またまた一年振りの投稿です。
かなりオリジナルな所が入っているのでご了承くださいませ。
10日目 夜
街道を外れ森に身を隠しながら準備を進める神楽と宵月。
『玉藻、現在の状況は?』
『神楽様、現在一向は森の中を抜けながらそのままエ・ランテル方面に向かっておるのじゃ。』
『そう・・・ならそのまま監視を続けて置いて。私も仕込みが終わり次第、監視の目を飛ばすわ。』
『かしこまりましたのじゃ、天目含め全員完全武装で待機しておるのでいつでも御呼び下さいなのじゃ。』
『ええ、ありがとう玉藻。又何かあればすぐに連絡頂戴。』
伝言を切ると鴉丸が木々の合間を縫って降りてきた。
「神楽様、遅くなりました。準備すべて完了致しました。」
「鴉丸、丁度いいタイミングよ。じゃあ始めましょうか。宵月、いけるわね?」
「はい、神楽様。フェイクカバー、カウンターディテクト------」
神楽の合図共に複数の魔法を重ね掛けしていく宵月。その手際を見て満足そうに笑顔を浮かべる神楽。
(二回目という事も有って不足はないようね。これなら対プレイヤー、上位プレイヤーは厳しいだろうけど中堅位なら対応できるかな。)
「クレヤボヤンス、クリスタルモニター。神楽様、終わりました。」
「ありがとう宵月。さて・・・どんなっ・・・!?」
その一行の姿をみた神楽が驚愕のあまり、言葉を失った。
クレアボヤンス越しなので正確には見分けられないが先頭を歩く男は伝説、又は神器級の鎧を纏っている。
玉藻がこちらに匹敵するといったのはこの男の事だろう。レベルは90くらいだろうか?
他の何人かは、ちらほらと伝説級が見えるが多くは聖遺物級、遺跡級かそれ以下の装備が継ぎ接ぎのようになっていた。
こちらではかなりいい装備であろうが、ユグドラシルでいえばゴミの様な装備で有るため、脅威ではない。
ここまでは想定通りで有る・・・ただ一人の老婆が身に着けている服。
(なんであんなものが此処に!?いや他のプレイヤーが転移しているなら合っても不思議ではないけれど。そうなると彼らはプレイヤー?いやなら情報対策していないのは何故?)
様々な可能性を考えて考察をするがどれも確信に至るものはなかった。
そんな様子を見て宵月は不安そうに訪ねてくる。
「神楽様?如何されましたか?何か私共に不手際でも・・」
「大丈夫よ、宵月。貴方達に不手際はないわ、ただ・・」
言い淀む神楽だが一息いれてから再び口を開く。
「あの老婆の着ている服は・・ワールドアイテムよ。」
「「!?」」
二人がその言葉に驚き息を飲む。
「ワールドアイテム・・知識としてはありますがあれはどの様なアイテムなのですか?」
「あれは傾城傾国、全ての耐性無視を無視して対象を洗脳できるわ。対処法方は同じワールドアイテム所持するかワールドチャンピオンのスキル・次元断層を使用するしかない・・」
ギリっと歯噛みする神楽。
(プレイヤーの痕跡があるならワールドアイテムも警戒するべきだった・・それによりによってアレが有るなんて・・)
対処するにも今打てる手がない、こんなことなら・・と考えていると・・・
「神楽様、如何致しましょう?御命令頂ければこの命投捨ててでも・・!」
「それは許可できないわ、鴉丸。私達に被害が出る位ならどれだけ貴重な物でも見過ごすのが最善だわ。」
「しかしっ・・!」
「これは決定事項よ。」
「はっ・・・失礼しました。」
「まだ向こうには気が付かれてないなら手出しは無用よ。ワールドアイテムとあの集団の情報は欲しいけど賭けに出る盤面ではないわ。最低限の監視のみ残して撤退、痕跡は残さないように」
「・・畏まりました、隠密重視で準備致します。」
唇を強く噛み締めながら鴉丸は神楽の指示に従い準備を進める。
その間、神楽は写し出される一向を食い入るよに観察を続けていると・・
「神楽様、また監視の目に怪しいのが掛かったと玉藻からご報告が上がっておりますが如何致しましょう?」
「今度は何?竜でもでた?」
「いえ、冒険者とおぼしき者が一人、エ・ランテルに向かって森を抜けようとしております。それを追跡するように大量の
「高レベル?どの程度なの?」
「非武装ではありますが我々と同格と思われます。」
(さっきの集団のお仲間?それとも敵同士?はぁ・・全くなんでこう面倒な事は纏めてくるのかしら?いや、まさか囮PK?)
