで英吉は後ろを少しだけ向く。

不安そうな亜里沙の表情を見て、英吉は強く言った。

 

「あの時、亜里沙がああ言ってくれたから、今の俺がある。俺は、お前のおかげで自分のしてきた事の愚かさに気付く事が出来たんだ」

 

再び前を向く英吉。間もなく信号が変わる。

 

「だから、そんな不安そうな顔をしないでくれ。大丈夫だ、俺は必ずやり遂げてみせる。俺が必ずオトノキの不良達を更生させて、不良をこの街から消し去ってみせるさ。」

 

信号が青になる。

再びバイクがゆっくりと動き出し、二人を自宅へと連れて行く。

 

「(違う……違うんだよお兄ちゃん…………)」

 

亜里沙の心のモヤは、まだ晴れそうもない。




英吉の過去。
一体何があったのか。
だいぶ仄めかしましたけど察しのいい人はもう大体検討付けちゃうかもです。
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