執務室で司令官さんの手伝いをしていると、雷ちゃんがペンギンを抱えて入室してきた。以前の装備開発失敗の際に生まれた、やけにぬぼーっとした顔の(恐らく)ペンギンである。
因みに綿菓子みたいな謎の生物の方は未だに見つかっていない。どこへ行ってしまったのやら。
それは別としてペンギンだが、食べ物に関しては雑食らしく、昨晩の夕食の際に猫まんまを与えると美味しそうに食べていた。その時点でこの生き物がペンギンなのか疑わしい限りである。
雷ちゃんが壁際に置かれた椅子に座る。ペンギンは抱いたまま。
昨晩寝る際に彼女はそれを抱枕にしていた。何も言わず暴れもしない、とても大人しいペンギンである。肉体的に、恐らく精神的にも子供の彼女にとって安眠するためにそれは適役だったのだろう。仲良く寝息を立てる様はなんとも微笑ましいものであった。
書類に書き込みながらそちらをちらちら見ていると、日差しが暖かかったからだろうか、雷ちゃんはこっくりこっくり船を漕ぎだした。
執務室に再びペンを走らせる音のみが響き、平和で静かな時間が流れる。
小一時間ほどして、司令官さんが大きく背伸びをした。机には判の押された書類が積み上げられている。全て記入し終えたのだろう。
私も早いこと終わりにしたかったが、まだ少々残っている。
と、司令官さんが何も言わずに私の書類を持っていく。
自分でできるから大丈夫、と言おうと口を開いたところで、司令官さんが人差し指を立てて口に当てた。雷ちゃんは依然くーくーと気持ち良さそうに寝ている。膝上のペンギンも同様である。
私は黙って頷き、目の前の書類へと記入を再開するのだった。
「ふわぁ……」
しばらくして、雷ちゃんが目を覚ましあくびをした。
私と司令官さんはやることを終え、今は読書をしていた。私の眠っている間に娯楽が発展していて、今は様々な大衆向けの小説があった。今読んでいるのは司令官さんに紹介された一冊だ。
「おはようなのです」
「ん、おはよ……」
声をかけると、まだ寝ぼけ眼で返事が返ってくる。
「おはよう、よく眠れたか」
「ぅん……」
司令官さんの問にもぼんやりと頷く雷ちゃん。
その膝から、ペンギンが飛び降りた。そしてとてとてと歩いてゆき、ドアを開けて出て行った。勿論だが取っ手に手が届く大きさではない。雷ちゃんが入ってきた時にしっかりと閉められていなかったのだろう扉を開けて、である。
「え……あっ」
数瞬遅れて雷ちゃんが事態に気付く。
「ま、待ってよぉ……!」
慌ててその後に続き執務室から出て行った。
再度部屋に静寂が訪れる。
私と司令官さんは彼女を追わずに、手元の本に目を落とすのだった。
――― ――― ――― ―――
「結局ペンギンさんはどこへ行ってたのです?」
夕食の場にペンギンを抱えて現れた雷ちゃんに尋ねる。
「工廠よ。装備開発装置の前でダンボールに入ってたわ。なんでそこに行ったのかしら……」
あぁ……、と記憶を辿る。このペンギンは開発失敗で生まれたが、その時に謎のもこもこと共にダンボールに入っていた。それでなんだろうが、しかし、何を目的としてダンボールに入っていたのかは私にも分からない。
「ま、いなくなっちゃった訳じゃないから安心したわ」
あちこち探し回って大変だったけどね、と続けた。
「見つかってよかったのです。それじゃあ、夕ごはんにするのです」
「そうね」
そう言い、二人で配膳をする司令官さんを手伝う。
父親と娘二人とペット。何も知らぬ人がこの光景を見たらそう思うんだろうか、などと考えながら。
日常回もどき。平和が一番!本編で語られなかった雷ちゃんの小さな大冒険はOVAに収録です
感想、誤字修正ありがとうございます感謝の極みです
あと祝お気に入り三桁