神楽は宵月に気が付かれないように心の中でため息を溢しながら袂から一枚の札を取り出す。
「鴉丸?聞いていたわね。」
「はっ、しかと聞いておりました。」
「これもってさっきの集団を追跡しなさい、ただし決して発見されないように。もし見つかるようなら・・これを使いなさい。」
「これは・・・!?」
「私の切り札の一つ。もし貴方が発見された場合、その札を中心に『
符撃師系の最上位スキル――超位魔法以外の魔法を遠隔に設置した場所から発動させることで不意討ちや、罠として利用することができるスキル。
ただし一度使用してしまえば符撃師がいると看破されてしまう。
(リスクを多少あってもここは情報を優先するしかない・・それに隠密系スキルをもってるのは鴉丸だけ・・)
「この命に変えましても成し遂げて見せます・・!」
「鴉丸、出来れば貴方を死地に行かせたくないわ。だから、最後の最後まで生き残る事を諦めないで・・」
そう言いながら鴉丸を抱きしめる神楽。
震えそうな声を必死に抑えながら鴉丸は小さな声で「はいっ・・勿体無きお言葉ですっ・・・!」と答えるのが精一杯であった。
森の闇を駆ける鴉丸、前方のかなり離れた所から戦闘音が聞こえる。
『神楽様、先程の集団と吸血鬼の眷属を思われる魔物が交戦しております。・・・一方的に魔物達が駆逐されました。人間達には被害0です』
『そう・・・』
鴉丸からの報告を受けて、神楽は考える。
(どうやら敵同士みたいね・・でもそうなると吸血鬼を支配するためにあのワールドアイテムを持ち出してきたのかしら・・?)
『吸血鬼が人間達の存在を発見したようです。急速接近中。』
『そのまま待機、隠密重視で監視を続けて。』
『はっ・・!吸血鬼と人間の部隊が接触。っ!?老婆から凄まじい力の波動と光が・・!これは・・竜?』
(紛い物ではなかったわね・・)
鴉丸からの伝言を聞きながら神楽であったが―――
『吸血鬼がスキルと思われるモノを使用。大きな光る槍を老婆に投擲、人間の部隊の一名がこれを阻止しようと盾を構えて老婆を庇いましたが貫通・・・盾の男は死亡、老婆は重傷。』
『(反撃・・?吸血鬼もワールドアイテムを?それともまた別の要因?)吸血鬼の様子は?』
『戦闘行動を中断して呆然と立ち尽くしております。』
(洗脳は成功してる・・けど発動までのタイムラグで反撃したということかしら。ユグドラシルではなかったことね。)
『重傷の老婆に治療を試みてる様子ですが芳しくないようで、護衛を付けて先に撤退するようです。』
『一番脅威になりそうな男は?』
『どうやら吸血鬼の支配が上手くいっていないのか人間の部隊内で揉めているようで現地に残るようです。』
『洗脳まではしたけれど指示が入る前に術者が瀕死になったから手が出せないといったところかしらね。』
『恐らくではありますが、その通りかと。如何致しますか?護衛は二人、それも脆弱としか言えない者達、ワールドアイテム奪取には好機かと進言致します。』
(誘きだす為の茶番・・にしてはやりすぎてるとしか思えないわ。なら・・)
覚悟を決めるように深く息を吸い込み・・
「『奪い取るわよ、ワールドアイテム 但し絶対にこちらの事がバレないように・・ね』」
はっ!
