黒の教団の科学班に休みはない。なぜならばこの聖戦において、科学班なしに勝利はないといっても過言ではないくらい大いなる戦力となっているからだ。日々肉体を駆使して戦うエクソシストのサポートをしながら研究を重ね、頭脳で戦っているのが科学班なのだ。
その中でも優秀な人材が集められる本部の科学班。そこで班長を務めているのが、この男。リーバー・ウェンハムだった。
「リーバーさん、リーバーさん。どうしてリーバーさんの服はそんなにヨレヨレなの?」
そんな男のそばで一人のエクソシストが声をかけた。男はがりがりと手を止めず数式を解きながら、律儀に返事をした。
「これはな、ワッシャー加工っつって、こういうものなんだよ。こういうもんだった気がする」
「どうしてリーバーさんはそんなにおヒゲが長いの?」
「やっぱり大人の男は髭があることで魅力が増すだろ?それだよ、それ」
「どうしてリーバーさんはそんなアイメイクをしてるの?」
「……今どき男もメイクするんだよ。流行りにのっかるのもいいだろ?」
かの有名な童話を思い出させる聞き方に、リーバーはふと談話室に置いてある絵本を思い出した。
遠い昔、幼いリナリーのためにプレゼントした本をエレナは読んだのだろうと推測した。
彼女の頭は非常に単純でわかりやすい。
仕事続きで禄に身だしなみも整えられていない自分を年頃の女性から遠まわしに注意され、リーバーはなんとも言えない心境になった。
「リーバーさん、」
「エレナ、これが終わったら風呂に入ってくるからやめてくれ。心が痛む」
ついに心が折れたリーバーはようやくペンを止め、くるりと後ろを振り返ろうとした。
だがしかし。その目には何も映らず、ただ闇が広がるばかりだった。目元を覆う暖かい体温に、目隠しをされているのだと察する。
「リーバーさん、リーバーさん。今話してるのは誰でしょう?」
顔を正面に戻され、乗っかるように体重をかけられたせいで体が前のめりになる。
「誰って、そりゃあエレナに決まっ、て……る………」
そのままリーバーは意識を手放し深い眠りへと落ちていった。
リーバーが眠ったことを確認したエレナは満足そうに微笑み、ブランケットをかけてその場を後にした。
素直に言葉に出来ない彼女は、誰よりも働く彼のことを、誰よりも心配していたそうな。
そしてそれを見ていた科学班員たちは、自分たちがいくらいっても聞かない班長を、いつもあの手この手で眠らす彼女のことを賞賛していたとかしていなかったとか。
その後、またもや何かやっかいごとを持ち込んでくる室長が駆け込んでくるまであとーーーーーー。
三徹はやめましょう。