Fate/Grand Order 第四特異点-死界魔霧都市 ロンドン- 作:やすべえ
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「先輩。ドクターから通信が入っています」
一八八八年、大英都市ロンドンへとレイシフトを完了し、一呼吸置いたと同時に連絡が入る。いつも以上に速い。ダヴィンチちゃんに叱咤を受けた事が原因でしょうか。
『レイシフト完了だ。こちらの音声は届いているかい?』
「ドクター、良好です。クリア、とまではいきませんが、いつも通りの音声を保っています」
『そうか! それは良かった。カルデア技術部と私の共同研究だからね。
何か、不穏な言葉が聞こえた気がしますが、ぐっと言葉を飲み込みましょう。もし機嫌を損ねるような事があれば、今後のカルデアにとって致命的な遅れが生じる可能性がありますから。
『周囲に異常はないかい? と言っても、この霧が既に異常なんだけど』
見渡す限りの霧。一面の銀世界とまではいかないものの、視界が悪い事は
「……濃霧で視界が極めて悪いので、三メートル先を見る事が出来ません。もしこの状態での奇襲を受けた場合、避けられない大変危険な状況であると考えます。ドクター、私達の周辺にサーヴァントの反応はありますか?」
『すまない。霧の魔力が
『君達の周囲に熱源反応はない。従って、今は安全だ。いつも以上にモニターを監視しているから安心してくれ。今日はお茶菓子も食べない心づもりだ』
えっへん、と胸を張るドクター。しかし、いつもお茶菓子を食べながら私達へ通信を行っている事は知りたくありませんでした。こう、評価が下がってしまうので。
「これからの行動方針ですが、召喚サークルの設置を第一目標にしてもよろしいでしょうか?」
『そうだね。
「了解しました、ドクター」
『君達がいる場所から、北北西に進んで欲しい。壁に激突しないように移動を開始してくれ。霧のせいで視界が悪いから注意してくれ』
「はい。では行きましょう先ぱ――下がって!」
『な、ど、どうかしたのかいマシュ!』
「わ、わかりません! 目の前に人が! この霧の中で動ける……サーヴァントと判断しました! ドクター、指示を!」
◇
「なんだって!?」
「……ロマニ。カルデアのモニターが壊れてるとか、システムが壊れてるって事はないかい?」
「それはないよ。こうして彼もマシュもモニターに映ってる。熱源探知には
「ロマニ。考えられる可能性は二つだ。一、情報を遮断するサーヴァント。二、幻影を相手に見せている。このどちらかだ」
「どちらにせよ、本体は近くにいるはず……」
『喋りました!』
◇
「ねぇ、あなたは――なの?」
「喋りました! この声、女性です! それに若い。子供です!」
攻撃してこない……? 奇襲には絶好のチャンス。なのにわざわざ姿を現した。という事は戦闘の意志はない? それとも、姿を見せても絶対に勝てるという確信がある?
「ねぇ、あなたはおかあさんなの?」
「――え、えっと」
突然何を言うのでしょうか。私に子供? いえ、そんな行為はした事ありませんし、あ、いやでも遺伝子情報だけあれば今の時代子供を作る事が出来るんでしたっけ。じゃなくて、そもそも私に子供がいたのならカルデアにいるはず……じゃなくて! 先輩の前でそんな勘違いをされては困りますというか!
「え、えっと、私は! あにゃたのお母さんではありません」
噛んでしまいました。先輩、違うんです! 動揺したわけではないんです。ええ、決して!
『……マシュ。いきなり何を言ってるんだい?君はその、子供がいたのかい?』
「彼女の声も聞こえていないのですか?」
『あ、ああ。そうか、目の前のサーヴァントと会話をしていたのか。失礼』
「わたしのおかあさんじゃ、ないの?」
「はい。あなたはお母さんを探しているのでしょうか?」
つまり、母娘で一人のサーヴァント……?メアリーさんとアンさんのような特殊なサーヴァントなのでしょうか。それとも、同じ時代に母と娘が召喚された?
「うん。でも、いないの……。いっぱい探してるのに。あなたで五人目のおかあさんなの」
会話が、ずれているような。
「いいえ。先ほども言ったと思いますが、私はあなたのお母さんではありません」
「わたしのおかあさんじゃないかもしれないけど、
「ドクター。このサーヴァント、もしかすると保護すべきかもしれません。酷く混乱しているというか」
『こちらからは君達の会話が一切聞こえていないんだけど、どんなサーヴァントなんだい』
「はい。白髪の少女で、ボロボロのマントを纏っています。それに、顔に切り傷があります。そして母親を探しているようで、母親がいないせいか酷く狼狽しているように思われます」
『……すまないマシュ。もう一度言ってくれるかい?そのサーヴァントの特徴がさっきから
情報を一切残さない……宝具!
「ドクター! この宝具は情報を遮断する宝具と判断します」
「なんだって? なんだか音声の調子が悪いな。こういう時はなんて言うんだっけ。お電話が遠いみたいだよマシュ」
――駄目です。恐らく、何を言っても
「ごめんね」
ポツリ、目の前のサーヴァントが呟いた。その目には毀れそうな程の涙が溜まっていた。
「せ、先輩! 私、泣かせてしまいました! こういう時はどうすれば……。こ、小粋なジョークでしょうか」
「ごめんね。ごめんね。ごめんね」
「お、オホン! と、隣の家に囲いが出来たらしいですよ先輩」
「へぇ」
「せ、先輩!! そこは、『かっこいー!』と言うところです!も、もう一度」
『マシュ。ネタがばれているジョークを繰り返すのは地獄だよ。やめた方がいい』
「わたしたし、かえりたいの、とっても。かえりたいの」
「あわわわわわわわ! あ、あの! ほら! なんと指が! 指が消えますよ! 見てください! 私の親指を! ダヴィンチちゃんも驚いたこの親指を!」
『――ダヴィンチちゃん。優しいんだね』
『いやだって、凄いドヤ顔してるんだよ。流石の私も冷めた返しは出来ない』
「かえりたいの。かえりたいの……かえりたいの。だから――
解体、するね」
ジャックのスキル『情報抹消』についてですが、戦闘終了と同時に能力、真名、外見的特徴などの彼女に関する記憶を失わせるという物でありますが、改変させていただきました事をお詫びいたします。
この小説に出てくるジャックのスキル『情報抹消』はさらに強化され、彼女と敵対行為をとった者全てから彼女に関する記憶だけでなく情報そのものを抹消し、また第三者に彼女に関する情報を提供する事ができないスキルになっております。
カルデアからの通信で彼女に関する情報が伝えられなかった理由は、第三者に対して彼女の情報を提供する事ができなかった為です。
情報を渡さず、戦闘終了後に記憶を消す非常に強力なスキルとなっております。