『鴉丸はそのままの位置で監視を、動きがあり次第報告を。場合によっては眷属を召喚して足止め、時間を稼いで』
『畏まりました。』
「宵月、貴方は私のフォローを。後玉藻に連絡して天目を呼び寄せておいて。玉藻には引き続き増援と伏兵がないかの監視を。」
「御心のままに。直ぐに手配を。咲夜達は如何致しましょう?呼び寄せますか?」
「そのまま拠点にて防衛、但し 時及は玉藻の直衛に。万が一ということあるから。」
「仰せのとおりに。」
宵月は伝言を使いそれぞれに指示を出していく。
その間神楽は―
「
周囲に次々と召喚する神楽、召喚した黒い雷の塊は神楽の周囲を浮遊している。
黒雷――レベルは65、攻撃も防御もそこまで高くはない精々30後半と同じレベル程度のステータスしかない。
しかし特筆すべきはそのスキルにある。身代わりと反撃のスキルだ。
攻撃を受けた際に身代わりになり、死亡時に攻撃者に対して状態異常を付与した自爆攻撃を行う。
一通り召喚を終えると天目がゲートを通って来たのが見えた。
「天目よく来てくれたわ。状況は分かってるわね?」
「委細承知」
「そう。出番がない・・と思いたいけどその時は頼むわよ。」
「御意」
「宵月、準備は?」
「万端に整えております。」
「なら予定通りに、檻に入ったら・・狩るわよ。ワールドアイテム」
「はっ!」
暗い森の中を駆ける男2人と担がれた老婆、それを少し離れた所から見つめる神楽。
ゆっくりと身の丈程もある梓弓を構える。番えられた矢は五本。
それぞれの矢の先には符が巻き付けられていた。
弦を引き絞り、狙いを定め――
風を切る甲高い音と共に五本の矢は暗い森の中を駆け抜ける。
四本は漆黒聖典を囲うように四方に散らばり、残りの一本はそのまま――
漆黒聖典の第五席次:一人師団は神経を尖らせ周囲を警戒しながらカイレ様を運んでいた。
まさかあの隊長を退け、巨盾万壁を貫く程の化け物がいるとは考えたこともなかった。
「あれが破滅の竜王だったのか、恐ろしい・・あんな化け物が存在してはならない。必ずや滅ぼさなければ人は滅びる・・!」
「そうだな・・あんな化け物から俺達が守らないと。その為にもカイレ様を早く法国にお連れしないとまずい。」
第十席次:人間最強は大きな斧を背負い、先導するように森を駆け抜けながら答える。
「カイレ様の傷、なぜかポーションや治癒の魔法では受け付けない。恐らく呪いだろうから早く解呪をしないと手遅れになってしまう・・!」
「あぁ、カイレ様もご高齢。復活の儀式に耐えられないかもしれないしな。」
「森を抜けたらギガント・バシリスクとクリムゾンオウルを呼び出す。それまでは頼みます、人間最強。」
「あぁ任せろ・・と言いたい所だがさっきの化け物クラスが出たら流石に無理だな。まぉ占星千里も帰り道には脅威はなにも見えないといってたし大丈夫だろうがな。」
「あんな化け物が何体もいるなんて考えたく・・んっ?何か音が・・?」
「風切り音・・矢か!?伏せろ。」
カイレを庇う様に覆い被さる一人師団、人間最強は矢を迎撃せんと大斧を構える。
しかし何時まで経っても矢が飛んでくる気配がない。
「なんだ?どっかの冒険者が戦ってるのか?こんな暗い森の中で?」
「少なくともこちらへの害意はないとみていいだろう。音はしたが近くに矢は見えない・・念のためクリムゾンオウルを出して周囲を探らせてみよう。」
「そうだな、カイレ様は?どうだ?」
「いまだ苦しんでおられるが先程までと変わった様子はない・・周囲の安全がとれ次第早く森を抜けよう。」
一人師団は5体のクリムゾンオウルを召喚し、周囲を探索させたが近くには何も居なかった。
しばらく離れた位置にエ・ランテルに逃げるように走るレンジャーを見つけた。
先程の音はこのレンジャーが放ったものだろう。
幾分距離は離れているがなんらかの魔法のアイテムを使用した。
二人は結論してその場を離れ森の外へと抜けていった。
「あはっ♪ あははっ!」
八重の社では神楽の笑い声が響き渡っていた。
