時計の針はもとに戻せない、   作:椛(いろは)

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カエルとチーターとヒョウと、

「ぬうああぁぁぁああああ!!」

 

ある日、ティモシーの叫び声が教団の食堂に響き渡った。

それは食堂の近くをたまたま通りすがったアレンとラビにも聞こえており、彼らは足を止める。

 

「なんだぁ?」

「ティモシーの声だ。勉強中かな?」

 

特に用事もない二人はその声に誘われるように食堂の中へと足を運ぶ。

そこには、わっかんねぇぇぇえええええ!!!!と頭を抱えて唸るティモシーと、なんで分からないの?!ねぇなんで????!!!ねぇってば~~〜~~!!と眉を顰めてむくれるエレナがいた。その周りでは見覚えのある科学班数名も難しい顔をしながら食事をとっている。

 

「なあ、エレナ!これムズすぎるよ!!」

「難しくないじゃん〜!!はやく答えてよぉ……」

「わっかんねぇよ、こんなん。ヒントくれや、ヒント」

 

そんな様子に二人は困惑した。

 

「科学班が分かんねぇとか、どんな問題だしてんさ」

「エレナはああ見えて頭いいですしね」

 

やっぱアレンって黒いよなぁ。さらりと毒を吐くアレンに、ラビの口元はひきつる。

ヒントは海と陸を行き来します!と人差し指を立てるエレナの声を聞きながら、ようやく目的のテーブルまでたどり着いたちょうどその時、ティモシーが元気よく手を挙げた。

 

「わかった!!カエルだ!!!!」

「ぶ~。ちがいます~~~」

 

「なにしてるんさ、お前ら?」

「あ!アレン、ラビ!!いいとこに来たな」

 

ヒントを出したのに答えをはずしたティモシーに、エレナはぷぅと頬を膨らませた。

これではどちらが子どもか分からないな。その場にいたエレナ以外の皆の思いが一致した瞬間だった。

 

 

「ちょっとコレ見てよ。何に見える?」

 

ジョニーはひらりと一枚の紙をアレンとラビに見せる。

 

「何ですか、これ?」

「エレナが書いた絵。かろうじて動物だってことはわかるんだけど」

 

どうやらお絵かきゲームをしていたようだ。

うーむと悩み始める二人に、エレナはなんで悩むの?!と驚きを見せている。

 

「うーん。チーター、……かな?」

「どっちかっていうとヒョウじゃね?俺はアクマだと思うさ、AKUMA」

 

先ほどのヒントからチーターではないことをアレンは百も承知だったが、その絵から読み取った素直な回答だった。

ラビはもう考えるのを放棄している。

 

「やっぱそう思うよな~」

 

アレンの答えに科学班一同はうんうんと頷いた。

それにエレナは微塵も納得していない。眉間にしわが刻まれる。

 

不自然に伸びた細長い四本足に、なにやらぐるぐると模様が描かれている胴体、上に反りだったしっぽと、まんまるの顔、らしきもの。3歳児でももっと上手くかけるんじゃないだろうかと思ってしまうようなその未知の生物に、みな頭を悩ませた。

 

一人、お題を出したジジだけは、お腹を抱えながら目尻に涙を溜めて大笑いしているのだが。

 

 

「みんなきら~い」

 

エレナは自分の書いた絵をくしゃりとまるめてジジへと投げつけた。ジジの笑いはそれでも収まらない。

 

「悪かったって。すまんすまん。お前の天才的な表現力はオレら凡人には理解できねぇんだよ、ぶふっ」

 

フォローしているつもりだろうか。しかし我慢できずに最後には吹き出してしまったジジにエレナはついにぼかぼかと殴りつけた。

昔からジジはよくエレナの絵の下手さをからかっていて、エレナもそれはよく分かっている。が、久しぶりにみんなの前でからかわれて我慢ならなかったらしい。いて、いてててと声を上げるジジにかまわず、エレナは無言で攻撃をし続けた。

 

その際にひらりとジジの持っていた紙が落ち、ジジとエレナのじゃれあいを見ていた面々はそちらに視線を奪われる。近くにいたジョニーがそれを拾い上げると、そこには「ウミガメ」と書きなぐられていた。

 

衝撃的な答えに一同唖然として、回答が書かれた紙の切れ端とエレナの手によってぐしゃぐしゃにされた絵を見比べた。

 

「………ウミガメ?……え?亀?」

「カメ……」

「カメかぁ」

「僕でももう少し上手く書けると思う」

 

 

アレンも似たようなもんさ。ラビはいつかアレンが報告書の隅に書いていた落書きを思い出しながら胸のうちへ吐露した。




アレンの敬語なしとかティモシーとか科学班面々とか、口調がよくわからないのに挑んだ無謀さが悔やまれる。
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