鬼と鬼がかった新婚生活   作:そーだー

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旅の終幕

「僕の口から伝えるのは胸が痛いんだが、これも職業柄だからね。伝えさせてもらうよ」

 

ラインハルトが、申し訳なさそうに、残念そうに続ける。

 

 

「魔女教と思わしき者達が王都で不穏な動きをしているという情報が入ったらしい」

 

「でもそれって、年がら年中ひっきりなしに同じような報告があるんじゃ?」

 

「確かにスバルの言う通りだ。王都では昔からこういう報告は多い。ただ今回は少し様子がおかしい。ほぼ同時にたくさんの人々からの報告が上がっている」

 

「なんでよりにもよってこのタイミングなんだよ……」

 

レムが蒸かし芋を皿に置いて会話に参加する。

 

 

「このタイミングだから、では無いですか?王都で一番王に近い騎士、スバルくんとその騎士団がほぼ全員王都から離れた所に居ます。敵からすれば格好の獲物といったところです」

 

「だけどレムはーーいや、何でもない。帰るか」

 

「レムも、この時間をもっと続けたいです。でも戻らなくて後悔するのは嫌ですから」

 

レムがスバルの意図を汲み取った所で、スバルはありがとうと一言呟き、ラインハルトに向き直る。

 

躊躇いも名残惜しさも切り捨てて。

 

瞳に真っ直ぐな気持ちを宿して。

 

「俺は、騎士スバルは王都に戻る。騎士レムにも同行願いたい」

 

「レムは、スバルくんの行くところならどこまでも」

 

「てことだ、ラインハルト。わざわざここまで用意してもらった人達には悪い気がするけど、王都に戻る。行かずに後悔するのはもう沢山だ」

 

「なんだかバルスが大人になったみたいで滑稽だわ」

 

「今のは褒めるところだよな!?このシリアスな場面でボケてくるのやめてもらってもいいですか!」

 

「ラムはいつだって本気よ。だからこそーー」

 

ラムは最大級のキメ顔で、言い放つ。

 

 

「エミリア様とレムの為に、王都に住む人々の為に、ラムの好きな、あの団欒を守る為に、胸を張って戻りなさい。一人の騎士として、それをするだけの事をバルスはして来たのだから」

 

 

 

 

 

「本当に島全体を見張っていてくれたんだな……」

 

王都に戻ると決め、すぐさま帰る用意を済ませたスバルとレム、そしてこの旅行の為にプリステラまで来ていたラムとラインハルトを乗せて、竜車で島を出る際、ユリウスと遭遇した。

 

ユリウスは島全体を精霊達と自分の支配下に置き、島の入口に当たる通路に沿うようにして建てられた小屋を、自らの仮の住居として寝泊まりしていたらしい。

 

 

「騎士として、最低限島一つ守るぐらい出来なくてはね。短い旅行になってしまったようだが、少しでも君達二人が安心して楽しめたなら良かったよ」

 

「悪いな、こんな仕事をやらせちまって。もう帰るしユリウスも戻るよな?」

 

「いや、私も戻りたいところだが、この島にはまだ従業員として何人もの人々が配属されている。勿論彼らにも途中で旅が終わってしまう可能性については触れてあるのだが、旅が終わったことを知らせて回らなければいけないからね。一通りの仕事が終わってから戻ることにするさ」

 

「そうか……じゃあ先に戻るから、気を付けて帰ってこいよ」

 

「キミにそんな事を言われるなんて、なんだか騎士として否定された気分だが、まぁありがたく気持ちは受け取っておくよ」

 

「ラムもそうだけど、お前ら本当に一言余計だな……」

 

 

 

 

 

 

帰路はスバルとレム、ラム、それに加えてラインハルトの四人となったーーはずだった。

 

 

「じゃあスバル、僕はこの辺りで降りる事にするよ」

 

「ラインハルト?なんでだよ正直ラインハルトが王都に戻るか戻らないかはかなり大きな問題だぞ?」

 

「もちろんスバルの言う通り、王都には戻るよ。それに降りるのにはちゃんと理由がある」

 

ラインハルトが苦笑いで続ける。

 

 

「僕はこういう体質だからね。地竜には悪いけれど、僕は独りで走った方が速いからね」

 

「そういうことか……」

 

「じゃあスバル、そして御二方。先に行かせてもらいます」

 

竜車から飛び降りたラインハルトは、加護から抜けて先に走る竜車に手を振る。

 

まるで見送る様な仕草にこのまま王都に戻らないのではないかと一瞬の不安を浮かべていると、次の瞬間に立場が逆転した。

 

「やっぱりラインハルトは化け物だな……」

 

「ラインハルト様が先に行くならラム達はあまり身を削ってまで急ぐ必要はなさそうね」

 

「竜車に無理をさせない程度に急ぎましょう」

 

ラインハルトが抜けた事で関わりの深い三人が竜車に残った。ロズワール邸旧使用人三人衆は、ラムが手綱を持ち狭いながらもその隣にレムとスバルが座っている。

 

スバルは当初ラムが嫌がるかと思っていたが、レムが隣に座っているからか、文句はないようだった。

 

真横の景色が色を置き去りにして流れていく光景を見ていると、ふいにレムが口を開いた。

 

 

「スバルくん、今回の旅行は楽しかったですか?」

 

「もちろん。レムも楽しかっただろ?」

 

「はい!もうほんとに夢みたいで……レムはこんなに幸せでいいのでしょうか」

 

「当たり前だろ。レムが幸せで嫌なやつなんて居ないし、俺やラムはレムが幸せなのを望んでる。それに……俺はレムが傍に居るだけで幸せだしな」

 

「スバルくん……」

 

新婚夫婦が旅行の終わりの感慨に浸っていると、その隣からため息が聴こえた。

 

手綱を持ってスバルとレムをジトっと見ているラムだ。

 

 

「バルスやレムが幸せなのは構わないけれど、そうやって見せつけてくるのはやめてもらえない?」

 

「ごめんなさい、姉様」

 

「へいへい」

 

「まぁ、あなた達が幸せなら姉としてはいい事なのかも知れないけれど」

 

ラムはどこか納得いかないと唸っているが、当の本人たちはなんの関係もないとでも言わんばかりにまた二人の世界に入っていく。

 

こうして、スバルたちは王都に向かい今回の旅路の幕を下ろした。

 

 




このまま何のトラブルもなく終わっていいのか、それとも死に戻るような危険にぶつけるべきなのか迷い迷って、当初の目的通り幸せなままで一度旅行編の区切りを迎えました。
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