「こんなにも!こんなにも簡単にワールドアイテムが奪えるなんて!」
「「おめでとうございます、神楽様。」」
「ありがとう。鴉丸、宵月。貴方達、皆のお陰よ」
「神楽様のご指示が有ればこそで御座います。」
「本当は神楽様はご指示だけで御身の安全を優先して欲しかったくらいですが・・」
ジト目でチクチクと責める宵月と謙遜する鴉丸。しかし神楽の心中は清々しいほどに晴れていた。
(ワールドアイテムを犠牲も露見もせずに奪えるなんて!あぁなんていい日なのかしら♪)
余りにも簡単に奪えたので最初は偽物か罠を警戒していたが終わってみれば本物のワールドアイテムであり、罠も無かった。
何度思い返してもにやける顔が止まらない――
放たれた矢は漆黒聖典の二人の前で砕けちった。
それと同時に巻き付けられていた符に込められた
周囲に打ち込まれた矢も同じタイミングで符が発動した。
探知通信妨害、異常耐性低下、魔法抵抗貫通力増加、時間魔法補助4つがそれぞれが発動した。
時間対策出来ていない漆黒聖典達は何の抵抗も出来ずに敗北した。
そこから先は只の蹂躙でしかなかった。
天目が直衛についた宵月が拘束魔法を幾重にも重ね、盲目や沈黙などの状態異常を山程押し付けた。
時間停止が終わると暗みと無音の中、身動きも取れない漆黒聖典の二人に
矢は音だけであった――と
その間神楽は老婆に銀色の立方体を握り潰すとそれは液体の様に零れ落ち老婆の着ている傾城傾国を覆い尽くす。しばらくすると傾城傾国と瓜二つの服が老婆の傍らに顕れる。
彫り込み鋼―装備品の外装と三割程の性能を持った模造品を作成できる課金アイテムだ。
課金アイテムだけあってワールドアイテムすら擬装できる超レアアイテム。
しかし大きな欠点も抱えている。
第一に性能が元の三割しか発揮できない。
第二に鑑定魔法であれば直ぐにバレる。
第三にプレイヤー同士の取引では名前が彫り込み鋼と表示されて詐欺は出来ない。
そして第四に戦闘等の衝撃や装備者の変更があると擬装が剥がれ落ちてしまう。
あくまで観賞用のイミテーションアイテム、それが彫り込み鋼であった。
神楽は老婆から服を剥ぎ取ると腹に開いた傷口に符を幾つも重ねる。
(カースド職系の呪い・・これのせいで治療を諦めたのね。解呪して、とりあえず死なない程度に回復させてっと)
苦悶に満ちた老婆の表情が幾らか和らいだのを確認すると符を剥がし、袂から新しい符を取り出す。
意識混濁、混乱、恐慌、盲目、沈黙、呪い、麻痺、衰弱、虚弱、回復減衰、行動阻害、蘇生阻害、装備変更阻害
――致死性以外の様々なものを山の様に付与していく。
最後に符を剥がし掘り込み鋼で出来た傾城傾国を着せようとしたときに監視をしていた鴉丸から伝言が入った。
『神楽様、残りの人間達が動き出しました。あの吸血鬼を捕獲を試みたようですが反撃され一名死亡。部隊を撤収してそちらの人間達と合流するようです。』
『不味いわね、すぐにこちらも撤退するわ。鴉丸、貴方はそのまま監視を続けて、状況が変化したらすぐに連絡を』
『はっ!』
伝言を切ると宵月と天目に直ぐに撤退の準備をさせる。
老婆に対しては時間がないため雑に記憶操作を施す。瀕死の状態なら記憶も定かではないだろう。
(流石にこれだけしておけば完全に復活する前に死ぬだろうし、彼等の行動的に必死に延命してくれるだろうから時間は稼げるわね。)
回復量減衰などを付与したのは必死にポーションや治癒魔法を使えば延命できる程度にしたいからだ。
レベル100の神官等や課金アイテムや上位アイテムがあれば解呪や蘇生阻害を無視しての復活もできる。
ただそれはまずないだろう。
もしそんな備えがあるならば、ワールドアイテムを装備させた者に同行させるなり、持たせるだろう。
罠でもないならなおさらだ。
再度
最後に状態異常を綺麗さっぱり取り除いてから
――全てはあの吸血鬼の仕業として擦り付けた上で誰にも気が付かれない間にワールドアイテムを奪取した――
「とは言え、諦めてあの老婆を見殺しにされたりしたらワールドアイテム奪取が発覚するわね。」
