鬼と鬼がかった新婚生活   作:そーだー

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泥酔した姉と夫と

「だから!レムは大事な大事な妹なの!誰にも渡したくないの!」

 

「だからラムの分まで大事にするから!絶対に幸せにするから!」

 

「そんなのあの子がバルスの傍に居るだけで幸せな事ぐらい分かってるわ!それ……ぐらい」

 

ほとんど叫びに近い声を上げて会話をしているのはスバルとラムだ。

 

どうしても諦めきれないラムとタイマンで話をするべきだと、スバルから持ち出したものだ。

 

親が居ないレムと、親は居てもこの世界には居ないスバルにとって、唯一の親族となり得る人間。

 

それがラムなのだから。

 

泣きながらぽつりぽつりと声を絞り出すラムは、普段のずかずかとして適当な態度からは見当もつかない萎れた花のようだ。

 

「ラムは……ずっとレムのお姉ちゃんで……ひくっ……お姉ちゃんだからっ」

 

絞り出される声は要領を得ないものだが、お酒の力を借りてもラムの口から出る言葉はレムを大切にする姉の言葉だった。

 

「バルスはレムの何処が好きなの、答えて」

 

「今の俺にレムの好きな所を聞いたら一晩はかかるぜ」

 

「命を懸けてレムを守ったこと……レムの心の支えになってくれたこと……ずっとずっとレムの事を思ってくれたこと……」

 

「あれ?ラムさん?今の質問俺が答えるんじゃなかったの?他人からそうやって聞くとそれはそれで恥ずかしいんですけど」

 

「ちょっとは!ちょっとぐらい!否定させてくれたっていいじゃない……そんなにレムを愛して、愛されていたら否定することも出来ないわ」

 

ふとラムの顔を見るとポロポロと呟く言葉と共に瞳からは涙が零れていた。

 

ラムがレムと瓜二つだからか、それともラムが女の子だからだろうか。

 

女の涙には男は叶わないというのは本当のようで、酔いが回って本音と涙を零すラムになんと声をかけたら良いのか分からない。

 

「レムはいい子なのよ」

 

「ああ、知ってる」

 

「レムは可愛いわ」

 

「それも知ってる」

 

「レムは優しいの」

 

「俺もそう思うよ」

 

「レムは……ラムの大切な妹だから」

 

「俺だって大切だと思ってる」

 

「絶対にレムを幸せにしなさいよ、バルス」

 

「絶対にレムを幸せにするよ、ラム」

 

心做しかラムの言葉には酔いを感じさせず、心の底からの想いをぶつけられた気がした。

 

ラムが比較的冷静を保てていたのはそこまでだった。

 

「バルス!」

 

「どうしたどうした突然」

 

「レムを呼びなさい!三人で飲むわ!」

 

「お、おう……ちょっと待ってろ」

 

どうやら酔いが完全に回ってきたらしいラムの命令でレムを呼びに行く。

 

現在のレムとラムの姉妹は、メイドとしての身分よりもエミリア陣営としての貢献度の高さからスバルと共にエミリアを守護する騎士団に所属していることになっている。

 

メイドの時よりも比較的に屋敷で自由にしている二人は、大人になってから月に一度、フレデリカも交えて何度も飲みに行っているらしい。

 

その度に酔ったラムの対処をしているのはレムなのだと本人からよく聞くので、酔ったラムの対処をしてもらうという点でもレムを連れてくるのは得策だろう。

 

 

 

 

 

レムを連れてきた時には、ラムは新たにロム酒を三杯飲んでいた。ちなみにロム酒とはロム爺が腹を割って話すならこれだと大量に送り付けてきた酒だ。

 

ラムは先程よりもほんのり赤く、髪の毛と肌の色が似てきている。

 

「姉様、飲みすぎです……スバルくんもなんで止めなかったんですか」

 

「いや、俺とお義姉様が飲んでた時にはまだビンは二人合わせて一本だったぞ。もう一本はたぶんレム呼びに行ってる時に一人で飲んだんだと思う」

 

「姉様……」

 

レムとスバルの到着にしばらく気付かなかったラムだが、レムの声に反応したのか、二人の姿を視界に収めた。

 

「レム!バルスが変な事したらすぐにお姉ちゃんに報告しなさい、切り刻むから!」

 

「ラムが自分のことお姉ちゃんって言うの珍しいな」

 

「レムもそう思います……姉様、スバルくんはそんなことしませんよ。姉様も分かっているでしょう?」

 

「うぅ……でもお姉ちゃんは心配で心配で」

 

姉としての威厳はどこへやら、妹であるレムに泣きつくラムは昔のメイドとして常に何故か自信たっぷりだった頃よりもずっと子供じみて見える。

 

レムは腕の中で涙するラムを見て困った様にスバルの方を見るが、こればかりはレム以外の人間が声をかけるべき所ではないだろう。

 

「姉様……うんうん、お姉ちゃん。レムはスバルくんと一緒に幸せになります。でも、お姉ちゃんと離れ離れになる訳じゃないから。だからその、安心して?」

 

「レム……ごめんね、お姉ちゃん分かってるのに我が儘で、不安で不安で……バルスもごめんなさい。少し大人気なかったわ」

 

どうやら泣いて叫んで、心の底からの言葉を吐ききったからか、それとも飲む手が止まっていたからか少し落ち着いたラムは、そっと一言付け加えた。

 

「レム、バルス、結婚おめでとう。困ったらいつでもこの姉を頼ってね」

 

「ありがとう、ラム」

 

「はい、お姉ちゃん」

 

そこからはぐだぐだと飲み食いしながら語り合い、定期的にこういった酒の盃を交わそうと約束して、スバルにとっては嫁とお義姉様との夜の一幕が幕を閉じたのだった。




ラムが酔って自分の事をお姉ちゃんと呼ぶそんな世界、作者は大好きです
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