目の前に座る少年の話を聞いた後に私は考える。転生?原作?こんな荒唐無稽な話があるだろうかと鼻で笑い飛ばしてやりたい。しかし彼の目は至って真剣そのものだった。話を聞く限り闇の書、いや夜天の書が起動したという事は聞いた。そして彼が住んでいた所が守護騎士によって滅ぼされた事も。まぁそこは私にとってはどうでもいい。気になるのはもっと別の事だ。
「仮に君の言うことが事実だとして・・・・・・。証明する事はできるかい?」
論より証拠ということだよ。そう告げると彼は少しだけ考えるように黙り込み私に向かって言ってきた
「証明する事はできないわけではないですけど・・・・・・、お酒とかってあります?後は人が住んでいないような惑星なんかに転移させてもらえればなぁ・・・と」
ふむ、と私は考える。無人惑星なら実験場としていくつかあの糞共から渡されてはいる。用意する事は簡単だ、が。
「何故酒なんだい?」
そう、酒が必要になる意味がわからない。酒宴でも開こうというのだろうか?もしそうならばこの人物は異常なほど図太い精神の持ち主かただの馬鹿だ
「用意さえしてくれれば面白いものをお見せできますよ。あ、念のために強烈な光と熱を遮断するために結界の準備もしておいてください」
「ふむ、まぁいいだろう。ウーノ、準備を頼む」
「直ぐに準備にとりかかります」
これで何も面白い事がなければ彼はそのまま無人世界に放置しておけば「あーそれとすいません」
「なんだい?」
「ついでと言ってはなんですけど、飴も用意してもらえませんか?」
ますます訳がわからなくなってきたよ・・・・・・
「お望みどおりの酒と飴、それに無人世界だ」
「ありがとうございます」
準備が終わった後転移装置を使いここまで連れてきてもらった。ポケットは飴を詰め込んだお陰でパンパンに膨らみ片手には酒を持った状態。これで彼に認めてもらうことができなければ一人で事を成さなければならないだろう。・・・・・・まぁできなくはないかな?難易度は跳ね上がるんだろうけど。
目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をして心を落ち着かせる。大丈夫、僕ならできる。暗示を掛けるように同じ言葉を反芻させる
「始めます、結界の準備を」
そう告げると同時に後ろで待機している二人の周囲に複数の結界が展開される。これで彼らを巻き込む事はないはず・・・・・・はず。
改めて言うが僕は転生者だ。死亡した理由、原因などは転生させてもらえると知ったことによるテンションの上昇で聞く事は忘れた。ただ転生させてもらえると聞いてもどこの世界かなんてのは聞いてなかったし仮にその世界の知識があっても封印してもらうように頼んでおいた。
何故思い出したのか?そう聞かれると切欠は襲撃で、としか言えない。もしも襲撃がなかったら思い出さないまま第二の人生をのんびりと過ごす事ができていたのかなぁ、と考えるが。
(現実はそんなに甘くないってことなのかな)
所詮は脳内で考えるだけの想像にすぎない、現実を見つめよう。
話を戻すが転生されるときにはテンプレとして特殊な能力などがもらえる事になると思う。まぁそれも封印されていたわけだけどどうやらそっちも解放されたみたいだ。ジェイルが僕を見つけた時には燃え盛る炎なんてものはなく、まるで炎がそのまま凍ったかのような異常な形をした氷の世界だったと聞く。
手に持った酒を一気に口に含み飲んでゆく。アルコール度数が高いものなのか喉がヒリヒリと痛い。丸一本飲み干し次、同じように飲む
同じように追加で二、三本飲み干したころに痺れを切らしたのだろうか。一人此方に近づいてこようとする足音が聞こえる
「ストップです」
が、そこから動かないように声を出す。これ以上近づかれると此方としてもまずい
「ウーノ、戻っておいで」
無言で、しかし渋々といった感じで足音は元の場所に戻っていく。こちらも頃合だろう。僕は両手を前に出し呟く
「マテリアル・パズル」
僕がもらったのはこの世界には存在しない特殊な魔法
「焦天回廊」
呟くと同時に酒気が体から抜ける感覚と共に眼前に業火が生まれる。
「炎陣剣!」
呟くと炎が巨大な大剣を象る。ソレを地面に向けて放つ。瞬間、響く轟音
「・・・・・・これはッ」
後ろから驚愕の声が聞こえる。思わずそれに微笑を漏らしそうになるがまだ此方の出番は終わってはいない。
眼前に未だ広がる炎の大剣に対してまた僕は呟く
「夜叉水晶」
瞬間、炎の大剣が氷の大剣へと変貌した
「ありえない・・・・・・」
と言葉を漏らしたのはどちらであろうか。氷の大剣が出来上がり周囲の温度がだんだんと冷えていく。
次に僕は準備してもらった飴をいくつか取り出し円を描くように、手を正面で回しながら飴を落とす。飴は落下せずに重力に逆らいながら宙に浮く
「マテリアル・パズル。スパイシードロップ」
宙に浮いた飴に魔力が宿る。円の中央、そこがまるで槍を模すかの用に尖っていく。
キン、キンと音が響く。狙いは氷の大剣
「ブラックブラックジャベリンズ!」
ピンと、指先でソレを弾くと同時に槍状の巨大な魔力の塊が氷の大剣にぶち当たる!
一瞬の拮抗、しかし直ぐに氷は砕け散る。
槍は勢い衰えずに空高く上っていき
――パチン
と、指を鳴らすと同時に花火のように爆発した
「こんなもんでどうでしょうか?」
と振り向けば笑いを噛み殺している彼がいた
「あぁ、あぁ!なんと素晴らしい!」
突然の大声にビクリと体が震える。素晴らしいということは信じてくれたのだろうか?
真偽を聞こうと近づこうとするが地面が近づいてきている事に気づく
(あぁ、これって地面が近くなってるんじゃなくて)
酒に酔って倒れたと知らされるのは目を覚ましてからのことだった