電脳幻想郷 ーdigital fantasiaー 作:村正 ブレード
ーー幻想である筈の河童ーー
ーーこの出会いは、世界に一体何をもたらすーー
此処は守谷神社階段前。謎の青年に助けられた早苗は、青年に『守谷神社に来ないか』と持ち掛ける。早苗が言うには『此処に居てはまた先程の様な怪物に襲われて仕舞うかも知れないし、何よりも先程助けていただいた御礼がしたい。』とのこと。青年は『礼は要らない。だが、其処に行けばひとまずの安全は確保出来そうだ。』とその持ち掛けに賛成する。守谷神社への階段を登っていると、早苗が青年に話を切り出す。
「そうでした。まだ自己紹介をしていませんでしたね。私の名前は東風谷早苗と言います。ちなみに、早苗で結構ですよ。私は今から向かう守谷神社の風祝を勤めています。貴方は?」
「……俺の名前は『パイルドラモン』だ。」
「パイルドラモンさん……ですか。変わった名前何ですね。」
「俺からすれば、お前……じゃなくて、早苗の名前の方が変だと思うけどな。」
「む~。それってどういう意味ですか~?」
二人がそんなたわいもない話をしていると、守谷神社の鳥居が見えてきた。二人は少しペースを早め、階段を登り切る。すると早苗が神社の前に行く。そして青年«パイルドラモン»の方に振り.返って、笑顔で言う。
「ようこそ。守谷神社へ。」
その笑顔に、青年«パイルドラモン»は違和感を感じた。無理に笑顔をしている様な、そんな、少しの違和感が。
「……なあ、早苗。どうしてそんな――」
『どうしてそんな顔をしているんだ。』と言葉を続けようとした青年«パイルドラモン»だが、その時、神社の奥から思わぬ来客が現れる。
「お~い。早苗~。何処に居るんだ~?」
神社の奥から現れたのは、『河城にとり』。彼女は早苗を探して神社から出てきた様だ。彼女は早苗を見付けると、此方にとたとたと走り寄って近付いて来る。
「......早苗。彼女は?」
パイルドラモンがにとりを見て早苗だけに聞こえる声で尋ねる。
彼はにとりの声が聞こえた時から彼女の事を警戒しており、早苗に彼女の事を聞いたのも、彼女が危険かどうかを確かめる為だ。その証拠に彼は剣を直ぐにでも彼女に向かって振るえる状態だ。もし彼女が危険だと早苗が答えれば、その瞬間に刃が彼女に襲い掛かるだろう。
「大丈夫ですよ、パイルドラモンさん。彼女は危険ではありません。寧ろ、彼女のお蔭で生き残れた事も少なくないですから。」
「.......そうか。」
その問いに早苗は同じくパイルドラモンにだけ聞こえる声で答える。その言葉に安心したのか、パイルドラモンは警戒を解き、密かに構えていた剣を降ろす。その動作と同時に、にとりがパイルドラモンに気付く。にとりは不思議そうな顔でパイルドラモンを観察している。否、少し違う。にとりはパイルドラモンではなく、パイパイルドラモンが持っている『剣』を観察している。その眼には好奇心が強く表れている様だ。にとりは暫く剣を観察すると、パイルドラモンの近くに来る。パイルドラモンには、心なしか近付いて来るにとりの瞳がキラキラしている様に感じた。
「……何だ。」
「なぁ、盟友。」
「……盟友?何だそれは。」
「おりょ、知らなかったのかい?…皆知ってると思ってたけど、どうやら盟友は知らない様だね。まあいい、ならばこの私、河城にとりが無知な盟友に教えてやろう。人間と河童は、昔から固い絆で結ばれている、言わば同志、つまりは盟友なのさ!」
パイルドラモンが『盟友とは何か』について聞くと、にとりが自慢気な口調でパイルドラモンに言う。その言葉の一部、 『固い絆で結ばれている、言わば同志』と言うフレーズに、パイルドラモンは、かつて『デジタルワールド』の崩壊を防ぎ、デジタルワールドに平穏をもたらす為に共に戦った同志達を思い出していた。
(盟友……か。恐らく、俺と『彼等』との関係の様なものを言うのだろうな。…そこまで親密な関係でも無かった様な気もするが。)
嘗ての同志達に思いを馳せているパイルドラモンだったが、にとりのその言葉に依ってその思考を中断させられる事となる。
「なあなあ、盟友。…盟友?」
「っ、すまない。少し、考え事をしていた。」
(ふ~ん。考え事、ね。それもまあ、少しばかり気になるけども、まあ良いや。そ・れ・よ・り・も。)「なぁ、盟友。ちょ~っと教えて欲しいんだけどさ。」
「……何だ。」
にとりがパイルドラモンに問う。
「盟友が持ってる『ソレ』、一体何だい?布に包まれてるって事は、鞘が無いのか、それともよほど大事な物だったりするのかい?」
