功績と栄誉を称え、騎士になる。
今までの王国では無かった実力主義ではなく結果主義の騎士任命。
他の騎士達からの批判があがるだろうと予測されていた例外の例外は、騎士の中の騎士、『最優』と称えられたユリウス・ユークリウスという一人の騎士の一言によって皆からの同意を得るに至った。
元々ロズワールの一介の使用人に過ぎないラムとレムが騎士となり得たのはユリウスの協力があったからと言えるだろう。
スバルが二人はエミリアにもっと近い立場に、自分と同じ立場に居てほしいという思いを二人に伝えなければ有り得なかった出来事でもあった。
ロズワールの事を心から敬って、その過ちを命を懸けて正そうとしたラムと、スバルの事を愛し、命と存在を懸けて『暴食』と『強欲』から味方の命を守ろうとしたレムには、騎士と呼ばれる事が相応しいのだと、ユリウスは訴えたのだった。
騎士であるには力と、志が最も必要だと言い切っていた『最優』が、命を懸けてでも愛する者を、主を救おうとする強い心を持つものこそが騎士であるべきだと。
その上で力を持つものはその心を持つものが命を懸け無ければならない時に少しでもその力になる事こそが騎士であると、そう言ったのだ。
騎士レム、騎士ラムはそういった経緯で生まれたのだ。
「ユリウス」
「どうしたんだ?スバル」
レムがプリステラの中でも大きな洋服屋さんで服の試着をしている時の事だ。
試着室には聴こえない声で、スバルがユリウスに声をかけた。
「お前の言う騎士は、自分の身は自分で、主の身を命を懸けて助ける。そういう人を指すんだよな」
「今更だね。確かに私が求める理想の騎士像はそうだが……自分の事を自分で守る力がなくとも主の身を命を懸けて守る人は、尊敬に値する騎士だとも思っているよ」
「俺が一人の騎士という立場である以上、こんな事をお願いするのは見当違いかもしれねぇけど……もし俺とレム、どちらかしか助けられない状況が起きたら、迷わずレムの事を助けてやってくれ。そりゃ俺よりレムの方が自己防衛は出来るだろうけど、もしそんな理由で俺だけ助かってレムが助からなかったら俺はーー死ぬ事を迷わない」
「確かに騎士という立場の人間が言うような言葉ではないね……大丈夫だ。もしそんな危険が迫ったとしても『最優』の騎士の名に懸けて君達二人のことを助けるよ。……本当にスバルが言うような状況が起きたら、その時は迷わないと約束しよう。これは騎士としてでは無く、一人の友人としてね」
「助かる。あんな可愛いお嫁さんを貰っておきながら言うのもなんだが、俺が何事も無く幸せになれるほどこの世界は甘くない気がしてな」
「それはまた不思議なーーおや、レム様」
「スバルくん」
いつからそこに居たのか、着替えを済ませたレムが可愛らしい薄い水色のワンピースを着てスバルの事をじっと見ている。その目は険しいものだ。
「はい、何でしょう」
「今からユリウス様に大切なお願いをするので、そこで黙って聴いていてくださいね」
「え?」
レムはスバルから視線を逸らさず、読み上げるように言葉を紡ぐ。
「ユリウス様、もしレムとスバルくん、どちらかしか助けられない状況にあったら、迷わずスバルくんの事を助けてください。もしレムだけ助かってスバルくんが死んでしまったらーーレムは死ぬ事を迷いません」
「レム、聴いてたのか……でも、そんな事は絶対に認めないからな!俺は、俺はレムが居ないと」
「夫婦揃って他人思いというか、騎士の鏡だというか、私が反応に困る事を言ってくれるね。スバル、すまない訂正しよう」
「ユリウス!」
激情に駆られるスバルは叫ぶ。
その叫びに店の中の人々がざわめきだすがスバルの視界にそれは映っていない。
ユリウスはスバルとレムの顔を一度見て、続ける。
「どちらかしか助けられない状況、そんな状況がもしあったとしても、私は両方を助けるよ。これは譲れない。なぜならこれが私の考える騎士としての行為であると信じるからだ。二人の約束を断るのは気が引けるが、この解答で許して欲しいね」
「ありがとうございます、ユリウス様」
「いいかい、スバル?」
「すまない、俺が子供だった。レムごめん。」
しゅん、と小さくなったスバルと、満足気なレムを見て苦笑するユリウスは改めて思う。
彼等が、彼等こそが騎士であると。
「で、スバルくん。その可愛……いお嫁さんがお洒落してる感想はどうですか?」
「照れるなら無理して言うなよ……可愛いぞ、レム」
重い空気を割く様にレムが恥ずかしさからか頬を染めつつスバルに感想を聞く。
恥ずかしさが伝染したのかスバルもこころなしか恥ずかしそうに答えた。
「君達はそんな風に楽しんでいたらいいよ。今日、そして明日以降の旅行に降りかかるかもしれない危険はすべて私が受け持つ。約束しよう」
「任せた」
「改めてお願いします」
騎士三人は、その結束と警戒をより深め、旅は穏やかな時間を流れていく。
ユリウスとスバルが共闘出来る、そんな未来を夢見て。