一ヶ月が経ち、俺のステルスヒッキーが常時発動しているおかげか、外に出てもなにも騒ぎは起こらなくなった。まぁ、桜はそれが嫌なのか不機嫌になっているが。
「……この世界壊そうかな」
「いやいや!?なに冗談言ってるの!?お前が言うと冗談に聞こえないぞ!」
「冗談四割、本気六割」
「本気が勝ってる!?」
「だって八幡のことを存在してないようにしてるんだもん!」
「いや、たった一高校生で騒ぐか?学校ならまだ分かるけど」
「本当ありえない!!」
どうやら学校の方はなにも騒ぎがないらしい。あれれ〜?ちゃんと遺書送ったよね〜?
「なんかいたずらだと思ってすてられたみたいだよ。本当にありえない」
「マジか。てか異能使って心読むな」
「仕方ないじゃん。……不安なんだし……」
後半なにも聞こえなかったが、まぁいい。
「はぁ……」
「なんで溜息をつくんだよ桜」
「……鈍感」
「俺のどこが鈍感だ。むしろ過敏まである」
「はぁ……それが鈍感なんだよ、八幡。由比ヶ浜って言う女子の気持ちが分かるなぁ……」
「………」
「あ……ごめん……」
「いや、今はもう大丈夫だ。だから気にするな」
そう言って桜の頭を撫でる。髪サラサラしてるから気持ちいいなぁ……
「………/////」
まぁ、本来なら俺はこれは勘違いって思ってたけど、今は勘違いじゃないって気付いている。そして気まずいから話を変える。
「なぁ、今日、い、一緒に、でで、出掛けないか?」
うん、キモい♪てかなんで俺こんなにテンパるんだよ。
「え!?うん!分かった!」
桜は嬉しそうに笑って応える。この笑顔守りたい。そして側に居させたい。
「それじゃ、行こ?」
「おう」
そうして、ららぽーとに向かう。
***
「………」
「あ、あの〜?桜さん……?」
「………なに?」
「いえ、何も」
ふぇぇ……怖いよぉ……
いや際限無しに怖いんだけど。いやまぁ分かるけどさ。俺死んでることになってるから、ららぽーとに来たら流石に騒ぎになるだろうと思っていたら、全然騒ぎにならない。俺のステルスヒッキーすげぇ。
「……はぁ。行こ?」
「お、おう」
……ようやく諦めがついたみたいだ。
***
それから色々と必要な物を買っていったが、後から気付いた。
「異能使えば別に買わなくてもうちからやれば………」
「………あ」
……俺達、なんで気付かなかったんだろう。
「……けど、なくなってることに気付かれたらどうするの」
「……それもあるから買ってて良かったか」
「だね」
それから伊達だが眼鏡買ったりした。眼鏡つけた際、桜がめちゃくちゃ赤かった。
***
「ふぅ………ある程度買ったから帰る?」
「……あ、あぁ。なぁ桜」
「ん?」
「……お前どんだけ金持ってんだ?」
今持っているだけでも袋が十はあるぞ。それに異次元にまだあるし。どんだけ金持ってんだ?
「あ〜、両親の遺産なんだ」
「……それ使って良かったのか?」
「うん、あまり使い道無かったし。それに、使った方が、母さん達は喜ぶと思うんの」
「……そうか。悪い、変なこと聞いて」
「ううん、大丈夫」
「そう……!?」
俺は反応しようと思ったが、あることに気付いた。
「どうしたの?」
「……桜、異能使って俺を見えなくしてくれ」
「……誰かいたんだね」
そうして俺は周りから見えなくなった。すると、声が近付いてくる。この声は……
「小町ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「今日はパーと遊ぼう!」
「うん」
小町と小町の友達が来ていた。俺と桜はその一行とすれ違う。異能を使っているため、大丈夫だと思った。だが、俺は侮ったいた。小町のことを。
***
今日は友達と気晴らしに遊びにきた。皆は優しくて、お兄ちゃんのことを悪く言わない。そんな友達を持って良かった。
「小町ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「今日はパーと遊ぼう!」
「うん!」
一緒に歩いていると、前からポニーテールの女の子が歩いてきた。小町はその人が何故か気になった。すると、周りに、お兄ちゃんがいると思ってしまった。
「お兄ちゃん!!」
後ろを振り向き叫ぶが、もう女の子はいなかった。女の子の側に、お兄ちゃんがいた。小町は探す。絶対に。
「お兄ちゃん!!どこ!?返事して!!」
お兄ちゃんなら小町の声に反応してくれるはず。だから、小町は叫ぶ。
「お兄ちゃん!!お願い!!出てきてよ!!」
周りに人が集まってきた。けど、そんなの知らない。小町はお兄ちゃんを探す。
「お兄ちゃん!!お願い……!!出てきてよ…………!!!!」
けど、お兄ちゃんは出てきてくれなかった。
***
「お兄ちゃん!!お願い……!!出てきてよ…………!!!!」
小町の声が聞こえる。けど、今はまだ、あいつの側にいられない。
「……出なくていいの?」
「……まだ、その時期じゃない。俺だって辛いんだ」
「……そうだね」
それから、俺は自分を罵りながら俺達の帰る場所に帰った。
小町、ごめん