にとりはパイルドラモンが持っている『刀身が白い布に包まれている剣』を指差す。
「…まあな。鞘が無いのも有るが、確かにこの剣は大事な物だ。…それで?お前は何が言いたい。」
パイルドラモンがにとりにそう質問すると、にとりは苦笑の笑みを浮かべながら、
「生憎、私は回りくどい事は嫌いな性分なんでね、単刀直入に言わせて貰うと、その剣、私に見せてくれないか?」
「……別に構わないが、何故だ?」
「自分で言うのも何だけど、私は根っからの科学者気質でね。気になる物は徹底的に調べ上げないとスッキリしないんだよ。」
にとりのその答えに、パイルドラモンは溜め息を吐き、それから暫く考えて、
「……分かった。だが、剣を見せるだけで、君にこの剣を渡す訳では無いぞ。」
「そこら辺は、私もちゃんと分かってるさ。私から頼んでるんだ、せがんだりしないよ。そこまで不謹慎な河童じゃあないよ。」
「……そうか。」
パイルドラモンはそう答えると、剣を包んでいる布をほどいていく。全て布がほどき終わると、そこには金色の刃、全体的に白い刀身で、極めつけは刀身の中央に見たことの無い文字が刻まれていると言う、奇妙な雰囲気が感じられる剣だった。その中で、見たことの無い文字が刻まれている部分が特に気になる。
「…………。」
「……もう満足したか?」
にとりが真剣な顔をして黙っていると、パイルドラモンがにとりに言う。しかし、その言葉はにとりには届かず、にとりは先程と変わらず黙っているままの状態だ。その状態が暫く続くと、もう一度パイルドラモンがにとりに言う。
「……おい、聞いているのか?」
「…っとと、すまないね。その剣があんまりにも変だったもんでちょっと呆気に取られてたよ。」
事実、呆気に取られていた事は確かだ。
「盟友。」
「今度は何だ。」
「えっとさ、其の剣の銘を教えて欲しいんだけど、良いかい?」
「いや、別に構わない。この剣の銘は”オメガブレード”だ。」
「・・・オメガブレード、ね・・・。銘も変なんだね。」
にとりが苦笑する。其の言葉にパイルドラモンは表情を変えず、
「まあ、こんな名前ではあるが、、剣としての能力は高い。」
「そうなのかい?私にはとてもそうには見えないんだけど・・・?」
にとりがパイルドラモンに疑念をぶつけると、会話を聞いていた早苗が答える。
「確かに、切れ味は相当ですね。」
「早苗、どうしてそんな事を知ってるんだい?」
「私は目の前で見ましたから。」
「へ?目の前で見たって、どういう事だい?」
早苗はしまった、と言う顔をした。にとりは間髪入れずに問い掛ける。
「早苗。」
「はい?何でしょうか?」
「どういう事か、説明、してくれるよね・・・?」
「・・・えっと・・・。」
早苗は眼を逸らしてパイルドラモンの方を向く、パイルドラモンは構わないと言いながら頷く。
「えっと、実はですねーーー」
早苗は事の成り行きを説明する。
すると、にとりはワナワナ震えて、怒気を含んだ声で、
「・・・早苗。」
「は、はい!」
「私、言ったよね?危険だから一人で此処から出るなって・・・。出る時も“私達”に一言言ってからにしろってさ・・・。」
にとりの声はどんどん怒気を大きくしていく。
「あ、あの~、にとりさん・・・?」
「何かな、早苗・・・?」
「ひえっ。に、にとりさん・・・?」
「早苗、私、今物凄く機嫌が悪いんだけど、どうしてか解る?」
「・・・・・・私が、にとりさんの言うことを聞かなかったからでしょうか・・・?」
「解ってるならさ、どうして聞かなかったの?」
「そ、それは~・・・。」
(ど、どうしましょう~。)
早苗が弁明しようと考えを巡らせていると、
「・・・はあ、もう良いよ。」
「へ?に、にとりさん、今何と?」
「だから、もう良いよって言ったんだよ。早苗は答える気が無いみたいだし、私も言いたく無い事を無理矢理聞く程鬼畜でも無いしね。」
にとりがそう言うと、早苗は内心で安堵する。
(よ、良かった~。)
「でも、何れ聞かせて貰うからね。」
「分かりました。」
「っと、悪いね盟友。ほっといちまって。」
「別に気にしていない。」
「そう、あんがと。あ、後、」
「何だ?」
「此処で話すのはなんだから、神社の中で話そうや。それに、紹介したい奴も居るしね。早苗も、それでいいかい?」
にとりの其の提案に二人は、
「良いですよ。」「構わない。」
「ん。それじゃあ御二人さん、此方についてきておくれ。」
にとりに案内されて、二人は神社の中へ入る。神社には、一体どんな人物が居るのか、それはにとりと早苗にしか分からないーーー