「あの男達の記憶を見た所、老婆――カイレという名だそうですが、ワールドアイテムの適応者が少ない為、かなり貴重な人材のようです。消去を優先した為、深いところまでは見れなかったですが。」
「そう、彼等の目的とか戦力、所属については?」
「目的は破滅の竜王の洗脳だそうです。どうやら人類の守護者を標榜しているようです。申し訳ありません。戦力、所属については不明です。ただまだ切り札があるように感じました。あの吸血鬼に勝てる程の。」
宵月が畳に顔を擦り付けんばかりの勢いで謝罪しながら報告をする。
「いいのよ、あの状況なら仕方ないわ。それに情報よりもアイテムの奪取と隠蔽、こちらの方が重要よ。」
「有難う御座います。それでこの後は如何致しますか?」
「そうね・・このまま雲隠れより依頼を組合報告してから・・」
そのあとはどうしよう。
このままエ・ランテルにいるのは悪手だろう。
ワールドアイテム奪取が発覚したとき足取りを追われたら――
(そういえばダックが竜王国に行くとか言ってたわよね。あれに護衛としてついていくのはどうだろう。)
知り合いの護衛としても不自然ではないし竜王国では絶賛ビーストマンの食卓になっているので稼ぐにはもってこいの場所。
「竜王国に向かうわ。隊商の護衛としてのんびりとね。あとさっきの部隊や吸血鬼に着けている監視は全部外しておいて。」
「竜王国に向かうのは分かりますが、監視を外す意図は分かりません。危険では?」
「あの部隊が拠点や町に行った時に情報対策がされてる所に、吸血鬼にの元に情報対策している人物が接近した時にカウンターを喰らう可能性もあるでしょ?」
「確かにそうですが、なら多少コストが掛かっても傭兵や天目に監視をさせては?」
「私達はなにも見なかった、居なかった。という形にした方がバレにくいのよ。まぁ後手に回るリスクはあるけど、それでもね。それに――」
傾城傾国で洗脳した対象に指示が出せないかと試しに装備してみたが、どうやら洗脳した人物でないと指示が出来ないようだった。
吸血鬼が単独なら問題ない。しかしもし何処かの組織に属して居たならば・・?洗脳したのは人間達の部隊だが今、そのアイテムを持ってるのは自分達だ。
監視をしていてその組織と遭遇なんてしたに日には殺し合いにしかならない。ならば交渉の手札を残す為にも――
「干渉しない、知らなかったでいた方が都合がいいのよ。」
「成る程、畏まりました。玉藻と天目にはその様に伝えておきます。」
一通り宵月と話終えると控えていた鴉丸が報告をあげてくる。
「咲夜達より明日の夜には解錠が終わると報告がきております。」
「そう・・やっぱりこっちに来てから色々と変わってるみたいね。解錠が終わり次第、連絡を。決して扉を開けないでね?」
「畏まりました。しかしあれを取り出すだけなら咲夜達だけでも大丈夫なのでは?」
「色々とあるのよ・・色々と・・ね・・」
「・・その様に手配しておきます。護衛は引き続き私と宵月。防衛態勢も引き続きで宜しいでしょうか?」
「それで問題ないわ、もし少しでも違和感や異常を確認したら直ぐに報告を頂戴。」
「はっ!」
宵月と鴉丸は神楽からの指示を進めるために退室していった。
「さぁてどうなるかしね・・」
複雑な思いを神楽が呟く様にした言葉は暗い夜に溶け込む様に消えていった――
その頃、ナザリック一行は・・・
「はあぁ!?セバスぅ?もう一回いってくれない?それとも竜人である貴方がその形態でさぁ?私と殺り合う気かよ!?」
「血の狂乱は押さえ込んで見せんすえ・・・」
「あはははは!鬼ごっこの次はかくれんぼぉぉぉ?あはははは!」
「でじゃーどけってぃ!!」
「ああっ!!二人も人間を取り逃がしてしまった・・!アインズ様に叱られる・・・!」
「うぐああああああああ!!!ああああああああ!!!」
「カイレ様ぁぁぁ!」
フラグ建設をしまくったシャルティアがポンコツを遺憾なく発揮していた。
今月中には次を(来年)
次回は竜王国編になります。